のんびり天使は水の中 作:猫犬
今回は沙漓の弱点?が判明?
「色々考えた結果、こうなりました」
「ツッコまないわよ」
僕たちが六人でAqoursなって二週間ほど経ち、未だにヨハネが学校に来ない為、練習のない日の放課後にヨハネの家に乗り込んでいた。だけど、五人には黒澤先輩が部長なことは伝えておらず、受験で忙しくてあまり顔を出さない先輩がいるということにして伝えてあった。先輩、隠したそうだったしね。
朝の短い時間だけじゃそもそも連れて行くのは無理だしね。それに、もうすぐ五月が終わっちゃうからそろそろ本気で行かないと!五月いっぱいで連れ出すってヨハネに言っちゃってるしね。そして、なんと今回は僕一人ではありません!
「善子ちゃん、そろそろ学校に来ないの?」
「マルちゃんもこう言っている訳だから……さぁ、行きたくなーる、行きたくなーる」
一緒にやってきたマルちゃんがそう言い、僕はヨハネの前で手をクルクルさせて洗脳?しにかかる。ちなみにルーちゃんは家の用事とかでここにおらず、千歌さんたち(なんか先輩呼び禁止とかでこうなった)もヨハネと接点が無いからここにいない。
「と言うか、なんで今日は放課後に来るのよ」
「それはモノローグで説明したから省略して、とにかく明日から来てもらうよ」
「嫌よ。まだ、あの時の事故紹介を覚えている人がいるでしょ」
「確かに事故ってたけど、きっと皆……忘れているよ」
「なんで、自己が事故になってるずら?」
僕は遠い目でそう言うと、マルちゃんは首を傾げていた。そもそも、誰が覚えているかなんてわかんないし。だから、ある意味僕の願望だった。
「そんなわけないわよ。変な子とか言われてるんでしょ!?」
「ううん。誰も言ってないよ。なんで来ないんだろ?とか心配している感じだし」
「そうだよ。てか、毎日そう言ってるよね?」
「でも……」
「よしっ。じゃぁ、明日こそ来てもらうよ。そこで、ヨハネのことを皆どう思っているかわかるから」
「でも……私堕天使でちゃうから」
「それなら……」
「任せるずら!」
こうして、ある提案をしたことで、半ば強引にヨハネは学校に行くことになりましたとさ。
~ヨ~
「本当に来てしまった……」
「善子ちゃん、そんな所にいたら目立つよ?」
私は翌日、朝早くに来た沙漓によって連れてこられてしまった。そして、校門の前で立ち止まって呟くと、沙漓はそう言って私の手を引っ張った。ちなみに、いつもはヨハネ呼びだけど、私を善子と呼ぶことを条件にしたら簡単に了承してくれた。なんだかんだ、こっちへの配慮はちゃんとするのよね。毎日“学校に来い”という割に強引に連れて行こうとはしないし。
でも、ここまで来る間では誰も私の事を覚えていない様子だったから、心配はないのかな?いや、まだクラスメートが覚えている可能性も。
「本当に入るの?」
「はいはい。ここまで来たからちゃちゃっと入ろ?」
「はぁー。まぁ、入るしかないか」
沙漓はそう言って私の背を押して中に入ると、クラスメートの視線が私に集まる。
おそらく、私が入学式以来に現れたから視線が集まっているんだと思う。でも、こう視線が集まると……
「ちゃんと来たんだね」
「おはよう。津島さん」
すると、ずら丸と黒澤さんが私に声を掛けた。黒澤さんとは話したことが無いけど、沙漓とずら丸の友達だと聞いていた。たぶん、二人はこの空気を察して声を掛けてくれたのだと思う。
「おはよう」
私はそう挨拶を返すと、私が誰なのかを皆分かったようで「あっ、津島さん」「やっと来れたんだ」のような声が聞こえてきた。
「ドアの前で立ってると後つっかえるよ」
「あっ、うん。ちゃんと止めてね」
「うん。しっかり準備はしてあるよ」
私はそう言って席に座ると、クラスメートに囲まれ質問攻めに遭った。沙漓たちは少し離れた場所から私を見ていた。これって、私に頑張れってこと?まぁ、それしかないか。
「えーと、津島さんって名前なんだっけ?」
「もう、ちゃんと覚えてないと……えーと、よ、よ、ヨハ――」
「善子!」
「だ、だよね」
