やはり材木座が書くラノベは間違っている   作:ターナ

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第35話

「八幡。助けて」

「南、どうしたんだ」

 

相模さんがなぜか、奉仕部に一番最初にきて、八幡が来た途端に助けを求めていたわ。何かあったのかしら。そう思っていると、由比ヶ浜さん三浦さん海老名さんが来たわね。

 

「相模さん、面白かったでしょ。今度、もっと持ってきてあげるから」

「海老名さん、本当に良いから。読んでみたけど、うちには無理だよ」

「ええ、読めば面白くなっていくから、もっと読んでみてよ」

「姫菜、いい加減にしな。相模も困ってるし。押し付けは駄目っしょ」

「..分かったよ、でも相模さん。いつでも良いから読んでみたくなったら、何時でも声を掛けてね」

「う、うん。そうなったらお願いね」

「じゃあ、雪ノ下さんはどう?興味ない?」

「私はご遠慮させてもらうわ」

「そうか、残念だな」

 

海老名さんは落ち込んでいるようね。でもここで慰めてしまうと多分、勧められてしまって押し切られるから、何も言わない方がいいわね。

私たちが話していると、材木座君。遅れて一色さんが部室に来たわ。今日は誰のラノベを書いてきたのかしら。

 

「撮影会のとき、海老名殿から依頼されたので、書いてきました」

 

そういって、材木座君は私にラノベを渡してきたので、私は確認させてもらったわ。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

「はあ、結構山奥に入ってしまったな」

 

今日は薪や茸、山菜を拾いに山に入っていた。俺は元々、ある程度栄えていた所に住んでいて、寺子屋で学んだ後、働くつもりが無かったため家でゴロゴロしていたが、両親から爺ちゃんの田んぼを継げと言われて、この田舎まで引っ越してきた。

俺が引っ越してきてすぐ、お伊勢さん回りをしたいと言って、爺ちゃん、婆ちゃんは旅行に行ってしまった。年よりの足腰で大丈夫なのか?でも夢だったそうで俺は了承して家は任せろと言って見送った。そのため、俺一人で家や田畑の面倒を見ているが、こんなに大変とは思っていなかった。

働かなければ、その日のご飯も作れないため、今日は薪や山菜拾いに来たわけだ。

 

くぅーん、くぅーん。

 

どこからか、動物の鳴き声が聞こえてきた。鳴き声からするとかなり弱っているようだな、俺はゆっくり鳴き声のするほうに近寄って行った。

 

狐か?罠が仕掛けてあったらしく、後ろ足が罠に掛かっていて横たわっていた。狐は俺を見たとき、逃げようとしていたが、トラバサミが重いため、逃げれないで足掻いていた。

 

「大丈夫だ、今から罠を解くから暴れるなよ。俺は猟師ではなくただ薪を拾いに来ただけだから」

 

俺がそういうと狐は言葉が分かるのだろうか。俺の姿を見て、おとなしく言うことを聞いていた。

 

「よし、これで解けたな。ただ怪我をしているな、逃げずに待ってろよ」

 

俺は、持っていた薬草を患部に塗り、薪からちょうど良い枝を見繕い服の袖を破いて巻いてあげた。

 

「歩きにくいだろうが、無いよりはいいだろ。もう罠にかかるなよ」

 

俺がそういうと、狐は俺の方を何度も振り返りながら山奥に入って行った。

猟師にバレたら怒られるな、今日は人に会わないように家に帰らないと。まあ、俺の特技、隠密行動を行えば、人にあってもバレることは無いだろうけど。

 

その夜、扉をノックする音が聞こえた。ええ、こんな時間に客かよ。俺は面倒だったので、応対せずにいたら、女性の声で「ごめんください」と聞こえてきた。若い声だな。こんな遅い時間に女性が何しにきたんだ。この辺は家が数軒しかないし、若い女性は回りの家には住んでいない。

 

「ごめんください」

 

しょうがねえな、こんなへんぴな所で何か困っているのだろう。おれは返事をして家に入って貰った。

 

「どうしたんだ、こんな時間に」

「私は海老名姫菜と言います。山の中で迷ってしまって、怪我をしてしまい、こんな時間になってしまったのです。今晩泊めてもらえないでしょうか」

 

