のんびり天使は水の中   作:猫犬

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思い付いたので、差し込み投稿です。未熟DREAMERの翌日のお話です。


夏祭り

「おー、みんな浴衣似合ってるね」

 

昨日の夏祭り一日目で皆に根掘り葉掘り聞かれて、説明するのにだいぶ時間がかかってしまった。といっても、案外あっさりと説明することができたから十分くらいしか経っていないのだけど。その後に夏祭りを楽しもうと思ったんだけど、時間が時間なだけに中途半端になるからと、遊ぶのは二日目に移された。なんでも二日目にはがっつり花火大会をやるだとか。

そんな訳で、夕方近くまで練習をして、その後から夏祭りに行くことになった。ライブをやった昨日の今日だから休みという案もあったんだけど、練習をしてもっといい物にしたいということでそうなった。みんなもやる気満々だったからね。

そして、練習が終わり、いざ夏祭りにと思ったらダイヤさんから提案されて、ダイヤさんの家に行き、冒頭のセリフに至る。

どうせ夏祭りなら、みんな浴衣を着ようということで、着物関係がたくさんあるダイヤさんの家で借りることになった。千歌さんはミカン色、梨子さんは桜色、曜さんは水色、果南さんは青緑、ダイヤさんは赤、鞠莉さんは紫、ルーちゃんはピンク、マルちゃんは黄色、ヨハネは白と、みんなそれぞれメンバーカラーの浴衣に袖を通し、瞬く間に着飾られた。

ちなみに僕は……

 

「そう言う沙漓ちゃんも黒の浴衣似合ってるよ」

 

黒系色の浴衣を着せられていた。本当は昨日みたいにパーカーとかのラフな格好でよかったんだけど、みんなが浴衣を着たことで、僕も着ないといけない雰囲気になってしまった。

 

「うーん。こういうのあまり着ないから落ち着かない」

「そうなの?沙漓の家的には着る機会ありそうだけど。というか、一人で着てたり、皆の着替えを手伝ったりしてたから、着慣れてるでしょ?」

「まぁ……昔は稽古で着せられてたし……」

「稽古?」

 

僕がそう言うと、首を傾げられてしまった。そんなに変なことかな?ダイヤさんだってそういうのやってるわけだろうし。

 

「書道や茶道、華道などなど色々ありましたねー」

「もしかして、沙漓ちゃんってダイヤさんみたいにお嬢様だったの?」

「まぁ、中学になる頃にはほとんどやめましたけど。剣道とか柔道系は元からダメでしたし」

「やめたんかい!」

 

残念ながらああいうのは僕には向いてなかった。華道をやればごくごく普通の物、茶道をやれば足が痺れ、書道をやれば墨が飛んだ。そういう訳で、まともに続いたものの方が少なかった。

そうしているうちに、そろそろ夏祭りの会場に行こうということになり、僕たちは会場の沼津に向かったのだった。

 

 

~果~

 

「さて、来て早々どうしてこうなったんだろ?」

「この人の多さならね」

「そんなこともあると思う」

 

会場に着いて数十分。最初は十人で回っていたんだけど、気づけば皆とはぐれ、曜とルビィちゃんの三人になっていた。どうしてこうなったのやら?そんなことを思うと、二人は二人であわてず騒がず冷静だった。

 

「とりあえず、皆に連絡しよっか」

「だね」

 

曜はスマホを取り出すと、グループチャットで連絡を取る。

私たちはそれをのぞき込むと、瞬く間に皆の反応が返ってきた。どうやら、千歌と花丸ちゃんと鞠莉、梨子ちゃんと善子ちゃんとダイヤの二組に別れているようだった。

 

「あれ?沙漓ちゃんは?連絡付かないけど」

「うん。みんなの方にもいないみたいだし、沙漓ちゃんは一人はぐれた感じみたいだね」

「そして、チャットを見ている様子もないと」

 

みんなと連絡が付く中、何故か沙漓ちゃんだけは連絡が付かず行方を眩ませていた。はて、どこに行っちゃったんだろ?

