やはり材木座が書くラノベは間違っている   作:ターナ

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第40話

「我も写真を撮ってもらって、ありがとうございました」

「いいえ、材木座君。あなたにも色々お世話になっているのだから、そんなに謙遜する事ないわ」

「そうだよ、中二。いっつも部室に来てるんだからさ」

「まだ時間があるようなので、もう一つラノベを書いてたので、批評して貰っていいですか」

「ええ良いわよ。誰が出ているのかしら」

「雪ノ下殿なので、由比ヶ浜殿に最初、読んでもらいたいのだが」

「うん良いよ、中二」

 

由比ヶ浜さんが読み終わって、色々言いたいけど問題ないと言って、私たちも読ませてもらったわ。

 

**************************

(ここから材木座の小説)

 

「担当の比企谷です。材木座先生、原稿できましたか」

「八幡。来てくれたか。上がってくれ」

 

俺は小さい出版社に勤め出して、2年目の若造なのだが、なぜか出版社を支えている二人の作家を担当していた。その一人が高校からの友人、材木座義輝だった。高校時代は俺が所属していた部活にラノベを持ち込んで来て、SFやファンタジーを書いては我らが部長様に打ちのめされていたのだが、今ではラブコメ作家として名を馳せている。

 

「あら、比企谷君。こんにちは」

 

俺が玄関に入っていくと、材木座の婚約者、綾瀬 綾さんがいた。

 

「綾瀬さん、こんにちは。お邪魔していいですか」

「何時もすみません。義くん、締切り間近まで原稿を書こうとしないから」

「いえ、綾瀬さんが謝らないでください。今回は早く連絡貰えましたし」

 

綾瀬さんは俺たちより五つ上で声優をやっているが、材木座が出会ったときは、名前もないようなキャラの声を当てるぐらいの仕事しかなく、とても人気がある声優とは言えなかった。材木座は大学に入ってから、ラノベを出版し出して、作品がアニメ化するとき、声優のオーディションを受けに来た綾瀬さんに一目惚れして告白し付き合いだした。

彼女がヒロインの声を当てる事を考えてラノベを執筆し、その年のラノベ大賞を受賞するほどのものを書き上げていた。アニメ化が行われる際は綾瀬さんがヒロインの声を当てないのであれば、アニメ化させないと駄々を捏ねまくっていた。

だが、そのおかげで彼女は一気に人気声優の仲間入りを果たしたが、自分の夢を叶えてくれた材木座の夢を今度は叶えたいと、今は結婚するため、同棲しながら声優兼、花嫁修行をしている。

 

「材木座先生、ラノベは書けましたか」

「なあ、八幡。敬語は止めてくれ、我と主の間柄でそのような言葉は要らぬぞ」

「いえ、仕事ですから。書き上げた原稿を見せてください」

 

俺は材木座から原稿を受け取って確認し出したが、目が腐り落ちるぐらい面白くなかった。

 

「なあ、材木座。お前はラブコメ作家だろ。どうしてファンタジーを書いてるんだよ。しかもこれ、パクリだろ」

「は、八幡?敬語じゃなくなってるぞ」

「俺は、ラブコメを書く材木座先生になら敬語で話せるが、今だに高校時代と遜色のないラノベを書く材木座には、敬語は使わないぞ」

「わ、我もファンタジーやSFを書きたいのだ。主の伴侶にラブコメを書かされ続けてから、そちらばかりが売れてしまったが」

「..何が伴侶だ。俺にそんな人はまだ居ないぞ」

「我の原稿を受け取った後、そちらに行くのだろ。何時も泊まりで行っているそうではないか」

「原稿を取りにいくだけだ。そんなことより早く原稿を渡せよ」

「..そ、その八幡。実はまだ書けてなくてな」

「はぁ、電話で出来たと言っていただろ」

「..そ、それはさっき渡した奴でして」

 

その時、材木座の仕事部屋の扉が、いきなり開けられ、怒っている綾瀬さんが扉の前に立っていた。

 

「義輝、あんた嘘ついて比企谷に来てもらったのか?」

 

綾瀬さんはいつもはやさしい口調だが、嘘や曲がったことが嫌いで、怒ると声優として始めて貰った不良役の言葉使いが出てくるらしかった。

 

「い、いえ、綾殿。ちょっとラノベを読んで欲しかったんで来てもらっただけです」

「締切りのは出来てるんだろ、渡してあげな」

「..そ、それは出来てないです」

「義輝、電話で言ってたよな。出来たから来てくれと」

「..はぃ」

「比企谷、締切りは何時?」

「ふ、2日後の17時までに頂ければ」

「私が義輝に書かせるからさ、悪いけど今日のところは帰りな」

「は、はぃ。ではお願いします」

「は、八幡。帰らないで」

「ハァ!?義輝が仕事終わらないと、比企谷はやることないだろうが!!」

「い、今から書きます」

「見ててあげるから気合いを入れな!!」バチン!!

