「八幡。小町さんはラノベを読んで問題なかったのかしら」
先日、材木座君が書いたラノベを家に持って帰り、小町さんに読ませていたはずだけれど、良かったのかしら。
「ああ、小町も何となく察していたらしい。普通のラブコメではないって」
「そうなのね、でも読んで落ち込んだりしていなかったのかしら」
「ヒッキー、良かったの?」
「あーしと姫菜は結衣から聞いたけど、小町はなんか言ってた?」
「先輩、どういう内容だったんですか」
「失恋話だ。だが問題なさそうだったぞ。今度は義理の兄妹の設定が良いとか言っていたな。俺がもし今度書いてもらうならって、提案したんだがな」
「分かった。では小町が入学してから執筆してくるぞ」
そうなのね、問題なければいいのだけれど。小町さんが入学してからまた、材木座君に書いて貰うってことで良いのかしら。何かあれば八幡が気づいてフォローするのでしょうけど。
「今日は三浦殿でラノベを書いてきたので海老名殿に先に読んでもらいたいのだが」
「ふーん、私が読んで登場人物に問題あるか確認すればいいんだよね」
「ええ、では海老名さん。お願いできるかしら」
私はそう言って、海老名さんに先に読んでもらったわ。
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(ここから材木座の小説)
あーしは今、民家の玄関前でインターフォンを押そうか迷っていた。い、良いよね、押しても。多分居るだろうし。あーしは震える手でインターフォンを押していた。
ぴんぽーん
....
インターフォンの音が鳴った後、なにも反応無いんだけど....あーしはもう一回押したけど、インターフォンからは何も帰ってこなかった。はぁ、居ないか...どこかに出かけるんなら先に言えし!!あーしが折角来てやったのに!!
あーしが落ち込んで帰ろうかと思ったとき、インターフォンからいきなり音が鳴ってきた。
「はい..」
「あ、あーs、わ、私、三浦と言います。ヒキ..は、八幡さんはいらっしゃいますか」
「ぶっ、んんっ!!ゴホッゲホッ....ぷっくく、ゆ、優美子がわ、私..グフッ....八幡さんって..くくく、わ、笑わせるなよ(笑)」
「ヒ、ヒキオ!!居るならすぐ出るし!!」
「フヒッ!!....わ、分かったよ、今行くから」
な、何だし!!あーしが来てやったのに、咽せるまで笑い飛ばして!!あーしが怒っていると、ヒキオは玄関を開けて出てきた。
「ヒキオ笑いすぎ!!居るならすぐ出るし!!」
「さっきまで寝てたんだが、良い目覚ましだったぞ。くくくっ」
「はぁ!?」
「ご、ごめんなさい」
「..何時まで寝てる気?昼過ぎてるんだけど」
「昨日、夜更かししてな。それで今日は何しに来たんだ」
「暇だったから来ただけだし。ヒキオ、なんでパジャマなん」
「さっきまで寝てたって言っただろ。はぁ、ここで話すのも何だし入ってくれ」
「わ、わーたし」
撮影の時、ヒキオの家に入ったことあるけど、あーし一人で来るのは初めてなんで、ちょっと緊張するし//
「..ヒキオ。誰も居ないの」
「小町は遊びに行ったんじゃないか。両親は仕事だろ」
「じ、じゃあ、今はヒキオ一人なん」
「ああ、そうじゃないか」
そういうと、あーしをリビングに案内してくれて、ヒキオはジュースを出して着替えてくるって言って、出て行った。
い、今、ヒキオと二人きりなんだ//すごい緊張してきたし//
ヒキオは着替えてきて、スエットの上下でリビングに入ってきた。
「ちょ、あーしと遊ぶんだから、もうちょっとお洒落に気を使えし!!」
「えぇ、何処か行くのか」
「ららぽに行くし」
「出掛けるのかよ...はあ、分かった。どんな服装でも文句言うなよ」
「じゃあ、あーしが選ぶから」
「ああ、でもまずはご飯食べさせてくれ。優美子は食べたのか」
「うん、家で食べてきたし」
「じゃあ、悪いが待っててくれ」
ヒキオはご飯を食べて顔を洗った後、部屋に着替えに行くって言ったんで、あーしは後ろを付いて行って、ヒキオの洋服ダンスを見せてもらった。ヒキオの部屋に二人っきり//でも何かしてくるわけないよね、ヘタレだし。でもちょっと期待してもいいかな//
