のんびり天使は水の中 作:猫犬
基本的に六話の内容です。
ただ、違う点が多々あります。
「1,2,3,4.1,2,3,4。そろそろ休憩しましょうか」
「うん、そうだね」
地区大会まであと二週間になった今日。沼津の練習場所で練習していた。で、休憩に入るところ。予備予選の結果は無事突破して、かれこれ一ヶ月。何故か千歌がSaint Snowの鹿角聖良さんと連絡し合う仲になっていたり、善子ちゃんと梨子ちゃんが迷子の犬を拾って世話したり、梨子ちゃんの絵が独特なことが判明したり、練習をしたりして過ごしていた。結果から言えば梨子ちゃんがしいたけちゃんに触れるようになった。スクールアイドル関係ない……。
休憩中に曜がスマホでラブライブの優勝候補を予想するサイトを見つけ、その中には前回決勝や地区予選に出ていたグループが挙げられていた。
「あっ、Saint Snowさんだ!」
「……」
「ん?」
その中には夏のイベントの時にあったSaint Snowの名前もあったらしい。
そして、私はそっと外に出て行く。いつもなら何かしら言って出て行くけど、ちょっと一人になりたい気分だからね。
手洗いで顔を洗うといくつか考えていたAqoursのフォーメーションノートを手に取り、パラパラめくりながら廊下に出る。。
今まで以上のパフォーマンスをしないと地区大会を突破するのは厳しいと思う。そして、可能性はだいぶ上がると思うモノはいくつかある。
でも……。
「かーなんさん」
「ん?沙漓ちゃん?どうしたの?」
いきなり声を掛けられたから勢いでノートを身体の後ろに隠して振り返る。
お手洗いに来たと思うのに中の方に行かずに私の前で立ち止まる沙漓ちゃん。てことは、私に用があったのかな?
「なにか悩みでもあるんですか?もしかして、そのノートに秘密が?」
どうやら、ノートの存在は見えちゃっているみたいだった。まぁ、身体で完全に隠せるサイズではないけど、あまり気にして欲しくはないかな?これの存在を知られれば、間違いなく決行されてしまう。
そして、あの時の二の舞になってしまう。
「ううん。悩みなんてないよ。あるとしても、練習どうしようかなぁとか地区予選突破できるかなぁとかだよ」
「確かに心配ではありますよね。今回は前回の地区予選と違って一曲勝負な訳ですし」
「そうなると、もっとダイナミックなパフォーマンスにしてインパクトを与えるのが無難だろうね」
「ですね。となると、ステージ上でバク転とか君ここみたいに馬跳び系の何かをするとかが……まぁ、バク転はそうそうできる物じゃないですし、ダンスが前後にあるときついか」
バク転と聞いた瞬間、反応しちゃったけど、たぶんばれてないはず。そもそもこれの中身を知ってるのは鞠莉とダイヤだけ。沙漓ちゃんが言ったのは偶然。落ち着いて。
「まっ、悩みがあったらこんな僕ですが相談くらいは乗りますので」
「うん、ありがと。じゃっ、戻ろうか」
「あっ、僕はお手洗いに来たのが目的ですので~」
沙漓ちゃんはそう言って中に入って行った。結局どっちが目的だったんだろ?
