のんびり天使は水の中 作:猫犬
「えーっと、説明会とラブライブの予選の日が被ったと?」
「ええ。昨日の雨の影響でね。説明会を一週ずらさないとまずそうってことになっちゃって」
二学期のとある日の早朝。僕たちは十千万の前で困ったことになっていた。
廃校に待ったをかけるために鞠莉さんが鞠莉さんのお父さんを説得して、入学希望者を十二月、ちょうどラブライブの地区予選が予定されている日の日付が変わるまでに百人集めれば来年の入学試験を行うということになった。
それによって、昨日は説明会と予選に向けて新曲を二曲作ろうということで、二年生組で一曲、一・三年生組で一曲作っていた。その結果、一年と三年の間に絆が深まったり、果南さんの弱点が発覚したり、電気の点かないお寺で一泊したりと大変だった。
「説明会を土曜日にずらすのは無理なんですか?」
「残念ながら無理ですわ。場所によっては土曜日にも授業のある中学校もありますので」
「ダイヤの言う通りよ。それに加えて中学校の教師の方々もいらっしゃるから……」
「そうですか……」
せめて予選の前日に組み込めればどうにかなりそうだったけど、それは学校の事情的に無理で諦めるしかない。
「で、予備予選の会場がここだね」
外でいつまでも立ち話は旅館の迷惑になりそうということで、千歌さんの部屋に集まると、千歌さんのノートパソコンで地図を表示させて、会場の場所を全員で確認する。場所が山奥なだけに流石に移動は難しい。電車もバスも本数が少ないし。
「うーん。空でも飛べればずら」
「ふっふふ。なら私の堕天使の翼で……」
「あれ?堕天使の翼ってお好み焼きじゃなかったっけ?」
「そっちじゃなくて」
「それでも、ヨハネ一人じゃ八人を運べないから却下ね」
「そうだよ!ヘリコプターで!」
「なるほど!その手なら……って、却下よ!パパには自力でどうにかするって言ったから力を借りられないわ」
小原家の力を借りられないからヘリで移動という案は却下となった。流石にヘリに九人乗るのも無理だと思うんだよね。その後、なら船でってことになったけど、そもそも会場は山奥なのだから船は使えない。
「となると、取れる手段は一つですわ」
するとスマホで何か調べていたダイヤさんがそう言う。僕たちはダイヤさんの方に一斉に視線を向けると、咳払いをした後話し始める。
「予選の順番が一番になれれば、ぎりぎりその時間にあるバスに乗ることで間に合いますわ」
「それに乗り過ごしたら他はないの?」
「ありませんわ。その次は一時間後ですので」
「でも、それに賭けるしかないよね。それで、順番の決め方はどうするの?」
「それは――」
~ヨ~
「まことに面目ない!」
「あはは」
予選の順番決めが終わり、私はみんなに謝った。
予選の発表順の決め方がくじ引きであり、代表者が引くということで今こそ私の力で窮地を越えようと皆を説得して引かせてもらった。結果は“24番”と中途半端な順番になってしまい、両方のライブを行おうという希望は絶たれてしまった。
皆は苦笑いを浮かべて「仕方ないよ」と言ってくれたけど、意気揚々と言った手前私は罪悪感がすごかった。
「となると、どっちか選ぶしかないよね」
「うん。でも、私どっちかだけを選ぶなんて嫌だなぁ」
「私だってそうだけど。でも、どちらか選ぶしかない……」
こうなってしまった以上、どちらかを選ばなくてはいけなくなり、でも誰もそんな簡単に割り切ることはできない。私もどちらも切り捨てたくなくて何も言えない。
「すぐには決められないよね。私もそうだし。だから、一日じっくり考えて、明日決めよ?」
「ですわね。うじうじとここで考えている時間もありませんから」
「そうだね。じゃぁ、練習始めよっか」
