のんびり天使は水の中   作:猫犬

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タイトルの通り12話のやつです。


WATER BLUE NEW WORLD

「ここまで来たんだ」

 

明日に控えたラブライブ決勝に向けて、私達は浦女に集まっていた。私は教室であの夏のイベントの時の紙を眺める。

あの時は“0”だったけど、今はラブライブの決勝にまで来れるようになった。

 

「ちーかちゃん、そろそろだよ」

「うん。全力で挑まないとね」

「そうだね。この時の為にすっごく練習したもんね」

 

曜ちゃんと梨子ちゃんに言われて、そろそろだから席を立つ。ここまで来たからには、全力で挑んで優勝する。その為に、十分練習はしてきたと思う。

 

「毎日朝早くから夜遅くまで」

「がんばルビィしたもんね」

 

教室を出て下に降りようとすると生徒会室の前にダイヤさんとルビィちゃんが待っていてそう言う。毎日のように朝練をして、終バスが近づくまで練習に明け暮れてきた。だから大丈夫なはず。

 

「それでも皆一度もサボらなかった」

「弱音は言ったけどね」

 

階段を降りると、果南ちゃんと鞠莉ちゃんが理事長室の前に待っていた。果南ちゃんが言う通り、誰もサボろうとすることは無かった。練習が辛かったことは何度もあったけどね。

 

「とにかく朝は眠かったずら。ねっ、善子ちゃん」

「ヨハネ!流石我がリトルデーモン達!褒めて遣わす」

「ヨハネ、今日はそう言う方向で行くの?」

「ありがと」

 

そして、昇降口前に行くと三人が待っていた。三人は相変わらずの調子で、こうして全員そろった。

校門前に出ると、振り返り校舎を見る。

もうすぐここは無くなる。だから、ラブライブで優勝して、この学校の名をラブライブの歴史に残す。そして、私たちの輝きを見つけてみせる。

 

『『『行ってきます!』』』

 

私たちは校舎にお辞儀をして、出発するんだ。

 

 

~☆~

 

 

「ふぅ、久しぶりに戻って来た~」

 

電車に乗ってやってきました東京。まぁ、明日が決勝だから今日はのんびりとしつつ最終確認をしていくんだけど。ちなみに、電車が事故ってたどり着けませんでしたじゃあれだから、一日前に来てたりする。

 

「それで、これからどうするんですか?」

「とりあえず、あそこ行こっか。神田明神に!」

 

千歌さんに聞くと、やっぱりまずはそこだった。まぁ、祈願はしないとね。

と言う訳で、秋葉原まで電車に揺られて、なんだかんだで神田明神にたどり着く。時間が良かったのか他に人の姿は見えない。

とりあえず、境内に行って横一列に並ぶと祈願する。

 

「みんながライブを楽しんで。そして、優勝できますように!」

 

それぞれ願いを言う中、僕もそう願う。みんなが楽しそうに歌っているのが一番好き。だからこそ、楽しんでほしいし、さらに言えば優勝してほしい。

祈願が終わって絵馬を見るとそこには浦女の皆の“Aqours優勝”を願うものがあった。でも、他のグループも同様に優勝したいという思いがそこにあった。

 

「お久しぶりです、みなさん」

「聖良さん」

「理亞ちゃん」

 

すると、Saint Snowの二人がやって来た。やっぱり二人はここに来たんだ。

ラブライブの決勝のステージはまるで雲の上のよう。聖良さんはそう言ったけど、いまいち実感はわかない。ルーちゃんたちは理亞さんに色々言われていた。

 

「千歌さんは勝ちたいですか?それは誰のためのラブライブですか?」

「……」

「きっと、それをはっきりさせないで臨めば後悔すると思います」

「はい……」

 

そして、千歌さんは聖良さんの言葉に返すことができなかった。

 

 

~曜~

 

 

「すぅすぅ」

「前来た時もこんな感じだったよね」

「うん。注目されて行けると思ったのに実際は……」

「なに弱気になってるのよ」

「練習する?」

 

泊まる旅館にやって来て、夕飯を食べ終えて今はゆっくりしていた。沙漓ちゃんは「眠い」とか言って枕を引っ張り出してきて机の上に置いて寝ている。

前来た時は沙漓ちゃんの実家だったけど、前と違って三人増えたことと、この時期はちょっと家がバタついてるとかで、今回は旅館に泊まることになった。

七人で来たイベントの時もこんな感じで和気あいあいとしてたっけ?

