やはり材木座が書くラノベは間違っている   作:ターナ

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ケガや化学のことは詳しくないので、誤りがあるかもしれません。それでも良かったら読んでみてください。




葉山の暴走

私は結衣ちゃんの誕生日プレゼントを買いに行くため、義輝君と一緒にららぽに来ていた。でも二人で出掛けるのはまだ恥ずかしいので、雪乃さんに付いて来てもらうようお願いしたら比企谷君と一緒に付いて来てくれることになった。

 

保育園の演劇の後から私と雪乃さんが名前で呼びあうようになり、クラスではちょっとした騒ぎになったけど私は嬉しかった。

雪乃さんが照れながら私に名前で呼んで良い?って、言ってくれたとき思わず抱きついてしまったけど、雪乃さんも私を抱きしめ返してくれたから。雪乃さんのファンクラブの子達は悔しがってたな。

 

義輝君は何時もコートを着て手袋をしてるけど、今日は雪乃さんや比企谷君からダメ出しを食らったらしく、白いポロシャツにジーンズを履いている。うん、シンプルだけど清楚で良い感じかな、お腹がポッコリ出てるけど私には可愛く見える。私も人の事言えないしね...

 

私達二人が買い物をしているのを二人は少し離れたところを歩いていて、私と義輝君の二人きりにしてくれるようにしていた。私はまだ義輝君のことが好きなのか分からない、でも気にはなっている。この気持ちをハッキリさせたかった。

義輝君の気持ちも知りたい。義輝君は私と話していると顔が真っ赤になったりするけど、女子と話したことが奉仕部以外でほとんどないって言っていたので、誰にでも照れるのか私だから照れてくれているのかよく分からなかった。

後ろを振り返ると比企谷君は眼鏡を掛けてて、雪乃さんは腕に抱きついて手を恋人繋ぎしていた。羨ましいな、私も義輝君と手を繋ぐと雪乃さんみたいにあんなに幸せそうな顔が出来るのかな。

 

「これ可愛いね、義輝君。結衣ちゃんに似合いそう?」

「わ、我には結衣殿のことは分からぬが、ま、真奈殿に、その..に、似合うと思うぞ//」

「え!?う、うん//ありがとう//」

 

まさか、こんなこと言ってくれるなんて思っていなかった。義輝君は照れているのか、横にある小物を手に取って見ている。でも耳も真っ赤で可愛いんだけど。

その後も私と義輝君が結衣ちゃんのプレゼントを選ぶため雑貨屋を見ていると、後ろの方が騒がしくなり怒鳴り声が聞こえてきた。

 

「この阿婆擦れが!!」

 

私が振り返るとそこには葉山君が何か棒のようなものを振り上げてて雪乃さんに向かって振り下ろそうとしていた!!

 

「雪乃!!」

 

比企谷君はそう言うと雪乃さんを自分の方に引き寄せて抱きしめ、自分の身体で覆っている。そして比企谷君の背中を葉山君が棒で殴っていた。

 

ドゴッ!!ドゴッ!!ドゴッ!!ドゴッ!!

 

「ヒキタニィ!!どけぇ!!」

「八幡!!私が狙われてるの!!離して!!」

 

比企谷君は殴られながら雪乃さんをずっと庇っていて、義輝君は私が呆然とするなか駆け出していった。

 

ドゴッ!!ドゴッ!!ドゴッ!!

 

「葉山!!俺の女に手を出すな!!」

 

比企谷君がそう叫ぶと、葉山君は怒った顔をより一層紅潮させ棒を振り上げていた。そして今度は比企谷君の頭に向かって振り下ろしていた。

 

「ヒキタニィ!!死ねぇー!!」バキーッ!!

 

今までと違う音がすると比企谷君が掛けていた眼鏡が吹き飛んでいて、比企谷君は雪乃さんに支えられながらも崩れ落ちていく。私も義輝君に遅れて走り出していた。

 

「は、八幡!?い、いやぁーーーー!!」

「葉山あーーー!!」ドーン!!

 

次に雪乃さんを殴ろうとしていた葉山くんを義輝君が体当たりをして吹き飛ばしていて、私は雪乃さんと比企谷君に駆け寄って行った。

 

「八幡!?いやっ、いや!!目を開けてぇ!!いやーーー!!」

「雪乃さん!!しっかりしなさい!!」バチーン!!

