のんびり天使は水の中 作:猫犬
「ふぅ。やっと着いた」
僕は電車に揺られながら秋葉原に帰ってきた。まぁ、今日やることは分かっているから電話の内容と違って検査が何事も無く終わったら明日中には帰りたいなぁ。できれば皆のライブを生で見たいし。
とりあえず、まずは家に戻んないとか。色々あるんだし。
と言う訳で家に行くわけだけど、数日前に戻って来たわけだからなんというか。
「ただいまー」
「おかえりなさい、沙漓」
家に着くと今日はお母さんがいた。まぁ、今日はいるのは当たり前か。
僕はとりあえず今に行くと、座布団に座り、お母さんは対面の場所に座る。
「それで、今日は検査だけなんだよね?」
「ええ。明日以降は今日の検査の結果次第よ」
「そっか。何も無ければいいんだけど」
それから、今日の診察時間までのんびりと過ごした。予約をしてるからその時間あたりに行けば言いわけだし。
本当のところは朝早くに沼津を出る必要も無かったけど、やっておきたいこともあるし、電車の事故とかでこれ無くなるのも嫌だったからねぇ。
「いらっしゃい、沙漓」
「こんにちは、真姫さん」
予約した時間が近づいたから病院に行くと真姫さんが待っていた。連絡といい、待っているといい、真姫さんもそういう仕事をしてるのかな?
真姫さんと直で会うのは沼津に引っ越す数週間前だったから、あの頃よりも綺麗な大人になっていた。いや、元から綺麗なんだけども。
と、今はそんなことを考えるんじゃなかった。
「時間通りに来てもらえてよかったわ。さて、こっちに来てちょうだい」
「わかりました」
僕はとりあえず付いて行くと、診察室の一つに入る。そこには僕と真姫さんの二人だけで、他には誰もいなかった。もしかしたら、後から先生が来るのだと思いながら、真姫さん進められて椅子に座ると、真姫さんは先生が座るとおぼしき椅子に座った。
あれ?そこに座っちゃっていいの?
「さて、早速始めるんだけど」
「あの、真姫さん?」
「ん?どうかしたの?」
自然な流れで診察が始まろうとして、僕は首を傾げると、そんな僕の反応に真姫さんも首を傾げる。そして、僕の反応を見てなんとなく察したような表情をする。
「ただ単に機械で身体の中の状態を調べるだけだから、私でも扱えるって訳で私がやるのよ。不安?」
「いえ、真姫さんならそんなに心配はないですけど……それありなんですか?」
「平気よ。パパたちは他の患者さんで忙しいんだし、機械の操作法は知ってるわ。それに、その診察結果はちゃんとパパたちが診るから問題ないわ」
許可が下りてるのならいっか。真姫さんが操作ミスをするとも思えないし。
X線検査やら聴診器やら見たこと無い機械での検査やら色々やり、一通りの検査を終えると一度ロビーで結果待ちとなった。真姫さんは診察結果を渡しに奥に行き、渡し終えるとなんでか僕のもとに来て隣に座った。どうやら、特にすることも無いらしかった。
「それにしても、まさか沙漓がスクールアイドルを手伝うとはね」
「あはは、お姉ちゃんにも言われました」
「そうでしょ。沙漓の事情を知っている人なら誰だって思うわよ」
待っている間は真姫さんといろんな話をして過ごした。僕の高校生活やら、真姫さんの大学生活やら。そんな話を十分ほどすると、お母さんがやってきた。
「あら?まだ結果はわからないのかしら?真姫さん、久しぶりですね」
「はい。直でですと。それでは診断結果がもう出てるはずですので行きましょうか」
「あっ、はい」
お母さんが来たことで、僕たちは奥へ行く。一応、診断結果はお母さんも聞かないとなわけだし。
そうして、奥の病室に着くと中に入る。中には、真姫さんのお母さんが待っており、結果の紙やデータを見ていて、入ってきたことで顔を上げる。
