のんびり天使は水の中   作:猫犬

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気づけば、一万字近くいってしまった。
今回はアニメ4話の内容ですが、いろいろあって、タイトルが違っています。


さんにんのキモチ

「ヨハネー。今日から学校に来てもらうよぉ」

「嫌よ。それに、まだ五月は終わってないし……」

「はいはい。でも、五月に入ったから来てもらうよぉ」

「嫌よ。行っても、悪口を言われるだけよ」

 

高海先輩たちのライブが終わり、なんだかんだで五月に入ったので、今日もまたヨハネを学校に来るように説得していた。

まぁ、ヨハネは相変わらず行く気が無いみたいだけど。

 

「ふぅ、仕方ない。今日はこれくらいにしておいてやろう」

「なんで、あんたが妥協した風に言ってる訳?」

「と言う訳で、そろそろ行かないと遅刻しそうだから僕はこれでぇ」

「って、ずいぶん荷物が多いわね」

「まぁねぇ」

 

時間的に危なそうだから、僕はそう言ってヨハネの家を後にした。さてさて、どうやってヨハネを学校に連れて行くかなぁ。

そんなことを考えながら、バスに乗り込み、バスの二番目に後ろの席に座ると、考えても思いつかないし、そのうち思いつくかなぁ?的なノリで昨日買った本を取り出す。もしかしたら本を読んでいれば思いつくかもだし。

そうして、バスに揺られて本を読んでいると、またどこかの停車駅に着いたのかバスが止まる。

 

「曜ちゃん、梨子ちゃん、早く~」

「千歌ちゃん、お弁当忘れてるよ」

「はぁー。なんでこんなバタバタしてるんだろ?」

 

そして、どうやら高海先輩たちがバスに乗り込んだようです。

すると、三人はバスの後ろの方に歩いてきて、

 

「沙漓ちゃん、おはよー」

「おはようございます、先輩」

 

挨拶したから、本から顔を上げて挨拶を返す。三人は一番後ろの席に座ると僕はまた本に視線を戻し、三人は雑談を始め……

 

「ところで、沙漓ちゃんはアイドル研究部って部聞いたことある?」

「ん?µ’sが籍を置いてた部活のことですか?」

「え?そうなの?」

 

唐突に話を振られた。高海先輩が言っているのが僕のいる部のことだと思うけど、なんとなく面倒ごとが起きる予感がするから、本に目を向けたままそんな返答を返してみる。

どうやら、三人とも知らないみたいだからか、そんな反応だった。あれ?知らないのか。黒澤先輩が聞いたら「ブッブー」とか言いそうだなぁ。

 

「そうですよ。µ’sはアイドル研究部にいたんですよ」

「ほえー。って、そっちじゃなくて、この浦女にある方の」

「七不思議に入ってる方でしたか。あるらしいですね。それで、なんでアイドル研究部を?」

 

結局僕のいる方を探していることが分かったけど、なんでこのタイミングで?

 

「それが、この前のライブで満員にするのが条件だったんだけど、アイドル関係の部を二つも置けないとかで、なんとかアイドル研究部の人を説得してって言われちゃってね」

「はぁ。あの人完全にµ’sの真似する気なのかな?」

「ん?何か言った?」

「あ、いえ。それで、先輩たちはどうする気なんですか?無理やり潰すんですか?」

「うーん。それなんだよねぇ。会ってみないとだし、でも私たちもスクールアイドルをやりたいしね」

 

高海先輩はそう言って苦笑いを浮かべる。つまり、まだ潰す気が無いわけではないみたいだし、言わない方がいいかな?僕だって、ただ残しておきたいって訳じゃないしね。あの三人の為にも。

 

 

~曜~

 

 

「千歌ちゃん、今日も行くの?」

「うん。どの曜日かにはいるはずだから。そうじゃなかったら、ダイヤさんが残しておくとは思えないしね」

「本当にそうなのかな?」

 

私たちは、放課後にアイドル研究部があるという体育館の中にある部室に向かっていた。結局ダイヤさんと鞠莉さんに言われた通り、アイドル研究部の人と話を付けないと部室がもらえない訳だしね。でも、不定期に行くと必ず部室には人がいなくて閉まってるんだよね。日に日に中の荷物が片付いているから、不定期に来てはいるみたいだけど。

 

「でも、今日もいないんじゃ?」

「いや、居る気がするんだよねー」

「そうなの?」

 

梨子ちゃんは心配そうな顔をしているけど、千歌ちゃんはどこからその自信が出るのかそう言った。まぁ、千歌ちゃんの勘は時々当たるからね。

そして、私たちは部室に着くと、

 

「ん?先輩たち、こんな辺境に何か御用ですか?」

 

何故か、中には沙漓ちゃんがいて、片づいた棚に荷物を収納していました。見た感じ、アイドル関係の物ばかり。ん?ん?もしかして?