~~
「ほんと、どうしよ?」
練習が終わって、夜。私は悩んでいた。沙漓ちゃんには相談してと言われたけど、これは相談していいものとは思えない。相談しても困らせるだけ。
「やっぱり、それしかないかもね」
「ですわね」
でも、二人はこれに賭けてるみたい。確かに、これならお客さんにインパクトは与えられる。でも……。
「ダメだよ。みんなへの負担が大きいし、特にセンターの負担が大きすぎるよ。忘れたの?あの時のことを」
またあの時の繰り返しになるのが怖い。もしかしたら、今度こそ事故になるかもしれない。それが心配。
「忘れるわけないわ。でも、今は九人いるわ」
「わたくしも今回は鞠莉さんの意見に賛成ですわ。それくらいの覚悟が必要だと思います」
「わかってる。でも、怖いんだよ!誰かが怪我をするのが」
「私あの頃と気持ちは変わってないわ」
「それに、これはラストチャンスですわ」
ラストチャンス。今回のラブライブが終われば、私たちはもう卒業するから次が無い。でも、そうそう割り切れる物なんかじゃない。
「でも、できることじゃない。これはできないこと」
「そんなことは無い。あの時だってもう少しで……」
「でも、できなかった。ダメだよ。届かないものに手を伸ばして……そのせいで誰かを傷付けて。それで、また失うのは嫌なの」
無理をしたって、いい事なんてない。また、二年前の様になってしまうだけ。だったら、やらない方がいい。やっちゃいけないんだ。
「果南……でも!」
「こんな物!」
鞠莉は諦めきれないのかそう言う。たぶん、いつまで経っても、私と鞠莉は平行線。
だから、ノートを海に投げる。これさえなければ、千歌たちに伝わらない。そうなれば、あのフォーメーションをやることは無くなる。これでいいんだ。
なのに、
「鞠莉!」
「鞠莉さん!」
ノートを掴もうと鞠莉は海に飛び込んでしまった。鞠莉はすぐに浮かんで来て、その手にはノートがあった。良かった、鞠莉に何事も無くて。ダイヤに引き上げられて鞠莉は海から上がって来る。
なんで、そんなに無理をするの?どうして、そこまでこだわるの?
「否定しないで。あの頃の事は私の大切な思い出。だからこそ、やり遂げたい。あの頃の夢見た私たちのAqoursを完成させたい」
あの頃。あのフォーメーションを考えた頃はできると信じていた。私だって、本当は……。
「果南……」
「果南さん……」
「ごめん。考える時間頂戴」
だから、考える時間が、自分の気持ちに整理を付ける時間が欲しくて、二人にそう言って家に戻る。二人の気持ちはわかる。そして私の気持ちは。
~~
「教えて!」
「そのせいで鞠莉が足を痛めた。みんなへの負担も大きき。今無理するのは……」
翌日。千歌が“Aqoursらしさ”とは何だろうかと口にした。それを形にしたいと言ったところ、ダイヤが話してしまった。あのフォーメーションのことを。
千歌は興味津々でそう言った。わかっていた。千歌が聞けばそうするって。
「なんで?今そこまでしないでいつするの?あの時、みんなで足掻こうって決めたよね?」
「でも……」
「今こそ足掻いてやれることを全部やりたいんだよ!」
「あの時は私がセンターだった。でも、千歌にできるの?」
「大丈夫!絶対にやってみせるから!」
千歌はそう言う。千歌の言ってることはわかる。私だって、本当はやりたい。でも……それでも、私は一歩を踏み出せない。
「果南さん。あのノートを渡しましょう?」
「今こそ、Aqoursをbreak throughする時なのよ」
二人も千歌に期待しているらしい。私だって、千歌に期待したい。
みんなの方を見ると、みんな私をじっと見ていた。その目はみんな諦めたくないという意思が感じられた。
「わかった。でも、無理だと判断したら止めるからね。どんな手を使ってでも」
「うん!」
だから、私は千歌に賭けることにした。千歌なら、みんなならあの時の私たちにできなかったことができるかもしれない。
~千~
「わぁ!」
果南ちゃんからノートを見せてもらって数日。私は砂浜で練習していた。部屋でやってたら美渡姉に怒られちゃったから。でも、砂浜の方が転んでも痛くないからこれで良かったのかも。
「うーん。うまくできない」
あのフォーメーションができれば、決勝に進める可能性が上がる。それに、進めれば入学希望者が増えるかもしれない
だから、諦める訳にはいかない。
「やっぱり、果南ちゃんに言った方が……」
「ダメ!どうにかするって言っちゃったんだから!」
「僕はできないですし、こうなると出来る人のやつを見るのが一番なんでしょうけども」
この場には三年生を除く七人がいた。
でも、みんなあれはできないから、見て覚えることもできない。動画とかで見ても、それはちょっと違くて、できれば生でみたい。
無理だろうけど。
「ずら丸、頑張りなさい!」
「善子ちゃんだって、できてないでしょ?」
「一緒に頑張ろ?」
「こう、都合よくあれができて、教えてくれる優しい人がいればいいんですけど、正直あれをまともにできる人はそういないですよね」
ルビィちゃんたちはドルフィンの練習をしていて、沙漓ちゃんは階段に座った状態で仰向けに寝転んでそんなことを言う。あの頃の果南ちゃんもできなかったわけだから、今のチカにできるのかはわからない。
教えてくれるような人に期待することはできないから、こうして頑張るしかない。
「かよちん。次どこいこっか?」
「うーん。時間が時間だし水族館とかはもうすぐ閉まっちゃうだろうし。あっ、ここからの景色綺麗だよ」
「あっ、ほんとだにゃ!」
「ん?」
「ピギッ!」
すると、道を大学生くらいの二人組が歩いていて、その途中でここからの景色を眺めて立ち止る。その二人を見て、沙漓ちゃんとルビィちゃんは反応していて、私もあの二人に見覚えがあるような?
