やはり材木座が書くラノベは間違っている   作:ターナ

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第20話

最近、この奉仕部も忙しいわね。と言っても材木座君のラノベ批評を行っているだけなのだけれど。今日、八幡は先生に呼び出しを受けたらしく、少し遅れているようね。

今部室には由比ヶ浜さんと一色さん、私がいるところに川崎さんが挨拶をして入ってきたわ。

 

「川崎さん、今日はどうしたのかしら。何かの依頼?それともラノベを書いて貰ったの?」

「ああ、雪ノ下。私が材木座にラノベを書いてほしいってお願いしたんだ」

「サキサキ、最初に書いてもらった分の黒歴史は良かったの?読んだ後もヒッキーの方をみては顔を赤くして恥ずかしがっていたよね」

「..ああ、最初は恥ずかしかったんだけど、ああいうのも有りかなって思ったら、また書いてもらいたいって思って」

「川崎先輩もだんだんハマっちゃうんですね」

「その恥ずかしいんだけど、次は比企谷と私で、どういう話を書いてもらえるんだろうって思うと我慢出来なくってさ」

 

私たちが川崎さんを交えて話していると、八幡に続いて材木座君が部室に入ってきたわ。

 

「何で川崎がいるんだ?」

「八幡、今回は川崎殿からラノベを依頼されてな」

「どうして、みんな自分から黒歴史を作りに来るんだ?俺には理解できないんだが」

「良いじゃん、みんなヒロインに憧れるんだよ」

「そういうものなのか、俺はモブで良いけどな」

「雪ノ下、後で他のラノベも読ませて欲しいんだけど」

「いいえ川崎さん。プライベートなこともあるので、貴女に関係のない分については、読ませられないわ」

 

私は雪ニャンラノベを読まれるのが嫌だから言っているのではなく、あくまでもみんなのために言っただけなのよ。そう、あんなもの他の人に読ませたら何を言われるか、堪ったものではないわ。

 

「ただ今は内容のチェックだけは先にやっているの、余り触れられたくないことや失礼なことを書いている場合も有るかもしれないので」

「ふーん、じゃあ何時もどおり始めてよ」

「では材木座君。川崎さんの分を読ませていただけるかしら」

 

そういうと材木座君からラノベを受け取り、私が先に読ませてもらって問題がないことを確認すると、材木座君からみんなに配ってもらったわ。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

今日、私は朝から緊張していた。顔が常に熱く赤くなっているのが分かる。比企谷に弁当を作ってきたんだけど、どうやって渡せばいいのか自分でも考えずに持ってきてしまった。全然授業の内容が頭に入らないし4限目になっても私は比企谷に話しかけられずにいた。

4限目が終わり比企谷は席を立ったので、今から購買にご飯を買いにいくのだろう。私は遅れまいと比企谷の後を追うため、席を立とうとしたが隣の女子生徒に話しかけられ、後を追うことが出来なかった。比企谷がどこでご飯を食べているか知らないので、追い掛けることも出来ない。ああ、弁当が無駄になっちゃったな。

 

私は家に帰り弁当を捨てた。悔し涙がでそうになる。どうして私は何時もこうなんだろう。比企谷に弁当を渡したいのに、話しかける事も出来ないなんて。

 

「さーちゃん、どうしたの?」

「うん、何でも無いよ。ありがとう、けーちゃん」

「さーちゃん、かなしそうな顔しているよ」

「大丈夫、何でもないから。じゃあ、今からご飯の用意するから離れててね」

「..うん」

 

私は何をしているのだろう。けーちゃんにまで心配させて。明日は絶対話しかける、そして私の弁当を食べてもらうんだ。

 

次の日も私は弁当を用意して持って来ていた。でも結局渡すことが出来ず、いつのまにか4限目になっている。どうしよう、このままだと昨日と一緒だ。また、けーちゃんに心配を掛けてしまう。私のせいであんな悲しそうな顔はさせたくない。

私は授業が終わると教科書も片付けずに席を立ち、比企谷の席に向かった。

 

「比企谷、これ」

「なんだ?川崎」

「ん」

 

私は比企谷に弁当袋を突き出すとすぐ比企谷の席を離れた。顔が赤面していたけど、渡せたことが凄く嬉しかった。私がチラチラ比企谷のほうを見ていると、比企谷は弁当袋の中を確認した後、こちらを見たが何も言わずにそのまま席を立ち、弁当袋を持ってどこかに向かったようだ。