 

材木座は背中を叩かれてるな、俺は綾瀬さんに後を任せ、材木座の仕事部屋を出ると扉の向こうからいつも通りの声が聞こえてきた。

 

「義くん、ごめんなさい。でも駄目だよ、嘘ついちゃ」

「綾殿、我もすまなんだ」

「ううん。じゃあ、いつも通り義くんからチューして....」

 

アヤドノ---!!モウ、ガマンデキヌ---!!

ゲンコウ カイテカラ.. ラ、ラメ---//

 

扉の前を物音たてないように移動し、俺は玄関を出ると大きなため息を付いた。

女性って、やっぱり怖い。歳上女性はああなってしまうのだろうか。そういえば、俺の恩師はどうなったのだろう、もうアラフォーだよな。怖いもの見たさで会ってみたい気もするが、何故か取り返しのつかないことになりそうで、俺は会いに行けなかった。

 

俺は材木座の家を後にし、寄り道しながらもう一人の作家の家に向かっていた。俺がインターフォンを押すといつも通りの声が聞こえてきた。

 

「はい」

「雪ノ下先生、担当の比企谷です」

「....」

「ハァ、雪乃。俺だ」

「私の知り合いに俺さんって、いないのだけれど」

「比企谷だ」

「上がってちょうだい」

 

もう一人の作家は元奉仕部部長様の雪ノ下雪乃だった。彼女も大学生のときに書いた純文学で評価を受け、新人賞を取っており、作家として名を馳せていた。

 

「お邪魔します」

「..ただいまと言って欲しいのだけれど」

「いや、今は仕事中ですよ。雪ノ下先生」

「....」

「..分かったよ。雪乃、ただいま//」

「おかえりなさい、八幡//」

 

俺と雪乃は大学を卒業してすぐに付き合いだしたが、俺の仕事が忙しかったため、最初のころはすれ違ってばかりだった。

俺が仕事を優先してしまうとは思っていなかったが、毎日午前様まで仕事をしていると他のことは何もする気が起きず、雪乃には寂しい思いをさせてしまった。

 

雪乃は俺が勤める出版社に移籍してきて、俺を担当にしないと書かないと言い出したため、新人の俺が将来有望な雪ノ下先生の担当となっていた。なぜか材木座も雪乃によって移籍させられていたのだが。

でもそのおかげで今では仕事中でも雪乃との時間を満喫出来ている。

 

「原稿はどうだ。雪乃のことだから、心配していないが一応、仕事だからな」

「ええ、大丈夫よ。でも締切りは明々後日よね。そ、それまでは泊まっていけるのかしら//」

「二日後に材木座のところに行く必要があるんだが、それ以外は居れるぞ」

「でもどうして今日はこんなに遅かったのかしら。綾さんに電話したら30分前に出たと聞いたのだけれど、それから一時間半立っているわ」

「ああ、ちょっと寄り道してたんだよ」

「そうなのね。そういえば綾さんって何かスポーツしているの?電話したとき息が荒かったわ。声が途切れたり、うめき声みたいなのが聞こえていたのだけれど」

 

何やってんだ、あの二人。綾瀬さんもそんな時、電話に出るなよ。

 

「ではスーツを脱いでちょうだい。皺が付いてしまうわ」

「じゃあ、着替えさせてもらおうかな。俺のスエットって何処だっけ」

「寝室にあるわよ」

「分かった」

 

俺が寝室に入っていくと、雪乃も着いてきてスーツを掛けてくれた後、抱きついてきた。俺たちはキスを交わし抱きあった。

 

「夕ご飯の用意をしましょうか」

「ああ、俺も手伝うよ。今日は何を作るんだ?」

「もう遅いわね、パスタで良いかしら」

「雪乃のご飯なら何でも美味しいからな、良いぞ」

「ありがとう、では二人で作りましょ」

 

