随分とまあファンタジーな世界じゃないか(仮) 作:倒錯した愛
初・人間界到達の話をしよう。
魔界の端には人間界からの人間の侵入を妨げる結界が張ってある。
が、3箇所ほど穴が空いており、塞ぐかどうか審議され、結局今はそこを通り道として利用している。
人に化けられる魔族が人間界へ行き、その穴を通って物資を運んでくる。
許可さえ出れば誰でも通れる穴ではあるが、許可の基準が厳しいと有名なのだ。
穴の周辺は要塞化されている、穴の部分には巨大な門があり、門の近くには最低でも8人がついており、警備は厳重だ。
門の向こうの穴を通り、人間界へ行くにはこの厳重な警戒の中に突っ込み、種族の検査、持ち物検査、人間界へ行く明確な理由の提示などを行う必要がある。
毎日6回、門が開き、門が開くまでの間にゴーサインが出た者だけが人間界へ行ける、間に合わなければ次の開門まで待たねばならない。
まあ私は淫魔だからほぼ素通りできるんだが。
人間界へ行く魔族たちの長い列に並ぶ、20人ほどの並んでいるようだ、多い日には50人から減らないこともあるそうだ、今日は付いている。
「次!」
「はい」
「種族は?」
「グリフォンです」
「ふむ、持ち物は?」
「この籠だけです」
「人間界へ行く理由は?」
「人間界に自生する果物の採取です」
「…………よし、通ってよし、次!」
意外にも質問だけですぐに終わるようだ、身体検査がなくてよかった。
「次!」
おっと、私の番だ。
「はい」
「種族は?」
「淫魔です」
「サキュバスか?」
どうみてもインキュバス…………いや見えないか。
「いえ、インキュバスです」
「インキュバスか…………持ち物は………たくさんあるな」
「3週間ほど滞在するので」
「なるほど、荷物をこっちへ」
「はい……………っと」
「聞くまでもないと思うが、人間界へ行く理由は?」
「食事です」
「わかった、荷物の検査が終わるまでそっちで待っていろ」
「はい」
しばらく待つと、問題ないと出た、門が開くまで待っているとしよう。
本でも持って来ればよかったか、いや、あと3分くらいだ、いいタイミングだったようだな。
「開門!」
「よし!通れ!」
開いたか、しかし、でかい門だな。
ぞろぞろと門から穴の先、人間界へと歩いて行く集団、その中に混じって私も行く。
魔界から人間界へ行くのにこの人数で固まっていて大丈夫かと思われそうだが、穴を超えるとそれぞれがバラバラの座標で人間界に飛ばされるらしい。
それでも穴からは1km離れた場所という程度だからさほど支障は無いらしい、バラバラの座標と言っても穴の方向にランダムというだけで、通った穴とは逆の方向に飛ばされることはない。
通り抜けた先は……………森だった。
木々が生い茂り木漏れ日が地面へと注ぐ森の中、後ろを振り向くと開けているが、何か違和感を感じる、時空の歪んでいるような、そんな違和感。
おそらくあの周辺に穴があるのだろう、となると、穴から200m程度の場所に出たというわけか。
前を向き直して歩く、アテはないが、とりあえずは川を探そう、川の近くなら最低でも集落はあるはずだ。
今の私のは白い肌に結い上げた銀髪、剣士風の装いをした旅人といった風体だ。
胸の部分には自作した胸甲と脚甲、腰鎧をつけており、ちょっとしたプレートアーマーだ。
右手には拳を握りやすい籠手を、左手には頑丈な小型のシールド付きの籠手をしている、左手の籠手のシールドは少し凝った作りをしており、状況に応じ、シールドの大きさを変えられるギミック付きなのだ。
趣味全開過ぎて使わんと思うが………。
とはいえ、全部安物の金属で作ったものだし、防御力はさほど無いだろう、しかし旅人が豪華な装飾のあるプレートアーマーや、頑丈そうなフルプレートアーマーだったら違和感しかないだろう、ほどほどの装備の方が良い。
そして左の腰には簡素で装飾のないロングソードを吊っている、あまり装飾華美であると面倒ごとに巻き込まれそうだし、これくらいでいいだろう。
顔はどうにもできんが、まあ、見ようによっては旅をしながら修行している少年剣士に見えないこともない、純朴そうな少女くらいなら、おとせる………だろうか?