 

「果南ちゃん、ルビィちゃん。集合してもこの人混みじゃすぐにはぐれるから三十分後に何処かに集合しないかだって」

 

すると、皆と連絡を取っていた曜が向こうでそんな案が出たようで私たちに伝える。確かに、集合してもすぐにはぐれちゃうか。

 

「私はそれで賛成かな」

「うん。私もそれで」

 

その案が無難だと思ったから賛同すると、曜はそのことを伝え、三十分後に狩野川の河川敷に集合となった。河川敷だと範囲が広いけど、それは集合時間が近づいてから人の少ない場所を探しながらになりそうだけど。また、その際にみんなで屋台の物を食べようということで、集合までに何かしら買って持ち寄ることにもなった。

そして、行方を眩ませた沙漓ちゃんは見かけたら伝えるということになった。連絡がつけば一番だったんだけど。

そう言う訳で、しばらくは私たち三人で行動することになったのだった。

 

「それで、何からやる?」

「うーん。食べ物系はもう少し時間が経ってからじゃないと冷めちゃうよね」

「だよね。そうなると遊びません?」

 

どこ行こうかということになり、私は特にこれといった希望が無かったから二人に聞いてみた。そもそも、私はそんなにはっちゃけるキャラじゃないしね。

それと、気になることが。

 

「そうだね。あと、ルビィちゃんはそんなに固くならないでリラックスしなよ」

「うんうん。私たちが年上だからってそんなにかしこまらなくても」

「でも……」

「と言う訳で、レッツゴー」

「脈絡ないね」

 

ルビィちゃんはなんでか私たちに対して萎縮してしまっていた。そんなルビィちゃんに対して曜は流れを無視してルビィちゃんの手を引いて歩き出す。私はそれについて行く。行き先が決まってないけど。

 

「と言う訳で、まずは金魚すくいからかな?」

「私こういうの苦手かも」

「私もどうも苦手なんだよね。ヨーヨー釣りは平気なんだけど」

「金魚は動くもんね?でも、こう、サッとやれば」

「果南ちゃん、それよくわからないよ」

「まぁ、やろう」

 

金魚すくいの屋台が目に入ったから立ち寄ってみると、早速金魚すくいをしてみる。二人も金魚すくいが苦手みたいだから、ここは年長者の私が率先してやった方がいいのかな?流れを作らないと。

私はお金を払ってポイを受け取ると、早速やってみる。

水に浸かる時間が長いとすぐに破けちゃうから、その辺に気を付けて。

 

「よっと」

「「あっ」」

 

私は金魚の真下にポイを通してサッと上げると、一度は上まで上がったけど途中で金魚が暴れたことで破れてゲットには至らなかった。

ちなみにだけど、私も金魚すくいは苦手。こういうのは元から苦手だし。

それから、二人もやってみたけど結果はゲットならずだった。

 

「うーん。やっぱり難しいよね」

「だね」

「あれ?果南さんは平気っぽくなかった?」

「うんうん」

「私がああいうの苦手なのは二人とも知ってるでしょ。もっと、身体全体を使う奴じゃないと」

 

金魚すくいの屋台を後にした私たちは続いての屋台へ移動していた。なんでも曜が行きたい場所があるだとか。

そういう訳で、続いての屋台は射的だった。そう言えば、曜って中学の時もやたらと射的をやってたっけ?

 

「くっ。嬢ちゃん、うまいねー」

「いえいえ。あっ、もう一回」

「君、景品を全て持って行く気かい?」

「じゃぁ、最後に大きいのをもらってきますね」

 

射的の屋台ではやたらとうまい人がいるようで、なんでか賑わっていた。その子の声は女の子の声で、何処かで聞いたことのある声だった。私たちは人混みをかき分けて、見える位置に行くとそこには、行方を眩ませていた沙漓ちゃんがおり、その足元には射的で取ったとおぼしき景品が袋詰めされていた。

景品を取りまくっている沙漓ちゃんは最後にそう言った。沙漓ちゃんの言っているのは大型のゲーム機のようで、あれは普通にやったら取れないんじゃ?まだ、その下のぬいぐるみなら取れそうだけど。

 

「ふっ、あれはそう簡単には取れないよ」

「そうかな?」

 

沙漓ちゃんはそう言うと銃を手に持ち、狙いを定める。そして、放たれた弾は見事にぬいぐるみに……て、そっちだったの?当たったぬいぐるみはぐらつき、即座に沙漓ちゃんはもう一発弾を込めると、一番傾いたタイミングでもう一度ぬいぐるみを撃って机から落とした。

その瞬間、それを見ていたお客さんたちは拍手をしていた。

 

「おじさん、取れましたよ」

「あー、うん」

 

沙漓ちゃんは手に入れた特大うちっち―のぬいぐるみを受け取ると、笑顔でそう言い、おじさんは何とも言えない表情をしていた。たぶん、おじさんもゲーム機狙いだと思ってたんだろうなー。