 

私は取り乱している雪乃さんの頬を思いっきり平手打ちしていた。

 

「貴女が冷静にならなくてどうするの!!」

「..そ、そうね!!ありがとう!!」

 

雪乃さんは比企谷君の状況を確認していて、いきなり口づけをしだした。いや人工呼吸をしているみたい、もしかして...

 

「心音がしないの!!心臓マッサージを!!」

 

雪乃さんは早口でそう言うと、また人工呼吸をしだした。私は経験が無いけど比企谷君の胸に両手を置いて見よう見まねで心臓マッサージをしだした。でもすぐに材木座君が来てくれ、私に代わって心臓マッサージをしてくれた。

 

「てめぇ!!何、雪乃ちゃんを叩いてるんだ!!」

 

私が声のした方に振り返ると、葉山君が私に向かってきていて、私は右腕を蹴られ吹き飛ばされ壁に叩きつけられていた。

 

「ま、真奈!?葉山ぁ!!許さぬぞ!!」

 

え!?どうして私が蹴られてるの?私は起き上がるために右手を地面についたけど、痛みがひどい。

義輝君は叫んで葉山君に向かっていった。義輝君が向かっていった時、葉山君は義輝君の頭を殴ったけれど、義輝君は止まることなく、葉山君を押し倒して馬乗りしている。

私は何とか起き上がったけど蹴られた右腕があげれない。でも比企谷君の方に近づいて行き、左手一本で心臓マッサージをしようとしたところ、近くで見ていた人が代わってくれていた。

 

今になって右腕がひどく痛み出してきたけど、今は私の事より比企谷君が心配だ。

 

私は呆然と惨状を見守っていた。義輝君は頭から血を流しながら葉山君の上に馬乗りになって顔面を殴っていて近くの人が取り押さえるのを手伝ってくれている。

雪乃さんは人工呼吸をずっとしていて、悲痛な表情をしていても止めることはなく、見知らぬ人がAEDを持ってきてくれて、比企谷君の服を脱がせ蘇生措置をするまで、誰にも代わらず人工呼吸をしていた。

AEDを作動させると蘇生措置はうまくいったみたいで周りの人達は安堵していたけど、雪乃さんは涙を流し悲痛な表情は消えることはなかった。

比企谷君の飛ばされた眼鏡が寂しげに雪乃さんを見つめていた。

 

私は義輝君が来てくれて落ち着くと血の気が引いて、目の前が真っ暗になり義輝君にもたれるように崩れ落ち気を失っていた。

 

....

...

..

.

 

俺が目を開けると、見たことがない天井が目に入った。フヒ、言ってみたい言葉が言えるじゃないか。俺は天井を見ながら、つぶやいていた。

 

「シラ.ナィ.....」

 

こ、言葉が上手く出ない。というより口がうまく動いてくれない...何があったんだ。俺は身体を動かそうとしたが、どうも上手く動かせないようだ。仕方がないので目を左右に向けると、そこには女性が二人で俺に背を向けて何かをしていた。

二人の横顔が見え、見覚えのある顔だったので俺は声に出して呼んでいた。

 

「..ュキノ..ユィ」

 

俺の言葉が聞こえたのか、二人は俺の方を振り返ってくれたが、雪乃?結衣?綺麗な女性達が俺の方に駆け寄ってきた。

 

「八幡!?八幡!八幡!!」

「ヒッキー?起きたの!?ヒッキー!!」

 

そう言って雪乃と結衣に似た女性二人が抱きついてきた。雪乃に似た女性は俺の名前を呼ぶと俺の左頬に自分の顔を擦り付けるようにして泣いていた。もう一人の女性も俺の事をヒッキーと呼んでいた。ヒッキーと呼ぶのは結衣だけだよな。だが俺の知っている結衣ではなく、大人びているように見えていた。髪も落ち着いた色に染め上げている。

 

「はぢまんん!!ばちまん!!ごぉべんなざいぃ!!」ウゥ

「ビッギー!!ビィッギィー!!」ウワァー

 

俺は二人の頭を撫でたかったが腕が上がらず、結衣は俺の右側に移動して顔に頬を合わせながら泣きつづけ俺を抱きしめてきた。

 

二人が落ち着くと病院の先生を呼んでくれ、診察が終わると雪乃が俺の右手を取り、結衣が左手を取って話し出した。

 

