のんびり天使は水の中 作:猫犬
今回はHPTのPV寄りの仕様です。と言っても、やっぱり多々違う点がありますけど。
時系列は秋のある日であり、ラブライブの結果などは知らないので一切触れません。
夏休みも終わり紅葉が綺麗になった秋のある日。
Aqoursの練習が今日は休みで、みんな各々好きなことをしていた。といっても、千歌さんは作詞、梨子さんは作曲をしているらしいけど。
「さて、今日は何しようかなぁ」
そして、どっちのお手伝いもできない訳で、僕は暇して沼津の街をフラフラしていた。正直なところ家でゴロゴロしていればいいのかもだけど。
でも、それはそれで面白みに欠けるし……。あっ、ちょうど見たい映画があったんだった。って、三島の映画館が一番近いのか。まぁ、あっちまで行こうかな?上映までの時間もあるし。
終ったら、今回の曲は列車・電車がコンセプトだから、そういうのでも見に行こうかな?編集のヒントになりそうだし。
~果~
「はぁー、なんで今回は私がセンターなんだろ?」
練習のないその日。私は教室の椅子に座って項垂れていた。新曲を作るからって話になって、私も賛成だったんだけど、今回のセンターが私になってしまった。私よりもみんなの方が可愛いんだから、他の皆の方がいいんじゃないの?
「うーん、といっても決まったものはもう変更できないだろうし諦めよ。どうしようかなぁ」
千歌と梨子ちゃんが作詞作曲を始めている訳だから、ここで待ったをかけるのはあれなんだよね。でも、こんな状態じゃ。気分転換にどこか遠くにでも行こうかな?
まぁ、日帰りできる範囲にしないとだけど。
と言う訳でバスに揺られて沼津駅にきたけど、どこ行こう。うーん、長岡の方でいっか。
行き当たりばったり感があるけど気にせずに電車に乗り、三島に行く。そして、たどり着くと伊豆箱根鉄道に乗り込み席に座る。お昼過ぎという微妙な時間なだけに人は少なく、この車両には私だけだった。
一人の方がのんびりできるから、これはこれでいっか。こうやって揺られていれば何か思いつくかもしれないしね。
「はぁ、あてもないわけだけど、どうしよ。というか、やっぱりセンターをやる自信がないよ」
なんて思ってたけど、座席に座って外の景色を眺めなていると、すぐにセンターという名のプレッシャーで心配になる。千歌も曜もなんで、センターでちゃんと踊れたんだろ?
「はぁー、こんなに悩むのなら、海に潜ってた方が良かったかな?」
電車に揺られている間にも悩んでしまい、こんなことならいつも通り、海に潜った方良かった気がする。海の中なら気も紛れただろうし。
そうして考えているうちに窓からこぼれる日の光の温かさに私は眠りに落ちた。
~☆~
「小説で読んでいたとはいえ、音と動きが付くとやっぱりいいねと、予定を詰め込んでるし、そろそろ行かないと」
目的の映画を見終え、感傷に浸っていた。とりあえず、満足したので次の予定に移らないといけないなぁ。あっ、バスがちょうど行った後だ……ちょっとの距離だし歩くかな?運動は大切だよね
「うーん、電車とか見てもあんまり案が浮かばないなぁ。こんなことなら誰かと一緒に来ればよかった」
映画館から駅まで歩いて行き、着くとパシャパシャとデジカメで電車の写真を撮っていた。でも、こうPVで使う案としてはピンとくる感じがなくて困ってる感じ。はてさて、どうしよう。駅周りでも見てみるかな。駅とかからも着想が得られるかもだし。
「うーん、やっぱりもう一回のんびりと電車に揺られるしかないか」
そして、駅周りを見て行ったけど、ピンとくる感じが無くて、外装だけじゃなくて内装もという訳で電車に乗ってみようかな?
