のんびり天使は水の中   作:猫犬

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サブタイトルがアニメと違いますけど、気にしない方向で。


海乃家はじめました

「ヨハネ……これなに?」

「私考案の堕天使の泪よ!」

「なんで黒いの?あと、中身が嫌な予感がする。タバスコがそこに置いてあるし」

「そう、これはタコの代わりにタバスコを入れた――」

「危険だから、ヨハネ以外は食べれないよ」

「そう?私は食べられるけど」

「辛党のヨハネはね。絶対に、他の人には食べさせちゃダメだよ!」

 

 

~梨~

 

『千歌ちゃん、歌詞は?』

『ゴメーン』

『早くしてよね?』

『了解!』

「はぁー」

 

明日から夏休みに入り、私はため息をついた。そろそろ新曲を作ろうという話になって、それなのに千歌ちゃんから歌詞が挙がってこない。歌詞が無いと、曲を完成できないんだけど……。

 

ピロンッ

 

すると、通知が来る。なんだろ?千歌ちゃんからかな?そう思って確認すると、ピアノコンクールの案内だった。ピアノコンクール。確かに出たい気持ちがあるけど……

 

“8月20日”

 

この日はラブライブの予備予選の日。つまり、どちらか片方にしか出られない。私が選ぶのは……。

 

 

~☆~

 

 

「あーつーい」

「ずらー」

「煉獄の業火が」

 

千歌さん、マルちゃん、ヨハネが口をそろえてそう言った。夏休みに入ったとある日の練習前にダイヤさんがみんなを屋上に集めた。話し合いだったら、部室にすればいいのでは?あと、ヨハネはとりあえずローブを脱げばいいと思う。

 

「夏休みと言えば?」

「海だよね?」

「お父さんが帰って来る」

「マルはおばあちゃん家に」

「夏コミ!」

「ブッブーですわ!片腹痛いですわ」

「ダイヤさん、ミーティングなら部室でやりません?熱中症になりますよ?」

「……そうですわね」

 

なんか、このままここで話している必要が無いからそう言ったら、ダイヤさんはそれもそうかとあっさりと受け入れて、部室に移動した。

 

「それで、一体何を?」

「夏と言えば……ルビィ?」

「えーと、ラブライブ?」

「そうですわ。流石我が妹」

 

部室に移動すると、さっきの話の続きが行われた。ダイヤさん、ルーちゃんに甘すぎです。

そして、ホワイトボードには二つの円グラフ。

 

「そして、これが極秘で手に入れたµ’sの合宿スケジュール」

「遠泳十キロにランニング十五キロ」

「まぁ、なんとかなるかな?」

「あっ、お姉ちゃんが暴走して作ったやつだ」

「しかも、本物だった!」

 

それは、いつしかのµ’sの合宿でお姉ちゃんが暴走して作ったとか言っていた練習メニューだった。でも、全員の反対で却下されてもう少し軽い練習になったって聞いてたような?これって、本当にできるやつなのかな?止めた方がいいのかな?

すると、果南さん、曜さん、千歌さんが何かを思い出したかのような表情をする。

 

「そう言えば、千歌ちゃん。夏休み海の家の手伝いがあるんじゃなかったっけ?」

「そうだ!自治会で出してる海の家を手伝うように言われているのです!」

「あっ、私もだ」

「ではどうすれば?」

「残念ながらそのスケジュールでは」

「別に、サボりたいわけじゃないんですけど」

 

海の家の手伝い。それによって、三人は昼間の練習ができないとのことだった。まぁ、この辺りは海が観光名所だから、人も来るし旅館の宣伝にもなるからかな?あと、それとなく果南さんのダイビングショップの宣伝も?

