機動武闘伝Iストラトス   作:Easatoshi

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第3話

 

 

 

 

 

 

 

 

           「ISを動かせる男 少年格闘家、織斑 一夏」 後編

 

 

 

一夏は第3倉庫の地下2階を駆け抜けていた。

 

「いたぞ!! あそこだァ!!」

「ブチ殺せええええええええ!!!」

 

「ええい!! しつこい連中だ!!」

 

追っ手のもつアサルトライフルから放たれる弾幕の雨に身を掠めながら、

息を切らせ全力疾走で倉庫の出口へと続く階段を目指す。

地下室を飛び出して休む事無く走り続け、既に息は荒くなっているが、

執拗に追撃を浴びせられるこの状況が、一夏に束の間の休息を与える事すら許さない。

 

「逃亡者発見!!」

「この先には行かせるかァッ!!!」

 

全力で逃げる一夏の行く手を遮る様に、10数メートル前方の

交差点の左右から、サブマシンガンを持った追っ手が現れる。

 

「邪魔するなあああああああああああ!!!」

 

銃を持っている相手に怖気づく事無く、寧ろ身を屈めて更に前方に踏み込む一夏。

対して銃を持った追っ手は突進する一夏に面食らうものの、

動揺の余りパニックを起こすと言うことは無く、

サブマシンガンの照準を身を屈める一夏に向け、引き金を指に掛ける。

 

発砲。

フラッシュハイダーの穴から漏れるマズルブラスト、

一夏の命を奪わんと放たれる雨霰のような鉛玉。

そして目にも留まらぬ速さで開閉を繰り返す排莢口から、

焼け爛れた空薬莢が排出され地面に散らばってゆく。

散々手を焼かせた逃亡者もこれにて蜂の巣となるだろう。

心の中で舌なめずりをしていた追っ手は、

しかし一夏の次の行動によって即座に驚愕する事になる。

 

(こんな銃弾がなんだッ!!)

 

不意打ちを食らった時に比べれば随分避けやすいッ!!

今一夏の目には自身の命を奪わんとする凶弾の姿形がはっきりと見える。

一夏は『銃口から放たれた弾頭の軌道を見切った上で』、

それら全てを前進しながら身を左右へよじる事で全てを回避せしめた!

 

「マシンガンの弾幕を掻い潜った!?」

「そんな馬鹿な事が――ッ!?」

 

思わず追っ手は発砲を止めた。

隙だらけとなった敵に一夏はすかさず畳み掛ける!

 

「覇ッ!!」

 

屈みこむようにして素早く敵の懐に潜り込んだ一夏は、

掌を、流派東方不敗『光輝唸掌』を両手から繰り出し、

凍りついた表情で棒立ちになっている2人の追手に同時に叩き込む!

 

「ぐへぇっ!!!」

「ぎゃあッ!!!」

 

地下室からの脱出の際にも用いた些か現実離れしたこの技だが、

あえて原理を説明するならば、この技は人間の体に流れるオーラ……

所謂『気』と呼ばれている力を応用したものである。

人間の掌には特にその『気』が最も集まりやすいと言われ、

その威力は時として、文字通りの必殺の一撃にもなりうる恐るべき奥義である。

 

体を『く』の字に折り曲げ、2人は10数mほど奥に吹き飛びながら

地面をバウンド、後に3メートルほど転がった辺りで

片方が仰向け、もう片方がうつ伏せになって昏倒する。

ちなみに、両者とも白目をむいて舌を垂らしているのはお約束である。

 

「見せ場を潰して悪かったな」

 

我ながら気障な台詞を吐いたと思った所で一夏は気づいた。

 

(背後からの銃撃が止んだ?)

 

追撃が来なくなった事への違和感に一夏は振り返った。

 

そこには先程から一夏を執拗に追撃していた、

全身と言う全身から血を流し、地面に倒れて痙攣している追っ手達だった。

恐らく一夏が弾幕を全て回避した事で流れ弾を浴びてしまったのだろう。

即死ではなかったが何名かは致命傷を負っており、死屍累々と表現しても差し支えない。

しかし一夏には哀れむよりも、挟み撃ちの状況であれだけ発砲すれば

味方に当たる事ぐらい考え付くだろうとむしろ呆れるばかりだった。

 

「た、助けてくれ……」

 

地面にうつ伏せに倒れながら、さっきまで殺意を持って

襲い掛かっていた一夏に震える腕を差し出して救いの手を求める。

一夏は円満の笑顔で、

 

「生きてたらまた会おうぜ」

 

身を翻して地上への階段へと足を進める一夏。

助けを求める声を完全に無視された追っ手の一人は、

脱力の余り伸ばした腕を力無く地面に落とし、そのまま意識を失った。

 

 

 

 

 

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「なにぃ!? 全滅しただァ!?」

 

無線越しに聞こえる部下達の全滅の報告に、オータムは激怒した。

 

「てめぇら何やってやがるッ!! ガキ1人止められねぇのか!?」

「ゲッ、ゲホッ!! そ、それがあのガキとんでもない強さでして……。

 マシンガンの弾を見切って、10人の仲間をあっという間に――」

「言い訳すんな!!! 男の癖にグダグダ言ってんじゃねーよ!!