「あんまし持ってないんだね。じゃあ、下はこれ履いてみるし」
あーしから黒のスキニーパンツを受けとると、ヒキオはスエットを脱ぎ出した。な、なんであーしが居るのに脱いでんだし//でも、お、男の裸ぐらいでガタガタ言うのも可笑しいし//
ヒキオってガリガリって訳じゃなく、結構筋肉付いてんだ。服の上からじゃ分からなかったけど。で、でもパンツの膨らみなんとかしろし//気になったけど、あーしは目をそらして服選びに専念することにした。
選ぶ服ないじゃん!!でもこれなら良いかな、あーしは白のTシャツ、グレーのカーディガンをヒキオに渡して着てもらった。
「結構良いじゃん。でも選べないからもっと服買うし!!」
「えぇ、休日でも出かける日しか着ないだろ。優美子の選んでくれたこの組み合わせで、春秋はイケるだろ」
「何言ってるし、明日も一緒に出掛けるってなったら、その組み合わせ着れないし」
「俺は土曜日出掛けたら、日曜日は家から一歩も外に出ないぞ」
「はぁ!?彼女出来たらどうすんだし」
「俺と付き合ってくれる女性なんて居ないだろ」
「そ、そんなことないし//」
「じゃあ、優美子が付き合ってくれるのか」
「な、なに言ってんだし//あーしと付き合いたいなら、ちゃんと告白するし//」
「いや、どうせ振られるからな」
「..なんでだし、ヘタレ」
なんで今のタイミングで告白しないし。あーしは恥ずかしくなって部屋を出ていこうと歩き出したら、ヒキオの脱ぎ散らかしたスエットに足を取られていた。
「キャ!!」
「優美子!!」
ヒキオはあーしの腕を掴んで自分の方に引き寄せてくれたんで、転ばずにすんだ。でも勢いが付きすぎて、ヒキオに抱きついてしまった//
「そ、その無理に引っ張って、すまん//」
「ううん、あ、あんがと//」
あーしはすぐに離れたけど、顔が赤くなっていてヒキオに見られたくなくて、リビングに降りて行った。さっきあのまま、あーしから告白したらどうなってたんだろ...
でもヒキオの周りにはあーしから見ても素敵な女性がたくさんいる。あーしなんて我儘ばっかり言って、ヒキオに良い印象持たれてないかもしれないし...
ヒキオはリビングに降りてきて、用意出来たぞって言ってきた。あーしが撮影の時あげた眼鏡をしてくれて一応、気を使ってはくれてるみたいだけど。
あーしとヒキオはららぽに行って、色々見て回っていると、あーしが見たかった映画のポスターが貼ってあったのが目に入った。
「ヒキオ、あーし映画みたいし」
「どの映画見たいんだ」
あーしが指を指すとヒキオは嫌そうな顔をしてきた。
「なんなん、文句あんの?」
「恋愛ものか。俺、寝ちゃうかもしれないぞ」
「何言ってるし!!後で二人で感想を良い合わないといけないから、ちゃんと見るし!!」
そう言って、ヒキオは文句を言いながらも、あーしと一緒に映画館に向かって歩き出した。チケットを二人分買ってヒキオと話していると、あーし達に話しかけてくる女性がいた。
「あら八幡、三浦さん。こんにちは..」
「やっはろー。優美子、ヒッキー..」
「先輩、三浦先輩。こんにちはです..」
「..こんちは」
「ウス」
「あなたたち二人、デート中かしら」
「..違うし、映画見にきただけだし」
「そうなんだ。じゃあ、あたしたちも映画を見に来たんだけど、一緒で良いよね」
「私もこの映画見たかったんです。三浦先輩」
「良いのかしら、三浦さん」
「..うん、一緒でも良いし」
「では、私たちもチケットを買いにいくわ。どこの席を取ったのかしら」
そう言って、雪ノ下さんと結衣、いろはは八幡が持っていたチケットの番号を確認して、自分たちのチケットを買いに行った。
なんで、あの三人が一緒に居るんだし!!でもあーしもデートって言えば良かった。なんであんな返答したんだし。
ヒキオはあーしと二人じゃなくても良いのかな。ヒキオが断ってくれたら嬉しかったのに。
映画館の上映時間が近くなったので、あーし達が席に付くと、あーし、八幡、結衣、いろは、雪ノ下さんの順番で席に付いた。いろはと雪ノ下さんは負けたって言ってたんで、じゃんけんでもしたんだろう。
ヒキオはポップコーンを買ってくれたので、あーしと八幡の間に置いてくれた。
「優美子、一緒に食べようぜ」