 

「あっ、みんな。みんなも射的?」

「うん。やりに来たら沙漓ちゃんがいたけどね。というか、連絡付かなくて心配したんだよ?」

「あれ?その割にはあっさりと後で集合に切り替えてたような?」

「見てたの?」

「いえ、最後の更新から数分した位に。一応、了解した旨を伝えておきましたよ」

「あっ、ほんとだ」

 

沙漓ちゃんに言われて確認したら、確かにそうなっていた。というか、沙漓ちゃん結構自由だなー。

 

「それで三人はやらないんですか?」

「あ、うん。やろうか」

「おや、次は嬢ちゃんかい?うちの射的は難しいよ」

「……」

「そこの嬢ちゃんがうまかっただけだよ」

 

私たちもやろうということで、屋台の前に立つ。射的の前に集まっていた人たちは沙漓ちゃんのを見ていただけのようで、すぐに散っていったから、あっさりとできそう。その際におじさんがそんなことを言ったけど、その前をすたすたと景品を持って沙漓ちゃんが移動したことで、なんとも言えない空気になる。

そんな中、曜は気にせずお金を置いて銃を握り、二人できるみたいだからルビィちゃんもやってみる。

 

「果南さん、どうみます」

「二人ともなんとかなるんじゃないの?沙漓ちゃんのそれを見たらね」

「ふむ」

 

最初からやる気満々の曜が早速一発撃つ。その弾は景品の右に飛んで行った。曜は悔しそうにすると、もう一発装填する。その間にルビィちゃんも曜のを意識してか少し左寄りに撃つと、ルビィちゃんの方は比較的まっすぐ飛ぶのか景品の左を通り抜けていった。

 

「うゅ、難しい……」

「これは初見じゃ取れないよね」

「沙漓ちゃんは何円つぎ込んだの?」

「五百円ですよ」

「あれ?でも、その中には八個あるよね?」

 

沙漓ちゃんは七個の小さめの景品の入った袋とうちっちーのぬいぐるみを持っていることから、ほとんど当てたことになる。

最初の一発で弾道を確認してから全弾ヒットさせて、最後だけ二発消費してぬいぐるみをゲットしたってこと?そうなると、そうとうな命中精度だけど。

曜とルビィちゃんとおじさんは私たちの会話を聞いて、何とも言えない表情をしていた。おじさんはたぶん、あれだけ景品を持っていかれると思ってなかったと思う。

 

「せめて、一個は取りたいね」

「うん。せめて、一個くらいは」

 

二人はゲーム機などに高望みせず、取りやすそうなお菓子の箱を狙う。無難な選択であり、曜は銃を撃つ。弾は一直線に景品に飛んで行き、箱を弾いて机から落とす。

 

「よしっ!」

「おぉ」

「おめでと、曜」

 

曜さんはガッツポーズをすると、景品が渡され、ルビィちゃんも撃とうと銃を構える。その間に私は曜の使っていた銃を受け取り、お金を置いて弾を込める。

 

「ルーちゃん、机に左手を乗せて、右手をピンと伸ばして」

「うん」

「そして、景品の前に持って行って」

「えーと」

 

取れる気がしなくて、ルビィちゃんがびくびくしながら銃を構えたことで、沙漓ちゃんが景品を取れそうないい方法を教え始めた。でも、だんだん雲行きが怪しくなって行く。

 

「そして、躊躇うこと無く撃つ」

「これありなの?」

 

沙漓ちゃんの教えた姿勢は銃の先端から景品までの距離が普通よりも近く、ずるくないのか心配だった。でも、おじさんは何も言わなかったからたぶん平気なようだった。

そんなわけでその距離から弾を撃つと、お菓子に当たってゲットとなった。私も撃つと、あっさりとお菓子が落ちた。まぁ、一応曜がやってるのを見てたからね。

 

「やった!沙漓ちゃんの……あれ?沙漓ちゃんは?」

「え?……消えた?」

「今さっきまでいたよね……」

 

ルビィちゃんが喜んで、沙漓ちゃんにお礼を言おうと振り返ると、何故か沙漓ちゃんの姿が忽然と消えていた。曜も私もそばにいるモノだと思っていたのに。

 

 

~花~

 

 

「みんな何処かに消えたわね」

「うん。どこ行っちゃったんだろ?」

「うーん」

 

マルはみんなとはぐれ、今現在千歌ちゃん、鞠莉ちゃんと一緒に居た。しかし、皆に文句を言えるわけがなかった。

 