それから、私たちは家で考えようということになり、とりあえずは走り込みやダンス練習などなどをすることになったのだった。
そして、あれから日は過ぎていき、一週間後が予選の日となり、私たちは練習をしていた。結局どちらも捨てたくなくて、四人と五人で別れて両方のライブを行うことになった。Aqoursが分かれてしまって本当にいいのかわからないけど、それ以外に選択肢はなく、みんな反対することは無かった。
学校説明会は私と花丸と果南と鞠莉の四人でやることになった。流石に理事長か生徒会長のどっちかは説明会にいないとまずいし、リーダーである千歌は予選の方にいないとまずそうということでこうなったけど。
「今日はこれくらいにしておこっか」
「そうですわね。あんまり詰め込むのは怪我のもとですし」
だいぶ陽が暮れてきたことで、今日の練習が終わり私たちは着替えて帰り支度を進める。
そして、着替え終えると浦女を出ていつも通り坂を下る。
「はぁ。本当にこれで良かったのかな?」
「善子はまだそんなこと言ってる訳?みんなで話し合って決めたでしょ?」
「そうだけど……」
私は本当にこのままでいいのか心配。みんなも口にしないだけで本当はそう思っているはず。鞠莉もそう言うけど、きっと。
「はぁ。せめて車を出せればよかったですけど……」
「私は誕生日に免許は取ったけど無理よ。レンタカーを借りても乗れて六人だろうし。家のやつを使う訳にもいかないし」
「うーん。果南ちゃんとダイヤさんは……まだ誕生日を過ぎてないから無理か」
「うーん。千歌さんのお姉さんに車出してもらうのはダメなんですか?東京行った帰りには出してもらえましたけど」
「ごめん。その日はお父さんがあれ使うらしくて、軽トラックしかないの」
「じゃぁ、荷台に!」
「交通法であそこに乗るの無しじゃなかったっけ?」
「無しですわ。交通法違反になりますから」
「うーん。手詰まりか」
「じゃぁ、自転車で」
「えーっと。十数キロですね」
「一時間あれば着けそうだね」
「山道だし、場所によっては登るよ?」
「それに、着く頃には皆バテバテになってそうよね」
一応、案は出すもどれもいい手とはいい難かった。せめて、もう一人車を運転できる人がいればよかったんだけど。
「さすがにレンタカーを借りてもらって出してもらうって訳にもいかないよね」
「ええ。都合よく車を運転できる人がいれば行けなくもないけど」
「はぁ。じゃぁこのままやるしかないね」
結局このまま四と五に別れてやるしかなさそうだった。他にいい方法があればいいのに。
そうして、バスに揺られてみんなそれぞれのバス停で降りていき、私と沙漓もいつものバス停で降りる。
「ヨハネは諦められない?」
「ええ。私が一番を引けなかった手前責任は感じてるし」
「そっか。でも、一番でも厳しい気もしたけどね?」
「どういうこと?」
私が一番を引いていれば、九人全員でやることができた。でも、私が引けなかったから。もしあの時、私が出しゃばらずに曜が引いていれば一番だったかもしれない。
それなのに、沙漓は一番でも無理だったかもしれないと言う訳で、私は首を傾げる。
「だって、予選だよ?他の学校の生徒も来れば、その親御さんも来る。その場合は車使うでしょ?」
「ええ」
「そして、番が終われば帰っていく。そしたら渋滞が起きる気がしてね。車線もそれぞれ一本だから混み易いよ」
「あっ」
沙漓に言われて納得がいく。確かに山奥ならそうだろうし、混めばバスも遅れる。つまり、どっちみち九人でやるのは無理だったって訳か。
「沙漓はそれわかってたの?」
「うん。あの翌日には公共の交通機関を全て調べ上げたからね。最終手段としてタクシーも考えたけど、乗れて三人ずつで計三台必要だから部費の残り的に無理だったけど」
沙漓はあっけらかんとしてそう言う。やっぱり手詰まりじゃない。