 いいか!? 泣き言言ってる暇あったら

 とっとと仕事しやがれクソッタレがッ!!!」

 

感情のままに一方的に叫ぶだけ叫んで、オータムは通信機を地面に叩きつける。

地面にバウンドし、通信機は滑るようにして箒の元へと転がり込んだ。

 

「ケッ!! これだから男は使えねぇんだよ!」

 

悪態をつくオータム。 男を見下した物言いに箒は眉を顰める。

 

(ISがあるからって随分な言い草だな)

 

追記しておくべきISの基礎知識の1つにこんなものがある。

 

1つ、ISコアに起因する問題で、何故か女性にしかISを稼動する事ができない。

 

ISコアの開発者が意図的にそう設計したのか、

本当にどうにもならなかったのか、或いは一夏のように

少数ながらも男でも動かせる事が出来るが認知されていないのか。

勿論これらは全て憶測で、どうしてそうなのかは原因は一切不明である。

 

それはともかくとして、ISの登場以降世界は女尊男卑の風潮に包まれた。

理由は言うまでも無く、女性にしか扱えないISが世界各国の国防を

担うようになってしまったからである。

他の兵器もまだまだ健在で、かつISが数ある戦力の内の

1つに過ぎないのなら結果はまた違っていたであろうが、

しかし現実にはISは発表当時最新鋭だった主力兵器が束になっても

只の1つも撃墜できなかった……文字通り歯が立たなかったのであった。

その為、世界最強の兵器が扱える女性は手放しで持て囃されるようになり、

利用価値の無くなった兵器群と共に、男達は役立たずの烙印を押されてしまった。

 

「気に入らないな……」

「あ?」

 

箒の口から思わず本音が漏れる。 それをオータムは聞き逃さなかった。

 

「てめぇ今なんつった?」

「気に入らないと言ったのだ」

 

箒を威嚇するように大げさな足取りで歩み寄るオータム。

しかし箒は圧力に屈する事無くさらりと言い返す。

 

「たかが機動兵器一機を扱えるからと言って何様のつもりだ。

 所詮ISが存在しなければ貴様も只のヒトだろうに」

 

表情を険しくするオータムに対し、ふてぶてしく笑う箒。

元々彼女はISという世界最強の兵器に対して余り良い印象を抱いていない。

この兵器が出て来た事で世界は女尊男卑の世界になった。

だがしかるべき心構えでISを操り、心身共に優れた女性が優遇されるのは

男が外で仕事をして、その間女は家を守ると言う

古風な価値観を持つ彼女の観点から見ても、それは当然の事だと納得できた。

しかしISが女性にしか使えないと言う事実に乗っかり、

別段ISに対して適性がある訳でもない女性までもが威張り散らし、

挙句の果てには男性に対して何をしても良いと見下しにかかるような、

それこそ目の前のオータムのような者まで現れた。

そして大半の男もまた、守るべき尊厳を捨てて女性に媚びへつらう様になった。

彼女にはそれが気に食わない思いであった。

 

もっとも、箒がISを良く思っていない理由は他にもあるのだが……

 

「いい度胸だなコラ、ブチ殺されてぇか?」

「姐御」

 

箒を無言で睨んでいたオータムが、部下の呼ぶ声に振り返る。

そこには箒をスタンガンで気絶させたサラリーマン風……

今は変装を解いてどこからか不正に流出したボディアーマーを着込んでいる、

箒にしてみれば忌々しい男が立っていた。

 

「そう言えばこの女、さっき脱走したガキの連れみたいですぜ。

 こいつを羽交い絞めして気絶させた時かなり取り乱してました」

 

得意げな表情で言う男。

それを聞いた途端、オータムの口元が釣りあがる。

余りにも不気味な笑みに箒は思わずたじろいた。

 

「……それはいい事聞いたなぁ」

 

 

 

 

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一夏は息を切らせて第3倉庫から飛び出した。

ほの暗い倉庫とは違い、午前10:30の空模様は晴れ晴れとして、

さっきまで一夏を支配していた室内独特の閉塞感を取り除いてくれるようだ。

春先とあって潮風が寒いが、全力疾走により火照った体を冷やすには丁度よかった。

 

「はぁ……はぁ……やっと、やっと外に出られたぞ……」

 

追っ手は半分自分で倒し、半分は同士討ちで自滅した為

とりあえず一段落着いた一夏は両手で膝を押さえるように屈み、息を整える。

 

「はぁぁぁぁぁ……」

 