「ヒッキー。あたし達、変わってるよね。でもあたし達の事、分かってくれたんだね」

「ユイ、ユキノ..ナニガ」

「ごめんなさい。ごめんさい。ごめんなさい」

「ゆきのんが悪いんじゃないんだから...」

 

そう言ってまた雪乃は泣き出してしまった。でも二人とも俺の知っている容姿から綺麗なお姉さんに変わっているんだが。

 

「...ヒッキー、今からショックなこと言うけど良い?」

「..アァ」

「ヒッキーが倒れてから5年近く経ってるんだよ。あたし達はもうすぐ大学を卒業するの」

 

え!?5年!?...何があったんだ。俺は記憶を整理しようとしたが、5年と言われたことに思考が捕らわれ、何も思い出すことが出来なかった。

なんとか雪乃も泣き止み、雪乃が話し出した。

 

「八幡、痛いところない?話しても大丈夫?」

「アア」

「ヒッキー、何があったか覚えてる?」

「..イヤ」

「羽虫が...葉山のことね。羽虫がヒッキーの頭を殴ってヒッキー、心臓が止まっちゃったの。それでゆきのんと真奈っち、中二と後周りにいた人が助けれくれたんだよ」

 

そうだ。俺と雪乃、材木座、真鶴で買い物に行って葉山に襲われたんだ。でも羽虫って..

 

「ユキノハ...」

「私は貴方のおかげで大丈夫だったわ。ありがとう八幡」うぅ

「うん、ゆきのんはヒッキーが守ってくれたんで掠り傷一つなかったよ。やっぱりヒッキー優しいね、自分の事よりゆきのんのこと心配して」

 

俺より雪乃の方が大事だろ、もし体に傷でも残ったら雪乃の心にも傷を残すことになる。でも良かった、雪乃のことを守れて。

 

「でも私のせいで八幡は5年間も..」

「ヒッキー...ヒッキーは事件の後、5年近くずっと寝てたんだよ」

「八幡、ごめんなさい。私のせいでこんなことになってしまって」

「ゆきのんのせいじゃないよ。ヒッキーも分かってくれてるよ」

「アア..」

「でも私が貴方を買い物に付き合わせなければ」うぅ

「羽虫が悪いんだし」

 

雪乃は全く悪くない、俺は葉山がおかしくなっていることに気づいていたんだ。俺がもっとアイツに注意していれば、防げたかもしれない。

でもそうなのか、あれから5年も経ってるんだよな。皆はどうなったんだ。

 

「..私のせいで真奈の腕も折られたの」

「ゆきのんのせいじゃないけど、真奈っちは羽虫に蹴られてね、右腕が折れちゃったの」

 

え?なんで真鶴が蹴られてんだよ。何があったんだ。

 

「ド、ドウシテ...」

「ヒッキー、喋るのもつらいよね。順番に話していくね」

「タノ.ム..」

「ヒッキーの腕に抱きついてたゆきのんを見て羽虫が逆切れしてね。特殊警棒でゆきのんを殴ろうとしたの。それをヒッキーが身体で防いでたんだけど、ヒッキーの頭を殴ってね。それでヒッキーの心臓が止まっちゃったの、ここまでは良い?」

 

そうだった。葉山が雪乃を殴ろうとしていて俺が殴られるように覆い被さっていたんだった。でも心臓が止まったのか。俺、良く生きてるな。

 

「羽虫は中二が体当たりで吹き飛ばしたんだけど、ゆきのんが取り乱してね。落ち着かせるために真奈っちがゆきのんを平手で叩いたの。

中二はすぐにヒッキーの所にきて心臓マッサージをしてたんだけど、そしたらゆきのんを叩いたのを見た羽虫が、今度は真奈っちを蹴りつけてね、それで右腕が折られちゃったの。それを見た中二が羽虫に向かって行ってね、中二も頭を殴られたんだけど、そのままの勢いで羽虫を押し倒して押さえつけたの。

真奈っちは左腕だけで心臓マッサージをしようとしたんだけど、近くにいた人が代わってくれて他の人たちもABC?を持ってきてくれたんだ」

「結衣、AEDよ」

 

そんなことが...真鶴が腕を折られて、材木座も殴られたのか...