彼女の足には傷が出来ており、そこから血が出ていた。

綺麗な女性だな、着物を着ていて、目には西洋の眼鏡と言うものを掛けている。俺は始めて見たんだが、目が悪い人が掛けるものと言うことは知っていた。

 

「お、俺は比企谷八幡。まずは傷の手当てをしよう。ただ泊めるのはまずいな、ここは俺しか居ないんだ」

「いえ、大丈夫です。八幡さんの邪魔にならないようにしますので」

「海老名さん、畏まった(かしこまった)喋りかたは止めてくれないか、歳も変わらないだろ」

「いいのですか」

「逆にこちらが畏まってしまうからな」

「...じゃあ、そうさせてもらうね。ハチ」

「ハチって俺のことか?まあ、良いけど。じゃあ、俺は姫菜って呼んでいいか」

「うん、よろしくね」

 

俺は姫菜の足に薬草を塗り、治療をしていた。でも変な傷だな、トラバサミが食い込んだみたいになっている。山を歩いていて罠にかかったのだろうか。治療していると、姫菜は俺に話しかけてきた。

 

「はち。この足では動けないから、治るまでここに泊めてほしいの」

「それは不味いだろ。でもこの足だと動けないか。でも良いのか、俺と一緒で」

「うん、私のわがままだから」

「分かった」

 

その日、姫菜は俺と寝屋を共にしていた。ただ俺は姫菜に手を出すことは無かった。隣で寝ている姫菜に理性を奪われそうになるが、俺の行為で彼女の人生を狂わせることになる。そう考えると何も出来なかった。

 

「おはよう、はち」

「あ、ああ、おはよう」

「..昨日は何もしてくれなかったんだね」

「で、出来るわけないだろ。姫菜の一生を台無しにするかも知れないんだから」

「はちなら、良いよ」

 

そういうと姫菜は俺に覆いかぶさってきて、俺に接吻してきた。俺の理性は崩壊し一日中、姫菜の身体に溺れていた。

 

「はぁ、はぁ、...はち。私を貰ってね」

「ああ、姫菜。俺と結婚してくれ」

「はい。これから一生そばに置いてね」

 

俺たちはこの日、結婚し二人で暮らすようになった。姫菜は夜を共にすると、俺が寝たことを確認し隣の部屋で何かを行っていた。俺が翌朝聞くと、覗かないでと言われて俺は従っていた。

 

「はち、これをこの住所にお店に持っていって」

「良いが、この住所って遊郭があるところじゃないか」

「うん、でもここが一番高く買ってくれるから。あと中は見ないでね」

 

俺は姫菜から預かった荷物を教えてもらった住所に持っていき、亭主に渡した。

 

「こ、これは海老名画家の戯画(ぎが)ではないか。まだこれほどのものが有ったなんて」

「俺は、ここに持っていってほしいと頼まれただけだが」

「分かった。では五十両で引き取らせて欲しい」

「五、五十両!?」

「ああ、それほどに価値のあるものだ」

 

俺は金を受けとったが、こんな大金を持ったことが無いので、隠密行動しながら家に急いで帰った。

 

「ひ、姫菜!!五十両も出してくれたぞ!!」

「よかった、今でも評価してもらえるのね」

「なあ、亭主は俺にも見せてくれなかったんだが、どんな戯画なんだ?」

「はちは気にしないで。ご飯を食べよ」

 

姫菜は戯画について、教えてくれなかった。多分俺が寝た後、書いているのだろう。俺たちはその夜も共にし俺が寝たのを見計らい、姫菜は隣の部屋に移動していった。

 

俺は姫菜との約束があったことを思い出し、しばらくは覗かないようにしていたが、日が経てば経つほど好奇心が勝り、俺は物音を立てないように隣の部屋の襖前まで移動していった。

襖をそっと開けて覗くと、そこには姫菜の姿は無く、一匹の狐の姿があった。ただ普通の狐ではなく、尾を九つ持っている九尾狐(きゅうびこ)が絵を描いていた。

俺は約束を忘れ、襖を開けてしまっていた。

 

「はち、私の姿を見てしまったね」

「..姫菜」

 