右腕で額の汗をぬぐう一夏。

頭に巻いたバンダナに汗と体温が染み付いて蒸し暑い。

このままどこかに隠れて一息つきたい心境ではあるが、

しかし一夏が脱走した事で周囲が慌しくなっている。

 

「一息つきたい所だけどそうも行かないんだよな……」

 

人質……特に箒の事が気にかかるのでこの場でじっとしている訳にもいかない。

それに、これだけの施設が電力が使える状態のまま、

しかもある程度備品が残ったまま放棄されていると言う事は

どこかに受話器か何かが残されている可能性もある。

それを使って警察に通報し、事件の収束を早めてもらう。

大方今頃はバスが本来のルートを外れた事で、

不審に思ったバス会社が警察なりに連絡を取っているかもしれない。

なので、今一夏にできる事と言えば、なるべく早く誘拐された

自分達の居場所を外部に伝える事だと判断した。

 

一夏は逃げる道中、古い掲示板から剥ぎ取ってきた港の見取り図に目を通すと、

 

「通信施設があるのは第1倉庫か」

 

連絡手段の取れる場所を確認した上で、再び寂れた港の中を走り始める。

 

 

 

 

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しばらく走り続けた所で一夏は港の中でも開けた場所……

倉庫に囲まれた十字交差点のような場所に出た。

正面に見えるのが第1、第2倉庫、一夏の直ぐ後ろにあるのが第6、第8倉庫だ。

どれも高さ10数メートル以上はある2階建て以上の古倉庫だ。

 

「第1倉庫はあれか!!」

 

正面左側に建っている第1倉庫、一夏はその入り口のシャッターに向かって全力疾走する。

 

 

「そこまでだクソガキめッ!!」

 

 

シャッターまであと3m、

開閉ボタンに手を伸ばそうとした所で、不意に一夏の背後から女性の声がした。

それもクソガキ呼ばわりと一夏を罵倒するこの声は、

明らかに自身に対して好意的なものには感じられない。

 

(敵か!?)

 

そう思った一夏は素早く背後を振り返って身構える。

 

 

 

 

 

「い、一夏……」

 

そこには犯人グループの連中……腕を後ろ側に回されガムテープで縛られてる箒と、

女一人と箒にスタンガンを浴びせた男が嫌らしい笑みを浮かべて立っていた。

 

「箒!?」

「おっと、妙な素振りを見せたら分かってんだろうな?」

 

ロングへアの女、オータムが右腕を空に掲げると、

 

 

倉庫の屋上から、1メートル弱はある建物同士の隙間から、

彼女達の一味が武器を抱えて蟻塚から湧き出る兵隊蟻のごとく現れ、

瞬く間に一夏達を包囲、手にしたライフルや軽機関銃の照準を、

立ったまま、片膝をつく、匍匐して銃の二脚で固定する等、

発砲しやすい様々な姿勢で一夏の頭部へと一斉に向ける。

 

「何ッ!?」

 

その数およそ50人以上。 彼自身先程襲ってきた追っ手達でも、

10数人はいた事は身をもって知っているのだが

それらを倒してなお、これだけの数を抱え込んでいたとは、

これには一夏自身も驚きを禁じえなかった。

 

(バスジャックにしちゃぁ豪華過ぎるだろ!!)

 

数もさる事ながら、その全てに銃火器が行き渡っている

この連中のあまりにも充実した装備に、一夏は頭の中で舌打ちする。

 

「よくもまあ散々私達をコケにしてくれたもんだなぁ」

 

睨んだだけで人が殺せそうな鋭い目線で一夏を睨みつけるオータム。

 

「てめぇさえ大人しくしていたなら、今頃は

 政府の連中に犯行声明の一つでも出せた所なんだが、

 おかげで予定が狂っちまった……どうしてくれんだコラぁッ!!!」

 

怒号。

身構えたままの姿勢の一夏の体に、更に緊張が走る。

だがそれはオータムを恐れての事ではなく、興奮した相手が

箒に何かしでかすかも知れないと言った緊張から来るものだ。

 

しかしオータムはそんな一夏の心情を悟ってか、

一夏を鼻で笑い、男に拘束される箒の顎に手をやって軽く持ち上げる。

 

「話は聞いたぜ……この女お前の連れなんだってなぁ?」

「ッ!!」

 

歯を食いしばる一夏、間違いない。

目の前の女は箒をエサに何かをやらかすつもりだ。

無意識の内に握り拳を振るわせ、目先の箒達を見据える。

 

「てめぇに選ばせてやるよ。 この女だけ生かしてやるか、

 または二人仲良くここでくたばるかをな!」

「一夏ッ!! こんな女の言う事なんか真に受ける――」

 

脅し文句を遮って大声で叫ぶ箒に、オータムの肘が箒のみぞおちにめり込んだ。

 

「がっ……がはっ!!」

「人の話ジャマすんじゃねーよこのビッチ!!」

 