たぶん、あの時私がヨハネって言ったから確認したかったんだと思う。でも、二人が言ってた通り、どうやらあの時のことを忘れようとしてくれてるんだと思う。それに、陰口も言われて無さそうだし。
それから、好きな食べ物とかの話をし……
「ところで津島さんって趣味ないの?」
と聞かれた。これって、変な答えをしたら浮くわよね?でも、ここでうまくやれば好感度が。
「えーと。占いかな?」
「え?占いできるの?」
「占って!」
「あっ、うん。ちょっと待って。今占ってあげるね」
私の答えは好感触で、占いをすることになり、私は鞄に入れていた魔法陣の布と蝋燭等々を鞄から出し、漆黒のローブを身に纏い、占いの準備を……
「って、なんでそんな本格的やねん!」
バチコーンッ
整う瞬間、謎の似非関西弁と共に頭に何かが当たり、大きな音が教室に響いた。私は頭を抑えて犯人の方を見る。
「なにすんのよ!沙漓!」
「ん?善子ちゃんがやらかす前に止めたんだよ?いやー危なかった。ろうそくに火を付けたら火災報知機が作動しちゃうからね」
「危なかったって、そっちの心配!?」
何処から取り出したのかわからぬハリセンを肩に乗せた沙漓に文句を言うと、沙漓は一切悪びれずにそう返した。たしかにやらかす前に止めてと言ったけどこの方法は……。
クラスメート全員がポカーンとしていて、ずら丸も驚いていることから予告なく行われたようだった。
「ふっふふ」
すると、誰かが吹き出し、それが連鎖してクラスに笑いが起こる。何これ?私笑われてる?
「津島さんと園田さんって仲良いんだね?」
「うん。こんな感じだよ。善子ちゃんは趣味に全力だから、ここまで本格的な占いになっちゃうけどね」
「津島さんって面白いんだね」
キーン、コーン、カーンコン
「あっ、チャイム鳴った」
「はーい。ホームルーム始めるわよ……ってなにしているの?」
先生がやって来て、先生は教室の状況を見て困惑していた。まぁ、風呂敷を広げてローブを纏ってれば目立つわよね。
「はいはい。ササッと片付けてねー」
先生は一切動じずそう言うと帳簿を教卓に置いた。この先生も意外と動じないわね。あと、沙漓も自然に風呂敷を片付けてるし。
こうして、私の登校二日目が始まった?のだった。
~☆~
「いやー。いい仕事をした気がするよ」
「アンタのせいで、私は変な人と思われたじゃない!」
「え?でも、津島さん、クラスには馴染めていたような?」
「大体、あんなものを持ってきていると思わなかったずら」
昼休み、僕はヨハネを部室に連れて行くと、汗を拭う素振りをしながらそう言った。そしたら、ヨハネにツッコまれた。ルーちゃんとマルちゃんは困った顔をしてそう言い、千歌さんたちは状況がつかめないのか困惑していた。
ちなみに、クラスメートの反応は面白い人?とか、僕とセットで芸人?みたいな感じで定着していた。後者はその場のノリだったけど。
「どういうこと?」
「実はルビィもさっき聞いたんですけど、善子ちゃん――」
ヨハネの事情を知らない三人にルーちゃんは簡単に説明した。
「大体、何でそんな物を持ってきちゃったの?」
「いや、これは私のアイデンティティのわけで……」
梨子さんに問われたヨハネは、ポーズを取りながらそう言った。あ、やっぱりそうなっちゃうんだ。
「うん、心が複雑な状態になっていることは分かったわ」
「ですね。それに今はネット上で占いをやっていますし」
ルーちゃんは今もヨハネがネットで生放送していることを言いながら、ノートパソコンでその動画を流したら曜さんと梨子さんは確かに堕天使をしてるといった困り顔をしていた。千歌さんはその動画を見て目を輝かせていた。
「可愛い。これだよ!これ!堕天使だよ!」
「千歌ちゃん?」
千歌さんはそう言い、千歌さんの考えが読めない僕たちは首を傾げた。そして、ヨハネの手を取り、
「うん。津島善子ちゃん。いや、堕天使ヨハネちゃん。スクールアイドルやりませんか?」
「はい?」
ヨハネは意味を掴みかねて、間の抜けた返事をしていた。
あれ?これはヨハネAqoursへの道の始まりかな?