そう言う訳で、あの練習をこなすのは無理そうだった。

 

「それに、昼間の暑い時間に練習するのは身体への負担も大きいからね」

「じゃぁ、練習は涼しいモーニング&イブニングだけね」

「ですが、それでは時間が……」

「だったら、合宿しない?私の家なら旅館だから一部屋借りれればなんとかなるだろうし」

「そうだね。海も目の前だからすぐ練習出来るし」

「移動が無い分、練習に時間がとれるしね」

 

その結果、千歌さんの家で合宿することになりました。その後練習をし、今日は解散になった。

 

「では、明日朝の四時集合で」

「ダイヤさん、沼津からだとその時間はバスが無いから行けませんよ」

「そう言う訳で午前七時頃に」

 

なんでか、ダイヤさんはやたらと張り切っていた。なんでそんなに張り切っているのやら?

 

 

翌日。

 

「ところで、僕って来る必要あるのかな?」

「Aqoursのメンバーなのだから来るのは当然よ!」

「でも、踊らないし」

「まぁまぁ、いつも通りしててくれればいいから」

「はぁー」

 

僕はヨハネにたたき起こされて、バスに揺られていた。今更だけど、僕の行く必要性が分からなかった。でも、二人はそんなことを言い、まぁ、いいかと思う。どうせ、特に他の予定もないし。

 

「いらっしゃい。合宿で使っていいけど、他のお客さんもいるから騒がないでね」

「はい。もちろんです。今日はよろしくお願いします」

 

旅館に着くと、志満さんに案内されて部屋に通された。って、ここ千歌さんの部屋。やっぱり、この時期に部屋を借りるのは無理だったか。

荷物を置くと、海岸に出る。みんなもう着いていたようで、準備運動をしていた。

 

「おはよー」

 

僕たちが着いたことに気付くと、千歌さんが手を振る。そこから、おのおの準備運動をすると、基礎練習から始まった。さて、僕は何してよ?

すると、しいたけちゃんの散歩に行っていた美渡さんがやって来る。あいかわらず、しいたけちゃんは僕を警戒する。

 

「おはよう」

「おはようございます」

「ごめんね。千歌のわがままで海の家手伝わせちゃって」

「いえ。代わりに旅館に泊めさせてもらえますし、時間外にお風呂も貸していただけるので、これくらいは」

「そっか。ああ、今のうちにあそこの海の家の説明しておくね。あとで、皆にも伝えておいて」

 

美渡さんはそう言って、海の家の説明をした。といっても、食材はあそこに用意された物を使うことや、別の場所から持ち込んでもいいこと。それと、余った食材は僕たちの夕飯になってしまうとのこと。ほとんど、こっちに丸投げだった。それでいいのか?

ある程度説明が済むと、はぁはぁ言っているしいたけちゃんを連れて旅館に戻って行った。

 

「さて、まずは一通りのダンス練習から始めましょう。あのメニューは夕方に」

 

ダイヤさんがそう提案して、練習が始まった。その間に僕は海の家に入って中を見た。うん、ザ・海の家って感じだった。定期的に掃除をしてはいたようで綺麗ではあるけど、暇だし掃除でもしようかな?あっ、猫だ。

 

「るるるーる」

「にゃ!」

 

みんなが練習している横で僕は床を掃いて、使う食器を洗ったりして過ごした。食材は焼きそば、焼きトウモロコシ、お好み焼きなどなどいくらか作れそうな材料があった。この辺が定番かな?あっ、冷やし中華も始められるか。

そうして過ごして、そろそろ海の家の開店準備をする時間になったから、外に出ると、

 

「シャイニー!」

「ヤッホー」

「ずらー」

 

なんでか、皆めっちゃ遊んでるかのんびりしていた。あれ?練習は?

 

「ダイヤさん、ダイヤさん。練習は?」

「いえ、結局こうなりまして。そう言えば、今までどちらに?それと、その頬どうしましたの?」

「ほへぇ?ずっと海の家で準備を。暇でしたし、少しでも皆の練習時間を確保しようと。これはあの子との戦闘で」

「「え?」」

「あ……」

 

結局あの猫にも好かれず、近づいたら引っ掻かれた。それで、みんなは、なんで練習をせずに遊んでるんだろ?合宿だよね?

みんな僕の発言を聞いてバツの悪そうな顔をする。

 

「そう、これは親睦を深めるためにだよ!」

「親睦……僕は誘われてない……」

「えーと……」

 

なんとか遊んでいた理由をでっちあげようとしてたけど、親睦だったら僕が放置された理由は?あれかな?僕とは親睦を深める必要が無いってこと?