そう言って、咳き込む箒に対し唾を顔面に吐きかける。

 

「箒ッ!!!」

 

箒への狼藉に一夏の感情が純粋な怒りで満たされる。

幼馴染にして、久しぶりに会った一夏の理解者を、

この得体の知れない女は一方的に暴力を振るった挙句、

彼女の尊厳を辱めるように顔に唾を吐きかけた。

 

「この野郎……よくも箒をッ!!」

 

自然とこめかみに血管が浮かび上がり、そして切れる。

歯軋りの余り、奥歯の付け根から血が滴り落ちた。

一夏は震える拳を立てて総毛立ち、文字通りの怒髪天へと達する。

 

「ギャハハハハハハハハハハハハハハッ!! こいつマジで切れてやがるッ!」

 

そんな修羅の如く怒りを湛える一夏を嘲笑うオータム。

一夏を包囲する取り巻きもまた同様に一夏を指差し大声で笑う。

怒気で周囲の空気をゆらがしかねない一夏。

 

「そうか、そんなにこの女が大事かぁ。 ……おい!」

 

オータムが箒を拘束する男に目線をやる。

すると男は頷き――

 

 

 

 

どんっ! ……と、

 

 

 

 

 

手を後ろに縛られたままの箒を勢い良く突き飛ばした。

 

「え……?」

 

放心する箒と一夏。

当然、バランスを崩すも足だけでは踏ん張る事も出来ず、

そのまま横向けになりながら箒はコンクリートの地面に倒れこんだ。

 

「箒ッ!!!」

 

突然の出来事に目先のオータムに向けられていた怒りが吹き飛び、

それどころか血の気が引く思いで倒れた箒に駆け寄った。

 

 

 

 

「てめぇら!! 殺っちまえ!!」

 

 

 

一夏が倒れこんだ箒を抱きかかえた瞬間、頃合を

見計らったかのようにオータムは部下達に一夏を射殺するよう指示を出す。

 

直後、さっきまで箒を拘束していた男を含め、

一夏を包囲していた連中が手にしていた武器を一斉に発射した。

 

四方八方から乱射される鉛玉の弾幕、

箒をかばう一夏の周囲に着弾し、コンクリートを破砕し土埃を巻き上げる。

だが一夏は銃弾の雨あられの中箒を決して手放そうとしなければ、

かと言って一目散にも逃げ出さず、瞬く間に一夏の姿は

巻き上がる土埃のカーテンの中へと飲み込まれていった。

 

「ギャハハハハハハハッ!! こいつは傑作だな!!」

 

箒をかばい土埃に埋もれた一夏に対し、下衆な笑い声を上げるオータム。

彼女にはおかしくて堪らなかった。

どっちにせよオータムは、逃亡者である一夏と

自分に口答えする箒はさっさと殺してしまおうと考えていた。

 

「死ねッ!! 死ねッ!! 死んじまえッ!!

 クソガキが喧嘩売るなんざ10年早ぇんだよッ!!」

 

人質をなるべく傷つけないでこの港までつれてきたのは、

先程オータム自身が言ったように、あくまで政府を脅す為の

交渉のカードに過ぎなかった。

なので目的さえ達成できればたかが人質など、大人しくしている分には

鼻にもかけずさっさと解放してやろうと考えていた。

しかしほんの僅かでも自分に歯向かう姿勢を見せるのなら、

見せしめと自身の道楽の為に容赦なく手に掛ける。

そんな残虐とも言える欲求を、オータムは今この場において存分に満喫していた。

 

やがて周囲を取り囲んでいた連中が、各々に支給された銃弾を

撃ちつくしたか、数十秒間絶え間なく続いていた銃の発射音がやんだ。

 

「いい気味だぜ、人質風情が私達に楯突くからだ……ギャハハハハハハハ!!!」

 

既にオータムは生意気な一夏達を排除できたと思っている。

周りも同じ考えなのか、オータムの言い回しに

同意するかのように嫌らしい笑みを浮かべた。

 

そして立ち込める土埃を振り払うかのように潮風が吹く。

 

「さぁて、死体はどうなった?」

 

心底楽しそうに一夏達の死に具合を連想しつつ、

晴れていく土埃の中心部に目を凝らすオータム。

彼女の頭の中では一夏達の物言わぬ死体が

折り重なって転がっている様子が鮮明に浮かび上がっていた。

この土埃のカーテンがいくらか薄まった頃には、

想像した通りの状況になっているだろうとその場にいた全員が思っていた。

 

「……ん?」

 

ふと怪訝な目つきになる隣の男。

うっすらと浮かび上がる一夏達の姿だが、どうも様子がおかしい。

十中八九死んで横たわっているだろうと思っていた一夏達が、

まるで座り込んでいるようなシルエットで浮かび上がってきたのだ。

箒を庇った状態のまま死んだのかと勘ぐる連中であったが、

 

