明日から小町さんの受験が始まると言うことで、八幡は部活を休んでいるわ。ご飯を作ると言っていたけれど、私を頼ってくれれば、幾らでも行ってあげるのに。
でも、私がいると小町さんと喋ってしまって、勉強の邪魔になるかもしれないわね。
「今日は、八幡が居ないようなので、帰らさせてもらいます」
材木座君は部室に入ってくるなり、辺りを見渡して帰ろうとするので、由比ヶ浜さん一色さんが引き止めたわ。
「中二、ラノベなら私たち3人入れば良いでしょ」
「そうですよ、ラノベの批評ですよね」
「で、ではお願いして良いか」
そういって、材木座君は由比ヶ浜さんと一色さんにラノベを渡したわ。と、言うことは私が出ているのね。今日はどう言った内容を書いてくれたのかしら。
「「ううぅ」」
なぜか、ラノベを読んだ二人が唸っているわね、読んで良いのか決めかねているのかしら。
「由比ヶ浜さん、一色さん、どうだったのかしら?」
「..良いよね、いろはちゃん」
「しょうがないですよね。じゃあ、雪ノ下先輩読んでください」
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(ここから材木座の小説)
「比企谷、ちょっと良いか」
6限目の授業が終わり、後片付けしているとさっきまで授業をしていた平塚先生に俺は呼ばれた。
「由比ヶ浜は知っているだろうが、雪ノ下も今日、風邪を引いて休みなんだ。二人休みなので今日は部活は無しで良いぞ」
「分かりました、今日はこのまま帰ります」
「見舞いにでも行ってあげたらどうだ?心配だろう?」
「俺に心配されても、アイツらは困るだけでしょ、大人しく帰りますよ」
先生にはああ言ったが、俺は雪乃の事が心配だった。結衣は親がいるので安心だが、雪乃は一人暮らしだ。こういう時ぐらい、実家を頼ってくれれば良いのだが、多分雪乃のことだから、連絡すらしていないだろう。
俺は自転車に乗って家に帰るつもりだったが、なぜか雪乃のマンションに向かっていた。まあ、ちょっと様子を見てくるぐらい良いだろう、俺は言い訳するように自転車を漕いでいた。
マンションについたので、インターフォンを操作し、雪乃の部屋を2回鳴らしたのだが返答がない。3回目で返答がなければ帰ろうと考え、もう一度押すと「はい」と返答が聞こえてきた。
「雪乃、俺だ」
「だれ?私の知り合いに俺って人は居ないのだけれど」
「比企谷だ」
「..なに?」
「ああ、そのちょっと心配になって来てみたんだが、体調はどうだ?」
「..インターフォンで話すのもなんだし、上がってちょうだい」
そういうと、雪乃は俺をマンションに上げてくれた。玄関に入ると雪乃がパジャマにカーディガンを羽織っていた。立っているのも辛いのか、壁にもたれ掛かっている。
「大丈夫か、病院には行ったのか」
「ええ、今日の朝行ってきて、先ほどまで寝ていたわ」
「じゃあ、お昼食べてないのか、俺がお粥を作るから雪乃は寝ていてくれ」
「良いわよ、そこまでして貰わなくても、貴方に世話をされるなんて、後で何を要求されるかたまったものではないわ」
「良いから寝ていろ...もしかして、動くのも大変なのか」
「だ、大丈夫よ。これぐらい」
雪乃はそういったが、見るからにフラフラしているのが分かった。俺は雪乃をお姫様抱っこしてリビングに移動した。
「お、降ろしなさい!!あなた、どうして私を抱き上げているのよ!!訴えて上げるわ、覚悟しておきなさい!!」
「良いから、今日は大人しくしていろ。寝室はどっちだ」
そういうと、雪乃は諦めたのか、寝室の方を指差してくれた。寝室に入りベッドに降ろすと、俺は羽織っていたカーディガンを脱がせて、雪乃を寝かせた。
雪乃の顔が赤かったので、おでこに手を当てるとかなり熱く感じた。俺は手櫛で髪の毛を払い、買ってきた冷えピタをおでこに貼り付けた。雪乃はその間、恥ずかしいのか口元まで布団を被り、何も言わずに目だけがキョロキョロ忙しく動いていた。
「じゃあ、お粥作ってくるけど、大人しく寝ていろよ」
雪乃は首をコクと動かしただけで、言葉を発することはなかった。俺は寝室を出た後、机の上に置いてあった薬を確認した。病院には行ったようだな、ただ薬を飲んだ形跡がない。本当に帰ってきて、すぐ寝てしまったのだろう。
俺は卵粥とりんごを磨り下ろしたものを用意し、薬と水も合わせて持っていった。
