のんびり天使は水の中   作:猫犬

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今回、あの人が登場。


TOKYO

「PVが五万再生いった!?」

 

PVが完成してネット上にアップしてから数日が経過し、部室にいると千歌さんが驚いた表情をしていた。千歌さんの声で僕もノートパソコンをのぞき込むと、本当に五万再生を越えていた。

しかしながら、感想欄を見ると、『曲が好き』や『歌詞がいい』などのAqoursに関するものもあるけど、『ランタンが綺麗』とか『夕日でオレンジに染まった海が綺麗』などなど景色やランタンに関する感想も目立った。

一応、街の良さを押し出すつもりだったから、これで良かったとは言えるけど、これはこれで心配かな?Aqoursが隠れちゃってないかな?

そんな心配もあるけど、ちゃんと順位は上昇しており、百位内に入ったことから杞憂かな?

そんなことを考えていると、一通のメールが届いた。

 

「ん?なんだろ?」

 

千歌さんは首を傾げながらメールを開くと、そこにはAqours東京でのライブの招待が書かれていた。

Aqoursが急上昇アイドル一位になったのが今回の招待の理由とのこと。はてさて、どうなることやら?

 

「どうするの?千歌ちゃん?」

「うん。私はこのライブをやりたい!少しでも多くの人に知ってもらうために!」

「そうだね!賛成であります!」

 

梨子さんは千歌さんに聞くと、元気いっぱいにライブ参加したいことを口にし、みんなやる気満々だった。

こうして、Aqoursは参加することになりました。

 

 

「それで、今日はどうしたの?」

「Aqoursが東京のライブに参加することになりましたよ」

「……そっか」

 

放課後の練習終わりに、僕は淡島にある果南さんの家のダイビングショップにやってきた。そして、果南さんにライブのことを話した。理由は、果南さんは皆を心配しているから。だから、何かあれば伝えることにしている。たぶん、千歌さんたちか黒澤先輩たちのどっちかが話すだろうけど。

果南さんは小さく呟くと、二年前を思い出しているような表情をした。

 

「なんとなく、そんな気はしてたんだよね。百位以内に入ったからさ」

「やっぱり、心配ですか?」

「うん、正直ね。でも、逃げた私は千歌たちを止める権利は無いからね」

 

自嘲気味にそう言う果南さん。逃げたってどういうことだろう?あの時は……たしか、ステージに出ても歌わなかったからかな?

 

「僕も正直心配です。でも、皆がやる気に満ちているから、僕は全力でサポートすることにします」

「そっか、じゃぁ、みんなのことよろしくね」

「はい。もちろんです」

「そうだ。沙漓ちゃんには伝えておくね。あの日の真実をさ」

「真実?」

「うん。もちろん、時が来たら……私たちから話すからそれまでは誰にも伝えないでほしいけど」

「わかりました。誰にも言いません」

 

 

~☆~

 

 

「ヨハネ堕天!」

「なんでこうなったんだろ?」

「さぁ?」

 

時は過ぎて東京に行く日。僕は駅前で首を傾げていた。それは、僕だけでなく曜さんも同様で。

 

「止められなかったの?」

「えーと、ヨハネが先に出てまして、後から来たらこれです」

「「はぁー」」

 

僕と曜さんはこの現状にため息をついた。できればもう他人の振りをして過ごしたいです。でも、現実から目を逸らしていても、らちがあかないので気を取り直して、

 

「ヨハネ。正直それはないよ」

「あっ、はっきり言っちゃうんだ……」

「これが我が真の姿!」

 

僕ははっきりと、顔を真っ白に塗り、堕天使衣装を見に纏い、つけ爪をしている、ある種の不審者と化しているヨハネに言った。隣でははっきりと言ったことに曜さんが驚き、ヨハネはマントをバサッと広げてみせた。あー、これ絶対路上パフォーマンスと思われているよね?