「半年ぶりね」
「はい。お久しぶりです」
「それで、沙漓は……」
「ええ。早速お話ししましょう。とりあえず、おかけください」
促されて僕たちは椅子に座り、真姫さんは少し離れた位置に座る。
真姫さんのお母さんは難しそうな顔をしながら話し始める。
「まず、足の方ですがこれに関しては以前と変わらず問題なさそうですね。ただ……」
「ただ?」
「やはり、予想通り身体の中に小さな腫瘍がありました」
「……やっぱりですか」
僕の中に腫瘍がある。去年の診察じゃ特にそんなモノは無かった。でも、その疑いはあるかもしれないって話はこの前の電話で聞いていた。だから、そこまで驚きは無かった。
すると、ディスプレイに今回の診察での写真が表示される。肺の辺りに大きく真っ黒い物があり、これは火事の時の損傷個所だからいつもと変わらない。それに関してはただ残ってて、過度な運動ができないだけ。
その写真の黒い部分を指して話を続ける。
「今までの機械では損傷部分で隠れて見えませんでしたけど、実はここに腫瘍があるんです。想定よりも大きくなっている為、早急に手術の必要があります」
「そうなんですか……」
「ええ。以前真姫から連絡してもらった通り、場所が場所であり、損傷個所に重なっている為困難を極め、最悪さらなる後遺症になる可能性も。或いは死につながる可能性も」
さらなる後遺症。或いは死のリスク。それはそれで怖い。できれば手術をしたくはない。でも、しない訳にはいかない。このまま放置をすると、腫瘍が拡大し、結局何らかの異常が起きるらしい。
それでも、一応確認はしたかった。
「早急にする必要があるってことは、放置しててもまずいんですよね?」
「ええ。このままだともって一年」
「じゃぁ、手術を受けます」
「沙漓!?」
「「え!?」」
しかし、やっぱりそうそううまいように事は進んでくれない。告げられたのは残り一年という余命宣告で、だからこそ僕ははっきりとそう言った。そもそも、それなら選択肢なんてないようなもんだし。
僕は一切迷うこと無くそう言ったことで三人は驚きの声を漏らしていた。
「いいの?そんな即断で」
「まぁ、この前電話で聞いた時からなんとなく、そうなったらこうしようって決めてましたから」
「そう……なら、手術は明日行います」
「あれ?てっきりすぐやるのかと思ってました」
「準備があるからね。それに、電車に揺られてこっちに戻ってきたんだから今日は休んで、万全の状態で手術に臨んでちょうだい」
真姫さんのお母さんは笑みを浮かべるとそう言った。口にはしないけど、今回の手術は困難を極め、成功率も高いわけではないから、悔いが無いようにしておいてほしいという意味が含まれている気がした。
それに、万全な体調の方が成功確率は上がる気もするしね。
その夕方。僕は帰ってきたお姉ちゃんとお父さんにも手術を受けることを伝えた。二人とも最初は驚いたけど、僕が決めたことだからか、僕の意思を尊重してくれた。お母さんはもしかしたら最後のご飯になるかもとか言って豪華にしようとしたけど、別に僕は死ぬ気はさらさらないから、普通のにしてもらった。豪華なのにしたら、それこそ死亡フラグが建っちゃう気がするしね。
それからは、ここに住んでた頃のように普通に過ごし、僕は部屋でのんびりしていた。
そして、そう言えば病院に行ってから携帯の電源を切っていたことを思い出して電源を付ける。すると、何件もの電話履歴が残っていた。
それはAqoursの皆だった。そして、一番かかって来ていたヨハネに対して折り返しの電話をすると、あっさりとつながった。ヨハネはなかなか繋がらなかったことに対して文句を言ったけど、病院に行ってたわけだから仕方によね?