「うん、あんがと」
映画が始まってポップコーンに手を伸ばすと、ヒキオがあーしの手を握ってきた。でもすぐに離してスマンって言ってきたんで、ポップコーンを取るときに握ってしまったんだろうけど、そのまま手を握ってほしかったし。
映画が進み、ポップコーンがなくなると、あーしと八幡は手を伸ばすことはなくなった。でもさっきみたいに手を握って欲しくて、あーしは八幡の手を握りにいくと、八幡は驚いてあーしの方を見てきた。あーしは八幡を見つめながら、肘掛けの下に八幡の手を持っていき手を握った。
八幡は手を引っ込めることもなく、あーしの手を握っていてくれて、たまにギュって握ってきたけど、あーしも一緒のように手を握り返した。
途中、八幡は手を離してきたけど、すぐ恋人繋ぎになるように手を握り直してくれて、あーしは嬉しくて八幡の肩に頭を置いていた。映画を見ていると、八幡はあーしの頭の上に重なるように頭を置いてきた//
お互い声は出さなかったけど、八幡の温もりを感じて、あーしは幸せな気分に浸っていた。映画は見ていたけど、嬉しくて内容は頭に入ってこないし。でもこの映画が何時までも終らなければいいのにって、あーしはそんなことを考えていた。
映画が終わり、回りが明るくなっても八幡はあーしの手を離すことはなかった。結衣があーし達の方を見て、びっくりした顔をしていた。
「ああー!!、なんでヒッキーと優美子、手を繋いでるの!?」
「あなたたちは上映中、何をしていたのかしら」
「先輩、映画そっちのけでイチャイチャしてたんですか!!」
「..三人とも、俺と優美子はデート中だから、付いてこないでくれ」
「ヒキオ//」
「「「....」」」
ヒキオはあーしの手を握ったまま、立ち尽くす三人をおいて映画館を出た後、あーしをリサイクルショップに連れていった。
「優美子、俺の服を選んでくれないか。あまり手持ちが無いんで古着屋だが」
「うん//あーしが服を選んであげるし//」
あーし達は手を握り合ったまま服を選んで、ヒキオが試着するときは手を離したけど、試着が終わるとヒキオから手を握ってくれた。
「古着でも結構、良いのがあるんだな」
「うん、お洒落に気を使う人はすぐに売っちゃうし。だから新しくて程度の良いのもあるし」
「俺もこれから気を使わないとな、優美子の隣を歩けるように」
「え!?う、うん!!あーしがこれから色々教えてあげるし//」
その後、あーしの服を見て回って喫茶店で休憩し、今は八幡があーしの家まで送ってくれてる。あーしが駅までで良いって言っても付いてきてくれて、ずっと手を繋いでいてくれてた。
「優美子の家はここなんだな」
「うん、今日はあんがと。約束もしてないのにあーしに付き合ってくれて、嬉しかったし」
「..なあ、優美子。明日は空いてるか。今度は俺が迎えに来たいんだが」
「うん!!待ってるし//じゃあ、明日ね//」
「優美子//」
あーしが見送るため待っているとヒキオはあーしの横にきて、ほっぺにキスしてきた。
「い、今はこれが限界なんだ//じゃあな、優美子。おやすみ//」
「..//」
あーしが固まって返答できずにいると、八幡は駅の方に歩いて行った。あーしは我に返ると慌てて八幡の背中に向かって叫んでいた。
「ヒキオのへたれ!!明日は唇にするし//」
そういうと八幡は振り返らず右手をあげて答えてくれた。あーしは余韻に浸っていたけど、暫くして玄関の方を見ると、両親があーしのことを見て、ニヤニヤしていた。
「今日は赤飯かな、母さん」
「もう、ご飯の用意しちゃったわよ。明日、ヒキオ君が来てくれるからパーティーしましょうか」
「ふ、二人とも何言ってんだし//」
「だって、明日キスするんでしょ。予告キスなんて大胆ね、優美子」
「うー//二人とも邪魔だから退いてよ//」
あーしが家に入っても二人はヒキオのことで盛り上がっていて、食事中もヒキオのことを根掘り葉掘り聞かれた。
でも明日、ヒキオとキスするって考えると、顔が赤くなっていくのが分かる。両親からはキスのこと考えすぎって言われて、より赤面していったし//
(ここまで材木座の小説)
**************************
「..//」