 

「善子ちゃん、やらかしちゃってるね」

「やってしまいましたね」

「すっかり堕天使ずら」

 

すると、人込みの最前列で千歌さん、ルーちゃん、マルちゃんがヨハネを見て笑っていた。直後、ヨハネが「ヨハネよ!」と言ったことで人々は驚いて去って行った。

 

「良かった。二人は割とまともな恰好をしていて」

「ん?何かあったんですか?」

 

志満さんにお礼を言って駆けてきた梨子さんは僕と曜さんの格好を見て安堵していた。たぶん、ヨハネは視界に入れないようにしている。

はたして、僕の格好はまともなのだろうか?

T-シャツの上に黒のパーカー、下は膝丈のズボンこれが本日の装備。

 

「これでも普通ですかね?」

 

僕はそう言いながらフードを被ってみる。すると、六人の視線が集まる。

 

「なんで、よりによって猫耳パーカー?」

 

梨子さんはまともだと思っていた僕の格好が実は猫耳パーカーだと判明して困惑していた。皆もそんな感じで反応に困っていた。

うん、知ってた。と言う訳で、フードを降ろす。フードを降ろせばただのパーカーにしか見えないし。

 

「ちょうど洗濯しちゃってて、ちょうど着れるのがこれだけで、まぁいいかな的な?」

「まぁ、いいわ。フードさえ被らなきゃ普通のパーカーだから」

「そう言う訳で、レッツゴー」

「「「「「おー」」」」」

「あっ、ヨハネは早くメイク落として来て!」

 

 

~☆~

 

 

「帰ってきたー、秋葉原」

 

電車に揺られてやっと着いた秋葉原。まぁ、ライブは明日なんだけど。今日は観光が目的。あと、明日移動したら移動疲れがあるかもしれないから。

 

「泊まる場所は沙漓ちゃんが手配してくれたんだよね?」

「はい。宿泊費は無料ですから問題ないです」

「それにしてもすごいね、宿泊費がタダって」

 

梨子さんは僕に今日泊まる場所の確認をしたので、しっかりと準備が出来ていることを伝える。

 

「それで、どうします?荷物置いてから観光しますか?」

「うん、今から行って平気なら」

「了解です。じゃぁ、付いて来て下さい」

 

荷物をどうするか聞くと、荷物を先に置いてしまおうということになり、僕を先頭に歩き出す。目的地は地図を見る必要も無いしね。

そして、目的地までの間を喋りながら歩き、

 

「着きました。ここです」

「ん?ここは旅館とか宿じゃないよね?」

 

たどり着いたのは和風建築の家。みんな宿を想像していたようで、疑問を持った顔をしていた。しかし、ここでいつまでも待っているのもあれなので、鍵を取り出して、ドアを開ける。

 

「えっ?何で鍵持ってるの?」

「ん?家の鍵を持っているのは普通なんじゃ?」

 

あれ?内浦でも鍵はあるよね?田舎だと場所によっては鍵が無い家もあるらしいけど。と言うか、僕とみんなで何か齟齬がある気が?まぁ、いいや。

 

「ただいまー」

 

僕はそう言いながらドアを開けた。

 

「おかえりなさい。沙漓」

「ただいま。お母さん」

「「「ん?」」」

「「「お母さん?」」」

 

すると、奥からお母さんが歩いてきた。そして、皆は疑問顔をし、ようやく僕も理解した。そう言えば、誰もどこに泊まるのかを聞かなかったから、言ってなかったや。

 

「遠くから、ようこそ。沙漓のお友達ね?沙漓の母です」

 

お母さんは丁寧にお辞儀をするとそう言った。

 

『えー!』

 

その言葉でみんな理解したようで、大声を上げて驚いたのだった。まぁ、いきなり家に上げればこうなるか。皆理解に苦しんでいるのか硬直しているので、僕は話を進めることにする。

 