『いろいろねー。そうだ!診察結果は?』
「……うん。去年と変わらずだったよ。でも、まだ病院でやることがあるから帰れないけど……」
『そう。それじゃ、後でアップされるはずの映像を見るしかないのね』
「だねぇ。ほんと、現地で見たかったよぉ。そうだ!今日の練習は大丈夫だった?」
『ええ。問題なくできたわ。それと……』
ヨハネそれからは今日あったことを話した。その中でも、最後に話した生徒全員でステージに上がろう計画を聴いた瞬間、驚いてしまった。
「ヨハネ、それほんと?」
『ええ、そうよ。まぁ、全員集まるとは思えないわね。沙漓もいないし。自分もステージに上がりたかった?』
「そんなのどうでもいいよ。でも、みんなその案に乗ったの?」
『え、ええ。主に千歌さんがノリノリだったし』
どうやら、みんなあるのことを知らないのかな?でお、ダイヤさんたちが知らないとは思えないけど。そもそも、あの時に、僕が口にしたはずだし。
「ヨハネ、梨子さんがコンクールでいない時に、その代打で指名された僕がなんて言って断ったか覚えてる?」
『えーと。たしか、運動ができないとか、ライブには……あっ』
「思い出したみたいだね。事前にエントリーしたメンバーのみがステージに立てるんだよ……まさか、ダイヤさんたちまで気づかないなんて……それとも言い出せなかったのかな?」
『分からないわ』
「まぁ、上がる前に気付けたから良かったよ。ちゃんとみんなに伝えておいてね。それと、生徒全員で上がらなくても、Aqoursの皆だけでなんとかなるって信じてるよ」
『そう。任せなさい……と、そう言えば、沙漓がそっちに行く前に打ち合わせてたあれは平気なのかしら?』
「うん。大会史上初めてだし、規約的にギリギリ感が否めないけどね。でも、時間内に収める分には平気だよ。一応、担当の人に確認しておいた方がいいかもだけど」
『そう。わかったわ』
「それと……ありがとね」
『え!?なんて言った?』
そろそろ電話も終わらせないとだしと思って小さくお礼を言った。でも、ヨハネには聞こえなかったみたい。だったら、それはそれでいいかな?
「ううん。なんでもない。ヨハネ、明日早いはずなんだから、夜更かししないで早く寝なよ」
『ええ。わかってるわよ』
「じゃぁ、切るね。明日、頑張ってね。遠くから応援してるから」
『大船に乗った気でいなさい』
ヨハネがそう言ったことで、僕は通話を切った。結局、あの事は伝えられなかった。いや、伝えるべきじゃないか。流石に心配させたくないし、みんなには思いっきりライブを楽しんでほしいしね。
「伝えなくてよかったんですか?」
「うわっ!お姉ちゃん、いつの間に!」
「ドアが開いていましたからね」
一人呟くと、暑いからと開けたままにしていたドアの前にお姉ちゃんが立っていた。
口ぶりからしてヨハネとの会話(僕が言った方だけ)を聞いていたようで、手術のことを伝えていなかったことを気にしていた。
「そっか。でも、いいよ。みんなに心配をかけたくないし、そのせいでライブがちゃんとできないのは嫌だから。それに、必ずしも手術で死ぬわけじゃないんだしね」
「沙漓……無理してますね」
「え?」
「だって、手が振るえていますよ」
お姉ちゃんは心配そうに僕を見てそう言い、僕は言われて自分の手を見る。僕の手はなんでか震えていた。
「あはは、なんでだろ?寒いのかな?」
「そんなの怖いからですよ」
「……」
僕は強がって寒いから震えていることにした。でも、今は夏な訳で暑い……というか、暑いからドア開けてたわけだけど。
だから、お姉ちゃんは僕の強がりに呆れた表情をする。
すると、僕のそばにやって来る。
「誰だって死ぬかもしれないという手術は怖いモノですよ。沙漓の場合はあの時も合わせて二回目になる訳なのですから」
「うん」
「だから、自分の気持ちを無理に隠さなくていいんですよ。ここは私たちの居場所なのですから、無理はしなくて。泣きたい時は泣けばいい」
「う……」
お姉ちゃんは優しくそう言うと、僕は急に怖くなった。本当は怖い。でも、僕が怖がればみんなが心配してしまう気がしたから、無理にでもいつも通りに振る舞っていた。
だから、お姉ちゃんが優しく言ったことで、今までの無理していた感情が溢れ、泣いた。
「怖いよ……でも、みんなが心配しちゃうからそれが嫌で……」
「ええ。わかっていますよ。沙漓は自分よりも誰かのことを考えてしまう優しい、私の大事な妹なのですから」
お姉ちゃんに抱きついて泣くと、お姉ちゃんは優しい手つきで抱き留めてくれた。
「みんなにだって、本当はちゃんと直接会って伝えたかったよぉ。でも、みんなに直接会ってそれを伝えたら、心配しちゃうから……僕のせいでみんなが悲しむのは嫌だから……」
「ええ、そうですね」
「本当は手術も受けたくなんかなかったよ!でも、受けなくても一年後には死ぬ。僕はもっと生きていたいよ!だから……」
「私も沙漓に生きていてほしいです。沙漓には死なないでほしいです」
お姉ちゃんは背中をさすり、相槌を打ちながら僕がため込んでいた感情を聞いていてくれた。そして、どれくらいか経ち、だいぶ僕は落ち着いた。
