随分とまあファンタジーな世界じゃないか(仮)   作:倒錯した愛

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気づいたら書いてたっていうね、ごめんなさい。
でも書きたかったんです!ファンタジー世界で前世、前前世、前前前世の身体能力もろもろを継承してスーパーチートの主人公の無双が!




第1話

━━━━━なんだ、ここは?この、世界は?

 

死後に白い神から新しく構築したばかりの世界への転生を勧められたと思えば、いきなり薄暗い廃墟のような場所とは。

 

明かりはロウソクのみ、窓のない岩をくり抜いた穴から空が見える、いまは夜の様だが……。

 

というか視線が90度傾いている気がする…………気がする、ではなく実際に寝転がっているからか、つまり私は産まれたてと言うことか。

 

「それでは、測定いたします」

 

「うむ」

 

なにやらヒョロくて顔色の悪い男が私に両の手をかざしだしたぞ?測定とはなんなんだ?

 

「魔王様!大変です!」

 

「なんだ?」

 

ヒョロくて顔色の悪い男がハッとした様に振り向く、なんとか首を動かすと、そこには大男がいた。

 

「魔王様の御子息には、魔力が………」

 

魔王に魔力?ずいぶんとファンタジーな世界に転生させられたようだ。

 

「ない、と……そう申すか」

 

「はっ!残念ながら………」

 

あっちのツノの生えた大男が私の父親らしき『魔王』というやつか、母親が気になるところだが、私の出自はファンタジー世界で言う所の魔族とやらで確定か。

 

「魔王様の跡取りがこれでは………」

 

「案ずるな、我にはこやつを抜いて3人も子がおる」

 

「長女上様に次女上様、長兄様でございますか」

 

2人の姉と1人の兄がいるのか、それに跡取りときたか。

 

勇者が魔王を倒してハッピーエンド、数十年後に別の魔王が復活………というのがベタなシナリオだが、なるほど、生前に退位することもあるわけか。

 

「さよう、彼奴等の魔力は余譲り、魔界も安泰であろう」

 

前世では散々暴れて、平穏な余生を過ごし、テストケースとして転生したら、暴れていた頃の様な人外になって産まれ落ちるとは。

 

もしや、白い神の皮肉ではないのか?とも思ったが、もしそうだとしたら茶目っ気が出過ぎててあいつらしくもないだろう。

 

「違いありませんな、この子供はいがかいたしましょう?」

 

「いらん」

 

どうやらこの世界では魔力がなければ生き残れない様だ、となると、私以外の魔王の子は皆優秀な魔力を持っているということか。

 

「では、あの女の元に置いてきましょう」

 

「好きにせよ」

 

「はっ!」

 

どうやら私は用済みのようで、これから産みの親の元に返されるようだ。

 

こういう場合の母親というのは、階級やヒエラルキーが低い位置にある者だったりするが、その通りだった。

 

ヒョロくて顔色の悪い男、改め青肌の男に連れていかれた場所は、魔界と呼ばれる魔族が住む領土の端の方、中心に魔王のいる通称魔王城からはかなりの距離があった。

 

ついた所は小さな町、そこのボロい一軒家、その入り口に私を置くと、ヒョロイ青肌の男は去っていった。

 

しばらくして、ドアが開くと女が出てきた、女は寂しげな、この世の全てを諦めたような表情をしていた。

 

女が置かれた私を見た途端、驚いた表情を見せ、パァッと笑顔が咲き、涙を流しながら私を掬い上げて抱きしめた。

 

「グスタフ!あぁ!グスタフ!無事だったのね!よかった!本当によかった………」

 

今世での私の名前はグスタフか、前世では『神の助け』を意味する名前だったか、白い神め、茶目っ気でも出してきたのか?

 

そこからは色々あった、衝撃的だったのは母親がサキュバスであったことだろう、年齢も100はゆうに超えているようだ。

 

どうやら私は、ファンタジーな世界で魔王とサキュバスの間に生まれた、魔力の無いインキュバスのようだ。

 

魔力がないのは別に気にしてはいない、私には引き継いだ身体能力があるからな。

 

まあ欠点として、身体能力を引き継ぐと低身長になる呪いを受けるみたいだが……………そうなると名前とのギャップが…………まあいいか。

 

それで、この端にある町なんだが、どうも魔界の端というだけでなく、人間界に最も近い町のようだ。

 

当たり前だろ、と思うかもしれないが、他にも人間界に近い町はあるらしい、こういう町に住むのは大抵が中級以下の魔族、衰退した上級魔族が大半を占める。

 

母親は衰退したサキュバスの末裔だ、数百年前、人間界からの大攻勢に呑まれて散り散りに、各個撃破される形で数を少なくしてしまったようだ。

 

数少ない生き残りの母親は、地位向上と子孫繁栄を考え魔王との間に子を授かった、それが私だ。

 

産まれたら政治道具として使う考えだったらしいが、産んだ直後顔をまともに見る機会もなく連れていかれ、子を持つ母親としての責任を強く意識したらしく、利用したりしないことを誓ったそうだ。

 

という話をしてくれたのが15歳頃の時、今では私も立派な22歳のニートだ。

 

これは別段おかしい話ではない、20歳になる頃に予備役扱いで魔王軍に強制編入され、60歳までそれが続く、軍規等が書かれた冊子が届くのみ、有事の際は即時出動、訓練等はなし、しかしその間給料は出るため、ほとんどの魔族はニートをしながら軍属となっている。

 

訓練がないといったが、魔族に連携など存在しないため、共同作戦など考えられず、したがって訓練などしようものなら怪我人死人続出で軍力が小さくなってしまうからだ。

 