~☆~
「ここが千歌さんの家……というか旅館」
「大きいわね」
「入って、入ってー」
僕たちは千歌さんの旅館に来ていた。初めてくる場所だからそわそわしていると、裏口から千歌さんが手招きをした。表はお客さん用なんだと思う。その辺は守らないとね。
裏口から中に入り、千歌さんの部屋に通された。
そして……
「丈が短くない?」
「というか、沙漓はそんなに写真を取るな!」
六人はゴスロリ、もとい堕天使衣装を見に纏っていた。まさか、こんな可愛い衣装が見られるとは。
僕はパシャパシャとカメラで写真を撮っていた。可愛い子と衣装があれば撮る。これ真理ね。
「ただの活動として撮ってるだけなので、モーマンタイです」
「いや、恥ずかしいからアップはやめて!」
「じゃぁ僕の趣味にしますので!」
「それ、余計に質悪くない?」
写真を撮る手を止めずにそう言うと、呆れられた。うーん。まぁ、これくらいにしておこうかな?そう思って、写真の手を止める。
「それにしても、これが、これになるとはね」
曜さんは以前のライブ衣装と見比べてそう言った。確かに、前とイメージがガラッと変わったしね。明るい感じだったのに、今は暗い感じ?なんか、梨子さんは恥ずかしがっているけど、これはこれで普通の反応だよね。
「いいのかな?これで」
「でも、調べても堕天使アイドルなんていなかったし」
「そういう問題なのかな?」
「可愛いよねー」
「いや、そういう問題じゃないよね?」
梨子さんは今更ながら、この衣装でいいのか心配し、千歌さんは全く気にしていなかった。
「本当にいいの?」
「うん。これでいいんだよ。可愛いからね。それに、ステージ上で堕天使を広めよっ?」
ヨハネはそう言われてステージ上に立つ自分の姿を想像し、ありと思ったようだった。
「ちょっと外の空気吸ってきますね」
「あー、うん」
僕はなんとなく人口密度が高くて部屋を出た。すると、廊下にはモフモフした犬と短髪のお姉さんがいた。
「あれ?君は?」
「あっ、私は一年の園田沙漓です。千歌さんと同じ部活の。お邪魔してます」
「沙漓ちゃんね。私は美渡。まぁ、ゆっくりしていきな。あっ、この子はしいたけね。まぁ、おとなしい子だから心配ないよ」
美渡さんに自己紹介を言い、撫でられていた犬に視線を向けたら紹介された。モフモフしていて触ったら気持ちよさそう。それに、おとなしいのならもしかしたら。
「ぐるるっ!」
「え?」
僕はしいたけちゃんをモフろうとしたら、思いっきり威嚇された。そんなしいたけちゃんの様子を見て美渡さんは困惑していた。たぶん、おとなしいはずなのに僕に威嚇しているからだと思う。ふむ。やはり僕にはあれが付きまとうのか。
「るーるるるるー」
「それ、犬にやるやつじゃないよね?」
だから僕はこの事態を受け入れたくない。だから、僕は諦めずにしいたけちゃんの前に手をやって、なんとかモフろうとした。美渡さんにツッコまれながら。その結果。悲劇が起きたのだった。
「本当に平気なのかな?」
「わう」
~ル~
「きゃぁー」
「わうぅ」
唐突に響いた叫び声などなど。沙漓ちゃんが部屋を出た後に梨子さんも部屋を出てすぐに何が起きたのかと分からずにいると、障子越しで走る人影とそれを追いかける犬の影が映った。
「何が起きているのですか?」
「さぁ?梨子ちゃん、しいたけはおとなしいよー」
「きゃぁー」
ルビィが疑問を口にすると、おそらくしいたけちゃんから逃げている梨子さんに対して千歌さんはそう声を掛けた。しかし、しいたけちゃんは止まらない。
すると、
「ふぅ。またダメだった」
沙漓ちゃんが障子を開けて部屋に入って来た。何がダメだったんだろ?