「うん。だからこそ、受けようって……生きるために!」
「ええ。そうですね。生きるために」
僕ははっきりとそう言い切ると、お姉ちゃんは頷いてくれた。
それから、お風呂に入って部屋でパソコンを立ち上げてあることをした。三十分ほどすると、ノックされ、僕はヘッドフォンを外す。
「はーい」
「沙漓、いいですか?」
「あっ、うん」
ノックをしたのはお姉ちゃんでお姉ちゃんは部屋の中に入って来ると、僕のパソコンを見た。
「Aqoursの映像ですか?」
「うん。みんなの歌を聞いてると落ち着くし元気がもらえるからね」
「なるほど」
「それで、どうかしたの?」
僕がそう言うと、お姉ちゃんは納得したような表情をする。そして、結局何しに来たのか分からず尋ねる。たぶん、さっきのがあったから、心配してくれたんだろうけど。
「いえ、寂しくなっていないかと思いまして。もしそうなら一緒に寝てあげようかと思ったんですけど、平気そうだから」
「一緒に寝てくれるの!」
「いや、それは、寂しそうならで」
「お姉ちゃんと久しぶりに一緒に寝たい!」
お姉ちゃんと一緒に寝られるチャンスが来たことで、僕は全力でそれに乗っかる。最後に一緒に寝たのって小学生の時とかだった気がするし。
でも、お姉ちゃんは一緒に寝るのは、本当は恥ずかしいから、僕が本当に寂しそうにしていたら元気づけようと、安心させようという意味で提案したわけで、割と平気そうに見える僕を見て気まずそうに提案を取り下げようとしていた。
しかし、僕はそれから食下がらずにいた結果、お姉ちゃんが先に折れた。
「まぁ、私が先に提案したわけだから今日だけですよ」
「よし!」
「はぁー、どうしてここまでなってしまったのやら?」
お姉ちゃんはため息をつくと、部屋を出て行った。布団を持って行けばいいんだよね?
というわけで、僕は早速自分の布団を持ってお姉ちゃんの部屋に突撃した。それから、お姉ちゃんの布団の隣に布団を敷き、お姉ちゃんの隣で布団の中に入った。
「沙漓、本当に大丈夫なんですね?無理してませんね?」
「うん。大丈夫。みんなとスクールアイドル活動を続けたいし、まだまだお姉ちゃんに甘えたいし」
「そろそろ姉離れしてほしいですね」
「やーだ。お姉ちゃんのことが大好きなんだもーん」
お姉ちゃんは切実な願望を口にし、僕はお姉ちゃんに抱きついた。あー、お姉ちゃんと居ると落ち着く……。
「お姉ちゃん、だい、すき……」
「ふふっ、寝てしまいましたか。寝ていますし、私も――」
眠りに落ちた僕は、お姉ちゃんが最後になんて言ったのか分からなかった。でも、きっと――。
~花~
善子ちゃんが箱を落したことで見つかった、白い封筒。でも、誰もそれに心当たりがなかった。
「さぁ?もしかして沙漓ちゃんからのエールだったりして」
「終わった後に発見って……」
「とりあえず見てみよ?」
「ええ」
とりあえず、見つけた訳だから中身を見てみようということになった。本当に沙漓ちゃんからのエールなのかな?もしそうなら、終わった後な訳で、意味ない気もするけど。
善子ちゃんが代表して封を開けると、中には一枚のSDカードが入っていた。
「なにかしらこれ」
「うーん。ビデオレター?」
「或いは沙漓のミスで紛れた物かしら?」
「ですが、私たちに向けての封筒に入ってたわけですし」
「とりあえず、貸してー。パソコンで開いてみよ?」
「ええ」
千歌ちゃんに言われて善子ちゃんは手渡すとノートパソコンに差し込む。すると、ファイルが開き、そこにはいくつかのファイルが入っていた。今までの練習風景を収めたとおぼしき“練習記録”や私たちのライブ映像を纏めたとおぼしき“ライブ映像”。そして、
「また、“Aqoursのみんなへ”って名前のファイルがあるね」
「ええ。とりあえず開いてみよっか。見ればわかるだろうし」
「うん。そうだね」
とりあえず、謎が残ったまま、千歌さんは再生してみる。それは映像では無くて音声ファイルだった。
『Aqoursの皆へ。これを聴いてるのはみんななのかな?もしそうなら、たぶんそこに僕はいない訳かな?もしかしたら戻って来た僕が回収しているかもしれないけど。と、さっさか本題に入ろっと』
「沙漓の声ね」
「うん」
『僕が地区予選の時にいなかったのは診察だからって言ったけど、半分本当で、半分嘘だったんだ。僕が戻った理由は、手術を受けるため。と言っても、まだ確定な訳じゃなくて、もしかしたらなんだけど。たぶん僕は手術を受けることになるんだと思うけど。そんなわけで言わなくてごめんなさい。でも、みんなに心配をかけたくなかったから、みんなにはただまっすぐにライブをやってほしかったから』
「沙漓ちゃん、私たちのことを思って黙ってたんだ……」
「マルもなんとなくわかるかな?」
『まぁ、これは僕のわがままだからね。戻ったら文句言われるのかな?話によると、手術の場所は結構厄介な場所らしくて、困難を極めるだとか。最悪、後遺症とか死とか言ってたっけ』
「えっ?」
「嘘……」
マルたちは沙漓ちゃんの言葉に息を呑んだ。死ぬかもしれない手術を受けているなんて……。あれ?電話に出ないし、ここにいないってことはもしかして?