「花陽さんに凛さん?なんでここに?」
「あっ、沙漓ちゃん!」
「そう言えば、沙漓ちゃんこっちに引っ越してたんだったね」
「私たちは今日が大学の休校日だったから、遊びにね」
「さっきまであそこにいたから」
その二人組はµ’sの小泉花陽さんと星空凛さんだった。沙漓ちゃんとはやっぱり面識があるらしく、三人はそんな話をする。
花陽さんは三津シーを指差してそう言ったから、さっきまでそこにいたらしい。
「それで、沙漓ちゃんはここで何をしてるの?それに、その子たちは……」
「もしや、Aqoursの皆さんですか!あっ、あなたは高海千歌ちゃん」
「あっ、はい。私たちのこと知ってるんですか?」
「もちろん。スクールアイドルの情報は日々集めていますから!予備予選のMY舞☆TONIGHTも良かったです」
花陽さんは私たちのことを知っていたらしく、テンションが高い。というか、知ってもらえていることがうれしい。
「そうだ!よければサインを……あっ、まさか会えるなんて思ってなかったから色紙持ってない!」
「なんというか、想像していたのと違う。もっと大人しい人だと思ってたよ」
「うん。映像とかインタビュー記事でもそんな感じだったし」
花陽さんの持っていたイメージが違うからか、曜ちゃんと梨子ちゃんはたじろいでいた。たしかに、想像と違ったかも。
「凜はこんなかよちんも好きだよ」
「あっ、花陽さん。色紙どうぞ」
「えっ、何処から出した?」
「うん、ありがとう。ぜひこれに」
「あっ、はい」
「もちろん五人もちょうだいね」
「花陽さん、こちらを」
「だから、何処から出したし」
何故か、チカ達はサインを書くことに。ダイヤさんに前にサインの一つくらいは作っておけと言われて作っておいて良かった。みんなも何故かサインを書き、花陽さんは満足そうだった。
ルビィちゃんはµ’sの中で特に大好きな花陽さんに会えたことで、終始テンションがおかしくなっていて、二人にサインを貰おうとしていた。
そして、沙漓ちゃんは何処からか色紙を取り出し、その度に善子ちゃんが突っ込んでいた。結局八枚持っていたことになるけど、本当にどこから出したんだろ?
それから、少し落ち着き、千歌たちが何をしているのか話した。予選に向けて、あるフォーメーションを練習していること、上手くいかないこと。
「なるほど。すごいことをしようとしているわけですね。確かにこれなら予選突破できる可能性は高い……でも、それ故に難しい。そもそも、これができる人は限られているかも」
フォーメーション自体は花陽さんもそう言ってくれたけど、やっぱり厳しいものらしい。
「ふむふむ」
「凛さん、どうですか?」
その隣では果南ちゃんが貸してくれたノートを凛さんと沙漓ちゃんが見ていて、沙漓ちゃんがそう聞いていた。
沙漓ちゃんは何を考えてるんだろ?