私はそれで、繋がった気がした。なんで、いままで会えなかったのか。というか、沙漓ちゃんが……。

 

「なんで、沙漓ちゃんがここに居るの?」

「ち、千歌ちゃん……」

 

千歌ちゃんは未だに気付いてないようで、気づいた様子の梨子ちゃんは困った顔をしていた。なんで、千歌ちゃんは気づかないんだろ?

 

「たぶん……沙漓ちゃんがアイドル研究部の……」

「……へ?」

「どうも。アイドル研究部部室に。入部希望ですか?それとも、この部の廃部希望ですか?」

 

沙漓ちゃんは荷物を棚に置いてニコリと笑みを浮かべてそう言ったのだった。

 

 

~☆~

 

 

時は少し戻って昼休み。

 

「黒澤先輩、あれはどういうことですか?」

「来て早々、問いたださないで下さいな」

 

僕は生徒会室に真っ先に向かい、先輩にそう聞いた。三人が言ってた話を僕は聞いていないから。

先輩は机に広げていた書類を整えると、書類を端に置き、近くの椅子に座るように促される。

 

「先にお話ししなかったことは謝りますが、これは生徒会長としての仕事ですので」

「はい、わかっています。似たような部活を二つも置くことはできないんですよね?」

「ええ。そう言うことですわ」

 

先輩は説明していなかったことに対して申し訳なさそうにそう言う。生徒会長の立場的に仕方ないのはわかるけど……。

 

「それだと、先輩は?」

「あなたの判断に任せますわ。あの部を廃部にするか否かは」

「いいんですか?先輩はあの部室を……」

「いいのですよ。どうせ、もう私たちが集まることは……」

 

先輩はどこか寂しそうな表情でそう言った。残したいけど、何処か諦めているような。そんな感情がこもった表情。だからこそ、僕はどうしたいのか決めた。

 

「黒澤先輩、私は――」

 

 

 

そして、放課後。先輩三人が部室にやって来るのを、アイドル関係の物を収納して待った。

今は、近くにあった椅子に四人腰かけて話を促す。

 

「で、どういったご用件ですか?」

「単刀直入いうと、朝言った通り、ここの部室を貰えないかなぁって思って」

「つまり、廃部にしろというわけですか?」

「いや、ここの部室を貸してもらえればいいから、別に廃部にはしなくても……」

「でも、ちゃんとした部にしないとランキングのエントリーができませんよ?」

「え?そうなの?」

 

先輩たちはどうやら、部活名もないとダメなことを知らないようだった。黒澤先輩たちその辺の説明しておいてくれてなかったんだ。一応、その辺の情報は知っていると思ってたのに。

 

「だったら、やっぱり、この部を……そうだ!沙漓ちゃん、スクールアイドル部に入らない?」

「……えーと。私はこの部を無くさせる気はありませんから。だから、御断りです」

「えっ?なんで?一応、この部の形は変えないから。名前が変わるだけで……」

「それでもです!」

「いや、でも……」

「私は引きませんので!」

 

三人は一歩も引かずにそう言うと、僕も引く気は無いので平行線になる。こうして話が停滞していると、この部室に新たな人たちがやってきた。

 

「沙漓ちゃん、今日も手伝いに来たずら」

「沙漓ちゃん?」

 

やってきたのはマルちゃんとルーちゃんだったけど、部室内の状況を見て二人は状況がつかめずキョトンとする。誰が来てもキョトンとするとは思うから仕方ないと思うと、高海先輩たちも二人が現れたことにキョトンとしていた。

はて?なんで先輩たちまでキョトンとしているんだろ?