『と言っても、僕はまだまだ生きている気だから、死ぬつもりはないけどねぇ。音声ファイルを残しているのは念のため……だけど、これは僕がちゃんと戻って来て回収するという伏線を張るために用意したんだけど』
「また、手の込んだことを……」
「というか、回収できてないじゃない」
『それで、ちゃんと回収しないとということで、みんなへのメッセージを残そうかな?』
マルたちがちょくちょく突っ込みながらもどんどん進んで行く。
『千歌さんとの出会いは入学式の日でしたね。スクールアイドル部の設立の為に校門のところでやってましたっけ?最初の印象はとにかく明るくて、僕とは対照的な人だなぁ位でした。でも、千歌さんを知ると、とにかく行動力があり、みんなが自然と集まってくる魅力がありました。きっと千歌さんが言い出さなかったら、今のAqoursは無かったと思います。それと、千歌さんの書く歌詞は好きで、梨子さんの曲と合わさった時、さらに好きになれました。だからこそ、これからもその行動力で皆を引っ張って、すてきな歌詞を紡いでください!』
「沙漓ちゃん……」
『曜さんとの出会いも入学式の日でしたね。曜さんも千歌さんと一緒で明るいなぁというのが最初の印象でした。そして、なんでもそつなくこなせる完璧超人なのかと思ってましたけど、曜さんにも弱い部分があって、だからこそ親近感が湧きました。曜さんは衣装作りを主に担当していて、時々無理をしていた気もしますけど、そのおかげで可愛い衣装になって、Aqoursをさらに輝かせることができたんだと思います。でも、これからは無茶しないで皆にも頼ってくださいよ!』
「沙漓ちゃんがそれ言うの?」
『梨子さんとの出会いは入学式の終わった後の夕方でしたね。いきなり海に飛び込もうとしたときはびっくりしました。梨子さんのピアノへの一途な想いはすごく、僕は何かに一途に打ち込んだことが無かったからすごいなぁって思ってました。梨子さんの作曲は綺麗な音で、千歌さんの書いた歌詞と合わさった時何倍も素敵になったと思います。だから、これからも素敵な曲を作ってください!』
「沙漓ちゃん、私の曲をそう思ってくれてたんだ」
『果南さんとの出会いは、こっちに戻って来た翌日に助けられた時ですね。あの時は本当に助かりました。果南さんはお姉さんみたいに頼りになる人で、Aqoursが九人になる前から、みんなのことを優しく見守っていましたね。鞠莉さんとの仲たがいが終わって、果南さんがAqoursに入ってくれて本当に良かったです。これからも、みんなのことを優しく時に厳しくしながらも包み込んでほしいです!』
「そんなこと考えてたんだ。任せておいてよ」
『ダイヤさんとの出会いは、アイドル研究会の情報を得て、生徒会室に乗り込んだときですね。あの時はまさかあそこまでスクールアイドルが好きだったとは思いませんでした。ダイヤさんは最初厳しく接していましたけど、それもAqoursの成長の為であり、きっと自分の気持ちを殺してたんだと思います。そんなダイヤさんがAqoursに入ってくれたことで練習の効率は格段に上がりましたし、雰囲気もよくなったと思います。きっと、ライブが終わったらヨハネ辺りがダレるかもですから、しっかりとまとめ上げてくださいね』
「任されましたけど、別に誰もダレていませんわね」
『鞠莉さんとの出会いはファーストライブの一週間くらい前でしたね。最初はやたらとテンションが高くて違う次元の人なんだと、もう関わることは無いだろうと思ってました。鞠莉さんは学校が大好きで、自分の将来よりも優先できてすごいと思いました。普通はそこまでできないと思います。でも、鞠莉さんが統廃合をギリギリで止めていてくれたからこそ、今こうしてAqoursがそろってラブライブに出場で来たんだと思います。そして、鞠莉さんが加わったことで今まで以上に雰囲気が明るくなって、より輝いたと思います。だからこそ、これからも皆が暗くならないように照らしてほしいです』