「あっ、そうだ。お土産です」

「あら、わざわざありがとう」

「そう言えばお姉ちゃんは?」

「あの子なら、急用で大学の方に行ってますよ」

「あれ?久しぶりに会えると思ったのに」

「ふふっ、本当にお姉ちゃん大好きね。一応夜には帰ってきますよ。それで、寝る場所だけど――」

 

そんな六人を他所に、内浦で買ってきたお土産を渡しながらお姉ちゃんのことや、寝る場所の確認やら何やらを進める。

 

「とりあえず、みなさんをお通ししなさい」

「はい、わかりました」

 

お母さんはそう言って戻っていき、僕は中に入るように促した。

 

 

~曜~

 

 

まさか、今日泊まる場所が沙漓ちゃんの実家だったとは思わなかったよ。それにしても、沙漓ちゃんの家はなんでこんなに大きいんだろ?道場もあるし。もしや、鞠莉さんみたいにお金持ちの家なのかな?それとも、ルビィちゃんの家みたいに何かの大元なのかな?

 

「そう言えば、沙漓ちゃんの名字って園田だよね?」

「うん、そうだね」

「µ’sの園田海未さんと同じ苗字だよね?」

「ええ。そうね」

「もしかしてなんだけどさ、妹?」

「さぁ?でも、沙漓に姉がいるみたいなことは聞いたことがあるわ」

 

私たちは沙漓ちゃんに通された客間に座っていた。沙漓ちゃんは飲み物を取りに行ったから、この部屋にはいない。だからなのか、千歌ちゃんは急にそんな話を振った。そう言えば、そうだと思うけど、もしそうなら一度として話が出ないことが謎だった。あのµ’sのメンバーが姉なら自慢するものだと思うから。

 

「まぁ、偶然だよね?偶然、園田って名字だっただけだよね?」

「まぁ、そうでしょ?それとも聞いてみる?」

「うん、聞いてみよう!」

「でも、いままで一度として口にしなかったのなら、もしかしたら言えない事情があったのかも」

「その可能性もあるのよね。沙漓って自分のことに関してはあまり言いたがらないし、余計な心配もかけたくないのかも」

 

梨子ちゃんの言葉に善子ちゃんも賛同し、

 

「マルも聞かない方がいいと思うずら。これで、沙漓ちゃんがAqoursを抜ける可能性も……」

「る、ルビィもそう思います。沙漓ちゃんとの仲が気まずくなるのも」

 

花丸ちゃんとルビィちゃんも聞かない方に賛同してしまった。

 

「えー、聞いても変わんないよぉ。曜ちゃんはどう思う?」

「うーん。私は……聞いた方がいいと思うな?仲間なら色々知りたいし、それで関係が崩れるなんて思えないし」

 

私は千歌ちゃんの意見に賛同した。口にした通り、それで関係が崩れるとは思えないから。それに……。

 

「あれ?みんなどうかしたの?」

 

すると、沙漓ちゃんはお盆を持って現れ、この空気に疑問を持った様子だった。まぁ、確かに聞くのか聞かないのかはっきりしていない状態で、沙漓ちゃんが戻って来たからだけど。結局聞くのかな?

 

「うーん。それにしても、お姉ちゃんが今日いないとは……連絡した時はいるって言ってたのに」

「あのさ、沙漓ちゃんのお姉ちゃんって……」

「あっ、ここに来れば流石に気付きますよね。元µ’sのメンバーの園田海未ですよ。まぁ、お姉ちゃんと言っても色々あって従姉(いとこ)なんですけどね」

 

沙漓ちゃんが姉の話をしたから、聞く雰囲気になって千歌ちゃんが聞いてしまった。あれ?でも聞かない方に傾いてたのに聞いちゃったら、さっきの問答は一体?と言うか、従姉って、何か複雑な事情でもあるのかな?それに、昔沙漓ちゃんは内浦にいたみたいだし。

 