 

「いえ、別に気にしていませんよ。高海先輩」

「そっか。良かった……ん?高海先輩?」

「まぁ、いいですけども。でも、そろそろ準備を始めた方がいいと思いますですよ」

「そ、そうですわね」

「そうです、そうです。黒澤先輩。準備は大切ですよ」

「あっ、沙漓が拗ね始めた」

「ん?拗ねてなんかないよ?何言ってるの、善子ちゃん?」

「思いっきり拗ねているじゃない!」

「またまた~。何処からどう見ても拗ねてなんかないよね?ねっ、みんな?」

 

それから、僕はしばらく拗ねました。せっかく海に来たからあわよくばAqoursの練習後の休憩中にでも、みんなで遊ぼうと思って準備を進めてたのに~。それなのにこの仕打ち。

 

「えーと、沙漓ちゃん?」

「ん?どうしたの?もう気にしてないよ。さて、準備始めますよぉ」

「あっ、うん」

 

こうして、海の家を回転する運びになりました。というか、隣にめっちゃ綺麗な海の家があるんですけど?立地条件最悪じゃない?

ダイヤさんは一度この海の家を視界から外してたり、鞠莉さんが隣に敵対視して盛り上がったりしていた。

鞠莉さん楽しんでいません?

千歌さんと梨子さんは看板を持って客引き、果南さんはチラシ配りで宣伝。その際、皆のことをダイヤさんはジャリと言っていた。果南さんスタイルいいけど、それで皆をジャリと言うのはどうかと?ダイヤさんより胸大きい人の方が多いし。

 

「そして、曜さん、鞠莉さん、善子さん」

「ヨハネ!」

「あなたたちには料理を担当して――」

「この三人はちゃんと料理できるんですよね?」

 

そして、三人には料理担当を命じたけど、不安要素が。曜さんは常識人だから平気。ヨハネは堕天使の泪を作るから危険。鞠莉さんはお金持ちだから普段料理をしなさそう。

ダイヤさんは全く知らないようで首を傾げていた。

 

「一応、人並みには」

「私も一応お母さんの帰りが遅くて作ることは時々」

「鞠莉に任せるデース」

「うーん、平気かな?」

「まぁ、沙漓さんも料理班に行ってください。客捌きは私たちでやりますから」

「ん、了解です」

 

そういって、四人で作ることになった。

とりあえず、何を作るかを考えに厨房に行く。

 

「なるほど、食材は発注化なのね」

「鞠莉さん、高級食材を持ち込まないでくださいね。会計が大変になりますし、海に大金を持ってくる人はいませんから」

「そう……わかったわ」

「あと、ヨハネも辛いの禁止ね」

「えー」

「い、い、ね?」

 

こうして、僕たちは各々考案した料理を作った。といっても、僕は普通の焼きそばとかお好み焼きだけど。

 

「完成!」

「くっくく」

「シャイ煮、コンプリート」

 

完成した料理を見て、僕と曜さんは息を呑んだ。

曜さんが作った“ヨキソバ”というオム焼きそばはおいしそうだった。たぶん、これなら売れる。

ヨハネは“堕天使の泪”を作っていた。いや、なんで作ってるの?辛いの作るな言ったのに。あっ、ヨハネにとっては辛くないからか。

そして、

 

「鞠莉さん、これは?」

「シャイ煮よ?」

「いえ、何をどうやればこんな色になるんですか?あと、高級食材を持ち込まないようにいたのに、いつの間に持ち込んだんですか?」

「イッツ、マジック!」

 

鞠莉さんは紫色の謎の料理を作った。その周囲には高そうな肉やら海老やらなんやら。ほんと、いつの間に持ち込んだのやら?