「ミスったわね。まさか、リンゴ飴を買おうと離れたら気づかれずにどんどん進むとは」

「むぅ。鞠莉ちゃん、ミカン飴に罪はないよ」

「そうずら。マルたちがちゃんと言ってから離れればよかったわけだし」

 

マルたち三人は目に付いたリンゴ飴の屋台に突撃したことで、はぐれてしまった。だから、誰も悪くない。マルたちが何も言わずに離れたのが原因だし。

 

「とりあえず、チャットで連絡を取りましょうか」

 

鞠莉ちゃんが言いながらスマホのグループチャットを開くと、どうやら三人ずつで固まっているみたいだった。沙漓ちゃんは行方を眩ませただとか。

 

「うーん。このままだと集まってもすぐはぐれそうだし集合場所決めない?」

「いいわね、それ。花丸もそれでいい?」

「うん。マルも賛成ずら」

 

千歌ちゃんの出した案にマルたちは賛成すると、早速皆にも伝え、皆も賛成してくれてマルたちは自由行動になった。

 

「さて、まずはどれからやろうかしら?」

「うーん。とりあえず、これをなんとかしないとかな?」

 

行き先を決めようと思ったけど、千歌ちゃんが言った通り、まずは買ったリンゴ飴(千歌ちゃんはミカン飴)を食べることにする。持った状態じゃ歩きづらいもんね。

そう言う訳で、端っこによって食べながら行き先を考える。

 

「私は何か食べたーい」

「マルも!」

「後でみんなと食べるからほどほどにね。まぁ、食べ歩きね」

 

そして、あっさりと方針が決まりマルたちは食べ歩きをすることになった。

一件目でたこ焼きを買う。やっぱり、お祭りだとこれは外せないずら。

 

「ほふっ、ほふっ」

「熱い……けど、おいしい」

「そうね。次は……」

 

たこ焼きは熱々だけど、いい焼き加減だから美味しかった。マルたちは食べながら続いての店を探し始める。たこ焼き、焼きそば、綿あめなどなどおいしそうなものがいっぱいあると迷うなぁ。

 

「二人とも、あれやってみない?」

 

次の屋台を探している中、千歌ちゃんは興味のある屋台があったのか指差した。そこにあるのは、

 

「特盛焼きそば?十分で食べ切れば無料?」

「写真だとすごい量ね」

 

何故か大食いチャレンジをしている屋台だった。お祭りのノリでやってるのかな?しかし、その屋台は閑古鳥が鳴いていた。間違いなくお祭りでこの量を食べようという人はいないよね。

そんな中で千歌ちゃんが言った訳だけど。

 

「ちかっちはそんなに食べられるの?」

「うーん。行ける気がするんだけど」

「さっき挑んだ人が完食できてませんでしたねー(もぐもぐ)」

「うわっ」

 

鞠莉ちゃんが本当に食べきれるのか心配する中、いつの間にか沙漓ちゃんが隣にいた。マルが驚きの声を漏らし、二人も驚いていた。

いつの間に現れたのか分からない沙漓ちゃんは景品の入った袋を手に下げ、どうやっているのか帯にはうちっちーのぬいぐるみが顔を出していた。そして、普通サイズの焼きそばを食べており、どうやらあの屋台で売っていた物のようだった。それと、話を聞く限り、特盛に挑戦しない方がよさそうだった。あと、沙漓ちゃんは沙漓ちゃんで楽しんでたのかな?

 

「て、沙漓ちゃん今までどこ行ってたの?」

「いやー、人の波に流されて。で、皆それぞれ行動を始めたから気ままにフラフラしてました」

「合流しない辺り、マイペースね」

「いえいえ、どうせすぐにはぐれるんですから」

 

沙漓ちゃんはのんびりとした調子でそう言った。人混みに流されてたんだ。

 

「沙漓ちゃんは今まで何やってたの?」

「つい数分前まで果南さんたちと会ったんですけど、人混みに呑まれちゃいまして、仕方がないからまたフラフラしようかなぁって感じで今に至ってますよ」

「果南たちの元に戻らないの?」

「残念ながら、人の波が険しくて無理でした。だから、集合時間までふらふらーと。それで、特盛焼きそばにチャレンジするんですか?」

「ううん。普通のにしておこうかな?」

 

結局千歌ちゃんは特盛ではなく普通の焼きそばを買いに行った。鞠莉ちゃんもついて行っちゃって、マルも焼きそばが食べたいから追いかける。その際に沙漓ちゃんは人通りの若干少なめの方に寄って行き、焼きそばを食べていた。人通りが多いからねぇ。でも、あそこで平気なのかな?