「というか、沙漓はどうしてそんなあっけらかんとしてる訳?」
「だって、誰も諦めてないじゃん。しっかり、九人バージョンも練習してるし」
「それは、今後のことも考えて」
「学校が統廃合すれば今後もないのに?」
「なによ!沙漓は何が言いたいわけ?」
沙漓の考えていることが分からない。というか、沙漓はもう諦めてるってこと?だから、そんな反応を。
「まぁ、何とかなると思ってるからね」
「ん?」
「今はレンタルサイクルで電動自転車が無いか調べ中だし」
「待って……沙漓は諦めてるんじゃないの?」
「なんで諦めるの?皆諦めてないのなら、諦める理由はないよ。じゃなきゃ弓道部を復活させたりしないし。最後まで足掻くんでしょ?」
「ええ。じゃぁ、さっきまでの軽いノリは?」
「ん?だって、そんな重たく考えても疲れるし、自分のペースでね。一応、エントリーは九人で出してあるし」
「え?でも、確かに千歌は五人で出してなかった?」
「うん。だから出す前に確認させてもらって書いといた」
私は額を抑える。沙漓の自由すぎるペースにいちいちツッコんでたら疲れてきた。そもそも、沙漓が普通じゃないのはわかってはいたけど。
「ん。電話だ」
すると、沙漓のスマホに着信が入り、沙漓は足を止めてスマホを取り出したので私も足を止める。
「お姉ちゃん?なんだろ?……もしもし」
電話の相手は海未さんのようで、首を傾げながら通話し始める。ここからだと、向こうの声は聞こえない。
「うん。そうなの!?……あっ、うん。わかった、後で聞いてみるね……じゃっ」
数分程であっさりと電話を切ると、沙漓は「うーん」唸る。
「何があったの?」
「日曜日にお姉ちゃんがこっちに来る……」
「はい?」
「で、十千万に泊まれないかって?」
「待って。どういうこと?」
~☆~
「と言う訳で、その日って空き部屋ありますか?」
『えーっとちょっと待ってて』
僕は千歌さんに電話をして、旅館の空き状況を聞いていた。お姉ちゃんだけが来るのなら、僕の部屋でもいいけど、他にも来るだとか。誰が来るのかは教えてくれなかったけど。
『もしもし。一部屋はちょうど空いてるって』
「なるほど。じゃぁ、予約お願いします」
『どうしたの急に?沙漓ちゃんの部屋で何かあったの?』
「あっ、そう言う訳じゃなくて、お姉ちゃんがこっちに来るとかで、十千万に泊まりたいって」
『へぇ、沙漓ちゃんのお姉さんが……え!?それって』
「と言う訳で、予約名には園田海未で泊まる人数は三人でお願いします」
『あっ、うん』
千歌さんは驚いているみたいだった。まぁ、そうなるだろうけど。
さて、ここからはもう一個の本題だね。すでに、確認は済ましたし。
「で、ここからが相談なんですけど」
『ん?』
だから僕は千歌さんにとある提案をする。やっと巡ってきたおそらく最初で最後の大チャンス。うまく行けば、一番いい状況になるはず。
「遂に来ましたね」
「うん。まさか、予備予選を九人でできるとは思わなかったよ。ありがとうね」
「お礼はまだ早いですよ。言うとしたら全部終わったその時に」
「それもそうだね」
あれから日は経ち、日曜日。やれる限りのことをして臨む予備予選。みんなこの日のために作った和風の衣装に身を包み、皆綺麗だった。
あの日、千歌さんに提案するとすぐに乗っかってくれたので、そこから皆にチャットアプリで連絡を取り、千歌さんに伝えた提案を伝えた。皆そんなことをしていいのか疑問に思ったりしたけど、ちゃんと説明したことで全員賛成してくれた。
「では、僕は皆の荷物を運び終え次第、客席行きますね」
「沙漓ちゃん、お願いね。よし!皆行くよ!」
「うん!」
「最高のライブにしましょう」
「ずら!」
皆を皆の荷物を持つと更衣室を出る。そして、会場の外に出ると辺りを見回す。
