ノンナ「私、変態みたいなんです」 クラーラ「知ってましたよ?」 作:rogee
原作:ガールズ&パンツァー
タグ:ガールズラブ ガールズ&パンツァー ガルパン プラウダ高校 ノンナ クラーラ カチューシャ 百合風味 ノンクラ
ちょっと変則的かもしれませんが、ノンナとクラーラ中心のお話です!
ちょっとした日常の風景です。
ほんのり百合風味にしてみました!
こういうの書くのに、慣れていないので、違和感がある部分があるかもしれませんが、温かく許していただけると幸いです!
みなさん、こんにちは。
プラウダ高校の副隊長、ノンナです。
今日は、とある相談をクラーラに持ちかけることにしました。
「クラーラ」
「なんですか、ノンナ?」
「実は私、変態なのかもしれません」
「ふむ。どういうことでしょうか」
「なんというか、その……カチューシャを見ているとですねぇ」
「はい」
「股間が、疼くのです」
クラーラが私の瞳を覗き込みます。
吸い込まれそうな美しい瞳ですね。
青い青い瞳。
その瞳が、まるで問い詰めるようなのです。
「それで?」
簡潔に一言で返されました。
少し困ってしまいます。
「それだけです。別にそれ以上はありません」
「そうですか」
一呼吸おいて。クラーラが言いました。
「いまさら何を言っているのですか?」
あ。
なんか、胸に刺さりました。
「クラーラは、気がついていたのですか? 私の劣情に」
「ノンナ、あなた、カチューシャ様を肩車するとき、何を考えていますか?」
質問を質問で返されました。
私は顎に指をやり、いつもの肩車の光景に思いを馳せます。
「そうですね。まずは、太ももでしょうか。カチューシャの、太ももの感触と体温です。すべっとしていて、それでいて時々、転んだりしてできた擦り傷があったりします。体温はとても高いですね。子供っぽくて素晴らしいと思います」
「他には?」
「む……」
私は、再び考え込みます。
「そうですね。靴下のことなんかも考えますね。白い綿の靴下が最高ですね。カチューシャのあんよを包んでいるものだと思うと、非常に興奮します。時々、わざと触れたりしますね」
「それだけですか?」
「む……」
青い瞳が、覗き込みます。
すでに定まった答えを待っているかのようです。
仕方がないですね。
すべてお見通しということなのでしょう。
私は、口を開きます。
「一番考えるのは、パンツのことですね。カチューシャのおパンツです」
「見ているのですか?」
私は、首を振ります。
「いいえ。見たことはありません。そんな無粋な真似はしませんよ。ただ想像するだけが良いんです。私が、カチューシャの足と足の間に顔を突っ込んで、持ち上げるとき。首筋をスカートがくすぐります。もう、ほんの少し目線を上げれば見えるかもしれない。このぎりぎりの倫理が良いのです。そして、実際に肩車をすると、私の首筋に、もこもことした布の感触があります。カチューシャのおパンツです。触れているのです。彼女の、大切分な部分を守っている布が、私の首筋に触れているのです。そのことが、どこまでも私の嗜虐心を駆りたてます。でも、私はそれを絶対に見ようとは思いません。私にとって、カチューシャのスカートの中は、未知なる宇宙です。神秘の園です。それは、見ないからこそ無限に広がるイマージュの世界なのです」
と、ここまで語って、クラーラを見ると、彼女はにっこりと微笑みました。
「もう十分です。よくわかりました」
「あ、ちょっと待ってください」
私は人差し指をピンと立てます。
「まだ一つ語っていません。私としては、スカートの中の蒸れた空気というものも重要視していまして……」
「もういいですよ」
一蹴されてしまいました。
「それよりも、映画が始まってしまいますよ?」
あ、そうでした。
時計を見ると、あと10分で上映開始です。
実はここは映画館のロビーなのです。
向かいのソファに座っている、見知らぬ中年男性と目があいました。
男性は、顔を赤らめて目をそらします。
はて、どうしたのでしょうか。
「入りましょう。ノンナ」
クラーラが立ち上がります。
「そうですね」
今日はアレクサンドル・ソクーロフの特集日なのです。
有名な『エルミタージュ幻想』が再上映されています。
名前は知っていますが、見たことがありません。
ロシア好きとしては、見ておくべきでしょう。
映画館に入ると、そこは漆黒の闇です。
お客はあまりいません。
今時ソクーロフは流行らないのでしょうか。
見回しても、ずっと前の方の座席に高齢者が一人、最後尾辺りに中年夫婦が一組いるだけです。
ぽつねんとした気持ちになります。
広い宇宙にたった一人で取り残されたような。
ここはさしずめ、漂流宇宙船のコクピットでしょうか。
「ノンナ」
耳元にささやきが聴こえます。
いつの間にかクラーラが、私の頬のすぐ横に唇を持ってきていました。
「私は、カチューシャ様には、そこまでの劣情は抱えていませんよ」
「そうですか」
それは、愛が足りないというものではないでしょうか。
いえ、カチューシャへの愛で私が凌駕されることはあり得ませんが。
「私は、カチューシャ様を敬愛していますが、ノンナが感じているような感情はありません」
それがどうしたというのです?