「きゃぁー!」
「がう!」
千歌さんの部屋の扉が開いて梨子さんが現れるとしいたけちゃんも入って来て、直後沙漓ちゃんが進路上に行ってしいたけちゃんは止まれず沙漓ちゃんに突っ込んだ。そして、梨子さんは千歌さんのベッドの上に飛び乗り、置かれていた海老のぬいぐるみを手に持って交戦の構えをしていた。なんだろこの状況?
「何があったの?梨子ちゃん?」
「うん。沙漓ちゃんがしいたけちゃんに近づいたら急に私の方に逃げて来てね」
「あうっ!」
千歌さんが事情を聴いたら、やっと落ち着きを取り戻した梨子さんが言い、沙漓ちゃんはしいたけちゃんに突っ込まれて転倒しながらもモフモフしていた。そして、しいたけちゃんは前足パンチを喰らわして脱出すると、てくてくと逃げていった。
「あれ?しいたけが逃げていった。しいたけって基本人見知りしないよね?」
「うん。基本的に人が近づいても逃げたりなんかしないし」
幼い頃からしいたけちゃんを知っている二人が首を傾げていると、
「うーん。昔から動物に近づくと警戒されちゃうんですよね」
「あー、そう言えば幼稚園の時にもウサギ小屋に近づいたらウサギが小屋の奥に逃げてたわね」
「あー、そんなこともあったずらね」
「つまり、動物避けスキル?」
寝転んでいる沙漓ちゃんが身体を起こしながらそう言い、津島さんと花丸ちゃんは沙漓ちゃんと幼稚園だったから、その頃のことを思い出しているようだった。昔から動物に逃げられているみたい。
なんで、動物に逃げられるんだろ?
「あれ?じゃぁ沙漓ちゃんと梨子ちゃんがすぐそばで一緒に居たらどうなるんだろ?」
「うーん。沙漓ちゃんを無視して梨子さんに飛びつく?」
「それとも、沙漓を警戒して梨子さんにも近づかない?」
曜さんがそんな疑問を口にしたら、花丸ちゃんと津島さんがそんな予想を口にした。その隣で、千歌さんの口元に笑みが浮かんでいた。あれ?嫌な予感?
「じゃぁ、試してみよう」
「ち、千歌ちゃん?」
千歌さんはそんなことを言い、梨子さんは頬に汗を浮かべて恐る恐るそう言った。
そして、沙漓ちゃんは首を傾げていた。
「はい?」
「と言う訳で、しいたけ連れてくるねー」
「千歌ちゃーん」
梨子さんの制止の声を振り切り、千歌さんはしいたけちゃんを連れに出て行ってしまった。梨子さんは嫌そうな顔をしてルビィたちを見ると、
「私、帰っていいかな?」
「「「「さぁ?」」」」
そう言い、ルビィたちはそう返すしかなかった。しかし、梨子さんがこの場を去る前に千歌さんがしいたけちゃんを確保したのか走って来る足音が響く。
「しいたけ、連れてきたよー」
「わう?」
「沙漓はこっち」
「ヨハネ楽しんでない?」
そして、扉がガバッと開き千歌さんとしいたけちゃんが現れると、津島さんは沙漓ちゃんを梨子さんのいるベッドの方に押した。沙漓ちゃんが言った通り、津島さん自分には関係ないからって楽しんでない?
「さぁ、しいたけ。行って!」
「わう(ブルブル)」
千歌さんがしいたけちゃんにそう言うと、しいたけちゃんは拒否するように首を横に振った。
「え?あの梨子ちゃんを見れば襲いかかるしいたけが拒否している?」
「沙漓の動物避けが
「つまり、沙漓ちゃんが居れば襲われない!?」
「つまり、僕はしいたけちゃんに触れない?」
梨子さんは遂にしいたけちゃんに襲われることのない方法が見つかって喜び、その隣では沙漓ちゃんが落胆していた。そもそも、梨子さんに関してはしいたけちゃんが繋がれていれば問題ないような?
「バカチカ!静かにしろ!」
そして、騒ぎ過ぎたからか千歌さんのお姉さんに怒られてしまいました。ところで、ルビィたちは何しに来たんだっけ?