 

「ルビィちゃんと花丸ちゃんも部員だったの?」

「ずらっ!?」

「あっ、私たちは部員ではないです」

 

先輩たちはどうやら二人が部員なのかと思ったからキョトンとしていたのか。あれ?というか、二人のことを知ってるみたいだけど……あっ、そう言えば初日に勧誘してたっけ。

 

「と言う訳で、ルビィちゃん、花丸ちゃん、一緒にスクールアイドルやらない?」

「先輩。何が“と言う訳で”で二人を勧誘してるんですか?それに、今は部活の話をしてたんじゃ?」

「千歌ちゃん、今は部活の話をしてるでしょ」

 

唐突に高海先輩が二人の勧誘を始めたから訳が分からないでいると、どうやら渡辺先輩たちも想定外の行動だったのか驚いていた。

 

「あのー。マルはそういうのは苦手なので」

「ルビィもそうなので」

 

そして、二人もやる気はないからそう言って断った。高海先輩はそれでもと勧誘を続けようとしたが、そこは桜内先輩が止めていた。

 

「千歌ちゃん、今日はこれくらいにして練習行くよ。沙漓ちゃんも一日考えてみてね」

「はぁー。と言っても考えは変えませんよ」

「それでもね」

 

渡辺先輩はそう言って高海先輩の服の襟を引っ張って出て行った。桜内先輩もそれを追いかけるように出て行ったのだった。結局何だったんだろ?考えてもこの部を渡す気は無いんだけどね。

そして、部室には僕を含めた三人が残された。

 

「来てもらって悪いんだけど、この前の掃除で全部片付いちゃったから、手伝ってもらうことは無いよ?」

「みたいだね。あれ?ルビィちゃん?」

 

マルちゃんは部屋の様子をみて掃除はもう必要ないことを確認すると、棚の一角を凝視しているルーちゃんに僕も視線を向けた。そこの棚には僕がさっき詰め込んだスクールアイドル関係のグッズが収納されており、ルーちゃんの目がキラキラしていた。

 

「ルーちゃん?」

「ルビィちゃん?」

「はっ!どうしたの?二人とも?」

「あいかわらず、ルビィちゃんはアイドルが好きずらね」

 

スクールアイドルグッズにくぎ付けになっていたルーちゃんは、僕たちの視線に気付いて気を取り直した。そんなルーちゃんを見たマルちゃんはのんびりした調子でそう言った。そんなにスクールアイドルが好きならやればいいのに……ルビィちゃん可愛いから人気が出ると思うし。

 

「ルーちゃん、そんなに好きならやってみたら?黒澤先輩だって……」

「ううん。お姉ちゃんが嫌いな物をルビィも嫌いにならないと……」

「うーん。そんなモノなのかな?僕はやりたいならやった方がいいと思うけど。まぁ、無理強いはしないよ」

「マルもルビィちゃんがしたいようにした方がいいと思うよ」

 

僕とマルちゃんはルーちゃんにそう言った。結局本人がやりたいか否かが問題だしね。その時マルちゃんがちょっと興味のありそうな顔をしていた気がしたけど。

 

 

~☆~

 

 

結局あの後、ルーちゃんとマルちゃんは沼津の本屋に行く用事があるとかで別れて、僕は淡島にやってきた。

そして、果南さんのダイビングショップ前に着くと、果南さんと理事長さんが口論をしていて、果南さんが中に入って行きました。すると、理事長さんは「頑固おやじ」と呟き、きびを返すと、僕と視線があった。

 

「あら、あなたは」

「どうも。果南さんと喧嘩ですか?」

「いつものことよ」

 

理事長さんは寂しそうな目をしながらそう言うと、すぐに気持ちを切り替えていつもの調子に戻る。

 

「それで、どう?スクールアイドル部とは」

「ええ。あなたたちの目論見通り、今日来ましたよ。ああいう約束するなら、私にも教えておいてくださいよ。無関係じゃないんですから」

「ソーリー。ダイヤが譲らなくてね」

「まぁ、別にいいですけど。いいんですか?思い出の場所が無くなっても」

「いいのよ。どうせ、果南は許してはくれないからね。それに、私たちの事情であの子たちの夢を潰すなんてできないから」

 

僕はそもそも、なんでこんな提案をしたのか分からなかった。そもそも、黒澤先輩も理事長も元のスクールアイドルに戻りたそうに思えるから。三人に何があったのか分からなかったけど、もしかしたらがあるかもしれない。それに、理事長はまた寂しそうな顔をしたし。

 

「そうですか。入ってきただけの私は口を挟みませんけど」

「ええ。あの部をどうするかはあなたに任せるわ」

「わかりました。でも、これだけは伝えておきますね。私は――」

 

そして、僕は自分の考えていることを伝えた。僕自身がどうしたいのか、ちゃんと決めたからこそ。理事長はそれを聞くと、

 

「そう。あなたの気持ちはうれしいわ。じゃぁ。チャオ」

 

そう言って去って行った。これで良かったのかな?まぁ、僕の好きにしていいってことだったし、いいよね?