「沙漓」
「あっ、お姉ちゃん!」
すると、向こうから声を掛けられた。声の方を見ればお姉ちゃんがいて、お姉ちゃんの方に行く。お姉ちゃんはニット帽と眼鏡を付けていて、これはたぶん身元ばれを防ごうとしてるのかな?元µ’sがいればまぁファンに囲まれる未来しか見えないし。
お姉ちゃんのそばには一台の車があり、ドアを開けると荷物を突っ込む。
「ごめんね。今日はお姉ちゃんの友達と沼津観光って言ってたのに」
「問題ないですよ。元からここに来るつもりでしたから」
「そうなの?あっ!お姉ちゃんのその友達の人にもお礼を言わないと……あれ?他の二人は?」
お姉ちゃんたちが元からここに来るつもりだったのなら、それはそれでいいけど、それでも御礼は言いたいからそう言うと、お姉ちゃんは小さく笑う。どうして笑ったのか分からず、僕は首を傾げる。
「二人とも中にいますから、私たちも中に行きますよ」
「はーい」
お姉ちゃんの友達が二人来てるらしいけど、誰なのかは教えてくれなくて知らない。たぶん大学の友達と思うけど。
僕とお姉ちゃんは中に戻ると、客席に行く。
客席には浦女の生徒は僕を除いて誰もいない。皆浦女で説明会の準備や受付などをしてくれている。生徒会長も理事長もいないのは説明会的に問題な気もするけど、仕方ないから気にしない方向で。
「だーれだ?」
「ふぇ?」
辺りを見回していると、いきなり僕の目元を背後から手で覆われて視界が真っ暗になる。いきなりのことで声を漏らすも、離れてはくれなくて真っ暗。お姉ちゃんが動かないってことは背後の人はお姉ちゃんの友達の人……って。
「穂乃果ちゃん、そろそろ離れてよ」
「あはは。もうばれちゃった」
声に聞き覚えしかなくてはっきりと言うと、サッと離れて僕は振り返る。そこには苦笑いをしている穂乃果ちゃんが居て、穂乃果ちゃんもお姉ちゃんと同じく帽子と眼鏡を付けていた。
「やっほー。夏休みの時振りだね」
「あっ!沙漓ちゃん!」
「あれ?ことりちゃん?」
すると、人をかき分けるようにことりちゃん(帽子+眼鏡装備)が現れた。まさかのことりちゃんの登場に僕の思考は追いつかず、少し考え、全て納得した。
「久しぶりだね。お姉ちゃんの友達って二人の事だったんだ。教えてくれないから謎だったけど、そう言うことなら色々納得かも」
「穂乃果ちゃんがサプライズしたいって言ってね」
「だって、サプライズって楽しいでしょ?」
二人がお姉ちゃんと一緒なら、全てのつじつまが合う。三人とも生でAqoursのライブを見たいって言ってたし、僕の無茶に乗ってくれたことにも。
「まぁ、こういうサプライズなら。それと、ありがとうね。僕の無茶なお願い聞いてもらって」
「ううん。それは別にいいよ。沙漓ちゃんに頼まれなくてもここに来るのは予定に入れてたし。移動もね」
「うんうん。それに私たちが泊まる十千万に予約してもらったしね」
「なら良かった」
「続いては、ナンバー24。Aqoursの皆さんです!」
お姉ちゃんと話しているうちに準備が整ったのか視界の人がそう言い、ステージが明るくなる。ステージには皆が立っており、立ち位置に着く。
「踊れ 踊れ――」
そして、曲が始まる。今回の曲は一年と三年で作った曲で、ダイヤさんの「お琴を入れたい」や果南さんと鞠莉さんの「激しめ(hard)な感じ」、マルちゃんとヨハネの「無」といった意見が合わさった結果、和ロック調の曲になった。あの時は曲中で曲調が変化しまくる物になるのか心配だったけど、そうはならなくてよかった。いや、別にうまくはまってるのならそれでもかまわないんだけども。
そうして曲は終わり、会場は拍手に包まれAqoursの番が終了した。皆のAqoursらしさが出せていたから良かった。たぶん、これなら予選は突破できるかな?