吹き付ける潮風が急に強くなり、灰色の薄暗いカーテンを吹き飛ばした時、

それは強烈な印象となってオータム達の網膜に深く焼きついた。

 

「なっ!?」

 

一夏を包囲していた全員が一斉に驚愕する。

何故なら――――

 

 

 

 

 

土埃の中心部には、コンクリートの抉られた無数の痕跡が直径2mの環状に広がり、

 

そしてその中央部に、『無傷で』立膝を突き箒の肩を寄せるように抱き、

驚愕の色に染まるオータムをじっと見据える一夏の姿があったからだ。

 

「なん……だと……?」

 

思わず本音が漏れるオータム。

余程目先の光景が信じられないでいるのか、

大きく目を見開き開いた口が塞がらなくなっていた。

 

普通全方位からあれだけの弾幕にさらされればまず逃げ場は無い。

仮に防弾効果の高い鎧か何かで身を包んだとしても、

数千発の弾丸で集中砲火を浴びればまず命は無いはずだ。

なのにこちらを見据える一夏は、抱きかかえている箒を含め無傷でそこにいる。

 

(ありえない、何かの間違いじゃあないのか?)

 

この瞬間、オータムは一夏に対して無意識の内に底知れぬ恐怖を

感じており、その証にこめかみには一滴の冷汗が垂れていた。

 

そんな驚愕の色に染まる連中の心情を知ってか、

一夏は握り拳のままの左手をオータムの居る方向に突き出すと、

ゆっくりと手を開いた。

 

 

掌からは、ひしゃげた大小様々な鉛玉が零れ落ちた。

旋状痕が刻まれ、火薬の熱を帯びて変色しているそれは

紛れも無く集団で発砲した弾丸そのものだった。

 

「ッ!!!」

 

今度こそ明確に、背筋が凍りつくような恐怖を感じる犯人グループ。

一夏の手から零れ落ちる弾丸を見た瞬間、彼らは悟ってしまった。

 

奴は弾を避けてはいない、自分達に当たりそうな分だけ素手で掴み取ったのだと。

 

 

完全に硬直してしまった犯人グループを横目に、

一夏は同じく放心している箒の背中と腰に腕を回し抱きかかえる。

所謂『お姫様だっこ』の状態で箒を抱えると、

包囲網の一番手薄な十字路の右のルートめがけ、

 

 

電光石火のごとく疾走した。

 

 

虚を突かれた犯人グループは正気に戻ると、

 

「な、何やってやがるてめえらッ!! あのガキを殺せッ!!」

 

オータムの酷く慌てた叫び声を合図に一斉に射撃する。

しかし突然の出来事に反応しきれず、しかも恐怖の余韻に浸っていた

男達がまともに一夏を狙える筈も無く、

結局一発たりとも命中せず、一歩たりとも足止めできないまま逃がしてしまった。

 

「あんのクソガキがぁ……ッ!!!」

 

全身を震わせ般若のような形相で歯軋りするオータム。

彼女のプライドはズタズタに引き裂かれていた。

余裕の表情で一夏を取り囲み集団リンチさながらの集中砲火を浴びせるも、

その全てを軽くあしらわれ、あまつさえ恐怖さえ与えられてしまった。

このままおめおめと逃げられ、警察に居場所を

知らされてしまえば全てが終わってしまう。

最早形振りは構っていられないと思ったオータムは、

隣にいた部下に大声でこう言った。

 

「打鉄をもってこいッ!!! あのガキは絶対にぶっ殺すッ!!!」

 

 

 

 

 

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「はぁっ! はぁっ!」

 

一夏は再び全力で港を駆け回っていた。 箒を抱えたまま。

いくら女性の体は男性に比べて軽いとは言え、40㎏代の重量は体に響く。

彼女にも自力で走ってもらいたかったが、どう言う訳かさっきから

抱きかかえられたまま放心状態にあった。

何度か声はかけては見たが、微動だにしない。

対して一夏は全身汗だくで意識混濁、休む事無く全力を

出し続けた事により極度の疲労を招いたせいだ。

正直もう心身共に限界であった。 どこかで休息をとらなければ。

 

走りながら考え込んでいた時、一夏の体を黒い影が覆った。

 

そして銃声。

一夏の進路の僅か2m先でコンクリートが弾ける。

思わず一夏は急停止した。

 

まさか敵に追いつかれたか?

だが自分は敵の隙をついた上に、その気になれば

弾丸を回避できる程のスピードで動き回る事ができる。

早々の事で追いつかれる事は無いはずなのに、しかし発砲されたと言う事は

自分は既に敵の射程圏内にいると言う事だ。

 

それに……晴れ模様の空なのに何故自分の頭上に影が?