「雪乃、起きているか」
「ええ」
「起きれるか」
雪乃は起き上がろうとしていたが、辛そうだったので、俺は背中に手を回し起きるのを手伝った。
「八幡、さっきから私の身体を何かにつけて触ってきてセクハラだわ、体調が戻ったら覚悟しておきなさい」
「はいはい。風邪で辛いときぐらい、素直に何をやってほしいのか言えよ」
「私が素直じゃないというの?私は何時も思ったことを言っているだけよ」
「ああ分かった。じゃあ、俺もう帰るからお粥食べて、薬飲むんだぞ」
「え?」
「俺がいない方がいいだろ、これ以上セクハラって言われるのも辛いしな」
「..あなたが居たいのなら、もう少し居ても良いわよ」
「いや良いよ。じゃあ、お大事に」
俺はそういって、寝室を出ていこうとしたところで雪乃が声をかけてきた。
「..ま、待って...い、居てほしいの」
「..いいのか、俺が居ても」
「ええ、一人だと寂しいの」
「分かった、じゃあお粥食べるか」
「ええ、お願い」
俺は雪乃の枕元に向かい、先ほど置いたお粥を手に取ると、レンゲで掬い息を吹きかけ、雪乃の口元に持っていった。
「あーん」
「そ、その恥ずかしいわよ//」
「あ、ああ、悪い。小町が体調不良の時、俺がよくやってあげてたから、つい。自分で食べれるか?」
「..そ、その、食べさせて貰えるかしら。あ、あーん//」
雪乃が食べさせてくれと言ってくるとは思わなかった。また罵倒されるかと思っていたのだが。
その後、ずっとあーんさせられて、かなり恥ずかしかったが、雪乃はお腹が空いていたのか、俺が作った卵粥をすべて食べてくれた。
「りんごを磨り下ろした物も用意してきたんだが、食べれるか」
「ええ、じゃあ、は、八幡。食べさせて//」
そういうと雪乃はまた、あーんと言って口を開けてきた。なんだか雛鳥が餌を貰うときみたいだな。でもいつもの美しい雪乃でなく、可愛い雪乃が見れたのが俺は凄く嬉しかった。
「ごちそうさまでした」
「お粗末様。じゃあ、薬を用意するから」
俺は薬袋に入っているそれぞれの錠剤から1回分取り出すと、皿に置いて雪乃に差し出した。
「は、八幡。薬も飲ませてほしいのだけれど//」
「え、あ、ああ判った」
俺は錠剤を一錠とると、雪乃の口に持っていった。雪乃の唇が俺の指に触れる。かなり俺は赤面しているだろう、雪乃もかなり顔が赤い。お互い無言で俺は薬を運んで口に入れ、たまに水を飲ませる行為だけに専念していた。
「じゃあ、ちょっと後片付けしてくるから」
「良いわよ、食器はそのまま置いてて貰っても」
「そういう訳にはいかないだろ、良いから寝てろ」
「じゃあ、お願いするわ」
「ああ、任された」
俺は、寝ているように言うと、雪乃は素直に言うことを聞き横になった。俺は食器を洗いに寝室を後にした。
何時も今ぐらい素直なら、もっとモテるだろうに。いや雪乃はそういうのは嫌いだろうな、雪乃の事をロクに知りもしない奴に告白されても、何時もの罵声を浴びるだけだろう。
じゃあ、俺は?他の奴より雪乃の事を知っていると思う。まだ知らないことはいくらでもあるだろう。でも他の奴と比べたら、俺と雪乃が奉仕部で過ごしてきた時間はお互いを理解するには十分な時間だったのではないだろうか。
色々考えながら食器を洗い、寝室にいくと雪乃は起きていた。
「体調はどうだ?」
「ええ、熱を測ったら7.5度だったわ。まだ熱はあるのだけれど、かなり楽になったわ。ありがとう。八幡のおかげよ」
「じゃあ、そろそろ帰らせてもらおうかな」
「あ、あの八幡。今日はその、泊まっていけない?」
「え、いや不味いだろ。一人で不安なのは判るが」
「八幡が素直になれって言ったのよ、私は泊まっていってほしいの」
「しかしだな、そ、そう着替えとかないし、俺も男だぞ。雪乃に劣情を催すかもしれないしな」
「着替えなら防犯用に用意した男性用の下着があるわ、あと私は八幡を信じているの。あなたは私が嫌がるようなことはしないでしょ」
「...判った、でも家に電話させてくれ。断られたら悪いが帰らせてもらうぞ」
俺は寝室を出ると家に電話したが、小町からは面倒を見てあげろと言われ、俺が言葉を発する間もなく、電話を切られた。俺は雪乃の元に戻り、泊まれると伝えると雪乃は安心したのか、俺に笑顔を向けてくれた。
「八幡は晩ご飯、どうするの?」
「ああ、まさか泊まるとは思っていなかったんで、何も用意していなかったな」