千歌ちゃんは心配そうな顔をしているからそう聞く。私も心配ではある。

 

「大丈夫だよ。十分頑張ってきた。後は今までの私たちを信じよ?」

「うん……そうだね」

 

でも、果南ちゃんはそう言う。果南ちゃんの言う通り、確かに今まで頑張ってきた。それに、もしかしたら無理にやりすぎて怪我でもしたらそれこそまずいよね?

それでも千歌ちゃんの表情はすぐれない。たぶん、明日の決勝に緊張しているのと、私たちの輝きがちゃんと形として見えていないからだと思う。

そんな千歌ちゃんの表情を見ていると、やっぱり笑っていてほしくなる。

 

「曜ちゃん?」

「おりゃ!」

 

だから、私は押入れから枕を引っ張り出すとそのまま投げる。こういう時は身体を動かすに限る。身体を動かせば自然と落ち着くと思うし。私はそうだし。

飛んで行った枕は千歌ちゃんに当たり、続いて鞠莉ちゃんと果南ちゃんに向けて投げて二人に当てる。

 

「シャイニング、トルネード!」

「うわっ!」

 

そしたら、鞠莉ちゃんから反撃が来てしまった。その際に持ってた枕が鞠莉ちゃんの方に飛んで行っちゃった。それを起点に三年生三人が投げ合い始め、その流れ弾がみんなに当たり、みんなも投げ始める。投げていないのは怯えているルビィちゃんと花丸ちゃん、枕を盾にして身を護る梨子ちゃんに、寝ている沙漓ちゃん。

 

「枕を盾にしてからの、曜ちゃん!」

「任せるであります!」

 

鞠莉ちゃんが千歌ちゃんに向けて投げると、持っていた枕を盾にし、千歌ちゃんの声と共に後ろにいた私が反撃する。でも、いとも簡単に避けられてしまう。

それからも枕投げは続き……。

 

「くらいなさい!堕天黒炎弾!」

「シャイニーシュート!」

「とりゃ!」

「甘い!」

「おりゃ!」

「くらえ!」

 

六人が同時に枕を投げたことでその全てが空中でぶつかり、その結果、勢いがなくなって落下する。

 

「あっ!」

ボスッ!

「ん、ん~」

 

枕は寝ていた沙漓ちゃんの頭に直撃する。それも六発あるから枕に埋もれる。というか今までよく当たらなかったな。その結果、沙漓ちゃんは目を覚ました。

沙漓ちゃんはもぞもぞと枕の山から出てくる。

 

「ふわぁ、もしかしてお風呂の時間~?で、なんで僕は枕に埋まってるの?」

 

沙漓ちゃんは寝ぼけた状態でお風呂の時間かと思っているようだった。確かにお風呂には今の時間なら行って問題無いはずだけど。

でも、枕に埋もれている現状に気付くとそう聞いた。

 

「えーと……」

「まさかとは思いますけど、この部屋で枕投げなんてしてませんよね?明日が決勝というこの状況で」

「それは、まぁやってたけど」

「なるほど」

 

言い淀んでいるうちに、善子ちゃんが自白した。でも、ここは白を切るべきだったんじゃ?

沙漓ちゃんは善子ちゃんの言葉で納得すると、手近なところにあった枕を手に取る。

そして、

 

ビュンッ!

「わっ!」

 

その枕は一直線に善子ちゃんのお腹に当たり、善子ちゃんが倒される。

 

「待って、今見えなかった……」

「そう言えば、ドッジボールの時も球が速かったような?」

「安眠妨害の恨み」

 

えっ、怒ってるのそっち?予選前にこんなことしてたのに対してなのかと思ったのに。

それから、沙漓ちゃんの枕に果南ちゃん、ダイヤさん、鞠莉ちゃん、千歌ちゃんと倒されていった。みんな反撃したけど、何故か全部キャッチされてしまった。ルビィちゃんと花丸ちゃんは部屋の隅に逃げていたから被害にあわず、私と梨子ちゃんは運よく標的にここまでされなかった。三人は枕投げに参加してないから冤罪だけど。

 

「嘘……みんながこんな簡単に……」

「さて、次は誰が眠る?」

 

沙漓ちゃんは私たちに向かってそう言い、誰も返答できなかった。そもそも、三人は枕投げに参加してないし。でも、ここで私が名乗り出たら餌食になっちゃう。

 

「とりあえず、枕を持っている曜さんを」

「え?私?」

「かく、ご」

パタンッ

 

沙漓ちゃんは枕を投げようとしたところで突然ぷつんと倒れ込む。その後ろには枕を投げた体勢の梨子ちゃんがいた。

えーと、梨子ちゃんが倒したってこと?