俺は呼びかけたが、姫菜は駆け出し、家を飛び出していった。そういえば昔、話を聞いたことがある。鶴の恩返しと一緒だったのか。俺が以前助けた狐が姫菜だったのだろう。俺はなんて浅はかなことをしてしまったのだ。姫菜との約束を破り、彼女の秘密を知ってしまった。もう姫菜は戻ってくることはないのだろうな。俺は床に散らかっていた戯画を手に持って眺めていた。そこには二人の男が裸で描かれており、その内の一人が俺に見えた。

 

俺は泣きつかれ、いつの間にか眠ってしまったようだ。味噌汁の香りが漂っていたので、目を覚ますとそこには姫菜が朝ごはんの用意をしていた。

 

「か、帰ってきてくれたのか」

「..おはよう、はち」

「ごめん、姫菜。お前との約束を破って」

「..本当は帰ってくるつもりは無かったんだけど、この子のためにね」

 

そういうと姫菜はおなかを擦って幸せそうな顔をしていたが、表情が変わり申し訳なさそうに俺に話しかけてきた。

 

「でも、お願い。私の秘密を漏らさないで」

「ああ、この子のためにも一生誰にも喋らない。だから姫菜、ずっと俺のそばにいてくれ」

「はい」

 

俺は姫菜に抱きつき、泣いていた。姫菜も涙を見せ俺の頭を撫でてくれていた。

 

その後、俺たちは子供を五人授かり、皆すくすく育っていって家を出て行った。俺はすでに七十を越え、後は迎えを待つだけとなっていた。姫菜は出会ったころの姿のまま、俺に尽くしてくれていた。

 

「姫菜、お前は何時までも美しいな。こんな不甲斐ない旦那で申し訳なかった。これからは自由に暮らしてくれ」

「いいえ、あなた。私は幸せでしたよ」

 

俺と姫菜は口付けをし、俺は眠りについた。永遠の眠りに。

 

 

私は一人になってしまった。はち、貴方は自由に暮らせといったけど、私には貴方のいない生活なんてもう考えられない。私は死ぬことも出来ない身体。だからいつか、生まれ変わってきて。それまでは私も眠らさせてもらうね。

 

私は目が覚めてあたりを見渡した。どれぐらい眠っていたのだろう。そう、ここは神社の社で私はそこで眠りについていたんだった。今日はどうも正月のようね、外行く人を眺めていると、私が知っている風貌とはまったく違う格好をした老若男女がお参りしているのが見て取れる。あれから何年経ったのだろう、私は姿を消して社から出ていた。

私が神社の屋根の上から、あたりを見渡していると、一人の少年に目を奪われた。その少年は社の前で願い事をして帰っていく。私は彼の後ろに着いていった。

 

「おにいちゃん、ちゃんと合格祈願した?総武高校なんて難しいんだからちゃんとしておかないと駄目だよ」

「ああ、でもお参りしているより、勉強したほうがよっぽど時間を有効に使えただろ」

「バカ、ボケナス、八幡。そんな事言っていると罰が当たるよ」

「八幡は悪口じゃ無いだろ。まあ、今日ぐらいはいいか。家に帰って雑煮食べようぜ」

「うん」

 

少年は八幡って言うのね、本当にあの人の生まれ変わりだ。はち、貴方の生まれ変わり、若いころの貴方に顔も身体もそっくり。合格祈願と言っていたから、私もそれに合格すれば一緒のところに行ける。

貴方には覚えは無いと思うけど、私をここまで一人で居させたのだから責任とって貰うよ。私の身体を慰めてもらうからね。

 

少年の後ろ、何もない空間で女性の笑い声がいつまでも聞こえていた。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「ばれちゃったね、ハチ。私の身体を慰めてね」

「ひ、姫菜。何を言ってんだ」

「私をずっと放ったらかしだったんだよ、責任取ってもらわないと」

「お、俺のことなんて高二になるまで知らなかっただろ」

「実は昔から知っていたんだよ、ずっとこうなることを望んでいたの」

 

そういうと、海老名さんは席を立ち上がったわ、どうしたのかしら。彼女を見ていると八幡の方に移動していって、八幡の膝に腰を降ろして手を首に回していたわ。

 