「あら、沙漓じゃない。こんなところで一人で何してるの?」
そんなことを考えていると、突然僕に向かって声が掛けられた。声の方を向くとそこには、
「あれ?絵里さん。なんでこんなところに?」
絵里さんがいた。こんな場所で会うとは思わなかったから意外だった。絵里さんも僕がここに居ることに対して驚いている様子だけど。
「あっ、そう言えばこっちの方に越してきたんだっけ」
「そうですね。絵里さんはどうしてここに?」
「ええ。希と遊びに来たんだけど、ちょっと目を放したら希がふらっと消えちゃって探してるところなの」
「電話すればいいんじゃ?」
「……充電を忘れてね」
「なるほど。使います?」
絵里さんがここにいる理由が分かり、とりあえず僕のスマホを手渡す。絵里さんはお礼を言って希さんに連絡を取る。すると、どうやら連絡が付いたようで数言話すと電話を切った。
「ありがとね。希なんでかそこの電車の終点の駅にいるみたい」
「なんで、伊豆箱根鉄道に乗ってるんでしょうね」
「さぁ?どうせ、カードの導くままに行ったんでしょ。じゃ、希が伊豆長岡駅とか言う場所に行くらしいから私は行くわね」
「あっ、僕もそっちに行きます。希さんにも久しぶりに会いたいし」
「そう?じゃぁ、一緒に行きましょう」
こうして、絵里さんと一緒に行くことになりました。絵里さんと喋りながら時々窓からの景色を撮って過ごした。時期が時期なだけに紅葉が綺麗であり写真の撮りがいはあるからいい感じ。
さて、外だけじゃなくて中も撮らないと。生憎時間が時間なだけに他に乗客はいないから迷惑は掛からないしね。椅子に吊革に……なんかこれじゃ電車好きの人みたいな感覚だけど気にしないでおこうかな?
「ほんと、海未から聞いてたけど楽しそうね」
「はい!皆といると楽しいですよ」
「そう。沙漓が楽しめてるのなら良かったわ。私たちや亜里沙たち以外だと心の底から楽しめて無さそうだったから」
「まぁ、そんなこともありましたけど、みんなはあの頃の皆さんと同じ感じなんです」
「なるほど。沙漓がそこまで言うのなら、見てみたいわね」
「明日もまだこの辺りにいるなら見られるかもですよ。いつも砂浜とか淡島とかでも練習してますし」
「そう。なら、明日にでも希と一緒に見に行こうかしら。一泊する予定だったし」
絵里さんと積もる話をしている間になんだかんだで伊豆長岡駅に着いたのだった。
~果~
「おねえちゃん、おきてー」
私はそんな声で目を覚ますと、そこには……
「え?私?」
何故か幼い私がそこにいた。そして、近くの座席には幼い千歌や曜、それにダイヤたちまでいた。どうなってるの?それに、ここは電車の中だけど、空飛んでる?あっ、きっと夢だね。うん。
「お姉ちゃん、今は楽しい?」
「ん?今?」
「うん。アイドルをしている今!」
幼い私にそう聞かれて私は悩んだ。私が次の曲のセンターになるって聞いてから心配で練習にも中途半端にしか力が入らず、楽しかったかと言えばそう言えない。
でも、それまではみんなと練習して、ライブをして、目標に向かって全力で走っていて楽しかったかもしれない。
「果南ちゃん!チカに言ったよね?海に飛び込むときに、“ここでやめたら後悔する”って。果南ちゃんは後悔しない?」
「それは……」
「絶対できるんでしょ?」
幼い日に千歌に向かって言った言葉をまさか返されちゃうなんてね。でも、確かにそうだね。きっと、ここで投げだしたら後で後悔する。千歌も曜もこのプレッシャーに打ち勝ったんだろうから、お姉さんな私が負ける訳にはいかないね。
「……うん!楽しいよ。だから私は頑張るよ」
「うん!頑張ってね」
私ははっきりとそう言うと、幼い私たちは笑顔を浮かべて頷いた。直後、この電車が光に包まれ、私は一旦意識を手放した。
「んんー」
「おや、やっと起きたやん」
幼い私たちを見たのは夢だったようで、目を覚ました私を上から見ている人がいた。って、この体勢……。
「わっ、いきなり身体を起こさんでも」
「ひ、膝枕!?」
「うん、グッスリやったからね。偶然見かけて、うちが運んだんよ」
やたらと物腰が柔らかそうな、年上なお姉さんは呑気な様子でそう言った。どこかで見たような?いや、気のせいか?というか、なんで私は膝枕されてるの?私は身体を起こしてそのまま立ち上がった。それに対して苦笑いを浮かべていた。
「そんなに驚かんでも。うちは怪しいもんじゃないんよ。それに、変なことをするなら、起きる前に退散しとるよ」
「あっ、それもそっか」
「見た感じ疲れてるようやったけど、悩みでもあったん?Aqoursの松浦果南ちゃん」
「えっ?なんで私の事を」
「うちも昔はやっててな。それで、最近友達の妹がスクールアイドルのサポートを始めて、久しぶりに興味を持って知っとったんよ」
お姉さんが私のことを知っていることに驚くけど、一応PVをネットにアップしたりしてるから知ってる人は知ってるか。
それにしても、変な夢だったなー。そう思いながらベンチに腰を下ろす。
「お姉さんは一体……」
「うち?うちはただの元スクールアイドルや。それよりも、悩みなら聞いたげるよ。スクールアイドルの先輩として、びしっと解決したるよ」
お姉さんは胸をバンッと叩いて、任せろみたいな雰囲気を出す。なんでだろ?初めて会ったけど、この人は平気そうかな?