 

~~

 

「ふぅ、危なかった。梨子ちゃんが倒してくれて助かったよ」

「まさか、梨子さんまで投げるとは」

 

あの後、みんなすぐに起き上がって、私たちはちょっと外の風にあたりに来ていた。

 

「もともとは曜ちゃんが始めたことだけどね」

「あはは。でも、少しは気が晴れたでしょ?」

「まぁ、たしかにそうだけど」

「梨子ちゃん?」

 

梨子ちゃんは浮かない顔をしていて話に入って来ようとしない。どうかしたのかな?

やっぱり、音ノ木坂に寄っておきたかったのかな?

千歌ちゃんもそう思ったのか梨子ちゃん聞いたけど、梨子ちゃんは首を振った。でも、嘘ついてることは一目で分かる。

 

「明日は会場集合にして、それぞれ行きたい場所に行こっか」

「でも……」

「私ね。自分を見つめ直す時間が欲しいの」

「私も賛成であります!きっとみんなも必要だと思う!」

 

だから、千歌ちゃんのその提案に乗る。私も明日の決勝に向けて気持ちを整理したいし。

 

 

~花~

 

 

昨日の夜に決めた大会前に自分の行きたい場所に行く。マルの行きたい場所、落ち着く場所は本のある場所。だからこそ、この図書館に来た。

図書館みたいに静かなこの空気が好き。でも、今はみんなといるあの空気も好き。

 

「花丸ちゃんは勝ちたい?」

「うん。マルは今までずっとルビィちゃんと二人で本を読んでいれば幸せだったけど、みんなのおかげで外の世界を知ることができた。みんなと一緒なら色々なことができることを知れた。だから勝ちたい!それが今一番楽しいずら!マルをスクールアイドルに誘ってくれてありがとう」

 

昨日千歌ちゃんにそう聞かれてマルはそう答えた。

スクールアイドルをしたことで色々なことが出来た。スクールアイドルを始めるまではマルの世界は狭かったけど、今は世界が広がった。だからこそ、もっともっと色々なことを知りたい。優勝したらマルはどんな気持ちになれるのか、その後みんなとどうなって行くのか。きっと、そうなれば楽しいに決まっている。

 

「あっ、そろそろ時間だ」

 

マルは本を閉じると席を立って本を元の場所に返す。もう大丈夫。ラブライブの決勝を前にして緊張してたけど、この気持ちがあれば大丈夫。本を読んだからか自然と気持ちは落ち着いた。

 

見に行こう。マルの未来を、輝きを。

 

 

~ル~

 

 

昨日の夜に決めた大会前に自分の行きたい場所に行く。ルビィの行きたい場所はここ、アイドルショップ。Aqoursに入る前からスクールアイドルが好きだった。

スクールアイドルを見ていればそれだけで気持ちがわくわくしていた。でも、今はみんなと一緒にスクールアイドルができている。気持ちがわくわくしている。

 

「ルビィちゃんはラブライブ勝ちたい?」

「うん。ルビィは、一人じゃ何もできなかったけどスクールアイドルになれてる。もちろん勝ちたい気持ちもあるけど、今は大好きなみんなと一緒にステージに立てることが、歌えることが一番うれしい」

 

スクールアイドルをするまでは自分の殻に閉じこもっていて、やりたいことがあってもできなかった。でも、今は違う。スクールアイドルになりたいとお姉ちゃんに言えた。理亜ちゃんと一緒にイベントで歌えた。

スクールアイドルになれたからこそ、この一年で成長できたと思う。まだ、頼りない所はあると思うけど……。

ラブライブで他のグループに勝ちたい。その気持ちはある。でも、それ以上に、大好きなスクールアイドルをしていること、みんなと一緒にあのステージに立てることがうれしい。

 

だから、見つけるんだ。私自身の輝きを。

 

 

~ヨ~

 

 

昨日の夜に決めた大会前に自分の行きたい場所に行く。私の行きたい場所……は特に思いつかなかった。だから、歩いていてそこを見つけた。

この街が見渡せる橋の上。この街にはたくさんの人がいる。その中には私のリトルデーモンもいる……はず。

 