「うん。できるかな?」
「ん?」
凛さんはそう言ってノートを沙漓ちゃんに渡すと、軽く準備体操を始める。この時点で、凜さんが何をしようとしているのか予想がついた。
「まさか、凛さん」
「いっくにゃー!」
凛さんはそう言うと共に走り出し、
「にゃにゃにゃ、にゃー!」
謎の掛け声と共にロンダートからのバク転をしてみせた。一発で成功したことに私たちは驚いた。こんなに頑張って練習しているのに……。なんだか、自信がなくなってきたかも。
「千歌ちゃん。凜ちゃんの運動神経がすごいだけで、練習すれば千歌ちゃんもきっとできるよ」
「花陽さん……」
「どう?何か掴めそう?」
花陽さんに励まされ、凛さんは首を傾げてそう私に聞いた。
凛さんは私の為にわざわざやって見せてくれたんだ。だったら、がっかりしないで、ちゃんとしないと!
それに、きれいな物を生で見たことで、なんとなくできそうな気がしてきた。
「はい!うまくは言えないけど、なんというかできそうな気がしてきました!」
「そっか。良かった」
凛さんは安堵したような表情をすると、花陽さんの方を見る。
「かよちん。提案なんだけど……」
「うん、いいよ。せっかくだからね」
凛さんが最後まで言う前に、花陽さんは凜さんが言いたいことが分かったのかそう言って、二人は私たちを見る。一体何を?
「と言う訳で、凜たちが見てあげる。まぁ、明日は授業があるから、少しの間だけどね」
「いいんですか?沼津には遊びに来たはずなのに」
「これも何かの縁ってことで」
「なら、お願いします」
「じゃぁ、凜ちゃんは千歌ちゃんの方お願いね。私は向こうをね。二人はこっちだよ」
二人の気持ちに甘えて、お願いする。せっかく来たチャンスだから。
花陽さんはそう言って、曜ちゃんと梨子ちゃんを連れて、練習に戻ったルビィちゃんたちの方に行った。
「さて、千歌ちゃん。海と山どっちが好き?」
「ふぇ?えーと、海ですけど」
「わかった。じゃぁ、海未コースね」
「ん?気のせいかな?今、お姉ちゃんの名前が聞こえた気が」
凛さんの質問の意味が分からず、とりあえずそう答えると、海未コース?が始まった。沙漓ちゃんは沙漓ちゃんで何か言っていたけど。
まさか、私の選択があんなことになるなんて、この時の私は知らなかった。
~~
「千歌。明日の朝までに出来なかったらこのフォーメーションはやめてもらう」
花陽さんと凜さんに会った翌日。もう少しのところなのに一向に成功せず擦り傷が増えた夕暮。果南ちゃんにそう言われた。
これ以上やっても結果は変わらない可能性が高い。時間的にこのフォーメーションの代わりを練習しないといけない。ライブの出来に影響してしまう。
果南ちゃんとの約束がある手前、拒否することはできない。だから、私は夜通し練習する。
何度も練習しても、この二つを連続してやることができない。
砂浜でとにかく練習する。梨子ちゃんと曜ちゃんが見てくれてるけど、どうもうまくいかない。
もう少し。あと少しでできる気がする。
「何処がダメなんだろ?」
砂浜に寝転がって呟く。
どうしてできないんだろ?どうやったらうまく行くんだろ?
「千歌ちゃん、焦らないで。練習通りにやればきっとできるよ」
「できるよ。絶対に千歌ちゃんならできる!」
「うん!」
二人に励まされて私はもう一度立ち上がる。
できるかどうかじゃない。やるしかない。
「「「「千歌(ちゃん)(さん)!ファイトー!」」」」
いつの間にかルビィちゃんたち四人がそこにいて応援してくれている。
皆がいればきっと……。
「うわっ!」
でも、ロンダートの着地の度に踏み込みが甘くてうまくバク転につなげられずに尻餅をつく。
みんなに応援されて、やったら成功。これってよくあるやつ。
でも、
「あー。できるパターンだろ!?これー!」
曜ちゃんも、梨子ちゃんも、みんなが応援してくれてるのにできない……。
どうしてできないの?このままできずに時間を迎えちゃうの?