「今、体調が良いので私が作りましょうか?」
「駄目だ。雪乃は寝ててくれ、俺は何か買ってくるよ。明日の朝ご飯とかもいるだろ」
「ごめんなさい。私のわがままで」
「いや、俺は雪乃が素直に言ってくれて嬉しいんだ。じゃあ、ちょっと買い物に行ってくるから」
「はい、行ってらっしゃい」
俺は近くのスーパーに行き、消化の良さそうな物を買い、雪乃のマンションに帰って行った。
「お帰りなさい、八幡//」
「た、ただいま//..寝てないと駄目だろ」
「..でもお出迎えしたかったのよ」
「あ、ああ、ありがとう」
俺は雪乃を寝室に連れていき、冷えピタを替えてまた横になっているように言った。
「そういえば、俺はどこで寝れば良いんだ?」
「そこのクローゼットに布団が入っているわよ、この部屋で寝てちょうだい」
「い、いやそれは不味いだろ、布団をリビングに持っていって、そっちで寝るから」
「いやよ、一緒の部屋で寝てちょうだい」
「で、でもだな」
「一緒の布団で寝るわけではないのだから、良いでしょ」
「..雪乃がそれで良いなら」
俺は雪乃を寝かせた後、布団を雪乃のベッドの横に並ぶように用意し、何時のまにか用意してくれていた着替えを持ってシャワーを浴びさせてもらった。
雪乃が自分も身体を拭きたいと言ったので、タオルや湯を用意したのだが、背中を拭いてほしいとお願いされた。え?雪乃は恥ずかしくないの?素直になったのは良いけど俺も男だからね。
「そ、その本当に良いのか?」
「ええ、背中はちゃんと拭けないでしょ、八幡に拭いて欲しいの」
「じ、じゃあ、拭くからパジャマ脱いでくれないか」
「あ、あの後ろを向いてて貰えないかしら//」
「あ、そ、そうだな。済まん」
「あ、あの八幡。では、お願いできる?」
「ああ」
雪乃はパジャマで前を隠していた。白い肌が俺には眩しく、思わず生唾を飲み込んでしまった。俺はなるべく見ないように背中を拭いていた。
拭いていたとき、雪乃の耳が真っ赤になっているのが見える、雪乃も恥ずかしいのだろう。襲い掛からなかった俺を褒めてほしい。いや、かなりヤバかった。後ろから見るうなじに吸いよせられて、もうちょっとで口を付けそうになってしまったし。
9時を過ぎた頃、ちょっと遅くなったが、ご飯を食べようと思い、雪乃に確認したところ、少し食べたいと言うことだったので、俺はうどんを用意した。雪乃の体調はかなり良いと言うことで、リビングで食べたのだが、今回はあーんはしなかったのが、ちょっと残念だったな。
ただ、また薬を飲ませてほしいと言われ、お互い赤面しながら昼のように薬を一錠ずつ飲ませてあげた。リビングでうどんを食べたんだから、薬ぐらい飲めるだろ。ただ素直になった雪乃の破壊力は凄く、俺は言うことを聞くしかなかった。
俺たちはご飯を食べ終わった後、雪乃に布団に入るように言った。まだ熱があるので、無理させたくないし、これ以上、起きていてもしょうがないので俺は雪乃の枕元に腰をおろし、俺から雪乃の手を握っていた。雪乃は驚いていたが、何も言わず手を握り返してくれた。
「今日はありがとう、八幡」
「なんか雪乃に素直にお礼を言われると後が怖いな」
「ううん、今まで私がいけなかったの。八幡に甘えていて、貴方なら許してくれるって分かっていたから、つい言い過ぎていたわ。でも、これから八幡には素直になると決めたの。だから今日、最後にやってほしいことを言って良い?」
「ああ、いいぞ」
「そ、そのおやすみのキスをしてほしいの//」
「俺なんかで良いのか//」
「八幡が良いの//」
俺は雪乃に近づいていき、お互いの唇を重ねた。短いのか長いのか分からない、でも雪乃を離したくないと思わせるには十分な時間だった。
「俺は雪乃のことが好きだ。愛してる」
「私も愛しているわ、八幡」
また俺たちはキスをした。その後、俺は雪乃の頭を撫でていた。雪乃は最初、戸惑っていたが、なで続けるとそのうち寝息を立て始めた。
「素直だとこんなに可愛いんだな、これからもよろしくな。雪乃」
俺は雪乃の寝顔に言葉をかけると、自分の布団に移動し眠りについた。
(ここまで材木座の小説)
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「....//」
「..なんか、このゆきのん。ズルい」
「ど、どうしてかしら、由比ヶ浜さん」