「やっぱりそうだったんだ。なんで、いままで言わなかったの?もしかして言いたくなかった?」

「はい?……ああ。それは聞かれなかったから?それに、お姉ちゃんはお姉ちゃんですし」

 

沙漓ちゃんはいつもの調子でそう言い、別段深い事情は無さそうだった。聞かれなかったから言わなかったんだ。

 

「学校でそういった話をしないのは、お姉ちゃんに会ってみたいとか言われるのを避けるためですかね?Aqoursの皆はそう言うことを言わないと思うけど、お姉ちゃん、結構人見知りをするので」

「そうだったんだ」

「そう言う訳ですから、この話は終わりにして観光に行きましょう?行きたい場所に行けなくなりますよ?」

 

沙漓ちゃんはこれ以上聞かれたくないのか、話を逸らす。やっぱり、何か言わなかった本当の理由があるのかな?

 

 

~☆~

 

 

「みんな、どこ行ったのー」

「なんか予想していた通りになりましたね」

「沙漓ちゃんも途中、何処かに消えたわよね?」

 

僕は千歌さん、梨子さんと共にスクールアイドルショップの前で立っていた。マルちゃんとルーちゃんは迷子、曜さんは制服専門店、ヨハネは堕天使ショップに行ってしまった。

ちなみに、僕は途中で梨子さんが言った通り一度離れていた。理由は……。

 

「あっ、いたー」

 

すると、千歌さんと電話でやり取りしていたマルちゃんとルーちゃんが通りの向こうからかけてきた。これで、あとは二人。そう考えながら辺りを見回していると、とある看板が目に入る。“女性同人誌専門店”あれ?こんなお店、ここに居た頃無かったような?気になる……。

 

「まだ来なそうなので、ちょっとお店見て来ますね」

「えー、沙漓ちゃんまでー」

「来たら連絡して下さい。三十秒で戻って来るので」

 

僕はその場を離れて、お店に入った。興味には勝てませぬ。中に入ると、本当に同人誌がたくさん置いてあった。壁ドン、壁クイ、顎クイなどなど。うーん、普通の百合物はないのかなぁ?そんなことを考えながら奥に進む。あっ、百合物……でもイラストがなー。こう、ピーンと来るものは……

 

「えっ!?沙漓ちゃん?」

「ん?梨子さん?あれ、もうヨハネと曜さん来ました?」

 

百合物を探していたら、後ろから梨子さんに声を掛けられた。連絡してと言ったけど、まさか直接来るとは。

しかし、僕の予想は違ったようだった。

 

「いや、二人はまだだけど……なんでここに?」

「んと、興味本位?それで、梨子さんはどうしたんですか?」

「なんで疑問に疑問で返すの?私は……」

「まぁ、呼びに来たわけでないのなら、用事はここですよね」

 

二人が来たわけではないということは僕を呼びに来たと言う訳ではないみたいなので、壁に置いてある同人誌に目を向ける。梨子さんにはそれだけで伝わったみたいだった。

 

「ふっ、ばれてしまったものは仕方ない。ばらしたいならばらしなさい!」

「なんで、犯人の告発現場みたいになってるんですか?別にバカにはしませんし、言うつもりもないですよ?」

「えっ?そうなの?でも、趣味がこれだって知ったら普通引くんじゃ?」

「いえ、趣味は趣味ですし、人それぞれですよ。では、僕は奥のフロアへー」

 

梨子さんは皆にばれることを恐れていたけど、別にばらす気もないからねー。さてさて、百合物ー。

そして、数分後。

 

「あっ、千歌さんから連絡が」

 

千歌さんからの連絡でお店の出口に向かうと、梨子さんも同様の連絡があったようではち合わせる。

 

「梨子さん、隠したいなら鞄に入れた方がいいですよ」

「あ、そうだね」

 

梨子さんは何か買ったようでお店の袋を持っていたので、そう言うと、ハッとして肩にかけていた鞄にしまう。

 