「嫌だよ!私、まだ何もできていないのに!」
私はまだ何もできていない。こんなんじゃ、みんなに申し訳ない。せっかく私を信じてくれているのに。
「千歌ちゃんはまだ自分が普通だと思ってる?」
「普通怪獣で、リーダーなのに、みんなに助けられてる。だから何もできてないって思ってる?」
「それは……」
私は何もできていない。今までだって皆がいてくれたからどうにかなっている。私がいなくたって……。
「今こうしていられるのは誰のおかげ?」
「それは……学校の皆に、街の人たちに、曜ちゃんに梨子ちゃんに、みんな……」
「一番大切な人を忘れてませんか?」
一番大切な人?それって誰?皆がいて、学校のみんながいて、街の人たちがいて。他に誰がいるんだろ?
「今のAqoursができたのは誰のおかげ?」
「それは……」
「千歌ちゃんがいたから私はAqoursを始めた」
「私もそう。みんなだって。千歌ちゃんがいたから、今があるんだよ?」
「曜ちゃん、梨子ちゃん……」
私がいたから、二人が、みんなが始めてくれた。でも、私じゃなくてもみんなはきっと。
「自分のことを普通だと思っている人が諦めずに挑み続ける。それはすごいこと。勇気がいる事」
「だから、みんなも頑張ろうと思えた。やろうと思えた」
「確かに、みなそれぞれの理由があってAqoursに入った」
「でも、千歌ちゃんが始めていなかったら、マルはずっと図書館の中だったずら」
「千歌ちゃんのおかげで、ルビィたちはこうしていられるんだよ?」
「みんな、千歌ちゃんと一緒に自分たちの輝きを見つけたいんだよ?」
「みんな……」
てっきり、私は何もできていないと思っていたけど、ちゃんとできてたんだ。それなのに勝手に何もないって思い込んで。そのせいで、みんなに心配をかけた。でも、もう大丈夫。私にはちゃんとあった。今なら多分できる気がする。
私に足りなかったのは、たぶん自信。
私が心の中でできないんじゃないかって疑ってた。私は普通だから、できないんだと。でも、それじゃできるわけがないんだ。
「新たなAqoursのWAVEだね」
振り返ると、鞠莉ちゃんたちがそこに立っていた。そして、陽が昇り始める。
「千歌、時間だよ。準備はいい?」
果南ちゃんはそう言って笑みを浮かべる。大丈夫。今ならできる!
「もちろん。行くよ!」
私はそう言って果南ちゃんのもとに駆けだし、
「千歌、ありがと。諦めないでくれて」
地面に手をついてロンダートをし、そのままバク転をした。
結果は成功。
「やった。できたよ!」
「千歌!」
「わっ!」
綺麗に成功して喜ぶと、果南ちゃんは私にハグをした。果南ちゃんは笑顔で、成功したことを自分の事のように喜んでくれた。
~果~
「大成功だよね?」
「うん。やれることはできたよ。それに、だからこそ突破できた」
地区予選のステージで千歌も私たちもあのフォーメーションを失敗することなく成功させることができた。その結果、私たちは地区予選を突破することができた。
結局、私の心配は杞憂だった。千歌に、みんなに負担があるからって、ダイヤと鞠莉の言葉に耳を逸らして、一人拒絶して。そのくせ、心の中では千歌ならもしかしてと期待して。もっと素直になっていた方がよかったのかな?