 

「ちなみに、これいくらで売る気ですか?」

「さぁ、十万円くらい?」

「海にそんなに持ってくる人はいないよー。どこのリゾートだー」

「でも……」

「でもじゃないですよ!先に言いましたよね?高級食材を持ち込むなって」

「沙漓、いいじゃない」

 

鞠莉さんは悪びれた様子もなく、そう言った。何故か、ヨハネは鞠莉さんの擁護をしようとしたので矛先をヨハネに向ける。

 

「ヨハネもヨハネだよ!一昨日、言ったよね?これは誰かに食べさせるなって!危険だから!」

「なにが危険なの?」

「あっ」

 

すると、曜さんは首を傾げながら、堕天使の泪を一つ食べてしまった。すると、曜さんの顔がたちまち赤くなる。僕は迅速にコップに水を汲む。

 

「辛っ!」

「水です」

「ありがと」

 

水を渡すと、一気に飲み干す。普通の人が食べるとどうなるかの惨状をヨハネは見ても、あまり気にしていなかった。

 

「これでもお客さんに提供する?」

「ええ。辛い物を求める人もいるはずよ」

「はぁ、もう作っちゃったからいいよ。その代わり、シャイ煮の値段はもう少しなんとかしてください」

 

鞠莉さんの持ち込んだ食材は結局鞠莉さんからの寄付ということで会計には関わらないけど、頼む人はいないかな?ヨハネも堕天使の泪以外作る気が……と言うか、種を大量生産しちゃったし。

この惨状は、僕と曜さんだけの手に負えません。

 

 

「はぁ、はぁ。お店の後だと結構きついね」

「何ですかこの状況?」

 

夕方、皆は練習に戻り、僕は片づけをしていた。そして、終わって外に出ると、肩で息をしている果南さんと、砂浜に倒れる八人がいた。音楽性の違いから喧嘩に発展した後?Aqours解散の危機?勝者は果南さん?

 

「いやー、ダイヤが見つけてきたあのメニューをやった結果だよ。遠泳とランニングだけでこの状況だよ」

「本当にやっていたんですか。お姉ちゃんの話だとみなさんに拒否されてできなかったって言ってましたけど」

「「「「「「「え?」」」」」」」

「まぁ、そうだろうね」

「なんとなくそんな気がしてた」

「なんで行ってくれなかったのー。言ってくれれば、まだ止まれたかもなのに……」

 

どうやら、本当にやった結果のようだった。だから僕がそう言ったら、みんなが顔を上げて驚いた。察してたメンバーもいたけど。

そして、千歌さんは僕の言葉を聞くとそんなことを言った。

はて?なんで止めなきゃなんだろ?

 

「確かに海の家が始める前に言おうと思ってましたよ?でも、午前中に練習してませんでしたから、その分を取り返すにはこのメニューしかありませんから」

「やっぱり、朝のこと根に持てたー」

 

それからも練習は続き、夕飯はやはり残った“堕天使の泪”と“シャイ煮”を食べた。シャイ煮はなんとか千円台にまでコストカットをしたけど、それでも高いからかなり売れ残った。やっぱり明日は別の料理で。堕天使の泪も。

 

 

~千~

 

 

家に戻ったら梨子ちゃんのお母さんと志満姉が話しているのを聞いてしまった。梨子ちゃんのコンクール?何の話?

私はモヤモヤしながら過ごした。なんで、梨子ちゃんは言ってくれないんだろ?

そして、布団を敷いて私たちは寝た。まぁ、私はまだ寝れてないんだけど。

だから、布団に潜ってコンクールのことを知らべると、あっさり見つかった。その日は予備予選の日だった。きっと、梨子ちゃんはみんなに迷惑がかかるからって、こっちを選んだんだと思う。梨子ちゃんに聞いてみよ。

 

「梨子ちゃーん、りーこちゃーん」

「千歌ちゃん、面白がってない?」

「話があるの」

 

私は梨子ちゃんにそう言って外に出た。

 

「私はラブライブに出るよ。最初は考えた。でもこの合宿を通して、皆といる時間が大切だと思ったの」

「え?」

「それで、ちゃんと考えた。どっちが大切かって。そして、決めたの。一緒に予選に出るって。今の目標は今までで一番の曲を作って、予選を突破することだよ」

「そっか」

 

梨子ちゃんはそう言った。梨子ちゃんが決めたのなら、私に言うことは無いか。

 