~☆~
『リトルデーモン四号、ルビィ。よろしくね』
「何ですかこれは?」
「新しいAqoursのPVですね」
翌日。早速作ったAqours(堕天使バージョン)のPVの件で黒澤先輩に呼び出されました。先輩の隣では理事長が「cuteね」とか言っていた。
「破廉恥ですわ!こんなことをさせるためにルビィの入部を許可した覚えはありませんわ!」
「うーん。破廉恥かな?普通のゴスロリの服で可愛いと思いますけど?」
先輩は破廉恥と言うけど、僕はそう思わない。迷走している感は否めないけど。
「でも、昨日の段階では順位も」
「そんなモノまやかしですわ」
曜さんは順位が上昇したことを口にすると、先輩はそう言ってノートパソコンをさっと押して回転しているところを曜さんがキャッチする。落ちたらどうするんだろ?
そして、曜さんはパソコンを開くと、
「あれ?順位が落ちてる」
「そう言うことですわ。だから、よく考えることですわね」
言った通り順位が下がり始めていた。まぁ、そう言うこともあるよね?そうして、僕たちはいくつか注意を受け、生徒会室を出て、
「園田さんは少し残ってください」
「え?あっ、はい」
「じゃ、また後で」
千歌さんはそう言って出て行き、この場には僕と黒澤先輩と理事長だけになった。
「あなたがいながらなんでこんなことになっているんですか?」
「うーんと。可愛かったので!先輩だってルビィちゃんが可愛いと思わなかったんですか?」
「まぁ、可愛いのはそうですが」
「ダーイヤ」
僕がそう言ったら、黒澤先輩もやぶさかではなさそうな反応をし、理事長が名前を呼んでハッとした。話逸らしに失敗しちゃったや。
「それで、どういうおつもりで?」
「いえ。さっき言った通り、可愛いと思ったのは本当ですし。こういうこともして人は進歩するんですよ。まぁ、そう言う訳ですので。では、失礼します」
僕はそう言って生徒会室を出た。
「本当に良かったの?辞めちゃって」
「いいのよ。私がいたら邪魔にしかならないんだから」
放課後。Aqoursの練習が終わり、ヨハネの部屋に来ていた。
ヨハネは結局、Aqoursを辞めてしまった。黒澤先輩に怒られたのが自分のせいだと思い込んで。誰も止めなかったんだから、ヨハネ一人のせいじゃないのにね。
「本当にいいの?練習している時、ヨハネは楽しそうに見えたよ?」
「確かに楽しかったわ。でも、それで迷惑をかけるのなら私はやらない方がいいのよ」
「そっか。決心は固そうだね。じゃぁ、僕から言うことは無いや」
「いいの?沙漓は、いつも無理強いはしないけど」
「いいの。僕には誰かに無理強いをする権利なんてないんだから。やりたければやる。やりたくなければやらない。それでいいんだよ。僕はどんなヨハネも……善子ちゃんでも変わらないから……でも、好きな物を好きって言える気持ちは大切だよ」
~ヨ~
翌朝。今日は休日で学校は休みだから家でのんびりしようとしたら、お母さんにゴミ出しておいてと言われてしまった。まぁ、昨日のうちにまとめた堕天使グッズを捨てなくちゃだしね。
だから、私はゴミと堕天使グッズを捨てに外に出ていた。
そして、この前の堕天使衣装を着た千歌さんたち五人がそこにいた。何でこんなところに?それにその服。
「堕天使ヨハネちゃん」
「「「「「スクールアイドルに入りませんか?」」」」」
「ううん。入ってください。Aqoursに、堕天使ヨハネとして!」
「何言ってるの。昨日話したでしょ」
「いいんだよ。自分が好きならそれで」
千歌さんは私を見てはっきりとそう言った。なんで?私がいたから昨日生徒会長に怒られたわけなのに。
そして、私の壮絶な追いかけっこが始まった。
「ヨハネちゃんはそのままでいいんだよ!」
「ダメよ!私は堕天使を辞めないと!」
「自分が好きならいいんだよ」
私は走った。
「しつこーい」
「私ね。µ’sがどうして伝説になったのか、輝いていたのか考えたんだよ」
ただ走った。
「善子ちゃん、待ってー」
「じゃあ、追いかけてこないでー」
「そして、考えてみてわかったんだよ」
そして、気づけば水門まで来ていた。こんな場所まで追いかけてくるなんて。あー、走りすぎて疲れた。
「ステージの上で自分の好きを見せることなんだよ。自分の好きな姿を、輝いている姿を見せることなんだよ。だから、いいんだよ。善子ちゃんは捨てなくて。自分が堕天使を好きなかぎり!」
「いいの?変なこと言うかも」
「いいよ」
「儀式をするかも」
「それくらい我慢するわ」
「リトルデーモンになれって言うかも」
「それは……でも、やだったら、やだって言う」
そして、千歌さんは一歩踏み出す。黒い羽を持って。
「だから、ふふっ」
千歌さんはそう言って黒い羽を持って私に手を差し伸べた。
好きな物を好きって言う気持ち。いいのかな?私が堕天使を好きだという気持ちを持ち続けても。そう言えば、沙漓もやりたいならやればいいとか言ってたっけ?