「ラブライブ勝ちたい?」

「勝ちたいに決まってるでしょ!世界中のリトルデーモンたちに私の力を知らしめるために。優勝するために私の力は必要不可欠。くっくく、まっ、仕方ない。もうしばらくAqoursに堕天して、力を貸してやらんことも無いわ」

 

私がスクールアイドルを始めたのは、ヨハネとしての自分を生き生きと出せると思ったから、リトルデーモンが増えると思ったからっていう理由だった。現にAqoursに入って以降は放送の視聴者数も増えたし。だから、これからもそう思っていた。

昨日の夜に千歌に勝ちたいか聞かれた。勝ちたいかなんて、もちろん勝ちたいに決まっている。千歌にはリトルデーモンを集めるためにって言ったけど、どっちかといえばみんなと最高の思い出を作りたいって思ってる。まっ、正直に言うのが恥ずかしかったからあんなこと言っちゃったけど。

私たちの存在を見てくれる人全ての胸に刻み付けて、永遠のものにする。そうなれば、浦の星女学院のスクールアイドル、つまり浦の星女学院の名も刻まれる。

 

それができれば、私はもっと強くなれる。その時、私の輝きもきっと。

 

 

~果~

 

 

「果南ちゃんは明日勝ちたい?」

「私はせっかくここまで来たからには勝ちたいよ。でも、それ以上に楽しみたい。鞠莉とダイヤと、みんなと一緒に最後のステージを楽しみたい。本当は清々してるよ。やっと終わるんだから」

 

昨日の夜に決めた大会前に自分の行きたい場所に行く。私はやっぱり海を見ると落ち着く。だから、海に来た。海は私の気持ちを落ち着かせて、軽くしてくれる。不安だった気持ちを包んで癒してくれる。海は私の大切な場所。

二年前にした鞠莉との仲たがいが解決して、ダイヤと三人で今のAqoursに入って、遂にここまで来られた。ここまで来られたからには、やっぱり勝ちたい。そして、これがラブライブに出られる最後の機会だからこそ、すがすがしい気持ちで終わりにしたい。楽しかったって気持ちで終わりにしたい。

ラブライブという大きな海に飛び込んだら、きっと楽しい。優勝すればもっと楽しいと思える。ううん、今この瞬間もわくわくしている。みんなと大きなステージで踊れるのだから。

 

「だからこそ勝ちたい。今をもっともっと楽しみたいから」

 

掴んでみせる。私の輝きを。

 

 

~鞠~

 

 

昨日の夜に決めた大会前に自分の行きたい場所に行く。私はこれといった場所が思い付かなくて、果南について行こうかとも思ったけど、一人になる時間がやっぱりほしくてこの街を見て回った。そして、この街と川が一望できるこの橋で立ち止る。この街には多くの人が行き交っている。動き続けている。

 

「鞠莉ちゃんはラブライブで勝ちたい?」

「もちろんよ。理事長としては全校生徒の為に勝たなきゃいけないと思ってる。でも、少しわがままを言うなら、Aqoursとして勝ちたい。このメンバーでこんなことが出来るなんてなかなかないしね?」

 

千歌っちに「勝ちたいか」と聞かれて、私はそう答えた。あんなにも私たちのことを思ってくれるみんなのためにも勝たなきゃいけない。私は浦の星の理事長なのだから。

でも、やっぱりAqoursのメンバーとして、Aqoursの為に勝ちたいって思ってる。果南とやっと仲直りをして、こんなにも大きなステージに上がれる。思い浮かぶのはAqoursの皆との日々、果南とダイヤと始めたあの日々。

 

「シャイニー!」

 

だからこそ、輝いてみせる!私の、私たちの輝きで。

 

 

~ダ~

 

 

「ダイヤさんは明日の決勝勝ちたい?」

「もちろん勝ちたいですわ。浦の星全校生徒の想いを背負っていますから。勝ってみせますわ。それとAqoursの黒澤ダイヤとして、誠心誠意歌いたい。どこにいても歌を届ける。それが誇りですわ!」

 

昨日の夜に決めた大会前に自分の行きたい場所に行く。わたくしの行きたい場所で思いつくのはやはりここ、神田明神。µ’sが練習していた場所の一つにして、スクールアイドルの聖地の一つ。

ここでお祈りしてから、決勝に臨みたかった。それと、絵馬に願いを書きたかった。わたくしの書く願いは現実になるのだから。

 