「だから、早く歌詞頂戴ね」

「えー」

 

梨子ちゃんは家に戻って行き、私も追いかける。梨子ちゃんは私たちを選んでくれた。でも……。

 

「ん、千歌さん、梨子さん?」

 

家に戻ると、廊下を沙漓ちゃんが歩いていた。寝ぼけながらだから、足元はおぼつかない。

 

「沙漓ちゃんは何してるの?」

「お手洗いに……」

「あっ、うん」

 

沙漓ちゃんはそう言って歩いて行き、私たちは部屋に戻った。

翌朝、しいたけを抱き枕にして廊下で寝ている沙漓ちゃんが発見された。

 

 

~☆~

 

 

「うう。まだほっぺが痛い」

 

翌朝、僕は頬を抑えながらとぼとぼ歩いていた。朝しいたけちゃんに前足パンチをされてしまった。なんで、しいたけちゃんと寝てたんだろ?

 

「と言う訳で、二日目ね」

「料理をある程度変更しないと」

「そうだね。結局シャイ煮は残ったのを冷凍保存しちゃったし」

「二日目のカレー状態ですね」

「それだ!」

「「「ん?」」」

 

朝の練習が終わり、僕たち四人は今日もまた料理を作るのだが、方向転換を考え試行していた。主に、シャイ煮の改善案と堕天使の泪に代わる物の製作で。すると、曜さんは何か思いついたようで、とあるものを引っ張り出す。

 

「今日はこれも使います!」

「カレー?」

 

それはカレーの元であり、カレーを作る気のようだった。しかし、それでシャイ煮がどうにかなるのだろうか?

 

「うん。父さん特性の船乗りカレーはなんにでも合うのであります!」

「なるほど?まぁ、曜さんがそう言うなら平気ですね」

「私たちと態度が全く違うわ」

「なんでよ!」

「昨日の結果です!」

 

すると、ヨハネと鞠莉さんが抗議する。いや、二人はやらかしてるから、こうなるのは必然じゃないの?そうして、曜さんは船乗りカレーを鞠莉さんのシャイ煮をもとに作り始めた。

 

「さて、じゃぁ、堕天使の泪も改良を。と言ってもアイデアはいいから、中身のタバスコを別のモノにすれば売れると思うんだよね?」

「そうかしら」

「いや、そうでしょ。現に昨日はそうとう残ったんだから」

「まぁ、そうよね」

 

こうして、なんだかんだで堕天使の泪は進化したのだった。

 

 

「ありがとうございましたー」

 

夕方になり今日は閉店になった。今日は盛況だった。

ヨキソバはいわずもがな、曜さんが作った船乗りカレーも盛況だった。そして、鞠莉さんも昨日の失敗を踏まえた結果、普通にお好み焼きや焼きそばを作った結果、普通に売れた。鞠莉さんは大抵のことはそつなくこなすから、まぁ、そういう訳だった。

堕天使の泪もバージョンアップして、堕天使の泪・改になり販売したら、小腹の空いた人たちに主に売れた。中身をタバスコから鞠莉さんの持ち込んだ肉や元々あったジャムなど、色々な種類を作ったからだった。

 

「今日はちゃんと売れましたね」

「ですね。基本、二人は暴走しなければちゃんとしてますし」

 

本日の売れ残りを確認しに来たダイヤさんは、昨日と比べて売れ残りが少ないことに驚いていた。売れ残りと言うか、残ったのは一括生産する船乗りカレーと先に種を作っていた堕天使の泪・改だけ。ヨキソバはその場で作るから、材料が残るだけで、保存は効くし。

 

「適当に夕飯は作っておくので、ダイヤさんはみんなと一緒に練習していてくださいな」

「そうですか?では、任せますわ」

 

ダイヤさんにそう言って、みんなは練習しに行き、僕は片づけと夕飯づくりを進めた。途中で曜さんがやって来て手伝ってくれた。その際に困ったのが、

 

「なんで堕天使の泪があるの?」

「さぁ?ヨハネが勝手に作ったみたいです」

 

ヨハネが勝手に作った堕天使の泪だった。改があるのになぜ作った?