「だって、素直になったらこんなに可愛くなるんでしょ、こんなの勝てっこないじゃん!!」
「そうですよね、結衣先輩。先輩なんてコロッと落ちちゃいますよ」
「あ、あなたたち、これは材木座君が書いたラノベなのよ。実際にはこんなにすぐ、八幡が言うことを聞いてくれるわけないわ」
「でも以前、先輩が言っていたじゃないですか、雪ノ下先輩だったら甘えてくれるギャップがいいって、以前の雪ニャン先輩と違って、このラノベみたいに素直にやってほしい事を言うのは、簡単じゃないですか」
「そ、それを言ったら由比ヶ浜さんには甘えさせてほしいって、言っていたわ」
「ヒッキーが甘えてくるってことないじゃん!!」
「そうですよ、私なんて凛とした姿ってどうやって見せるんですか!!」
「それは奉仕部で遊んでないで、生徒会を頑張れば良いのではないの?」
「..だって、そうすると先輩に会えないじゃないですか」
「あ、あのう。ラノベの批評をして頂きたいんですが」
「中二は黙ってて!!」
「木材先輩、うっさいです!!」
「...は、はぃ」
「あ、あなたたちラノベの批評をしましょう」
「うう、なんだか納得できない!!」
「ですよね」
「でもそれを言ったら、今までのラノベすべてを否定することになってしまうわ。私はまだ材木座君に書いて貰いたいと思っているのよ、これでおしまいにしたくないわね」
「..確かにこれでおしまいって嫌だよね」
「..そうですね、確かにラノベの内容を現実に当てはめるのは、どうかと思いますね」
「ええ、だからこれかも書いてもらうには、ちゃんと批評をしないと。材木座君も書いてくれなくなってしまうわ」
「うん、中二。さっきはごめん」
「そうですね、木材先輩。私もすみませんでした」
「いや、我は良いのだが、これからは登場人物をオリキャラに切り替えていった方が良くないか。例えば雪ノ下殿の容姿に似せて性格がまったく違うとか。そうすれば個人に批判が行くことはなくなるだろうし、黒歴史にもならぬし」
「「はぁ!?」」
「材木座くん。あなたは何を言っているのかしら、私たちはあなたが文章でうまく説明できないので、登場人物として出しても良いと言っているのよ。容姿だけ真似て性格が違うって、どうやってラノベの中で説明するつもりなの?私たちをラノベに出しておいて、容姿は同じで性格の異なる点を書くのかしら、では私たちの事を知らない人にはどのように説明するつもり?知っていたとしても、容姿が似ているというのは双子って設定にでもするの?ただ双子であれば性格も似ているでしょ。では姉妹?姉妹であれば、例えば私と姉さんでは性格も容姿も異なるわ、それをどうやって文章にするのかしら、もしかしたら、いつかのオリジナルキャラクターを使うつもり?オリキャラと言っても髪型だけしか書いていなかったわよね。その後何か設定は決めたの?髪型もセミロングと言っても色々あるわ、身体的特徴は?顔の特徴は?性格は?ラノベ好き以外に何か特徴があったかしら?説明していただけるかしら?」
「うぅ、済まみせん。我にはまだオリキャラは早いと言うことですね」
「ええ、分かって貰えれば良いのよ」
「..今日は帰らさせてもらいます」
「あら、今回の批評は良いのかしら」
「結構です、失礼します..」
材木座君が廊下に出た後、何処からか男子の泣き声が聞こえてきたわ。何かあったのかしら。
でも今回のラノベのように私が素直になれば、八幡は私だけを見てくれるようになるかもしれないわね。
今度、八幡と二人で過ごす様なことがあれば、やってみましょう。もしかしたら良いことが有るかもしれないし//
「結衣先輩、雪ノ下先輩の表情見てください。あの顔、今度先輩と二人になったら素直に接するつもりですよ」
「うん、ヒッキーとゆきのんは二人には出来ないね。いろはちゃん、私が奉仕部に来れない時はよろしくね」
「はい、お互い連絡取り合いましょう」
「あ、あなた達、何の相談をしているのかしら。私はいつも素直に八幡に接しているわ、二人きりになっても何も変わらないわよ//」
「「へぇー」」ジィィー (;¬_¬);¬_¬)(‥;)
な、何をこの二人は言っているのかしら。私はこれから八幡を余り罵倒しない様にして、やって貰いたいことがあったら、お願いするだけよ。
でも何とか二人きりになるようにしないといけないわね。この二人の監視を何とか逃れないと。