鞠莉さんと果南さんの喧嘩が終わり、再びスクールアイドルをすることができた。ここまで来た以上、ラブライブで勝って優勝したい。浦の星の生徒全員の想いを背負って臨むのだから。でも、わたくしはわたくし。浦の星女学院の最後の生徒会長にしてAqoursのメンバーの一人、黒澤ダイヤ。スクールアイドルは聴く人に歌を、想いを届けるモノ。だからこそ、わたくしは届ける。それが届いたからこそ、ここまで来られたのだから、わたくしの信念にして誇りを貫く。

 

一度は諦めた輝き。今こそ再び手を伸ばすために。

 

 

~曜~

 

 

「千歌ちゃん、どうぞ!」

「曜ちゃん?どうしてここに?」

「ん?だって、始まりはここだったからね」

 

昨日の夜に決めた大会前に自分の行きたい場所に行く。どこに行きたいか考えたら思いついたのは全ての始まり、春休みに来たここだった。ここで千歌ちゃんがµ’sを知って、始まったんだ。

さっきもらったチラシを千歌ちゃんに渡す。そして、強風が吹いてチラシが空を舞う。あの時もこうやって渡されて、チラシが風に飛んで行った。あの時は地面に散らばったチラシを私は拾ってたけど、

 

「曜ちゃん!」

「千歌ちゃん!」

 

今は一緒に走り出す。そして、UTXの前の画面までたどり着く。今は千歌ちゃんと一緒。

 

「見つかるかな?あの時見つけたいって思った輝き」

「きっと見つかるよ。あとすこしで、必ず」

 

千歌ちゃんはあの時のことを思い出しているのか、モニターをじっと見てそう呟く。輝きが見つかるかはわからない。でも、信じれば繋がる。きっと見つかる。

 

「勝ちたい?ラブライブ、勝ちたい?」

「もちろん。やっと一緒にできたことだもん。勝ちたいよ。でもね。千歌ちゃんと、みんなと一緒に楽しみたいって気持ちもある。だから、いいんだよ。いつもの千歌ちゃんで。大丈夫。未来に臆病にならなくて、いいんだよ?」

 

千歌ちゃんの背中に顔を当てて、私は気持ちを口にする。

千歌ちゃんと一緒に何かをやり遂げたいってずっと思っていた。そして、やっとスクールアイドルで叶えることができる。優勝できてもできなくても、私の夢は叶う。でも、だったら勝って、優勝して、最高の形でやり遂げたい。そうすれば千歌ちゃんの探している輝きも見えてくるって信じてる。

 

「一人じゃないんだよ?千歌ちゃんは!」

 

私の輝き、みんなの輝き、千歌ちゃんの輝き。全部が同じとは限らない。でも、きっとそれぞれの輝きが見つかるって信じてる。

 

 

~梨~

 

 

昨日の夜に決めた大会前に自分の行きたい場所に行く。

もちろん、行きたい場所は音ノ木坂。私はここが好きだったのだと気づけたのだから。ここでの辛い記憶も今の私の大切な思い出。その記憶があったからこそ、私はより強くなれた。

沙漓ちゃんが手を回してくれたのか、すんなりと中に入らさせてもらえた。だから、思いっきりピアノを弾くことができた。

ピアノを弾いていると、音色と共に今までのことが思い出される。気持ちが落ち着いた。

 

「梨子ちゃん、ピアノ弾けた?」

「うん、弾けたよ」

 

待ち合わせ場所はここじゃなかったけど、なんとなくここに居る気がして来てみれば、やっぱり二人はそこにいた。

千歌ちゃんに聞かれて、ちゃんと頷くことができた。

 

「そっか。梨子ちゃんはラブライブ勝ちたい?」

「うん。私、自分が選んだ道が間違っていないって心の底から思えた。辛くてピアノから逃げた私を救ってくれた、みんなと出会えたことこそが奇跡だったんだって。だから、勝ちたい!この道が本当に良かったって証明したい!今を精一杯全力で、スクールアイドルをやりたい!」

 

私がスクールアイドルをしてきたことが正しいと思える。だからこそ、ピアノともう一度向き合えた。スクールアイドルが、みんなとの出会いが私を救ってくれた。だからこそ、私みたいな人に届かせたい。諦めないでと。

そして、私たちがここまで来られたのだから、全力でスクールアイドルをして、ラブライブに勝って、優勝して証明したい。

 

私の輝きがそれなのだと証明するために。

 