 

「まぁ、任せて。なんとかしてみるから」

 

曜さんはそう言って、船乗りカレーにトッピングした。それでいいのか?

 

「船乗りカレーwithシャイ煮と愉快な堕天使の泪たち」

 

曜さんのカレーはみんな大絶賛だった。それに、堕天使の泪の脅威も去ったからか、皆楽しそうに食べていた。

そんな中、千歌さんはみんなから距離を取って浮かない顔をしていた。

 

「千歌ちゃん、どうかしたの?」

「ううん、なんでもないよ」

 

それに気付いた曜さんが千歌さんに声をかけると、千歌さんははぐらかした。そして、梨子さんに視線を向けた。曜さんも視線の先に居るのが梨子さんだと気づくと浮かない顔をする。なんか嫌な予感がするなぁ。

 

その後、ダイヤさんによるスクールアイドルの講義が合って、目のシールを付けて聞き流していた鞠莉さんのシールが剥がれて、ダイヤさんが悲鳴を上げた時は焦ったけど、それからは静かに過ごした。

 

 

~梨~

 

 

早朝。昨日と同様にまた千歌ちゃんに起こされた。皆はまだ寝ていた。

 

「梨子ちゃん、一つお願いがあるの」

「お願い?」

 

そして、自転車に乗って浦女まで連れて行かれた。流石にあの距離は自転車でも辛い。

千歌ちゃんは音楽室につくと、私の楽譜を前に出した。

 

「ここだったら、どれだけ弾いても大丈夫だから。だから聴いてみたいの。お願い」

「そんないい曲じゃないよ」

 

私は渋々弾いたでも、千歌ちゃんは静かに聴いてくれた。どうして、千歌ちゃんはこんなお願いをしたんだろ?

そして弾き終ると、私たちは学校を出てバス停の椅子に座った。

 

「いい曲だね。梨子ちゃんがいっぱい詰まった」

 

千歌ちゃんはそう言う。私がいっぱい詰まった、か。どうなんだろ?

 

「梨子ちゃん、ピアノコンクールに出てほしい……こんなこと言うのは変だよね?誘ったのは私で、Aqoursの方が大切って言ってくれたのに」

 

千歌ちゃんが私をスクールアイドルに誘ったのに、ピアノコンクールを優先してほしいって?もしかして、

 

「私が一緒じゃ嫌なの?」

「ううんそうじゃないの。一緒がいいよ!」

 

千歌ちゃんは首を振って否定する。だったら、なんで私に出てほしいって言うの?

 

「でも、思い出したの。最初に梨子ちゃんを誘った時のこと。あの時思ったの。スクールアイドルを続けて、梨子ちゃんがちゃんとピアノと向き合えて、また前みたいに前向きに弾けたらって。そしたら、すてきだなって」

「でも……」

「うん。この街が、みんなが大切だって言うのはわかるよ。でも、梨子ちゃんにとってのピアノも同じくらい大切だと思ったの……だから、その気持ちにちゃんと答えを出してあげて」

 

千歌ちゃんは思っていることをちゃんと口にする。私のためを思って言ってくれたんだ。でも、私はAqoursも大切で。私がコンクールに出たら、みんなが。

 

「ここで待ってる。みんなと待ってるって約束するから」

 

いいのかな?本当に?でも、そう言ってくれるのはうれしかった。きっと、千歌ちゃんも悩んだんだと思う。

 

「ほんと、変な人……大好きだよ」

 

だから、私もこの気持ちに向き合おう。そうしないといけないと思うから。

 

「千歌ちゃん、もう少し考えてみるね。自分が本当にどうしたいか」

「うん!ちゃんと梨子ちゃん自身が納得する答えを見つけてね」

「さてと、私たちがいないことに気付いたら大騒ぎになるかもだから、戻ろっか」

「そうだね」

 

私たちはそう言って自転車で戻って行った。家の前まで戻ると、まだみんな寝ているであろう時間だったのだけど、

 

「おかえりなさいです」

「おかえり……」

 

堤防に沙漓ちゃんと曜ちゃんが座っていた。




明日も投稿~
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