そんな疑問を抱きつつ、不安げに空を振り返ると。

 

 

「逃がさねぇぜ……!!」

 

 

太陽の照る春先の空を背景に、猛禽類のような鋭い目付きで

獲物である一夏を前に舌なめずりをしながら……

 

 

金属の鎧を着て当たり前のように宙に浮かぶオータムの姿があった。

 

 

流石の一夏も今度ばかりは心が折れそうであった。

顔を青ざめながらも口にした言葉は、

 

「IS……だと?」

 

そう、先程一夏を取り逃がした彼女は形振りを構わなくなり、

とうとう只の……とても強い生身の人間である一夏を追い詰めるのにISを持ち出してきた。

着用している種類は『打鉄』と言う、鎧武者の甲冑をモチーフとした……

しかし胴部は女性の柔らかな身体を包み隠そうともしない形状の、

主に近接戦闘に特化された装備を持つ純日本産の機動兵器であった。

 

だがこのIS、彼女らが盗み出してからある程度手を加えたのか、

ミサイルポッドやIS携行用アサルトライフルなどと言った装備が後付けで

肩部や腰部の側面にストックされていた。

この手の装備はIS特有の機能『量子化』にて、実体化せずに格納されている物なのだが、

この場合に限っては見つけ次第一夏を即抹殺するつもりでいる為、

実体化のタイムラグがかからないようにあらかじめストックホルダに引っ掛けていた。

 

「今度はそれか……一体お前らどこからそんなの仕入れたよ!?」

 

もっとも、そんな細かい事情は一夏にとって知る由も無く関係も無い。

ましてや考えている暇も無かった。

 

「死ねやこのクソガキがああああああああああああああ!!!!」

 

オータムが血走った目で、ミサイルポッドから多数の対人用ミサイルを発射したからだ。

 

「マジかよオイッ!!」

 

ロケット花火さながらのうねりを描くような軌道とスモークを撒き散らしながら、

だがコンピュータ制御されたそれは確実に一夏のいる方向を目指して正確に飛んでくる。

しかもこのミサイル、レーダーや熱源探知と言った判別方式ではなく、

映像と言う判定基準から目標である一夏をロックオンする

『映像識別方式』が採用されている為、チャフやフレアと言った欺瞞装置が殆ど通用しない。

 

「だああああああああああああああああああッ!!!」

 

しかしそれさえも一夏はギリギリの所で回避、

避けた際の勢いで飛び跳ねるかのごとく移動を続ける。

同じ場所に留まればミサイル自体は回避できても、着弾した際の

爆風や飛散物に当たってしまうからだ。

流石の一夏も、ISと言う現代兵器の花形を相手に、

しかもこちらは箒を両手で抱えているハンデを背負っているが為に攻撃手段が無く、

なすすべない一夏は一方的に攻撃を仕掛けられ続けた。

 

……肉眼で自身めがけて飛来するミサイル等を

識別判断出来る時点で十分驚異的なのは言うまでもないが。

 

 

「クソがぁッ!! とっとと死にやがれッ!!」

「やなこった!!」

 

 

ここに来てなお焦りを感じるオータム。

ISを用いても全力で逃げる一夏に決定打を与えられないばかりか、

何よりも一夏が彼女の悪態に言い返せるだけの余力がある。

(実際一夏は限界が近づいているのだが)

いつまでもISを相手に逃げ切れるものじゃないとは

頭では理解しているが、それでも心理的な不安は早々拭い去れるものでない。

 

 

 

執拗に煽り立てるオータムとそれをすんでの所でかわし続ける一夏。

命がけの鬼ごっこを続ける中、3人はある場所にたどり着く。

 

(……あれは!?)

 

全力で逃げる一夏が目にしたその建物は、

第1倉庫以外で唯一外部との連絡手段を持つ『第7倉庫』であった。

ようやく目的地にたどり着けたと喜びたい所であったが、

しかし今の一夏にはバッドタイミングと言わざるをえなかった。

 

(あそこを壊されたら一巻の終わりだ!!)

 

今の興奮したオータムなら、自分が建物の中に避難した所で

壁を壊して入って来るどころか最悪建物ごと自身を抹消しかねない。

しかし今ここで第7倉庫をあきらめた所で、体力的にもうこれ以上逃げ切れない。

この場をどうするか、一夏が意識の混濁する頭で必死に考えた時、

 

 

「おっと、ここから先はいかせねぇぜ!!!」

 

 

背後から一夏を追い立てていたオータムが頭上から一夏を追い越すと、

倉庫の前まで来て反転、一夏の前に立ち塞がった。

予想外の行動に立ち止まる一夏。

 

(どうした!? 何故前に回り込む!?)

 

今の今まで散々一夏を背後から追い回していた相手が、

倉庫を目の前にして進路を阻むと言う行動を取ったのだ。

外部に連絡されて困るだけと言うのなら、

いっそのこと倉庫を破壊してしまえば良いだけだ。

だがそれをせずに、わざわざ回り込んで前方から足止めをすると言う

回りくどい方法を取ったと言う事は……?