さて、僕たちの会話を盗み聞きしている人にもちゃんと伝えないとね。

 

「果南さん、遊びに来ましたよぉ」

 

 

~☆~

 

 

翌日。

 

「えー。スクールアイドル?」

「うん。見てたらね」

「ほへぇ。マルちゃんやるんだ」

「だから、ルビィちゃんも一緒にやらない?」

 

朝にいつも通りヨハネを誘ったけど、結局今日も学校には来なかった。そして、マルちゃんは急にスクールアイドルを始めたいと言い出し、ルーちゃんも誘っていた。昨日の今日で何があったのやら?

 

「でも、ルビィは……」

「だったらさ、体験入部してみない?」

「体験入部?」

「なるほどね。でも、入部って、まだ部になってないけど。まぁ、体験って言うのはいいかもね」

 

僕的にも、二人は可愛いからいいと思う。僕はやりたくてもできないからね。そして、二人は放課後に先輩たちのもとに行くことになった。頑張ってほしいなぁ。

 

そして、放課後。黒澤先輩には秘密で二人が参加することになり、屋上で練習をし、なんだかんだで淡島神社前に来ていた。僕は隠れてそれを見ていた。見つかったらまた昨日みたいなことになっちゃうからね。二人が来たことで今日は部室に来なかったし。

五人が階段ダッシュを始めると、僕は淡島神社の中間にあるロックテラスのベンチに座って海を見ていた。

 

「あら?あなたは」

「あっ、黒澤先輩」

 

すると、なんでか黒澤先輩がやってきた。何か用があったのかな?

 

「あなたはここで何をしているのですか?」

「海を見ています!」

「いや……それは見ればわかりますけど」

 

答えたら何故か困られてしまいました。うん。我ながらこの返答はどうかと思うけど、ルーちゃんたちのことは隠しているから仕方がないね。

 

「ところで黒澤先輩は何故ここに?海でも見に来たんですか?」

「いえ。ここに呼ばれたので来たのですが……」

「ダイヤさん」

 

すると、階段ダッシュをしていたはずのマルちゃんが降りてきた。なんでマルちゃんが?まだ、皆登ってるところだと思ったのに。

 

「ルビィちゃんの話をちゃんと聞いてあげてください」

「ルビィの話?」

「はい。ルビィちゃんの本当の気持ちを」

 

マルちゃんはそう言って、走って行ってしまった。なるほどね。急にマルちゃんがやる気になったのはそう言うこと、か。マルちゃんは優しすぎるよ。でも、それじゃダメだと思うなぁ。

 

「私も用事を思い出したので失礼します」

 

僕はそう言って黒澤先輩にお辞儀をすると、この場を後にした。どうせ、隠れてついてきただけだから、いつここを後にしても問題ないしね。それに、僕はあの場にいる必要は無いし。

そして、船着き場の近くまで来ると、ちょうど定期船が出る時間でマルちゃんが乗り込んだので僕も乗り込む。

 

「よいしょ」

「……沙漓ちゃん」

 

そして、マルちゃんの近くの椅子に座ると、マルちゃんは僕の方を一瞥すると海の方を見る。

 

「沙漓ちゃんは気づいてたんだよね?マルがルビィちゃんをあそこに入りやすくするつもりだったって」

「うん。さっきの問答でね。いいの?マルちゃんは?」

「うん。マルは運動もダメで鈍くさいからね。それに、マルは図書室でのんびりしている方が似合うずら」

「そっか」

 

マルちゃんが望んでいるのなら、僕から言うことはない。でも、今日見ていた限り、マルちゃんはずっと楽しそうだった。だからか、マルちゃんの本心ではなさそうな気がした。

 

「でもさ。今日のマルちゃんは楽しそうだったよ」

「そうずら?マルは……」

「まぁ、これはただ僕が思ったことを言ってるだけだから気にしなくていいよ。でもね。マルちゃんがただ向いていないと思っているのなら、それは勘違いだよ。僕の知っている人にもね、自分がそれに向いていないと思っている人がいたんだ。でもね、その人の友達はその人が本当はやりたい気持ちがあるって気付いていたの」

「何の話ずら?」

「まぁ、聞いて。それで、その人はその友達に背を押されて、一歩踏み出したんだってさ。そして、向いていないと思っていたことが、本当はそう言う訳でもないってことに気づいたんだって」

「ん?」

「まぁ、つまり、やりたいならやった方がいいってことなんだよ。やりたくてもできない人もいるんだから」

 