「ほんとに三十秒かからずに戻って来た」

 

皆のもとに戻ってきたら、千歌さんに驚かれた。ヨハネと何故か巫女服を着た曜さんもちゃんといた。

 

「あっ、沙漓ちゃん先に戻ってたんだね」

「あっ、沙漓先に戻っていたのね」

「「ん?」」

「「「あれ?」」」

「ふぇ?」

 

ヨハネと曜さんが同時に僕に向けてそう言ったことで謎の空気になる。

 

「いや、さっき堕天使ショップに言ったら沙漓がいたのよ」

「いや、私が制服専門店に行ったら、後から現れたよ」

「えーと、どういうこと?」

 

そうして、僕に視線が集まる。何かおかしいことあったかな?別にすぐそばにあるんだから行くことは可能だよね?

 

「確かに、二人とも会いましたけど?」

「いや、沙漓ちゃんは何やってるの!?なんで堕天使ショップ行って、制服専門店行ってるの?」

「ん?衣装の参考に?」

 

どうやら、堕天使衣装と制服と全く違うものを見に行っていたから謎だったようだった。そんなにおかしいかな?

 

「さらには、さっき入ったお店ってここだよね!」

 

さらに、千歌さんは“女性同人誌専門店”の看板を指差す。やっぱり、ここに入って行ったってばれたか。

 

「そうですけど?」

「沙漓ちゃんはあれなの?女の子が好きなの?レズってやつなの?」(ガタッ)

「いえ、別に女の子は好きですけど、レズってほどではないですよ。百合は好きですけど。ダイスキだったら大丈夫ですよね!」

「歌ったけど……というか別にレズでも気にしな……いや、少し考えなきゃだけど」

「だから、レズじゃないですよ。僕の基準は女子同士のイチャイチャが百合で、ガチになったらレズという判断ですので」

「もしかして、私たちのことをそんな目で……」

「いえ、ほんわかした気持ちにしか」

「というか、お店の前でこの会話平気なの?」

「「あっ」」

 

僕と千歌さんの口論?はヨハネの一言で終幕した。と言うか、なんだろこの会話。あと、梨子さんは反応しないでください。ばれますよ。

 

「まぁ、この話は保留にして」

「保留にするんだ」

「とりあえず、神社に行こう」

 

一旦?この話が保留になり、こうして?神田明神に行くことになりました。保留ってことは後で聞かれるのかな?

 

 

~花~

 

 

なんがかんだで神田明神に着いたずら。相変わらず、曜さんは巫女服のままだけど。神田明神の前の階段まで来ると、そこで立ち止まり、マルたちはそこからの景色を眺めた。

 

「ここがµ’sが練習していた階段。よし!いこー」

 

そして、千歌さんはそう言って走り出し、マルたちも走って追いかける。その際にあまり走れない沙漓ちゃんは歩いて登っていた。階段を登り切ると、境内の前で二人組の女の子が歌っていました。綺麗な声ずらー。

歌い終わると振り返る。

 

「こんにちは。あなたたち、もしかして、Aqoursのみなさんですか?」

「はい、そうです」

「あっ、もしかして、明日のイベントに?」

「そうですけど……」

 

少女の一人がマルたちのことを知っている様子で、千歌さんはいつものテンションと違い落ち着いた様子で返答をしていた。たぶん、相手の正体がよくわからないからずら?

 

「そうですか。行くよ」

「……」

 

もう一人の子にそう言うと頷いて歩き出し、もう一人の子はいきなり走り出して跳躍した。マルたちよりも高い位置を飛んでた。わぁー、東京の子はこんなこともできるずらかー。

 

「では」

「……」

 

そう言って去って行った。結局あの人たちは?それに一言もしゃべらなかったずら。すると、遅れて沙漓ちゃんがたどり着き、あの子たちを見ていた。

 

「すごいです」

「東京の女子高生はこんな感じずら?」

「あったりまえよ!東京よ!」

「ん?Saint Snowさんと何話してたんですか?」

「Saint Snow?」

 

マルたちが驚いていると、沙漓ちゃんは首を傾げながらそう聞いた。Saint Snowってなんずら?