「わー、やっぱり生で見るといいよね」
「ですね。それに、皆楽しそうでしたし」
「うんうん。衣装も可愛いよね」
三人ともAqoursのパフォーマンスに満足したのか感想を口にしていた。
「って、準備しないと!」
「あっ、それもそうだね」
僕はハッとしてそう言うと、お姉ちゃんたちも気付き動き出す。客席を後にして外に出ると、まっすぐにさっきの車の前に行く。
「あっ、向こうの車の鍵貸して」
「ん?はい、どうぞ」
穂乃果ちゃんに言われて、隣に止めていた鞠莉さんから預かっていた鍵を取り出すと、穂乃果ちゃんはそれを受け取り、ドアを開けて運転席に座る。
「何してるの?というか、免許持ってたの?」
「まぁね。海未ちゃんとことりちゃんと一緒に勉強して一緒に取ったからね」
「穂乃果に教えるのは大変でした」
「あはは。でも、途中からはすごかったよね」
穂乃果ちゃんが車を運転する流れになり、まぁいいやと思う。
あの日、お姉ちゃんから日曜日に沼津に来ると聞いたことで、一つ聞いてみた。レンタカーを借りた場合、送ってもらえないか。もし、無理だと言われれば諦めるけど、事情を説明したらあっさりと承諾してくれ、皆に伝えた結果、お姉ちゃんと鞠莉さんでレンタカーを二台運転すれば全員浦女に移動することが可能となった。心配だったのは、お姉ちゃんと一緒に行く人が拒否しないのかが心配だったけど、そこもあっさりといった。今なら、二人だったからOKが出たのだと納得だけど。
「あっ、沙漓ちゃんいたよー」
「ほんとだ!って、海未さん!?それに穂乃果さんにことりさん!?」
「あっ、時間が無いのでパパッと、分かれて乗ってくださいな」
「あっ。道わからないところもあるから、誰か助手席乗ってね」
「あれ?一台は私が運転するはずじゃ?」
「そんな恰好じゃ、運転しづらいでしょ?」
「と言う訳で、この前の四人と五人で別れるってことで」
バタバタしながら、それぞれの車に乗り込む。僕はちゃっかり、お姉ちゃんの運転する車の助手席に乗っている。まぁ、誰も気にしないはず。こっちの車にはヨハネ達旧説明会組が乗っている。こっちには荷物類も詰め込んでるから四人じゃないと厳しいし。終わってすぐに出てきたからみんな衣装のまま。あの衣装で運転はさすがにね。
「では、行きましょうか」
「うん。あっ、そうだ。向こうの車に、拝」
「沙漓は何してるの?」
「いや、たぶん向こうは曜さんとルーちゃん辺りがことりちゃんに衣装のことを聞かれまくってたり、千歌さんとダイヤさんがハイテンションになってそうなので」
「なるほど?」
ヨハネは首を傾げながら、納得?していた。ちゃんと納得しているのかは謎。そうしているうちに敷地の外に出て公道を走り出す。さっさか出てきたから割と道は空いていた。
「それにしても、本当に良かったんですか?今日は観光しに来たって聞いてましたけど」
「沙漓にもさっき言いましたけど問題ないですよ。もとから、皆さんのライブは見るつもりでしたし。どうせならこのまま説明会のライブを見ますし」
「え!?」
「これは、けっこうプレッシャーかも」
「そんなに身構えないでくださいね。先ほどのように楽しくやれば結果はついてきますよ」
「お姉ちゃん、カーナビの設定できたよ」
みんなとお姉ちゃんの会話を聞きながらカーナビのセットを終え、のんびりと浦女に向かって進んでゆく。
どうしてこの時期に~とかこの辺りの観光スポットの話とかわりと和やかな感じで話が進んで行く。
「ふぅ、着きましたね。皆さんは先に降りていてください。準備があるでしょうから」
「あっ、はい。ありがとうございます」
「沙漓はまだ残っていてくださいね。車をどこに止めればいいかわからないですから」
「はーい。部室にちゃんと衣装は置いてあるんで」
「了解。じゃっ、また後で」
四人が車から降り、後ろからも五人が降りると校舎に入って行き、僕たちはとりあえず来賓用の駐車場の方に行く。鞠莉さんには許可は取ってあるから問題ない。
「おーい、海未ちゃん、沙漓ちゃん」
「さて、無事着いたことですし、ステージに行きますか」
「そうだね。次の衣装も可愛いの?」
「うん。可愛いやつだよ」
ことりちゃんの質問に自信満々に答える。それくらいの自信作だと思うし。現に衣装合わせの時はみんな可愛かったし。
ステージに行くとまだ準備中のようだった。まぁ、予定してた時間よりは早く着いたしね。念には念を入れて説明会のラストのイベントに組み込んでおいて良かった。
「さぁ、皆さんお待ちかねのAqoursのステージです!」
視界の声で歓声が沸く。今日の説明会のラストを飾る訳だし、盛り上がるよね。