 

「一歩でも動いてみな……バラバラのミンチに変えてや――」

「壊れちゃまずい物があるのか?」

 

一夏が呟くと、オータムは表情を引きつらせた。

どうやら図星だったようだ。

 

隠し事の下手な相手に一夏は不敵な笑みを浮かべた。

そして一夏の脳裏に考えが過ぎる。

これはチャンスだと。

 

 

微妙な距離感で一夏を威嚇するオータム。

加熱したアサルトライフルの銃身を向けるその先端には

硝煙と陽炎の揺らぎがあり、攻撃の凄まじさを物語っていた。

 

どっちにしろこのまま棒立ちになった所で相手は自分を撃つだろう。

ならもうやる事は1つしかない。

 

 

一夏は迷う事無く一気に前進する。

持ち弾を全弾撃ち尽くす勢いで一夏に発砲するオータム。

 

すると一夏はこの機を見計らったかのように抱きかかえていた箒を――――

 

 

 

 

上空に放り投げた。

 

 

 

 

「なッ!?」

 

攻撃の手を緩め、引き金から指を離すオータム。

アサルトライフルの連射が途切れてしまう。

無理も無い事だ、彼女にしてみれば今の一夏の行動は

明らかに大切にしているであろう少女を無碍に扱うようなもの。

いきなり低空にいる自分を飛び越す勢いで箒を投げつけるなどと

おおよそ考えられない行動であった。

 

「もらったぁッ!!!」

 

一夏の叫びに我にかえるオータム。

しかし気づいた時には遅かった。

一夏は既に自分の懐近くにまで潜り込んでおり、

最早この距離ではISを装備した事により

生身よりも大型なシルエットにならざるを得ないこの状況で、

超至近距離に持ち込まれては取り回しの面から反撃にうつる事はできない。

ましてや一夏はあれだけの身体能力を誇っている。

 

ひょっとすれば生身で、ISは壊せなくとも

中の人間だけ殺傷できる方法があったのなら――――

 

 

「砕ッ!!!」

 

 

思考をめぐらせていた瞬間、オータムの真下で爆発が起こる。

瞬間、視界はコンクリートを破砕した際の粉塵で覆われる。

 

「クソッ!! 何なんだ!?」

 

視界をさえぎられた事で、反射的に上空に飛び上がるオータム。

それは目くらましをされた状態で一夏に殺される事を警戒した故の行動であった。

だがその直後、上空に飛び上がって一夏と距離を置いた事は

大いなる間違いであったと気づかされた。

 

「……何ぃ?」

 

オータムの下方、今しがた一夏の前方に回りこんで

足止めを図った第7倉庫までの通路。

 

その倉庫まであと5メートル地点にて、一夏は放り投げた箒をキャッチ、

受け取った直後上空に飛び上がったオータムに対し、

 

笑顔で敬礼した後、意気揚々と第7倉庫へと入っていった。

 

 

そう、別に一夏はオータムを殺そうとして狙ったのではなく、

不安に駆られたオータムを驚かして隙を作ろうとしただけである。

そもそもISには搭乗者を守る為の絶対防御と言うシステムがあり、

大概の攻撃は、たとえISが大破するような状況でも、

100%と言うわけではないが搭乗者を生還させる事が可能となっている。

ましてや一夏の体力は限界、逃げるだけで精一杯の状況で

搭乗者だけを殺すなどと器用な真似は考え付くはずも無かった。

 

そう、自身に直接攻撃を仕掛けてくると思ったオータムは、

完全に虚を突かれたのだ。 それもご丁寧に空にまで飛び上がって。

これに関しては一夏自身も予想しなかった、

正に大成功だったと追記しておく。

 

「なめやがって……!!!」

 

沸点が限界を振り切り、ありったけの恨みを込め

一夏が逃げ込んだ倉庫に銃口を向けるオータム。

 

しかしその引き金が引かれることは無かった。

 

「……チッ」

 

舌打ちをして銃を下ろすオータム。

するとオータムはISの周囲にホログラムディスプレイを展開。

宙に浮く半透明の画面に指を触れると、

画面が先程一緒だった部下の顔が映りこむ。

 

「私だ、あのガキ第7倉庫に逃げ込んだ。

 ISの火力じゃ中の『ブツ』が心配だ。 お前らが制圧しろ」

「了解」

 

ディスプレイに映った男が了承の意思を伝えると、

オータムはディスプレイを消去し、呟いた。

 

「あのガキ……中の『アレ』に何かしやがったら只じゃおかねぇ……」

 

 

 

 

 

……………………………………………………………………………………

 

 

 

 

…………………………………………

 

 

 

 

……………………

 

 

 

 

「箒、いいかげんに起きろよ」

 

未だに放心状態のまま、木箱に座り込んでじっとしている箒を、

両手で肩を掴んで身体を前後にゆする一夏。

だが彼女はそれでも動く気配を見せない。

 