少し不安だ、姿を変えて高身長イケメンに…………虚しいだけだな、やめておこう。
気を取り直して、人間の村の一つでも探すとしよう。
しかし…………………作ってきてみたわけだが、この装備なかなかに重量があるんだな。
いや、人間基準だとフルプレートアーマーくらいの重さがあるんだが、何ぶん私は身体能力継承のおかげかそれを感じにくいわけでだな、こうして重みを感じているのはけっこう新鮮だ。
人間だとまず歩けるかどうかという重さだろう、分解してもパーツそのものがかなりの重量物なわけだし、手での運搬は不可能か。
……………………む、遠くで人影が見えた、水汲みだろうか?なら近くに集落はあるはず。
水汲みと思わしき人影がいた場所まで来た、さあ答え合わせは…………アタリだ、小さな村のようだ。
せっかく見つけた餌場だがここはパスだ、魔界に近過ぎて問題が起きたらよそ者の仕業だと直ぐにバレてしまう。
まだ魔界を出て3時間程度、残り20日もあるのだ、焦る必要はない、獲物にとって絶好のチャンスとは、ハンターが焦っている時だ、焦っている時はどんなプロでも仕損じる。
餌場には不向きだが、罠を仕掛けるにはなかなかに良い地形だろう、全体をよく見れば、かなりの数の馬車がある。
移動しながら生活する民族でないかぎり、馬車は輸送のためのもの、おそらくここは商人が立ち寄る村なのだろう。
物の流れと人の流れは比例する、市場に人が来るようにな。
つまり、ここで張っていれば獲物が向こうから来てくれるというもの、しかし獲物を得るためには根気良く待つ必要があり、獲物が来るかどうか確定しないのが欠点だ。
もしものための予防線としてこの村は覚えておこう、となると、ある程度の村人には顔を見せておいた方が良いか。
人間界の金は母がいくらかくれた、旅に金はつきもの、帰ったら感謝と土産話をせねば。
とりあえず、旅人という設定に合うようにそこそこの金額を使って買い物や食事、宿を借りねばならない。
長旅で疲れたため3日滞在する、という方向で良いだろう。
さて、まずは…………食堂からだろう、幸い今は昼時、なるべく多くの客のいる店を探して入店する。
「あい、いらっしゃい!」
40代そこそこといった女性が聞くだけで元気が出そうな声でそう言った。
「オススメのメニューをお願いします」
「あいよ!ん?お前さん見ない顔だね?」
おっと、これは嬉しい誤算だ、向こうが関心を示してくれた方が楽になる。
「旅をしていまして、2日ほど歩いてやっとこの村にたどり着いたわけです」
「そりゃ大変だねえ、となると………お腹へってんだろ?」
「もうぺこぺこですよ、ろくなもの食べてないです」
うそだ、ちゃんと母の作る極上の料理を食ってから来た。
マザコンだと?褒め言葉だな。
「そうかい、んじゃあサービスだよ!ほら食いな!」
「おぉっ!」
やはり物流が盛んという読みは当たっているようだ、川で取れる大きさではない巨大魚、狭く暗い森で育てられるとは思わない山盛りの穀類が出て来た。
サービスされているとはいえ、ここの村人にも払える料金でこの量、物流はかなり良いらしい。
おそらく、馬車で行ける範囲に町があるとみた、魚は水を張ったオケにいれて1日持つとして…………そう遠くはないはずだ、歩くとなれば3日くらいだろう。
「美味しいですね、この魚はどこから?」
「馬車で1日半くらいの街さ、そこでおろされてるもんだよ」
4日ほど探索を兼ねて森を歩いてみるか、その後2、3日歩いて街に行けばいいだろう。
「ここの周辺に村や集落はありませんか?」
「街の方向……だいたい、あっちかねえ、に向かうとこっちより大きな村が見えるよ、うちの村に来る人はみんなそこによってから来るんだ」
「なるほど………ありがとうございます、1日滞在したらその村に行ってみようと思います」
「それはいいけど…………ずっと思ってたんだけど、お前さんかなり歩きづらそうな格好してんね、平気なんかい?」
「多少の動きづらさはありますが、鎧とはそういうものです、それにこれは軽いほうなので平気です」
他人から見ても重く見えるのか、鈍重だと思って奇襲をかけたら…………という具合に、丁度いい目くらましになりそうだ、見た目以上によく働く鎧だな。
「本当かい?城下町の騎士様みてえなのに、軽いもんなんだねえ」
「城下町の騎士?」
「そう、ここの森を抜けて川の上流の方に登って行くと、おーきな城が見えてくる、そこはたいそう大きな王国でね、こんな小さな村が出した依頼(クエスト)もちゃーんと受け取ってくれるんだよ」
「地方の村もしっかり管理する、その王国は良き国ですね」
「だろう?しかも、城下町にはあんたみたいな鎧を着た騎士様が巡回してて、治安を守ってるって話さ、さらにイケメン揃いだときたもんだよ」