『今…みらい、変えてみたくなったよ!――』
『想いよ、ひとつになれ――』
『光になろう――』
そうして始まったAqoursのミニライブ。新曲+二曲と短いモノではあるけど、歌い終わると再び歓声に包まれた。やっぱり、前回は予備予選を突破してたからこの辺りの人たちには知られてるからね。それに、お姉ちゃんたちに見られていてプレッシャーを感じていそうだけど、それ以上に楽しそうだった。今日のライブもいい感じだなぁ。
「予選終了と説明会の成功にかんぱーい」
『『『かんぱーい』』』
ライブが終わり、ステージの撤去は明日以降にやることになったからやることを済ませて、十千万で打ち上げをしていた。まぁ、お姉ちゃんたちの宿泊する部屋だから騒ぐのはほどほどにしないとだけど。
「今日は本当にありがとうございました」
「ううん。気にしなくていいよ。沙漓ちゃんにも言ったけど、ラブライブは見に行くつもりだったし、説明会のミニライブも見れたから」
「うんうん。私たちもあの頃のこと思い出したねー」
「ですね。私たちも説明会でライブをしましたし、懐かしいですね」
お姉ちゃんたちはあの頃のことを思い出しているような目をする。そう言えば、お姉ちゃんたちも説明会で歌ったからなぁ。
それから、皆でいろんなことをしゃべった。特にµ’sが好きな三人が穂乃果ちゃんに聞きまくったり、ことりちゃんが衣装のことを曜さんに聞きまくったり、果南さんが効果的な練習をお姉ちゃんに聞いたりなどなど。
そうして時間が経ち、僕たちはそろそろ帰らないといけない時間になっていた。流石に客じゃない僕たちが泊まることはできないし、明日は学校が普通にあるし。
ちなみに、終バスは終わってる……。
~海~
「ありがとうございました」
「また明日~」
曜さんの家の前に着くと、お辞儀をしてから家の中に入って行った。
終バスが無くなったから、私たちはそれぞれの家に送っていた。穂乃果たちには淡島に住んでいるという二人を。私は沙漓たちを送る。レンタカーの一台はもう使わないから返却しに行きがてらなので問題は無い。
「さてと。では行きますか」
「レッツゴー」
「お願いします」
続いて沙漓が住んでるアパートの方に車を走らせる。善子さんは沙漓のアパートの隣に住んでいるからこのまま走らせればいい。
「沙漓はあいかわらずですか?」
「あっ、はい。マイペースですよ」
「ヨハネに聞かないで、僕に直接聞けばいいじゃーん」
「他の人から見た印象を聞きたかったんでしょ?」
「そんなの分かってるよぉ」
ぼやく沙漓に冷静に突っ込む。気兼ねなく言い合える関係になっている辺り、やはりこちらに来てから変わりましたね。秋葉に居た頃はどこか人と距離がありましたし。
「そう言えば、沼津でここだけは押さえた方がいい場所ってどこでしょうか?」
「うーん。三津シーとかマリンパーク?」
「あとは、びゅうおや大瀬埼ですかね?」
「やはり、その辺りですか」
観光だとその辺りが無難なようですね。一応来る前に調べていましたけど、地元の声が一番ですし。
それから、たわいのない話をしていると、目的地の二人の家の前に着く。
「送ってくれてありがとう。お姉ちゃん」
「ありがとうございました」
「では、二人ともちゃんと休んでくださいね」
二人を降ろすと、二人は歩き出す。
「ヨハネ、今日泊まっていい?」
「ん?いいわよ」
「さて。車を返して二人を待つとしましょうか」
「おまたせー」
「待ってませんよ。ちょうど手続きが済んだところですから」
「じゃぁ、宿に帰ろっか」
「ですね」
手続きが終わって外で数分待つと二人が乗っている車がやって来た。私が座席に座ると走り出す。
「良かったの?沙漓ちゃんの所に泊まってもよかったんだよ?」
「いえ、今日は三人での旅行ですから」
「ふーん。やっと海未ちゃん、妹離れできたってこと?」
「別に私はシスコンじゃないですよ。沙漓がひっついていただけで」
なんで、わたしがシスコン呼ばわりされるんですか!納得がいきません!あれくらいは普通の姉妹のそれですよ……たぶん。
「それにしても、沙漓ちゃん楽しそうだったね」
「そっか。穂乃果は春以来でしたね。沙漓と会うのは」
「私は夏に一回会ったけど、皆といるところは初めて見たし、楽しそうだったね」
「あの頃を知ってる私たちからすると感慨深いねぇ」
「穂乃果ちゃん、おばあちゃんみたい」
「穂乃果はそんな歳じゃないよ~」
鞠莉のあの車はオハラグループのものだから使えないということにしておきます。さすがに鞠莉の所有物じゃないはず。いや、そうなのだろうか?
では、ノシ