マルは心配しながらも、流石に無いと思いながら二人と一緒に焼きそばを買う。

 

「おまちどうさま」

「どうもー」

 

マルたちは普通サイズの焼きそばを買うと、屋台を離れて沙漓ちゃんが邪魔にならないように寄った場所に行き、

 

「予感はあったずら」

「ええ。果南たちと離れたって言ったからもしかしたらとは思ったけど」

「沙漓ちゃん、また消えたねぇ」

 

沙漓ちゃんの姿はそこには無かった。代わりに、人の波はさっきよりも大きくなっていた。まぁ、そう言う訳で、沙漓ちゃんはまた人の波に呑まれたのかな?

でも、沙漓ちゃんの事だからまたふらーと戻ってきそうだから、誰も気にすること無くマルたちはお祭りを楽しむことにしたずら。

 

 

~梨~

 

 

「みなさん、何処に消えたのでしょうか?」

「さぁ?こんなに人がいればはぐれる可能性は高かったけど」

「千歌ちゃんたちは食べ物に釣られて消えてそうだけど。とりあえず、連絡取ってみよっか」

 

ダイヤさん、善子ちゃんと一緒になり、皆がいないことで私たちは困っていた。というか、固まってたのに何処かに消えるなんて。もう少し、皆の方にも気を配っておけばよかった。

そんなわけで、私はスマホのチャットでみんなと連絡を取ってみる。みんながすぐにチャットを見るかわからないけど。

すると、瞬く間に曜ちゃんと鞠莉ちゃんがチャットに入って来て、沙漓ちゃん以外の居場所は判明した。

その後、千歌ちゃんが提案したのか、鞠莉さんから三十分後に河川敷に集合という提案がなされた。

 

「もう、それでいいですわ。すぐにはぐれる未来しか見えませんし」

「私もそれでいいわよ」

 

二人はそう言って賛成したからそれを伝えると、皆も賛成したみたいで、そういうことになった。でも、沙漓ちゃんはあいかわらずで、とりあえず見かけたら伝えることになった。

 

「とりあえず、どこ行きましょうか?」

「そうですわね。お二人が行きたい場所なら」

「何処でもいいって、一番困るやつよね。あっ、私は二人の行きたい奴から優先してもらえればそれで」

「善子ちゃんも結局なんでもいいんだ」

「まぁね。それと、ヨハネ!」

「では、歩きながら目に付いた場所に行くということで」

 

なんというか、私たちはそんなに自分から意見を言うタイプじゃないから、行き先が決まらなそうだった。だからか、ダイヤさんは妥協案として、そう言ったことで私たちはそうすることにした。

 

「あっ、あの景品」

 

歩くこと数分。善子ちゃんが急にそう呟いて足を止め、ある屋台の景品を見る。そこは輪投げ屋で、景品には最新のゲーム機があった。しかし、それは三発中三発をビンゴさせるという無理そうなものだった。一発も外せないって無理なんじゃ?一応、一個でお菓子、二個でぬいぐるみみたいな感じになってはいるけど。

 

「私やってみようかしら」

「もしかして、ゲーム機を取るつもり?」

「さすがにあれは無理なのでは?」

「ふふっ。今こそ我が力を開放するとき!」

 

善子ちゃんは私たちの声が聞こえていないのか、輪投げ屋に突撃してしまい、私たちはこれ以上はぐれるのは困るから追いかけた。

善子ちゃんは輪を三つ受け取ると、早速一個目を投げる。それはまっすぐに真ん中の五番の棒にかかった。

 

「おぉ。一発目から入れるとはお嬢ちゃん、なかなかの腕だね」

「ええ。これくらいは」

 

屋台のおじさんは感嘆の声を上げると、善子ちゃんは続いてと輪を投げる。輪は八番の棒にかかり、あっさりとぬいぐるみ圏内に入る。後は二番にもかけられれば、ゲーム機だけど。

 

「全リトルデーモンよ、今こそ私に力を!」

 

善子ちゃんは自己暗示をかけて、輪を投げる。輪は一直線に二番の棒に飛んで行き……

 

「あっ」

 