 

~千~

 

 

「千歌ちゃんはどう?勝ちたい?」

 

聖良さんの言葉に対する答えは、皆に聞くまではよくわからなかった。でも、みんなに聞いた今なら分かることがある。

ポケットに入れていたあのイベントの紙を取り出す。

あの時は0だった。でも、あれから1になって、10になってどんどん増えていった。一歩一歩をみんなと進んできたんだ。

 

「0を1にして一歩ずつ進んできた。そのままでいいんだよね?普通で、怪獣でいいんだよね?だから、私も全力で勝ちたい!勝って、輝きを見つけたい!」

 

スクールアイドルをやりたいと思った全ての始まりは、µ’sみたいに輝きたいって想いだった。私が普通だからどうなるか不安だった。でも、曜ちゃんと、梨子ちゃんと、みんなと一緒にスクールアイドルをしてきたことでわかった。

誰のためのラブライブか。みんなの為にって思ってたけど、やっぱり私たちの為のラブライブなんだ。私は輝きを見つけたい。

普通の私でも、諦めずに足掻き続ければ届くのだと。途中で廃校騒ぎになったりして目的は変わっちゃったけど、やっぱりこれだけは譲れない。譲りたくない。きっと全力で挑めば私が探し求めていた輝きが見つかるって信じてる。

 

絶対に輝きを掴んでみせるんだ!

 

 

~☆~

 

 

「沙漓ちゃんは私たちに勝って欲しい?」

「ん?もちろん勝ってほしいですよ。でも、それ以上にライブを楽しんでほしいです。前にも言った気もするけど、みんなが楽しくないと、聴く人は楽しくなれない。だから、楽しんで、その上で優勝してほしいです。それが僕の気持ちであり、願いですよ」

 

昨日の夜に千歌さんに聞かれた。僕はステージに立つわけじゃないし、これは僕の願い。みんなが楽しくやってくれればそれでいい。きっと、そうすればいい結果が来ると思うから。そして、僕はそんなみんなの歌を聴きたい。

 

みんながそれぞれ行きたい場所に行く中、僕は家にいた。まぁ、お姉ちゃんは何処かに行ってるし、お母さんたちもバタバタしてるんだけど。

ここが一番落ち着くし、部屋にいれば邪魔にもならないだろうし。

そう思いながらパラパラと昔のアルバムを眺めて過ごす。アルバムを見ていると改めて思う。

 

「ほんと、僕。写真に写って無いなぁ」

 

そのほとんどがお姉ちゃんや穂乃果ちゃんたち。よくよく考えると、こっちにいる頃はそんなに写真撮ってないか。あるのは中学の頃の弓道の大会で撮られた写真くらい。

そう考えると、内浦に行った後の方が……あっ、写真撮ってばかりで僕自身は撮られてないや。それからAqoursのPVを見たりしながら過ごしているうちに集合時間が近づいてきた。

 

「そろそろ行かないと」

 

そんなわけで、家を出てAKIBA DOMEに向かっていると三人の姿が見えた。

 

「ライブが終わり、学校が統廃合になっても」

「心配いらないずら。統廃合になってもマルとルビィちゃんと善子ちゃんと――」

「僕も混ぜろ~」

「沙漓ちゃんの契約は絶対ずら」

「うんうん。新しい場所になっても」

 

なんか、僕の名前が聞こえなかったから混ざりに行くと名前が加えられた。被せる前に“と”って聞こえたから杞憂かもだけど。

 

「なによ。人のセリフ取って」

「ありがと」

「感謝すルビィ」

「もう!」

 

そう言って、二人は走り出す。

ヨハネは二人を追いかける。

 

「置いてくな~」

 

だから、三人を追いかける。大通りに出るとちょうど千歌さんたち三人が横切り、道路の向こう側では三年生三人の姿も見えた。

そんなわけで、AKIBA DOMEに向かって全員走り始める。

 

「さぁ、行くよ!1!」

「2!」

「3!」

「4!」

「5!」

「6!」

「7!」

「8!」

「9!」

「10!」

 

歩道橋を登りながら掛け声を言い、歩道橋の中心で僕たちは順番にそれぞれ親指と人差し指を立てて“0”を作り、

 

「0から1へ」

 

“1”に変える。

これから、みんながラブライブに勝つために。優勝するために。そして、輝きを掴むために。

 

「今、全力で輝こう!Aqours。サーン――」

『『『シャイン!』』』

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