「ひ、姫菜。あんた何やってるんだし!!」

「海老名さん。貴女何をしているのかしら、すぐ八幡から離れなさい!!」

「海老名先輩、さすがに駄目ですからね!!」

「姫菜、離れてよ!!」

「だ、駄目だよ。海老名さん!!」

 

女性全員で海老名さんに駆けより、海老名さんを八幡から引き離すことが出来たわ。ただその時の八幡の顔は赤く名残惜しそうにしていたわね。

一度、調きょ...指導が必要かもしれないわ、どうして私以外の女性にデレているのかしら。

 

「今回のラノベは鶴の恩返しを元に書いたのね、でもどうして九尾狐(きゅうびこ)なのかしら」

「中二、確か妖怪だよね」

「由比ヶ浜殿、九尾狐は妖怪ではなく、神獣であるぞ。なので人間に変化(へんげ)出来ると思って出したのだ」

「へぇ、あーしも妖怪と思ってた」

「なあ、材木座。神獣だったら罠に掛かっても自分で抜け出せるだろ」

「それは....」

「大体、鶴の恩返しをガキのころ読んだときも思ったんだよな。人間の姿に変われるなら、自分で外せよって」

「八幡。あなた子供の時、そんなこと考えていたの?あなたのその捻くれた考えは子供の時からなのね」

「ヒキオ、あんた捻くれすぎだし」

「ヒッキー。子供の時、そんなこと考えないよ」

「うちもそう思う」

「先輩ですからね」

「違うよ、私はハチと会いたかったからワザと罠を外さなかったんだよ」

 

海老名さんは何時までラノベの設定を引っ張るつもりなのかしら。でも彼女の先ほどの行動力からみて看過できないわね。

 

「うちの思ったこと言っていいかな、材木座君。一度も八幡のお爺さん、お婆さんは出てこなかったね。無事に帰ってきたの」

「東海道五十三次に出かけていると言う設定なのでな。色々あったあと、無事に帰ってきているのだ」

「材木座君、東海道五十三次では伊勢神宮は回らないはずよ」

「え?目的地って伊勢神宮では無いのですか」

「材木座。勘違いしている人もいるが、三重県は北部を通過するだけで最後は京都にいくだけだぞ」

「へえ、伊勢神宮って三重県なんだ」

「結衣、それはいくら何でも知らなさすぎだよ」

 

そろそろ由比ヶ浜さんに勉強会を開いた方がよさそうね。私は以前から考えていたのだけれど、今が良い機会かもしれないわ。

 

「由比ヶ浜さん、そろそろ奉仕部で空いている時間に勉強会をしていこうと思っていたのだけれど、どうかしら?」

「ええ、勉強なんてしたくないよ」

「そうなの、では八幡。私と二人で勉強しましょうね。色々教えてあげるわ」

「ゆきのん、どうして二人なのさ!!」

「あら、由比ヶ浜さん。どうしてって由比ヶ浜さんは勉強するつもり無いのでしょ。だから私と八幡の邪魔はしないでね」

「ちょ、ちょっと待つし。あーしも入れてほしいし」

「うちも入れて」

「私も入れてもらおうかな、雪ノ下さんから教えてほしいな」

「わ、私もするから、ゆきのん教えてね」

「え~、勉強会しだすと私遊びに来れないじゃないですか」

「一色さん、あなた生徒会は良いのかしら」

「うう、で、でも木材先輩にまだラノベ書いてもらわないと」

「生徒会長殿、皆が勉強会するのであれば、我は控えるようにするぞ」

「材木座君、ラノベを書いた時は事前に連絡を貰えるかしら。その日は勉強会を行わないようにするわ。あなたのラノベの批評は奉仕部で受けているのだし。時間のある時に勉強会を行うつもりなのだから」

「雪乃、人数が多すぎないか。雪乃一人だと多分、無理だぞ」

「そ、そうね。私は由比ヶ浜さんだけを考えていたから、ちょっと検討させてもらうわ」

 

まさか三浦さん、海老名さん、相模さんも勉強会に参加するとは思っていなかったわ。三人がどれほど勉強が出来るのか分からないけれど、一度考えた方が良さそうね。

 

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