しかし、急に横から風が吹き、輪は棒に弾かれて失敗に終わった。初挑戦で二個入った時点で十分すごいと思うけど、善子ちゃんは悔しそうだった。流石にこのタイミングで風が吹くなんて。そんな善子ちゃんにおじさんは景品のぬいぐるみを引っ張り出す。

 

「この中から好きな物を選びな」

「ええ……これで」

 

善子ちゃんは悔しそうだけど、とりあえず景品の中を見て黄色の身体に紫の角のある丸っこい小さなぬいぐるみを選んで受け取る。

 

「残念でしたわね」

「ええ。でも、いいわ。どうせ、最後の最後に不幸が起きるのはいつものことだから」

「そうなんだ。私もやってみようかな?」

 

悔しそうな善子ちゃんを見て、私は励ましたいと思い、輪投げをすることにした。

しかし、

 

「ドンマイ、梨子さん」

「こういうこともありますわよ」

 

結果は一個も入らなかった。そのせいか、二人は私に優しく声をかけた。善子ちゃんを励ますつもりが、まさか励まされるなんて。

その後、そんな私に見かねたのか、ダイヤさんも挑戦し、結果は一個入れてお菓子をゲットしていた。あれ?私ってやっぱり下手なのかな?

 

「たまたま運が悪かっただけよ。きっと」

「そうですわ。五番を狙って、飛距離が足りなくて八番に偶然入っただけですし」

 

そんな私を二人はさらに励ましてくれた。こうして励まして貰ってるわけだから、気持ちを切り替えないとね。

 

「もう大丈夫です。いつまでも気にしてるのもあれですし。次の屋台に行きましょう」

「ええ。梨子さんが立ち直ったのなら」

「そうですね。次はどこに行きましょうか」

 

二人は私が気にしてないと理解するとそれ以上は気にせず、次の屋台に行くことになった。その後は綿あめを買ったり、射的をしたりして過ごした。なんでも、つい十数分前にやたらとうまい子が居たらしく、たくさんの景品が持っていかれただとか。それを聞いた善子ちゃんがチャレンジして、最初は失敗して、もう一回やってからは全弾命中になって、色々な景品を貰っていた。私も一応景品は取れたけど、二回に一回くらいの命中率だったから善子ちゃんと比べると……。

 

「で、沙漓は何してる訳?」

「みんなを待ってた?」

「なんで、疑問形で返してるの?」

 

それからなんだかんだで時間が経ち、河川敷に集合する時間になったから、河川敷に行くと、人がごった返していてみんなが見つからなかった。そんな中、河川敷の一角で沙漓ちゃんは邪魔にならないようにして立っていた。

その手には景品やらぬいぐるみ、さらには何故かエアガンがあった。

 

「それで、その景品たちはなんなの?」

「射的とくじの景品だよ。まぁ、このエアガン以外が射的でもらった奴ね」

「まさか、沙漓がおじさんの言ってた子だった訳?」

「言ってた?なんのことかはわかりませんけど、成果は上々でしたよ」

「あっ、梨子ちゃんたちいたー」

「お姉ちゃんたち、こんなところにいたんだ」

 

沙漓ちゃんは誇る訳でもなくいつもの調子でそう言うと、皆がやってきた。同時に来たってことは途中で合流したのかな?

 

「って、沙漓ちゃん。急に消えないでよね」

「焼きそば買って戻ったら消えないでよね」

「あー、はい」

 

曜ちゃんと鞠莉ちゃんが同時に沙漓ちゃんは苦笑いを浮かべて頷いた。たぶん途中で合流して消えたんだろうなぁ。そんな簡単にはぐれられるものなのかは謎だけど。

すると、時間が来たのか花火が打ち上がり始める。

 

「やっぱり、花火は綺麗だね」

「うん」

「ですね」

 

空に打ち上がった花火はとても綺麗で、皆見惚れていた。それから何十発、何百発と打ち上がり、瞬く間に佳境に差し掛かる。その間にも人はどんどん増えていたけど、真上だから人が増えても見えなくなるということは無かった。

ラストには“ナイアガアラ”という空中につるされたロープに付けられた小さな花火が大量に川に向かって滝のように降り注ぐというもので締められた。

 

「綺麗だったね」

「そうだね。毎年見てるけど、綺麗なものは何回見てもいいね」

 

皆花火に感動したのかそれぞれ感想を言い、そんな中で一斉に重大なことに気付いた。

 

「あれ?沙漓ちゃんは?」

「途中までいたはずだよね?」

 

また、沙漓ちゃんがいつの間にかに消えているということに。

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