本当なら一緒に食べたいけど、今日は良いかな。多分緊張して食べれないと思うし。一緒に食べるのは、また今度の楽しみに取っておこう。

 

6限目が終わり後片付けをしていると、比企谷が私の席に近寄ってきて喋りかけてきた。

 

「川崎、弁当ありがとうな。凄くおいしかったぞ」

「食べてくれてありがとう!」

「いや、こっちがお礼を言わないといけないから。弁当箱洗って返すな」

「いいよ、そのまま返して。弁当箱がないと、明日持ってこれないだろ」

「え、明日も持ってきてくれるのか」

「..比企谷は迷惑?」

「いや、俺じゃなくて川崎が大変だろ」

「家でけーちゃ..京華の分や両親の分も作っているから、手間はそんなに変わらないよ」

「でも悪いから無理しなくて良いぞ、俺は施しを受けるつもりはないから」

「私が作りたいから持ってくるだけだから、あんたが食べないんだったら捨ててもらっていいし..」

「..分かった。でも大変なときは本当に良いからな」

「ああ、明日を楽しみにしときな」

「ありがとうな、じゃあ」

 

そういって比企谷は自分の席に移動すると後片付けをして、教室を出て行った。多分部活に向かったのだろう。

私は凄く嬉しかった。比企谷が弁当を食べてくれたこと、おいしいと言ってくれたこと。なんだか嬉しくて涙が出てきそうになったが、何とか堪えて私も後片付けをし、教室を後にした。

 

その日から私は毎日、弁当を持ってきていた。弁当を渡し始めて次の日から、比企谷が一緒に食べようと言ってくれ、私たちは屋上で並んで食べるようになっていた。

多分、比企谷は私の気持ちに気づいているのだろう。でも私から告白する勇気はない。もし比企谷に断られたら、この大切な時間が失われてしまう。それだったら今の関係を続けていきたい。私はそう願っていた。

 

「お兄ちゃん、ご飯できたよ」

 

土曜日の夜、小町とご飯を食べ始めたが、最近小町の料理が物足りなくなっている。何時もハンバーグや唐揚げなどは調理してくれるのだが、芋の煮っころがし、筑前煮、ひじきの煮物、ほうれん草の胡麻和えなど川崎が作ってくれた日本食は小町では料理出来ないので、スーパーの惣菜コーナーで買ってきてくれる。でも川崎が作ってくれたものを食べてしまった後では、すべてが物足りなく感じていた。

これが胃袋を捕まれたって事なのか、川崎の弁当を食べたくてしょうがない。早く月曜日にならないか、何時もなら学校が始まる月曜日は恨めしかったが、今では待ち遠しくなっていた。

 

月曜日、私はまた弁当を持って来ていた。最近料理をするのが楽しくてしょうがない。家族が私の料理を食べておいしい、と言ってくれるのとは別で比企谷に言われると私はそれだけで、幸せな気分になれる。今日もおいしいと言ってくれると良いけど。

 

「はい、今日の弁当」

「..何時も悪いな」

「じゃあ、食べようか」

「..その、食べる前にちょっといいか」

「何?」

 

そういうと比企谷はポケットに手をいれ、何か小さな箱を出してきた。それを開けると指輪が二つ入っていた、ペアリングだろう。え!?これってもしかして..

 

「その、なんだ。どうも俺の胃袋は川崎に捕まれたらしい。もし川崎が良かったら右手薬指にはめて貰えないか」

 

比企谷は一回り小さい方の指輪を箱から取り出すと、私に差し出してきた。私は声も出せず、涙が溢れてきて比企谷の顔も霞んでしまっていた。でも比企谷が私のために買ってきてくれた指輪をはめてほしくて、私は比企谷に右手を差し出した。

比企谷の手が震えているのが、右手を通して分かる。でもどんなに震えていても時間が掛かっても、比企谷が付け終わるまで私は右手を引っ込めることはなかった。

 

「あれ、ちょっと大きいか」

「ふふ、ちょっと大きいみたいだね。でもこれで良いよ、ありがとう。比企谷から始めてもらったものだから大切にする。じゃあこっちは私が付けるから右手出して」

「いや、俺は恥ずかしいから後で付けるよ」

「いいから右手をだしな」

「..はい」

 