私の気持ちは……。
「うん。私も……Aqoursに入れてください!」
そして、私は羽を受け取り、こうしてAqoursに正式に入った。
すると、キキッーというブレーキ音が鳴り、
「ふぅ。やっと追いついた。自転車でもやっぱり疲れるモノは疲れるね」
そこには自転車に乗った沙漓がいた。沙漓は相変わらず運動がダメなようで疲れた様子だった。それと、かごには何本もペットボトルが入っていた。
「よくここが分かったわね」
「あーうん。こんな奇抜の格好の人たちが集団で走っていれば目立つからね」
沙漓はそう言って私たちを見た。私は部屋着、五人は堕天使衣装。確かにこれなら嫌でも目立つか。
「はい。熱中症になったら大変なので飲み物です」
沙漓は自転車から降りると袋を持ち上げ、中にあるペットボトルを皆に配る。
「ありがと」
「うん。どういたしまして」
多分沙漓はペットボトルのことに対してお礼を言われたと思っていそうだけど、私が行ったお礼は今まで気にかけてくれてたことも含んでいた。まぁ、勘違いしている分には訂正する必要も無いわね。
~☆~
「無くなってるー」
水門から家に戻ってくると、ヨハネはゴミ捨て場の前でそんな声を上げ項垂れていた。僕たちはそれでゴミ捨て場を見るとゴミ捨て場には一切のゴミが無くきれいになっていた。どうやらゴミ収集車に運ばれていったようだった。
「あっ、そう言えばここにきたとき善子ちゃん段ボール置いてたっけ?」
「あの中には私の堕天使グッズが……」
ヨハネが残念そうにそう言い、僕はポンと手を打つ。
「ああ。あれね。僕の部屋に置いてあるよ」
「え?」
千歌さんたちがヨハネを追いかけた後、僕も追いかけようと思ったけど、チラッとヨハネが置いた段ボールが目につき、とりあえず回収しておいた。ヨハネの部屋に持って行くより、僕の部屋の方が近かったし。運んだら完全に見失っちゃったけど、自転車で走っていると、「あの子たちなんだったんだろ?」みたいな会話がいろんな場所で聞こえたから追いつくことができた感じだった。
まぁ、そう言う訳で、ヨハネの堕天使グッズは僕の部屋にある。
「なんで、沙漓が?」
「ん?いや、資源回収だったから、使えるモノは貰って行こうかなぁって思ってね。それに、もしかしたらそのうち必要になるかも?って思ったし」
ヨハネに聞かれたから、ありのまま答えると、ヨハネはとりあえず堕天使アイテムの無事を知り安堵の表情をした。千歌さんたちもよかったみたいな表情をしていた。
「さて、私たちもいつまでもこの格好なのはあれだし着替えよ?」
「そうね。沙漓ちゃん部屋入らせてもらっていい?」
「了解です」
「ん?なんで、皆沙漓の部屋に?」
「マルたち一度沙漓ちゃんの部屋によってそこで着替えてから出てきたずら」
「さすがにあの格好でここまで来れないよ」
こうして、ヨハネがAqoursに加わり、七人になったのだった。
次の投稿は近々の予定です。