随分とまあファンタジーな世界じゃないか(仮)   作:倒錯した愛

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主人公がマザコンに見えるかもですが、前世での親はクソだったため、頼れる優しい親に甘えているだけです。

わかってると思いますが、基本ギャグで進行します


第2話

私の趣味を紹介しよう。

 

知っての通り、金はほとんどを母に献上しているため、月毎に手に入る銅貨1000枚のうち300枚が私の給料となる。

 

300枚あれば、一ヶ月を乗り切るには困らない程度の金、ただ、少しの贅沢も許されないが。

 

そんな銅貨300枚で私が何の趣味を見つけたかというと、意外にも『鍛治』であった。

 

専用の道具は持っておらずとも、廃材で十分なものができる、金属を鍛えるための火の燃料は森から切ってくれば良い、材料もまたしかり、良質な金属が欲しいと言うなら銅貨を使えって買えばいい。

 

母に許可をもらい、そこそこの広さの家の一角に廃材でリサイクルされた工房をこしらえた。

 

近くの鍛冶屋で小さくて合金にするには物足りない量の廃棄予定だった金属を数十枚の銅貨で買い取って工房に持ち帰り、炉に火をつけた。

 

こういう時に魔法が使えれば楽だったろう、私は使えないから火打石でつけた。

 

燃料をくべて温度を上げ、熱を帯びて真っ赤になった炉に数種類の金属を投げ込み、溶かしていく。

 

溶かしている間、なぜ鍛冶を趣味として選んだかを話そう。

 

この世界のでは前世では見たこともない性質の金属が多く、興味が湧いて鍛冶屋で話を聞くたびにのめり込んでいった。

 

2年ほど貯め続けた銅貨数千枚もあることだ、と、軽い気持ちで始めてみたわけだ。

 

趣味でやるわけだが、才能はあるため、あとは全力を出して最高の品を創り上げるのみだ。

 

今回は軽くて丈夫な合金を作り、それを使って短剣を仕上げてみようと思う。

 

短剣ならば母の護身用にちょうど良いことだろう、誕生日も近いしそれに合わせて贈ることにしよう。

 

っとと、完全に液体になったな、これを、砂型に流し込む。

 

砂型というのは、文字通り砂で作った型、木枠に砂を敷き詰め、押し固める、そしてもう一つ木枠を用意して、そこに作りたいものの木製のレプリカを置いて、砂を敷き詰めて押し固める。

 

レプリカを外して、レプリカのあった場所まで小さなトンネルを掘る、そしたら2つの木枠を合体させる、これで完成になる。

 

あとは、トンネルから合金を注いで、レプリカで作った空洞部分全体に行き渡るようにして、合金が冷めたら崩すだけ。

 

簡単だろう?ところが意外にも難しいんだ、砂の選定に時間がかかるし、レプリカもうまく作らなくてはいけない。

 

砂型に流し込んで数時間、触ってみると土はひんやりと冷たかった、崩してみるとレプリカそっくりの合金が出来上がっていた。

 

トンネル部の合金をそぎ落とし、短剣というにはいびつな合金棒を火の中に放り込み、赤くなってきたら取り出して鉄の槌で鍛える。

 

2日ほど打ち続けた合金棒を、今度は研いで刃をつけていく、どうせならと血溝も彫り、軽量化と耐久性の向上も測った。

 

頑丈だと有名な動物の皮を購入、鞘に加工し針で縫い付ける、なかなか良い感じだ。

 

出来上がった短剣の持ち手部分を木から削って創り上げる、握りやすいよう湾曲したデザインにした。

 

握った時に誤って怪我をしないよう、鍔は小さくも負担がかかりにくい形状のものにした、これも短剣同様に砂型で仕上げた、本来なら短剣に鍔は不要だが、母に贈る以上は安全性を考える必要がある。

 

持ち手の柄の部分に鮫皮に似た動物の皮を巻き、糸を巻いてしっかりと馴染ませる、数日そのままにし、馴染んできたら糸を解き、より太くて握り心地の良い糸を巻いていく。

 

これで、完成だ、ざっと2週間は使ったが、最初にしてはそこそこの出来映えだろう、鍛冶屋のおっさんに礼を言いたいところだが、短剣のことがバレるとサプライズプレゼントの意味がないから後にしよう。

 

母の誕生日の日、今日くらいは自分に料理を作らせてくれと頼み込み、母の好きな料理を作ってあげた、その後で母に短剣を見せると、思惑どうりに驚く顔が見れた、プレゼントだと言うとポカンとした顔をして、泣いて喜んでくれた。

 

言っておくが親孝行の良い息子を演じるつもりはないが、前世では親に散々悩まされた手前、今世での母が優しく見えるのだ、だからここまで手のこんだことをしたのかもしれない。

 

自分でも、自分がわからない、ただ、今の母に感謝したいという気持ちはまぎれもない本物だ。

 

いつも通り、やりたいことをやっていこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ど、どうすれば良いのかしら?嬉しいんだけど、いえとても嬉しいのよ?