 

「さっきの二人組のことですよ。同じスクールアイドルの……たしか、北海道でしたかね?」

「え?スクールアイドル?北海道?」

「東京の人じゃなかったんだ」

 

 

~☆~

 

 

夜。僕の家に戻り、お母さんの料理を久しぶりに食べ、お母さんに色々聞かれた。机をくっつけてAqoursの皆と一緒に食べたから、質問は皆にも飛ばされた。うぅ、あんまり変な質問はしないでよぉ。

そして、順番にお風呂に入り、今は客室に。僕の部屋は色々あるし、皆が寝られるスペースもないから、仕方ない。

神社で明日の祈願をした後家に帰ってきたら、お姉ちゃんは大学の用事からそれの影響で今日は帰ってこないとのことだった。というか穂乃果さんの家に泊まるとかで僕たちが帰って来る前に一度帰って来て荷物を持って行ったらしいし。お父さんもなんでも昔の知り合いがうんぬんかんぬんでいなかった。

 

「それで、沙漓ちゃんはレズなの?百合なの?今なら、私以外はいないから問題ないわ」

「あれ?また掘り返すんですか?あと、仲間みたいな目で見ないでください」

 

千歌さんと曜さんは探検とか言って何処かに行き、ルーちゃんたち三人は今現在、お風呂。その為、部屋には梨子さんと僕。なんでこうなった?

 

「さっきも言った通り、百合好きなだけで、そっちの気は無いですよ。あと、二次創作が好きなだけで、現実は現実です」

「そうだよね。よかった。これで現実でもそうだったら……」

「ところで、梨子さんはどうなんですか?」

「ん?私?私もそんな感じかな?別に現実の女の子に恋しているわけではないよ」

 

梨子さんも僕と同じような感じで、僕もよかったと思う。これで、梨子さんにそっちの気があったらどうしようと思う。別にそっちの気があっても気にしないけども。

 

「それで、沙漓ちゃんはどういうタイプの同人誌を集めているの?」

「そっちの気が無いのがわかって急にグイグイ来ましたね。僕は百合物ですかね?まぁ、どっちかと言えば、絵のタッチで決めてるんですけど」

「そうなんだ」

 

そこから、なんだか同じ趣味の人と出会えたからか、梨子さんと色々喋っていた。梨子さんは壁ドンとか壁クイとかが好きみたいだった。でも、僕は絵のタッチで選ぶからそこまでジャンルに決め手がある訳では無かった。

 

「そうなんだー」

「だねー」

「千歌ちゃん、曜ちゃん……いつからいたの?」

 

すると、いつの間にか千歌さんと曜さんが戻って来ていた。梨子さんは全く気付かなかったからか、驚いていた。たぶん、趣味が知られたことを心配しているようだった。でも……

 

「まさか、二人がそんなに絵が好きだったんだ」

「確かに、梨子ちゃんは趣味に絵画って書いているしね」

 

千歌さんたちが現れる頃には絵の方面の話をしていたから、たぶんばれていないと思ったら、本当に知られていないようだった。現物を出していたら危なかったけど。二人とも梨子さんのプロフィールに絵画を書いているから、そう思っているようだった。だからか、安堵の表情をしていた。

 

「ふぅ、温かかったー」

「ずらー」

「よはー」

 

すると、三人もお風呂から上がって戻って来た。よはーってなんだろ?