「町民を守るイケメン騎士たち、ですか…………剣を志す者として、憧れます」
なりたいとは思わないが。
「あんたも顔はいいけど………ちょっと子供っぽく見えるからねえ………まあ、一回でいいから行って見てみな、そいで感想を聞かせておくれよ」
「立ち寄ることがあったら、必ず」
あと、前半の子供っぽいは余計だ。
食事を終え、金銭を置いて立ち上がる。
「ごちそうさまでした、また寄らせていただきますね」
「あぁ、いつでも来な、夜中に来りゃあ酒も出るよ!あんたが飲めるようには見えないけど」
「ははは………酒はあまり飲まないようにしておりますので」
「えぇ?そいつは難儀なもんだねえ、宗教かい?」
「いいえ、飲むと剣が鈍るので」
「カーッ、あんた、見ための割にしーっかりとしてるねえ」
だから余計だ、見た目の割には本当に余計な一言だ。
今更気にするものでもないが、何度も言われるとさすがにくるな。
「では、また」
「ありがとさん!またいらっしゃいよ!」
食堂を出て、比較的広い大通りらしい道を歩く、あちらこちらで商人たちが取引をしている、安いものを大量に買取り、高いものを多く売りつける、こんな辺境の村でも商魂はたくましいようだ。
おっと?あの黒いのは…………ふむ、多めに持ってても大丈夫だろう、買うか。
「すみません」
「へい!なんだいにいちゃ………いや、姉ちゃん?」
「あはは、お、男です」
「じゃあにいちゃんだな!何か探し物かい?」
「こちらの木炭をいくつか」
「木炭を?あんたみたところ旅人か冒険者だろう?何に使うんだ?」
「料理や寝る時に長い時間火をつけておくのに便利なんです」
実際、長時間燃える炭の類は持ってて損はない。
私は料理にはそんなに使わない、もっと別の方に使う。
「ほう、なるほどそういう使いかたが…………あいわかった、幾つだ?」
「3本ください」
「まいど!また来てくれよ!」
思ったよりかるい…………いや私がバケモノなだけだが。
紐で吊るした木炭を片手に、ぶらぶらと現地の道具屋を探す。
大通りは商人が詰めているから、おそらく外れたところの通りにひっそりあるはずだ。
またしばらく歩くと何やら駅の売店のような小屋が見えた、小屋には飾り物などが入ったザルが吊るしてあり、薬草や旅で使う道具類が並べてあり、奥の方には武器や防具が置いてあった。
あれが道具屋なのだろうか?
「すみません、ここは?」
「ん?道具屋だよ、ボク………ん、女の子かな?でも鎧着てる、冒険者?」
活発な印象の村娘、身長は167cmくらいか、短めの髪型でボーイッシュだが胸がやや大きめで、同年代の男子にからかわれたことがありしうな少女にまたしても女子と間違われた。
「男です、酒も飲める歳です」
「え!?男!?カワイイのに!?」
「はい…………男です」
「なんというか、ごめんなさい」
「いえ………慣れてますから」
この村の人間には私が女、しかも子供に見えるらしい……………実際子供の容姿で固定されているから間違いではないんだが、精神年齢を考えるとただのジジイなんだよなあ。
「本当ごめんね?旅の人だよね?あっでも鎧着てるから王国の騎士様かな?」
「普通の旅人です、この店では何を売ってますか?」
「いろいろだよお兄さん、薬草、上質な薬草、解毒薬、下級のポーション、投げナイフ、青銅の剣、なんでもあるよ」
ひとつひとつ指差しながら説明する少女、ふむ、ひとつふたつ買ってくのがいいか。
「いろいろあるのですね、じっくり見させてもらっても?」
「いいけど、値引きはしないからね?安い女じゃないんだから」
「そこまで切羽詰まってませんよ……」
会話しつつ商品を眺める、さあて、何を買おうか?
よく分かる主人公の設定!
主人公の原点
・日本両家生まれ、英才教育を受け愛国心が強かったが、愛する人たちのために法律を変えるなど無茶をやらかしたりしつつ100歳近くまで生きる。
転生後の主人公
・イギリス発祥だがアメリカに本土があるような帝国の貴族に生まれ、とある皇族に仕えるも貴族位を捨てる。
のちに仕えている皇族と結婚、いろいろやらかしながら愛する人のために尽くして死ぬ。
不老不死の力を持っていたが、愛する人のために捨てるか自分のために残すかで分岐する。
転生特典は前世の記憶と身体能力と経験値、しかしある存在により一部の才能が本来の数分の一程度しか発揮できないようになってしまっていた。
2度目の転生の主人公
・今作の主人公。
愛のため人類の夢である不老不死をポイしたルートの主人公。
前世では使い道のなかった様々な才能を使って便利な暮らしを目指す。
なお、一部の才能は低下したままの模様。