僕は遠い目をしながらそう言うと、マルちゃんは困った顔をしていたからそう言って閉めた。僕はただの傍観者。結局決めるのは本人だしね。

 

 

~花~

 

 

スクールアイドル体験をした翌日。ルビィちゃんは無事Aqoursのメンバーになりました。これで、マルのお話は終わり。マルは本の世界に帰ります。結局、沙漓ちゃんの言葉でマルはちょっと考えたけど、やっぱりマルには無理だと思うずら。

そして、マルは図書室のカウンターに座り……そこにあったスクールアイドル特集の雑誌を手に取った。

星空凛さんのウエディングドレス姿のページを開くと、やっぱりマルには向いてないと実感する。だから、マルは……

 

「ルビィね!」

 

本を閉じようとしたら、ルビィちゃんが走って来てマルの手をとった。

 

「ルビィちゃん?」

「ルビィね。花丸ちゃんの事見てた。ルビィの為に無理してるんじゃないかって。でも、練習している時楽しそうだったよ。花丸ちゃん、嬉しそうだったよ!だからね、思ったの。花丸ちゃんはスクールアイドルが好きなんだって」

「でも、マルには向いてないずら」

「花丸ちゃん。そこに映っている、凛ちゃんもね、最初はアイドルに向いていないんだと思っていたんだよ。だから……」

「でも、マルには……」

「でも好きだった。やってみたいと思った。最初はそれでいいんだよ?」

「それにね。できるかどうかじゃないよ。一番大切なのは、やりたいかどうかだよ!」

 

千歌さんはそう言って、マルに手を差し伸ばした。その手に曜さん、梨子さん、ルビィちゃんが重ねた。

やりたいからやる。最初はそれだけの理由でいい。マルも……凛さんみたいに……。

そっか、マルは……やっぱり、スクールアイドルが好きずら。

そして、マルはその手に手を重ねた。

 

「マルもAqoursに入れてください」

「うん。喜んで……やった!これで五人。後は……」

「沙漓ちゃんを説得するだけだね」

「でも、手ごわいんじゃ?」

「だよね」

 

マルが入ったことで、いよいよ部室のことになり、千歌さんたちは沙漓ちゃんの事で肩を落す。まぁ、一昨日の感じだと難航しそうずらね。あれ?ところで沙漓ちゃんの昨日の言葉。

 

「あの、一つ聞いてもいいずら?」

「ん?どうかしたの?」

「えーっと、別にスクールアイドル部と言う名前に固執しているわけじゃないんですよね?」

「あ、うん」

 

唐突に千歌さんにそんなことを聞いたら、千歌さんはポカーンとしていた。でも、それで疑問が確信に変わった。それと同時に、ある考えも浮かび、それを口にする。

 

「だったら――」

 

 

~☆~

 

 

「マルもAqoursに入れてください」

 

僕は図書室のドアを挟んでその言葉を聞いていた。

 

「ルーちゃんが無事スクールアイドルに入っただけじゃなくて、マルちゃんも入れたみたいだし、良かった」

 

僕は無事二人が入ったことに安堵すると図書室を後にした。二人がスクールアイドルになってほしいと思ったのはただの僕のわがままだしね。だから、叶った以上、僕はそれを近すぎず遠すぎずの距離から見るだけのこと。

怪我と体調でできない僕に出来るのはそれぐらいだしね。

そうして、僕は部室に戻って来た。

 

「さて、次は何するかな?ヨハネを学校に……いやAqoursに入れるのも面白そうかも……いや、僕の考えで巻き込むのはやめとこ。二人みたいにやりたい気持ちがあれば別だけどね。ふわぁー。眠い……よっと。ちょっと寝よ」

 

僕は机に突っ伏してそう呟くと急な眠気に誘われ、スマホのアラームを一時間後にセットして眠りについた。一時間後なら、まだ下校時刻じゃないしね。

 

 

それから時間が経った。どれくらい経ったのかわからないけど、まだ外は明るいから一時間は経っていないと思う。

 

「うぅ。スマホ、スマホ」

「はい、どうぞ」

 

僕は突っ伏した状態でパタパタと机を叩いて間でスマホを取ろうとすると、誰かが取って手渡してくれた。

 

「あ、どうも……」

 

お礼を言って受け取り、ん?てか誰かいる?

僕はガバッと顔を上げると、そこには高海先輩をはじめとした五人がいた。あれ?もしかして一昨日の続き?