「実は新曲で私がセンターをやることになっちゃって」
「なるほどなー。でも、それなら問題あらへんよ」
「え?」
私が相談すると、お姉さんはそう言った。問題しかないと思ったから悩んでたのに。
「うちがいたグループはな。いつもライブの時は全員がセンターのつもりで踊ってきたんよ。果南ちゃんは、今までの曲だと目立たないように踊ってたん?」
「いえ、少しでも印象に残るように……」
「そういうことなんや。センターなんてただ単に真ん中で踊ってるだけで、結局いつもと変わらんよ。それに、一人じゃないんよ。メンバーが、仲間がおるんやから問題あらへんよ」
「……そうですね。皆がいるから」
お姉さんの言葉を聞いて、私はどこか納得した。センターなんてただ真ん中で踊ってるだけって言葉には驚いたけど、そう思えばいつもと何も変わらない。それに、みんなもついているから。
すると、お姉さんの電話が鳴り、お姉さんは「ちょっと待ってな」と言って通話をする。その際に画面に書かれた相手を見て驚いたような顔をしていた。
「どうしたん、急に……って、えりち?うん、うん。じゃぁ、長岡駅で待っとって」
お姉さんはそう言ってあっさりと通話を終わらせると立ち上がる。
「うちは連れが待っとる場所に行くけど、どうするん?」
「えーっと、悩みも解決しましたし、私も帰りますね」
「そうなん?じゃぁ、途中までいっしょやな」
お姉さんはそう言うと駅の方に行き、私も駅の中に行く。
そして、電車に乗り込むと、お姉さんがスクールアイドルだったころの話を聞いたりした。電車に揺られて目的地の長岡駅に着くと、私たちは下りる。ここからバスに揺られた方が家からは近いからね。
「じゃっ、うちは連れを探しに行くから――」
「あっ、希さん発見しましたよ!」
「あっ、ほんとだ。ほとんど同じタイミングだったようね」
「え?沙漓ちゃん?」
ホームに降りて改札前でお姉さんと別れようとすると、沙漓ちゃんの声がして、声の方を向くと沙漓ちゃんと金髪の年上のお姉さんがいた。
それと同時に、お姉さんを“希さん”と言ったことと、そこから記憶が繋がり、
「東條希さん!?」
「あっ、最後の最後にばれてもうたな」
お姉さん、もとい希さんは苦笑いを浮かべていた。まるで、ばれなければばれないでいいやみたいな感じだった。
そして、金髪のお姉さんが希さんににじり寄る。
「希!勝手に何処か行かないでよ」
「ということは、こっちは絢瀬絵里さん!?」
「あら、あなたはAqoursの」
私がそう言ったら、絵里さんは私に気付いてそう言った。そして、沙漓ちゃんがとことことやって来る。
「果南さん、奇遇ですね。まさか、希さんと一緒に居たとは。希さん、お久しぶりです」
「うん、久しぶりやな。わしわししたげよか?」
「いえ、遠慮しときます」
「うーん、無理にやったら海未ちゃんが怒るからやめとくかな」
沙漓ちゃんは二人とも知り合いだったようで普通に会話をしていた。海未さんの妹だから面識はあると思ってたけど、本当にあったとは。
「と、話に花を咲かせてる場合じゃないやん。えりち、行くで」
「ええ、そうね。じゃぁね、二人とも」
「あっ、はい。では」
「はい。淡島とかに来てみてくださいね」
「うん、明日にでもな。じゃぁ、またなー」
そう言って、二人は去って行った。何というか、µ’sの二人にこんなところで会ったんだなぁ。
「さて、果南さん。僕たちも帰りましょ?」
「ああ、うん。そうだね」
私たちもそう言って改札を抜けて外に出る。なんだか無性にみんなに会いたい気分だけど、こんな時間に集まれないか。
「果南ちゃん!沙漓ちゃん!」
「あっ、千歌さん」
「千歌」
なんて考えていたらそこには何故か千歌がいた。どうしてここにいるんだろ?