(弾幕にさらされたのがよっぽどショックだったんだな)

 

ため息をつく一夏。

このまま彼女が一歩も動かないのでは、流石にこれ以上は

彼女を担いで動き回る余裕も無い。

なんとしてでも起きてもらわなければ困る。

 

(……こうなりゃ)

 

そう思った一夏は、箒の肩を握る手の力を強めると、

 

 

 

ゆっくりと箒の顔に自分の唇を近づけ、

 

 

箒の右の頬に口付け――――――

 

 

 

 

「わあああああああああああああああああああああああああああッ!!!!」

 

しようとした所で箒に突き飛ばされ、盛大に尻餅をついてしまった。

 

「こ、この破廉恥め!! 乙女の頬に、キ……キスをしようなど――――」

 

立ち上がり、真っ赤な顔で息を荒げる箒。

すると彼女は文句を言い掛けた所で周囲を見渡すと、

 

「……どこだここは?」

 

状況を全く把握できていない間抜けな一言。

腰を擦り気の抜けた表情で一夏は呟いた。

 

「呑気なことでいらっしゃる……」

 

 

 

 

 

 

一夏は第7倉庫に至るまでの経緯を箒に話した。

 

「成る程、状況は分かった」

 

箒は頷いた。

今自分達がいる場所は、何らかの理由があってISに乗った女では

ここを建物後と吹き飛ばす事は不可能であるという事。

その為相手は一時的にこちらに攻撃を仕掛けるのは不可能であり、

つかの間ではあるが休息が取れる……

かろうじて首の皮が一枚繋がっている状況だと言うこと。

だがそれも時間の問題、ISで入り込めないなら彼女は再び

部下達を呼び寄せ、生身の人間で制圧させるつもりだろう。

いくら同じく生身で散々暴れまわった一夏とは言え、

追い詰められている状況には変わりが無いので、

もし再び一挙に大群が押し寄せ、更に箒と言う弱みを抱え込んでいる以上

これ以上の追撃には耐えられる自信は無かった。

 

しかし幸いにも、この倉庫には2階に通信設備がある。

それを使って助けをよび、警察が来るまでの間何とか耐え凌げば

まだ自分達が生還できるチャンスはある。

勿論可能性は低いが、絶対に0%等というのはありえない。

ほんの僅かな可能性であっても、例え天文学的な数字でも

チャンスがあるのなら、一夏達はあきらめるつもりなど無かった。

 

「通信設備は2階だったな。 私はそこで連絡を取ってくる」

「わかった、じゃあ俺は1階で何かいいものが無いか探す。

 連絡は手短にな、ブレーカーを落とされたら終わりだ」

「ああ」

 

そう言って箒は2階への階段を登り、

一夏は猛攻に耐え凌ぐ為の準備に取り掛かる。

 

 

 

 

「何かいいものは無いか?」

 

一夏は武器になりそうなものを探していた。

銃は使った事が無いので論外だ。

引き金を引くなら子供でも出来る、だが実際に当てるとなると

話は別だ。 弾丸の弾道特性、風速、銃自体の集弾率、

その他諸々の要素を知っていない限りまともに命中などしないからだ。

だが近接武器やちょっとした火薬の類ならまだ可能性はある。

できれば格闘技や剣道の延長線上などで使える刀剣類、

ナイフしかり、刃物でないにしろトンファーなどの棒状の武器など、

とにかく何でもいいから使える武器が欲しい状況だった。

 

 

そんな時であった。

 

「……なんだこれ?」

 

役に立ちそうな物を物色していた一夏の前に、

彼の身長以上の灰色のコンテナが置かれていたのは。

古びた木箱の類とは異なり、埃も余りついていなければ、

塗装の一つもはげていない比較的新しい合金製のコンテナ。

よく見ると側面部には『倉持技研』と書かれていた。

 

「倉持技研……ISの国産メーカーか」

 

それは先程オータムの身につけていたIS、打鉄の開発元であった。

ISのメーカーのコンテナが何故別でこんな所に

置かれているのか気になるところではあったが、

もしこれがあの打鉄の追加装備か何かならば、

元々近接戦闘に重きを置いたあのISの装備であるなら、

一夏になら何とか扱えるかもしれない。

 

 

一夏は一縷の望みを抱きながら、コンテナの開閉スイッチに手を触れる。

幸いロックはかかっていなかったようだ。

一夏の指の温度をセンサーが感知、全自動でコンテナの扉を

ガスシリンダの圧力が変動する音と、

金属の擦れる音を上げながら左右にゆっくりと開く。

 

 

一夏の目の前に現れたコンテナの中身は、

状況を打破しうる武器を求めていた一夏を驚かせるのに十分な代物であった。

 

「な、なんだこれ……?」

 

そこにあったのは、オータムの身につけていた物とはまた違う、

少なくとも一夏の記憶には全く無い、新しいタイプの機動鎧。

 

「IS……?」

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