「Oh、そんなに私テンション高かったかしら?」
『ルーちゃんとの出会いは教室だね。正確には校門前だったかもだけど。ルーちゃんは自分がアイドルに向いてないと思ってたけど、アイドルに向いてないなんて人は何処にもいないと僕は思ってた。それに、アイドルが好きな気持ちがあればそれで十分だと思ってたし。ルーちゃんはとにかく努力をしていて、自主練もたくさんしていたことを知ってたよ。だからこそ、これからも努力を辞めないで、輝くアイドルになってね』
「沙漓ちゃん……なんで、自主練のこと知ってるの?」
『マルちゃんとも教室が出会いだったね。いや、幼稚園が最初だけど。マルちゃんは運動が苦手だからって最初は拒んで、でもルーちゃんがアイドルに興味があるからって背中を押してあげて、そんな優しいマルちゃんが好きでした。あっ、ラブじゃなくてライクの方ね。でも、練習している時楽しそうだったから、僕的にはマルちゃんもアイドルになればいいのにと思って、あんなこと言ったんだよ。まさか、僕を引きこむ手段にあんな手に出るとは思わなかったけど。とにかく、マルちゃんのその優しさで皆を癒してね?』
「うーん、マルにそんなことできるのかな?」
『最後はヨハネ……善子ちゃんだね。出会いはこっちに来た初日だったっけ?まさか、隣のマンションに住んでるとは思わなかったけど。ヨハネ……善子ちゃんが堕天使を好きであったことが結果的に好きな物を好きと言える気持ちが大切なのだと気づかしてくれたね。それからヨハネが入って、Aqoursが騒がしくなったっけ?いつもは堕天使とか言ってかっこつけてクールぶるというか悪そうな感じになるけど、結局人の心配をしちゃう辺りは天使っぽいよね。ヨハネはAqoursのムードメーカだから、これからもその辺頑張ってね』
「なんか、私だけ扱いが微妙に雑じゃない?」
『うーん。これで、全員にメッセージを残したわけだけど、完全に死亡フラグな気がしてきた……まぁ、いいや。さて、これでそろそろ終らせようと思うけど、ここは“俺明日、結婚するんだ”的なことを言うべきなのかな?それとも、“もうこんなところ居られるか、俺は帰らせてもらう”的なこと?』
沙漓ちゃんは時間が余ったのか、はたまた何を言うべきなのか悩んでいるのか脱線し始め、そう言って一息つく。たぶん、この音声がもうすぐ終わろうとしているんだと思う。
『まぁ、いいや。この大体四、五ヶ月はいろんなことがあってとにかく楽しかったよ。小学校、中学校と人の顔色を窺って過ごしてたから。でも、Aqoursの皆は、浦女の皆は暖かくて、とにかく毎日が楽しかった。だから……ありがとう』
沙漓ちゃんが最後にお礼を言ったところで音声ファイルは終わった。マルたちは、しばらく言葉を発さなかった。きっと、みんな沙漓ちゃんとの思い出を思い出しているのだと思う。
マルだって、沙漓ちゃんとの思い出がよみがえって来て……
プルルルルッ
「ん?」
「なに?」
「あっ、私だ……え?」
すると、誰かの電話が鳴り響く。そして、その電話は善子ちゃんの携帯から鳴っていた。
善子ちゃんはとりあえず携帯を取り出すとそこに表示された名前を見て驚いた表情をする。
「どうしたの?」
「沙漓から……」
『『『えっ!?』』』
これで一期の内容は終わりです。次回からは二期の内容か、オリジナルか、番外編か。さて、どうなるのやら?
では、ノシ