給料のほどは中々に良い、ただ、当たり前だが社会福祉など無いファンタジー世界、手取りは多いがそれだけだ。

 

階級もありそれに応じ給料も増える、今はただの一般兵だが、人間との戦闘で戦果をあげ、兵士長クラスまで上がれば一月1000枚の銅貨が200枚の銀貨になる、銅貨10枚で銀貨1枚、兵士長クラスになると給料はほぼ倍確定ということだ。

 

まあ、そもそも戦争がない現状ではこんな話などなんの意味もないんだが、実行できるなら今頃将軍にでもなっている頃だ。

 

だからニートやってるってことだ、だがニートというのも暇だ、食っちゃ寝、食っちゃ寝ばかりでは飽きる、刺激が足りない。

 

「ねえ、グスタフ?」

 

「なにかな?母さん」

 

「その…………ちょっと、お母さんと買い物に付き合って欲しいんだけど、良い?」

 

「わかった、準備するから待ってて」

 

ニートの利点の一つとして、家事の手伝いができることは幸いだな。

 

外出用の服を着て母親の元へ行く。

 

「それじゃあ行きましょ」

 

「そうだね」

 

母親と市に向けて歩く、道行く魔族が母を見る、押さえつけてはいるが、サキュバス特有のフェロモンは少しだけ漏れてしまうもの、人目を引くのは仕方のないことだ。

 

母親はサキュバスの中でも優秀なほうで、全力にしたフェロモンを垂れ流せば小さな村の機能を全て停止させられるほどの強さを持っている。

 

フェロモンに当てられては、人間も、魔族も、皆母を求める、母の年齢に見合わぬその妖艶な肢体を求める亡者と化す。

 

しかし本人はそれが好きではないらしく、こうして人目を引いてしまい、何かの拍子に襲われかねない時のみ私をボディーガードとしてこうして同行させている。

 

私を利用しないと誓った母は、私を同行させるたびに苦しんでいるが、私が好きでついて行きたいから、と言ってから少しは軽くなったようだ。

 

ん?フェロモンの発生源のすぐ隣を歩いてて平気なのかって?危険に決まっているではないか。

 

サキュバスもインキュバスも、他の人間や魔族と同様にフェロモンには太刀打ち出来ない。

 

ただし、自制することはできる、母がフェロモンを押さえつけているいるように、私も母のフェロモンを知覚できないようにしているからだ。

 

これをしておかないと、市のど真ん中でマザーファッカーになってしまうからな。

 

あぁそうそう、私もインキュバスの端くれ、とりわけて母はサキュバスとして優秀で父親も一応魔王であるため、インキュバスとしては非常に優秀なのだとか。

 

そのためフェロモンも母親に比べて効果が高く、範囲も広い、そのぶん自制するのは辛いが、コツを早めに掴めて助かった。

 

フェロモンが出始めるのは18歳頃からと言われ、これはサキュバス、インキュバスを問わず同じらしい。

 

しかし、本当にコツを早めに掴めてよかった、18歳になってしばらくしてからフェロモンが出始めたんだが、その夜にまさか母親に夜這いをかけられるとは思わなかった。

 

危うくトラウマになりそうなところで自制のコントロールができるようになったため事なきを得たが、母が恥ずかしがって3週間くらい素っ気なくなかったときは少し悲しかったな。

 

「今日は何にするの?」

 

「昨日のシチューの残りを使って、ドリアを作ろうと思ってるわ」

 

「いいね、野菜は多め?」

 

「安かったら多めにするわね」

 

先程から歳の割に私が子供扱いされているが、魔族で大人と言われるのは150歳を超える頃になってから、母はひゃくはちj………。

 

「グスタフー、お饅頭食べる?」

 

「いいの?家計苦しくない?」

 

「あなたの給料のおかげでだいぶ助かってるから、それに、ちょっとくらい贅沢しないダメよ?あなたのお金なんだから」

 

「じゃあ、一つ貰おうかな」

 

たかが1000枚銅貨、されど1000枚銅貨、私は7割を母に渡している、他の魔族は自分でほとんどを使うそうだが、私はそこまで趣味があるわけでもなし、無駄遣いを避けるためにこうしている。

 

「へいよ!奥さん今日も美人だねえ!」

 

「あら、ありがとう………はい、グスタフ」

 

「ありがとう母さん、あちちっ」

 

お饅頭と言われているこの食い物、中身は動物の肉を包んである肉まんである。

 

肉についてはその日によって様々、単純な豚やイノシシからキメラにまで及ぶ、一番人気はドラゴンの肉を使った饅頭、滅多に並ばないが、脂のノリが最高らしい。

 

今日は普通のイノシシ肉のようだ、味に関しては豚に比べ硬い以外は普通だった。

 

それからは母のボディーガードを努めつつ、買い物を完了、帰路についた。

 




主人公:グスタフ
性別:オス
種族:淫魔(母親の血が濃い)
お馴染みの主人公『ツキト』さん。
身体能力継承によって強制的にルックスが低身長・長髪の男の娘になる、それ以外のスペックは『人外』。
外世界の神(白い神など)が決めている個人ごとの才能値がすべてカンスト、オーバーしており、前世においてすでに完全無欠、自己完結の究極系生物となっている。
というのも、前世で人でありながら内世界の神(いわゆる人が創り出して信仰している神、ゼウスなど)を超え、外世界の神の領域に足を踏み入れたことが理由である。
好きなものは『立ち向かってくる英雄』
嫌いなものは『精神・肉体を問わず弱い者』

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