もう映画が始まってしまいますよ。
「私が、そういう感情を覚える相手は、あなたですよ、ノンナ」
え?
私は思わず隣を振り向きます。
「あっ」
瞬間、ふわりと。
唇が触れ合ってしまいました。
「!!!」
私は、いつもの倍速のスピードで再び顔を正面に戻します。
な、なんということでしょう。
一瞬触れただけとはいえ、その、ファーストキスが。
というか、え?
私に対して、そういう感情?
クラーラが?
恐る恐る、もう一度隣に首を振ると。
頬を赤らめてクラーラが、唇に指を当ててはにかんでいました。
映画の内容は、ちっとも頭に入りませんでした。
映画館を出て、私たちは無言で、通りを歩きます。
今日は休日です。
朝早い回を見たので、まだ通りには、さんさんと陽光が降り注いでいます。
寒いロシアと全く違うであろう、温かい春先の小路です。
会話がありません。
もともとお互いに饒舌な方ではありませんが、気まずさを感じます。
私は勇気を出して、言葉を紡ぎます。
「あ、温かい、陽射しですね」
なんということでしょう。
お天気トークになってしまいました。
「はい」
クラーラが相変わらず簡潔に答えます。
「ろ、ロシアは、雪ばかり降るのでしょう? このような暖かい日はないのではありませんか?」
「ロシアにも、暖かい日はあります」
クラーラが答えました。
「雪解け、という言葉があるぐらいです。暖かい日差しに、降り積もった雪が解けるんです。溶けた雪が、川を流れていくこともありますよ。それを見つめるのは、気持ちが良いものです」
そこで言葉が途切れ、私たちはまた歩きます。
ぽかぽかの日差しの中を。
「映画の内容は頭に入ってきましたか?」
今度はクラーラが問いかけてきました。
私は首を振りました。
クラーラが笑います。
「ノンナもですか。私もです。いい映画なのですが」
「誰のせいですか」
私は口をとがらせて、つぶやきます。
と、はたと気づきました。
「『いい映画』って、見たことがあるのですか?」
「ダー。何度も見ました。『エルミタージュ幻想』は、好きな映画です」
「それでは、どうした今日はわざわざ?」
「好きなロシア映画を、ノンナに見て欲しかったからですよ。せっかくの映画デートですから」
「なっ!」
また、そういうことを。
「こ、これはデートなんかではありません。ただのロシア文化交流会です。あなたの気持ちは、あなたの一方通行です」
「あなたのカチューシャ様への気持ちと同じように、ですね?」
クラーラがにやりと意地悪く笑いました。
あ、こういう表情もできるんだ。
私の心の中の、クラーラ像が膨らみます。
「ふふふ。ノンナ。これからも、親密にしてくださいね?」
「適度な距離感を保つことを、願います」
「では、それを少しづつ詰めていくことにいたしましょう」
芝居がかった物言いに、少し笑ってしまいました。
空を仰ぐと、まだ日は高い。
今日はまだ、半分ほどしか終わっていません。
「勝手にしてください。なんといわれようとも、私はカチューシャひと筋ですから」
「はい」
「それはそれとして、まだまだ時間はありますね。せっかくの休日です。どうしますか?」
「ボルシチでも食べに行きましょう。おいしいお店を知っているんです」
これから先のことはわかりませんが。
とりあえず今日は楽しい一日になりそうです。
私たちは、軽やかなステップで歩きだしました。
(完)