 

「そうだ!近くに音ノ木坂があるんだよね?」

「はい。そうですけど?」

「今から行ってみない?」

「えっ?」

 

千歌さんは何の脈絡もなく、音ノ木坂に行きたいと言い出した。しかも今からって。もう夜ですよ。お風呂入ったんですよ。それと、梨子さんの様子がおかしいです。

 

「今から行くの?」

「うん」

「でも、夜の東京は危険なんじゃ?」

「えっ?夜の東京は何か出るの?」

「と言うか、今の時間は閉まってますし、出かけないでここで休みません?ちゃんと休養を取らないと、明日に響きますよ?」

 

なんだか梨子さんは行きたく無さそうだし、ルーちゃんたちもあんまり夜の東京にいいイメージを持って無さそうだから、そう言ってみる。実際、明日は本番だしね。

千歌さんは僕の言葉で行くのを諦めてくれて、こうして今日は寝ることになった。

 

 

~☆~

 

 

「ヨハネは前ですぎ、ルーちゃんとマルちゃんはもっと身体を大きく動かして、千歌さんはちょっと遅れ気味です」

 

秋葉のイベント当日。Aqoursは二番目の登壇で、今は屋上の邪魔にならないところで今日のライブの最終確認中。周りの空気に呑まれているのか、緊張しているようで動きがいつもより硬かった。曜さんと梨子さんは飛び込みとかコンクールでこういう場所になれているから安定しているし、ヨハネはあんまり緊張しない質なのか動きは固くなかった。まぁ、逆の方向であれだけど。

一通り通すとそろそろ準備をする時間になったので、皆は控室に向かう。

 

「じゃ、また後でねー」

「はい。頑張ってください!僕はこれがあるから客席で見てますから」

「うん」

 

僕はこのイベントのチケットを取り出して見せると、皆は頷いた。出場するスクールアイドルが決定する前から買っていたチケット。正直、Aqoursが出なくても一人でこっちに戻ってくるつもりではあったのだけど。そして、このチケットには昨日ヨハネに落書きと言うかサインを書かれてしまって、端っこにヨハネのマークが書かれている。

そして、

 

「うわっ……あっ」

 

唐突に吹いた風でチケットが空彼方へ飛んで行った。皆も、目の前で起きた不幸に可愛そうな視線を向ける。

 

「いえ、もう中に入ったから無くなっても問題は無いですよ」

「そうなの?」

「はい。だから、行ってもらって平気ですよ」

「うん、行って来るね」

 

僕はそう言って、皆を送り出した。

まぁ、出来ればチケットは取っておきたかったけど。と言うか、一つ困った。皆は知らないみたいだったから言わなかったけど。

 

「あら、沙漓じゃない」

 

僕はとりあえず客席に向かって歩いていたら途中で髪を下ろしてサングラスをした女性に話しかけられた。誰?僕の名前を知ってるみたいだけど。

誰かわからず困惑していると、それを察したのか、サングラスを少しずらして顔を見せた。

 

「久しぶりね。というか、今年も来たんだ。今は静岡だっけ?」

「あっ、にこさん。お久しぶりです」

 

高校を卒業した後、アイドルになる為にそういった養成所に入り、本格的にアイドルになったにこさんがそこにいた。テレビでもときどき見かけるけど。お姉ちゃんからの関わりで面識がある程度だけど、お姉ちゃんが高校生の頃によく会っていたから、顔はちゃんと覚えられていた。それに、毎年、このイベントにも来てたから会ってたし。

 

「にこさんも客としてですか?」

「いや、今日はアイドルとしてね。と言っても関係者席の方で見る感じなんだけど。今年は花陽も忙しくて来れないみたいだしね」

「そうなんですか。あっ、そうだ。早く行かないと」

「そうね」

 

もう入場が始まっているので僕はにこさんにそう言って後にしようとした。すると、にこさんは何か思い出したのか肩を震わせると、僕に声を掛けた。

 

「そういえば、今年はちゃんと投票するの?」

「今年はさっき風に飛ばされましたよ」

「……そう」




という訳で、にこ登場。と言っても、ちょっとだけど。それに、Aqoursとの絡みもないし。

予定では明日も投稿します。何事もなければ。
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