お互いの右手薬指にはシンプルなリングが輝いていた。私にとって大切な宝物になるものだから傷を付けないように綺麗にしまっておきたい気持ちもあるけど、左手薬指に指輪を付けて貰えるまでは、ずっと付け続けようと心に誓っていた。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「なあ材木座、右手薬指の指輪ってどういう意味なんだ?」

「恋人がいる。と何かで読んだことが有るぞ」

「材木座君、その認識は誤っているわ、たしか「心の安定」って意味だったはずだけど」

「へー、そういう意味なんだ。でも私も雑誌で読んだことあるよ」

「多分、恋人が居て心が安定しているって意味で使われていると思うわ」

「でも、いきなり指輪を贈るってどうなんですかね、重くないですか」

「..私はこのラノベみたいに付けてほしいな、それだけ比企谷の思いが強いって事だろ」

「八幡の気持ちが籠っていると言う事なのね」

「でもヒッキー、自分が付けるのは戸惑うんだね。そこはヒッキーなんだね」

「先輩ですからね」

「なあ雪ノ下、何で比企谷のこと名前で読んでいるの?」

「私たちは最近、お互いを名前で呼びあっているのよ」

「...比企谷、私の事も名前で呼びな」

「川崎も名字で呼んでいるから、今までどおりでいいだろ」

「...は、はち、八幡...これからは私の事も名前で呼んで//」

「..分かったよ、沙希//」

「「「....」」」

 

「う、ううん。ではラノベの批評を再開しましょうか。途中八幡の地の文が出てきたのだけれど、そこだけだと違和感があるわ。川崎さんへの告白の時に、台詞で言った方がいいと思うのだけれど」

「あと弁当を渡した日も、けーちゃんを出してサキサキの表情の違いを出すのもいいと思うな。大志くんが出てきて、サキサキをからかうのも良いかもね」

「川崎先輩って日本料理得意なんですか?」

「何時も家で作っているからね。でもこの場合は和食って言った方がいいんじゃないかな」

「そうだな、郷土料理とか和食って言った方が分かり易いだろうな。日本料理っていうと寿司なんかも含まれるからな」

「郷土料理とか和食って、なんか地味ですね」

「そうか?俺は和食も好きだから、そういう料理出来る人が良いけどな」

「「「....」」」

 

「で、では今日はこの辺で終わりましょうか」

「うん。材木座、書いてくれてありがとう」

「いや、こちらこそ評価してもらえて助かっているぞ」

「じゃあ、は、八幡。明日、弁当作ってくるからよろしくな」ピシャ

 

川崎さんは部室を出るとき、八幡に弁当を作ってくるって言って、返事も聞かずに部室を出て行ったわ。残された私たちは固まってしまったのだけれど。

 

「じ、じゃあ、先輩。川崎先輩の次の日は私が作ってきます!!」

 

一色さんが川崎さんの発言にいち早く反応し、自分も提案し出したわね。

 

「では一色さんの次は私が作ってくるわ。八幡、楽しみにしててね」

「じゃあ、ゆきのんの次は私ね、ヒッキー食べてよ」

「ま、待ってくれ。沙希の分も食べるとは言ってないんだが」

「良いわよ、捨ててもらっても。私たちは八幡に作りたいから持ってくるだけなのだから」

「..捨てれるわけないだろ。でも結衣、..その、大丈夫なのか」

「私も今のままじゃ駄目だから、少しづつだけど練習しているんだ。だから食べてほしいけど、だめかな....」

「八幡、最近由比ヶ浜さんは自分で作ってきた弁当を食べているのよ」

「分かった、でも無理だけはするなよ」

「うん!!」

「わ、我にも誰か作ってくれないかなぁ...」

「「「....」」」

 

「うわーん!!八幡のリア充がああ!!もげてしまえぇぇ!!」

 

そういって材木座君は走って部室を出ていったわ。誰か作って上げれば良いのに。

私?私は嫌よ。八幡以外の人にどうして作らないといけないのかしら。

でも川崎さんは強敵ね。一色さんはどうなのかしら、未知数だわ。由比ヶ浜さんは最近、自分で作った弁当を持ってくるのだけれど、まだまだだし。私も和食を勉強し直すわ、川崎さんに負けていられないもの。そして最後は私が八幡の胃袋を摘んでみせるわ。

 

 

 

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