 

私のかわいいかわいいグスタフが、お利口で、気が利いて、ハンサムで、優しいグスタフがくれた最高の誕生日会。

 

私が作るより明らかに美味しい料理には驚かされたわ、故郷の味のままにとても美味しい料理だったわ。

 

でも一番驚いたのは、趣味で始めた鍛冶で作った短剣よ。

 

最初に見せられた時、どこかで買ってきたものじゃないかって思った、でも違ったの、グスタフが自分で母親の私に作ってくれたものだったの!

 

私ったら、嬉しくって嬉しくって泣いちゃった、次の日から買い物に行くときは、もちろんグスタフも一緒だけど、短剣も隠して持ち歩いているわ。

 

それでね、ふとした時にちょっと鑑定してみたのよ、グスタフの初めて━━━━作った短剣、そしたらビックリ!この短剣すごいの!『お母さん専用の短剣』になってたの!

 

『持ち主指定の効果付きのネームドの短剣』になってたのよ?すごいでしょ!?うちの子すごいでしょ?グスタフすごいわ!さすが私の子!天才だわ!

 

ふふっ、ちょっと興奮しちゃったわ、ごめんなさいね?

 

それでね?それでね?短剣の名前が【我が愛しき母へ贈る】なのよ!鑑定してこれを知った時と言ったらもう!最高だったわ!!お母さん嬉しいわ!イケメンすぎよグスタフ!もう私、グスタフと結婚したいくらいよ!

 

さっき言った効果なんだけどね?なんとこの短剣、【我が愛しき母へ贈る】は、お母さん以外の人は決して抜けないし、握って振ってもものを切れないのよ。

 

でもお母さんが握ると抜けるしものは切れる、それにステータスも向上するのよ!伝説にある『魔剣』と同じような効果があるってすごいと思わない!?すごいでしょー?羨ましいでしょー?でもダメー、グスタフちゃんは私の子なんですー、誰にもあげませんー。

 

ふふっ、ふふふふふっ。

 

「グスタフー」

 

「なぁに?母さん」

 

「うぅん、なんでもなーい」

 

「?、はーい」

 

かわいいわ………グスタフ、私の愛しい子……………。

 

「そういえば、母さん、今日お昼から出かけるね」

 

「あら、どこに行くの?鍛冶屋さんのところ?」

 

「薬草屋のところ、手伝ったらお駄賃くれるらしいんだ」

 

「そう、気をつけて言ってらっしゃいね」

 

「うん、晩御飯までには戻るから」

 

薬草屋さんかー、私もよく行ってたっけ、おじいさん元気かしら?

 

そういえば、お孫さんがいたんだったかしら?今30くらいかしらね?━━━━━グスタフと同じくらいね。

 

危険かもしれないわ。

 

「…………グスタフ?」

 

「なぁn………どうした母さん?怖い顔して」

 

「薬草屋さんのところのお孫さんとは、付き合ってないわよね?」

 

「?、付き合ってないよ」

 

そうよね!グスタフちゃんは恋も知らない純粋な男の子なんだもんね!

 

「本当?お母さん、グスタフに嘘つかれたら生きていけないわ」

 

「本当だよ、確かに綺麗な人だけど、僕にとってはお姉さんみたいな人だから」

 

ニコッと微笑むグスタフちゃんかわいい!

 

「そう、それならいいわ」

 

「うん、あっ、そろそろいい時間だし出るね」

 

「いってらっしゃい」

 

ウゥ、行かないでグスタフー…………寂しいよー。




お母さんのキャラは、バブみを意識しつつかわいいキャラを目指しました。
主人公が大好きなヒロイン(?)第一号です。

そして主人公のグスタフニキ、全力を出して誕生日プレゼントを作った結果、魔剣を作ってしまうという…………前世知識、前世で培った経験、才能、あらゆるものが相乗効果を生んでこんな結果になりました。

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