俺たちはキスを交わしベッドを出るとキッチンに向かって行った。

雪乃は俺の手伝いはいらないと言うのだが、俺はこの二人で過ごす時間が好きだった。

食事を済ませソファーで俺が座っている前に雪乃が座って俺にもたれかかり、俺は後ろから雪乃に抱きつくようにして、二人で小説を読んでいた。これも俺が好きな時間だ。お互い会話もせず本を読んでいるだけだが、雪乃に触れているところから、体温を感じると幸福感が高まっていく。

二人の時間をもっと増やしたい。俺はいつしか、そう考えるようになっていた。

 

俺たちはキリの良いところまで小説を読むと、お風呂に二人で入って、寝室に入った。

 

「雪乃、俺は二人でいる時間が好きだ」チュッ

「私もよ、八幡。このまま離れず二人で居たいわ」チュッ

「愛してる、雪乃」

「わ、私も。あ、愛しているわ....あぁ//」

 

雪乃は体力がないため、何度か達したあと、気を失うように眠りに入った。

俺は、雪乃を起こさないようにベッドを出ると、ここに来る前に寄った店で受け取ったものを取りに行った。鞄に仕舞ってあった箱を取り出し指輪を出した後、雪乃の左手薬指にはめた。

 

「雪乃、愛してる。俺は雪乃のように、将来を期待されているわけでもないが、こんな俺で良ければその指輪を付けて、何時までも二人で居てほしい」

 

俺は明日起きたときの台詞を寝ている雪乃本人に練習していた。

そして、愛おしい雪乃の寝顔にキスをし、朝起きたときの事を楽しみにしながら眠りについた。

 

(ここまで材木座の小説)

**************************

 

「...//」

「「....」」

「ど、どうであった?今回のラノベは。本当は○倉 唯殿を我の嫁としてラノベに出したかったのだが、経歴が本人と異なってしまうので断腸の思いで、オリキャラにさせてもらったのだ」

「誰?あたしと一緒の名前なんだけど」

「声優だ、漢字はちがうぞ。でも、ゆいゆいが嫁って..」

「ゆいゆいって何だし!?」

「小○ 唯の愛称がゆいゆいなんだよ」

「ふ、ふーん。ヒッキー、あたしもあだ名付けて良いよ」

「..アホ結衣、結衣ワン、ガハマン、ポイズンクッキー、ダークマター、暗黒物質」

「何だしそれ!!センス無さ過ぎ!!やっぱりいいや、今までどおり名前で呼んで」

「あ、あの批評のほうは...」

 

「これって、ゆきのんのラノベって言うより、前半は中二のラノベじゃん!!」

「八幡の仕事の説明のため、仕方なく我を出したのだ」

「仕方なくって、半分は材木座のじゃないか。別々に書いた方が良かっただろ」

「そうするとお主達、読んでくれないではないか!!」

「そ、そんなこと無いんじゃないかなぁ~」メソラシ

「良いじゃん!!良いじゃん!!我だってイチャイチャチュッチュッしたいじゃん!!」

「じゃんって材木座...まあ、良いんだが。そういえば、雪乃は何も言わないがどうしたんだ」

「ご、ごめんなさい。こういう告白も良いと思ったのよ」

「うん、何時までも一緒に居たいって言われたいよね」

「この後、起きたときの私の反応も書いた方がよかったのではないかしら」

「それは想像を膨らませて貰おうと思って書きませんでした」

 

確かに私も先ほどまで、自分だったらどう行動するか考えていたので、八幡たちが話している時も聞いていなかったわ。

 

「後、先生がアラフォーってまた、怒られるよ」

「アラフォーって何歳からなんだ?四捨五入か?」

 

その時、扉がいきなり開いて私達は驚き扉の方を見ると、笑おうとしているのだけれど、目に涙を溜めている先生が立っていたわ。

 

「わ、我は帰っても良いでしゅか」

「...材木座、座ってろ」

「ひ、ひゃぃ」

「せ、先生。今日はどうしたんですか」

「もうすぐ最終下校時間だが、時間があったので顔を出したんだ。...なあ、比企谷。アラフォーって何の話なんだ?」

「い、いや、ただ何歳からそう呼ぶのかって話をしていただけで、深い意味はないでしゅ」

「ほお、これは材木座のラノベか。今までのラノベも見せてもらおうか」

 

私は先生に何も言えず、今までのラノベを渡したわ。

 

「材木座、明日の放課後、生徒指導部に来るように。今日はもう遅い。君たちは帰りたまえ」

 

材木座君は震えているわね。私たちは言葉を発せず、材木座君の背中を見送ったわ。

先生がこれ以上、ラノベを書くなと言わなければ良いのだけれど。

 

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