 

「えーっと、また廃部にしろって話ですか?でしたら、御断りですけど」

「ううん。別に廃部にはしなくていいよ」

「ん?」

 

前と打って変わって廃部にする必要が無いと言われて、頭に“?”を浮かべた。なんで急に?もしかして、結局二つあってもいいってことになったのかな?

 

「だって、私たち。このアイドル研究部の中のグループ“Aqours”だから!」

「はい?」

 

僕は高海先輩の言っている言葉の意味を測りかねると共に、あの日、果南さんに言われた言葉を思い出した。はぁ、果南さんは予知能力者なのかな?それに、この方法じゃ、断れないや。この部も無くならないから。

 

「ああ。そう来ましたか」

「うん。初めからこうすればよかったね。私たちはAqoursとしてステージに立つ。それが目的だし」

「つまり、部活名だけあれば良かったんですか?」

「ううん。それだけじゃないよ」

「それだけじゃない?」

 

他に何かこの部室に何かあったっけ?もしかして……あそこに置いてあるアイドルグッズを資料に使いたいとかかな?

 

「何処見てるずら?マルたちが言っているのは沙漓ちゃんの事だよ?」

「ん?僕?」

「うん、沙漓ちゃんもAqoursに入らない?」

 

ルーちゃんはそう言い。四人も同じ考えのようで、どうやらマルちゃんが入った後に話し合ったのかそんな感じだった。

 

「えっ?でも、私は踊れませんし」

「別に踊るだけがスクールアイドルじゃないよ?」

「曲を作って――」

「衣装を作って――」

「スクールアイドルを楽しむ――」

「それがスクールアイドルだと思うよ」

 

五人はそう言った。はぁー、どこで知ったのやら?僕は踊れないから、スクールアイドルをただ見るだけの物と諦めていた。それなのに……

 

「でも、私は……」

「いいんずら。沙漓ちゃんはマルに言ったずら。やりたいならやればいいって」

「そうだよ。そんなにスクールアイドルが好きなら入らなきゃ」

「誰も踊れないことなんて気にしないから、一緒にやろ?」

「やっていけばそのうち他にやりたいことが見つかるかもよ?」

「だから……沙漓ちゃん。Aqoursに入ってください!」

 

ここまで言われちゃったら、断るなんてできないよね。

 

「はい。こちらこそ。こんな僕ですがよろしくお願いします!」

 

 

~果~

 

 

千歌達がアイドル研究部に入部する形で決着が付いた二日前。

 

「果南さん、遊びに来ましたよぉ」

「うん。知ってるよ」

 

鞠莉との会話が聞こえる位置でずっと聞いていた私は、鞠莉が帰っていきなり声を掛けられて驚いたけど、なんとか頑張って平常を保って外に出た。たぶん、二人とも私がそばにいるのに気づいていたんだと思うけど。

 

「それで、遊びにいたと言いつつ、アイドル研究部の話をしに来たんでしょ?」

「あれ?やっぱり聞こえてました?」

「うん。バッチリね。と言うか、気づいてたでしょ?」

「はい。まぁ。じゃぁ、余計な話は抜きにして……僕は、果南さんたち三人の居た部を無くさせる気は無いですよ」

 

沙漓ちゃんは苦笑いを浮かべると、そう言った。

 

「なんで?沙漓ちゃんがあそこを護る意味は無いでしょ?」

「確かにそうですね。でも、僕もここで一つやりたいことができたんです」

「やりたいこと?」

「はい。果南さんたちのライブを生で聴くことです。あの日聞けなかったあの歌を」

 

沙漓ちゃんはまっすぐ私の目を見てそう言った。その目は本気でそう思っている目で、だからこそ、私は理解した。この子はあの頃のダイヤと同じで本当にスクールアイドルが大好きなんだと。

 

「ありがと。でも、私も鞠莉と同意見だよ。私たちの事情を千歌達に押しつけるのは嫌だから」

「……そうですか」

「そうだよ。だから、無理してあそこを残さないでいいからね」

「わかりました――」

「でも、そう言ってくれたことはうれしかったよ」

 

これは本当に思った私の気持ち。あの時、聴けなかったから聴きたいという理由だけで護ろうとしてくれているから。

 

「あぁ、そうだ。もしかしたら、あの子たちなら潰す以外の別の道を選ぶかもね」

「別の道?」

「うん。まぁ、もしかしたらだけどね」

 

沙漓ちゃんは私の言葉に首を傾げていた。まぁ、これは私も半信半疑の願望だからね。

 

「例えば、千歌達がアイドル研究部に入部するとかね」




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