今更なことだし、過去は変えられないから、まっいっか。結果として乗り越えられたんだし。
~~
「99人……あっ」
予選を突破したけど、入学希望者の数は足りていなくて、鞠莉がお願いして期限を五時まで延ばしてもらった。でも、それでも届かなかった。あと一人。無情にも募集は終了してしまった。
諦めきれず、期限を少しでも延ばしてもらおうとするけど、それを止める。私だってできればそうしたい。でも、ただでさえ期限を二回も延ばしてもらったのに、さらに頼むのはもう無理だと思う。これ以上やれば、鞠莉の立場も危うくなる。
浦女の廃校は決まってしまったんだ。
~☆~
「じゃぁね。二人とも」
「じゃぁね」
「うん。沙漓ちゃんも弓道頑張りなよ?」
二人が沼津に来ていた夜。二人が付き合ってくれたおかげで、みんな前よりもだいぶよくなって来ていた。千歌さんももう少しで完成しそうなところまで来ていた。
終バスが終わっちゃったから美渡さんにお願いしてどうにか駅に帰還。もうすぐ終電が来るから二人を見送る。
まさか、凜さんがうまく説明できないからって、擬音多めの説明をして、それが千歌さんに伝わってしまったのは驚きだった。あと、花陽さんも五人に的確にアドバイスもしていた辺り、本当にスクールアイドルが好きなのと凜さんの幼馴染だなぁって感じた。
「もちろん!そう言えば、どうだったの?沼津観光は。何か掴めた?」
「あれ?なんの事?」
「流石にこんな時期に来る時点で何かあったと思うよ。それで、気分転換になんとなくここに来た。陸上で何かあった?」
「あはは。流石沙漓ちゃん。海未ちゃんと同じでよく見てるね。ちょっと記録が伸び悩んじゃって。それで、海未ちゃんに相談したら、一日思いっきり遊べば何か変わるかもって言われて」
「そして、おすすめの場所でここを紹介されたの。結果的には何か見えたかな?」
「ならよかった。次はもっとゆっくりしていってね」
「うん。じゃぁ、そろそろ行くね」
「では!」
僕たちはそう言って別れた。
「なんで、お姉ちゃんは沼津を進めたんだろ?」
そんな疑問もあったけど、これは気にするべきじゃないよね?
~~
「今日は練習、やめておこうか」
ラブライブの地区予選を突破したけど、廃校は覆せなかった。鞠莉さんが掛け合って、期限を五時まで延ばしてもらったけど、届かなかった。
今までのことは無駄だったのかな?結局足掻いてきたのに、廃校は阻止できなかった。
それでも、ラブライブの決勝はあるから練習は行われる。
でも、みんな明るく振る舞っているけど、気持ちの整理には時間が必要だった。
「どうして?平気だよ」
「ごめんね。無理にでもやるべきだと思ったけど、気持ちの整理が必要だよね?」
「やっぱり考えるべきだよね?決勝に出るかどうか」
「どうして?決勝だよ?それに、三人が卒業しちゃうから最後のライブだよ?」
「本当にそう思ってる?ちゃんと考えよ?ここにいるみんなで」
そう言って、今日と明日は練習が無くなり、それぞれ家に帰った。僕は特に何も言うことが出来ず、ヨハネと別れた。
~~
「はぁ、どうしたものやら。僕は裏方だから、みんなの意志に任せるべきなんだろうけど……」
翌日、屋上で塀に身体を預けて悩む。
僕はサポートするのが役目。だから、決勝に出ろとか、諦めないでとか言う訳にはいかない。本来ならそういうことを言うべきなんだろうけど、これはみんなが決めること。
でも、期待したいこともある。僕としても願いたいことはある。
屋上から眺めれば、そこには廃校が決まったのに、部活をする生徒の姿。練習しても何も変わらないのに。みんな、浦女での思い出を少しでも作ろうとしている。残り僅かな時間を悔いが残らないように。
だから決めた。確かに、廃校は覆らない。浦女は無くなる。でも、あったことは、思い出は皆の記憶に残る。
みんなに決めてもらおうと思ってたけど、やっぱりわがままは言いたい。少しでも皆が足掻く気持ちが、輝きたいという気持ちがあることに賭けて。
思いつけば行動にさっさか移す。正直、どうなることやら?でも、僕だけの声じゃ足りない。みんなの声が、力が必要になる。
だから、僕はそこに行く。
「先輩。ちょっと相談とお願いがあります。Aqoursのことについて。Aqoursの皆にどうして欲しいですか?」
入学希望者数が違ってますが、その辺はなんとなくですので。
そして、μ´sが全員登場した。にこが一瞬だったり、のぞえりが番外編の方だったり、真姫がAqoursと絡んだりしてないけど。