「「「....」」」
「ねえ、材木座君。どうして優美子のは純愛ものなの?私の時なんて私がハチを襲ってたし」
「..深くは考えていないのだが、多分以前の取材のとき、三浦殿が乙女と聞いたからだろうな。姫菜殿については、どうしてもBLの印象が強くて、通常の設定では書けなかったのだ」
「良いじゃん!!BL好きでも!!ホモの嫌いな女子はいないんだよ!!」
「「「「....」」」」
女性が皆、男性同士のそういったことを好きとは限らないのじゃないかしら。私は興味ないのだから。そんなことより、材木座君に私たちの扱いについて聞いておくべきね。
「....材木座君。どうして私たち3人が振られているのかしら」
「え!?振られたわけでなく、八幡と三浦殿がデートをしてるだけなんですが」
「..木材先輩。このラノベだと私たち三人が振られたって取られてもしょうがないですよ」
「うん、そうだよね」
「いや、そんなこと考えず書いてしまった。申し訳ない」
「良いじゃん、今回はあーしのラノベなんだし」
「優美子、中二の肩を持つの?」
「そんなことないし。あーしも最初のインターフォンのところで、ヒキオに笑われてたけど、これぐらいなら文句言うつもりはないし」
「優美子のこと、獄炎の女王って呼んでても?」
「..なんだしそれ」
「以前、中二のラノベでそう書いてたよ」
「..材木。ほんと?」
「は、はぃ...」
「材木。裏でこそこそ言うぐらいなら、本人に向かって言うし。それで怒られるなら止めればいいっしょ。ただ本人の居ないところで言うのは駄目だし。分かった?」
「..はい」
「優美子、そんなんでいいの」
「だって、あーしも材木座って知ってるのに、材木って呼んでんだよ。あーしが良くて材木が駄目って言えないし」
「み、三浦殿//」
三浦さんは寛大ね、でもそれで良いのかしら。八幡が何時か三浦さんのことをオカンって言っていたのだけれど、それは知っているのかしら。
「私はリサイクルショップって行ったことないのだけれど、服も売っているのね」
「結構あるぞ。俺も服を見に行ったことはないが」
「この間フィギュアを見に行った時、服が売っていてな。それで書いてみたのだ。三浦殿なら服とか詳しそうだし」
「このラノベに書いてるみたいに、結構良いのも置いてあるし。ヒキオって洋服一杯持ってるの?」
「余りないな。小町セレクトの組み合わせが2つあるぞ」
「ヒッキー少ないよ。もっと持ってた方が良いよ」
「じ、じゃあ、あーしと春休み、ヒキオの服を見にリサイクルショップに行くし//」
「..あたしも一緒に行くからね、ヒッキー」
「私も見てあげるよ、ハチの服」
「先輩。サッカー部のお休みのときにして下さいね」
「私も行ってみたいわね」
「..なんでみんな来るし、あーしが誘ったんだけど」
「ふーん、優美子。それってデートに誘ったの?」
「そ、そんな分けないし..」
「それなら良いじゃん」
「なあ、俺は一言も行くとは言ってないんだが」
「八幡。あなた春休みは大変よ。私の出来立て手料理食べたいと言っていたでしょ、春休みにお家に伺うわ。後、姉さんに勉強を見てもらうのよね。その時も一緒に行くから」
「ハチ、私の手料理も食べてね、弁当は皆の食べてるんでしょ」
「あたしも作りに行く!!」
「そうですね、私も伺いますから」
「あーしも撮影してもらわないといけないし」
「ま、待て。春休みっていうのは、宿題がほとんど出ず、学生が遊びまくる休日のことだぞ。俺は家でゲームで遊びつくすぞ」
「だから、あーしたちがヒキオんちで遊ぶんだし」
「そうね。ただ家で怠けてばかりいてはいけないので、たまにショッピングに行けばいいのではないかしら」
「お、俺の休みが...」
「八幡、すまんが春休みは撮影会の手伝いは出来ぬぞ」
「どこか行くのか」
「親戚が北海道にいるのでな、そちらに遊びに行くのだ」
「羨ましいな、俺の休暇はどうなるんだろうか」
今回の春休みは私にとっても、凄く楽しく過ごせる休みになりそうね。こんなにやらないといけない事がある長期休暇って初めてだわ。
でも八幡と読書でもしてゆっくり過ごしたいのだけれど、それは出来そうもないわね。八幡と二人、部屋でまったり過ごしてみたいわ。