「おかえり」
「よくわかったね」
「なんとなくね」
どうやら、千歌の勘のようだった。そして、千歌の後ろには皆がいた。
「待ってたよ」
「お芋焼けたずら」
「いい曲ができたよ」
「練習もばっちりです!」
「くっく、全てのリトルデーモンの行動はお見通しよ」
「生徒会の仕事がたっぷりありますわよ」
「一緒に帰るでーす」
どうやら、考えることはみんな一緒だったみたい。皆の顔を見ると安心するなー。それに、みんなといるとさっきまでの心配も薄まってく感じがあるし。
「さぁ、帰ろ?」
「うん」
「ですね」
私たちはそう言って歩き出し……
「沙漓!スマホ返し忘れてたわ」
「あっ、完全に忘れてた。ありがとうございます、絵里さん」
『『『えっ?』』』
その直後、さっき別れたはずの絵里さんが戻って来て、その後ろから呆れた様子の希さんが歩いてきた。
そして、沙漓ちゃんは普通に受け取るも、みんなは驚きの声を漏らす。まぁ、µ’sのメンバーが現れればこうなるよね。
「あら、Aqoursのメンバーがそろってるわよ、希」
「やな。でも、えりちは落ち着きなよ。みんな困っとるよ」
その後は、µ’sの二人にみんな興奮しなんか収集が大変だった。特に、あこがれていた絵里さんに会えたことでダイヤが暴走した辺りで。
さらには、二人が泊まるのが十千万だと判明し、ダイヤたちが突撃しようとしたり、色々あった。流石にその日に私たちが泊まることはできない訳でなんとかダイヤを止めることはできたけど。
~☆~
「1,2,3,4,1,2,3,4」
あれから時間が経ち、新曲の製作は順調に進んでいた。いつもは難航する作詞も今回はすんなりと進んで、それによって作曲も進んだ。それに伴って衣装案もすぐに決定して衣装作りも進んでいた。
大まかにできた衣装にこまごまとした装飾を加えながら、みんなのダンス練習を眺める。
絵里さんたちに会ったからか、みんなのやる気は満々でそれはひしひしと伝わって来る。
結局あの日の翌日には二人は内浦を見て回り、なんかみんなといろいろ話していた。
そうして、さらに数日が経ち、なんだかんだで撮影をした。練習をちゃんとやっていたおかげで、ミスはなく撮影自体はあっさりと終わった。
「果南さん、お疲れさまでした」
「うん、沙漓ちゃんもね」
撮影が終わって、みんな各々休憩していて、果南さんは屋上から海を眺めていたから近寄ってそう言った。
「センターと言われた時は果南さん困り顔でしたけど、あの日以来吹っ切れた感じでしたね」
「まぁね。希さんに言われたこともあったし、皆がいてくれるからセンターであることを心配する必要がないって分かったからね」
「なるほどぉ。何より完成してよかったです。まぁ、こっからは僕の仕事なんで一気にやっちゃいますよ」
無事、撮影は終わった訳だから、ここからは裏方の僕の仕事。PVの編集をしなきゃ!
「うん、ほどほどにね。恋アクの時みたいに徹夜で作業はしなくていいからね」
「あれ?ばれてたんですか?」
「みんな知ってるよ。私たちもいるんだから一人で抱え込まないでね」
「もちろんですよ。あと、今回は前回よりは楽ですよ。前回ので慣れましたし。ヨハネも手伝ってくれますから」
前回のことは誰にもばれていないと思っていたから、僕は驚いた。といっても、ばれない方がおかしい気もするけど。
それに、果南さんはみんながいるから頑張れたと言ってるんだし、僕だってやるべきことはやりたいかな?大体、一人じゃなくて皆にも手伝ってもらうし。
~果~
そうして、さらに数日が経ちPVの編集が完了したと聞き、今回もまたみんなが部室に集まってお披露目となった。前回とは違って、沙漓ちゃんの目には隈はなかったから無茶はしていなさそう。
今回の衣装は駅員みたいな感じのイメージで、本当に電車っぽい感じだった。
PVは体育館で撮ったけど前回同様背景に手を加えられていたため、電車と花畑が背景になっていた。そして、私のソロの辺りで暗くなるとそれぞれの服の一部が光り、線路も輝いたりと相変わらずだった。最後に電車を飛ばすのはいいのかな?
「うん、今回もいい感じだね」
「そうですわね。インパクトもありますし、またAqoursの名前が知られますね」
「よかった。ちゃんとできて」
みんなそれぞれ感想を言い、こうして本当に完成した。センターでプレッシャーはあったけど、やっぱりみんなと一緒ならなんとかなったね。この調子で頑張らないとね!
絵里と希がまさかの登場。そして、幼いaqoursメンバーも。基本ノリですので。
では、ノシ