 

「ゆきのんはね。ヒッキーが倒れたあと、ずっとヒッキーの近くを離れなかったし」

「結衣、私のことは良いわよ」

「ううん駄目、ヒッキーにちゃんと教えないと。ヒッキーが倒れた後、泣き続けて疲れては寝ちゃってまた起きると泣いてたんだけど、数日したら自分がヒッキーを一生支えるって言ってね。実家に戻って極力自分の時間を作れるようにしたんだ。

そこから体力をつけるためにウォーキングしだして、途中からジョギングに切り替えて、マラソン大会で完走するほどに体力つけたんだよ」

「ユキノ...」

 

雪乃は何も言わずに俺の手を握ってくれている。実家に戻ったのか保育園でも仲良く写真を撮っていたし話し合ったんだな。でも雪乃が俺の為に辛い体力づくりをしてくれるなんて...

 

「私は八幡に守って貰ってばっかりで、結局一人では何もできないのよ..」

「そんなことないよヒッキー、ゆきのん凄いし。今では雪ノ下建設も地方企業じゃなくて世界企業になっちゃったし。ゆきのんとはるのんの力でね」

 

何をしたんだ?地方から世界って日本を一気に飛び出していったのか。でもそんなこと二人の力で出来るのか。

 

「ゆきのんね、中二を連れて山に入って行って蜘蛛を捕まえさせてたし。その後、はるのんと研究しまくって蜘蛛の糸より強くて細くて軽いのを作ったらしいの。

あたしにはよく分からないけど、いろんなものに使えて車とか飛行機とかもすっごく軽く作れるし、後おっきいエレベーターを作るのに使われるんだって。そのエレベーターの工事を日本の会社では雪ノ下建設が代表でやってるし」

「八幡なら分かるかしら、宇宙エレベーターを作れる材質を作ったのよ。八幡の大好きなコロニーやモビルスーツが出来るかもしれないわよ」

 

凄い、なんでそんなもん作れるんだ。俺の想像をはるかに超えてるんだが。って何でガンダムなんだよ、確かに好きだけど。

 

「それを作ったのが大学入ってすぐの時でね。その後もはるのんが大学院に進んで二人で色々作って海から鉄を作ってたよ。それが一欠けらあると車がずーっと動くんだって」

 

結衣が何を言っているのか、さっぱり分からん。

 

「結衣、それだと八幡は分からないわよ、水素を圧縮して作ったのよ。水素金属を」

 

水素金属って土星や木星みたいな超高重力下じゃないと出来ないんじゃ...

 

「でも世界のエネルギー事情が大きく変わってしまうから、用途は限定しているのだけれど。でもこれでモビルスーツの材質と燃料は出来たわよ」

「ゆきのん、またガンダムだし」

「し、仕方ないじゃない。材木座君や姫菜にSFの科学技術を聞いていたら、ガンダムを進められたのだから」

 

雪乃がガンオタって...でも語り合いたいな。雪乃の視点から見たガンダム、面白そうだ。

 

「はぁ、..世界中の金持ちがそんなの許さないってなったらしいんだけどね。ゆきのんとはるのんに何か有ったら世界中の大学とかに作成方法のメールが送られる仕組みを作ったから、映画みたいに誘拐とか命狙われるとかも無いみたい」

 

雪乃が結衣に呆れられてたな、もしかしたら初めてじゃないか。

でもすげえな雪乃。俺なんか近寄れない存在になってしまったな。でも初めて会った時、世界を変えると言っていたが、まさかこんな形で変えてしまうとは。

 

「ゆきのんとはるのん。世界でも有数なお金持ちになったし。税金だけでも凄くて、一夫多妻制を認めないなら皆で日本を出てくって言って国を動かして認めさせたし」

 

は!?何しちゃってるの?この子達。でもそれってもしかして俺達のことを認めさせるためか...

 

「八幡の為よ、貴方まだ一人を選べないでしょ。でも静さん..先生はいい歳よ。八幡から返事を貰うまでは待っているって何人もの男性からのプロポーズを断っているのよ」

「静さんはまだ先生してるよ。ヒッキーが倒れてからタバコも止めて、お酒も少ししか飲まないようにしてね。ヒッキーに相応しい女になるって言って料理とかも覚えて家庭的になったの。そしたら凄くモテ出したんだけど、皆断ったんだ。自分には告白した相手がいて返事を待ってるって」

「シズカ..」

 

俺なんか放っておいて結婚すればいいのに。でも静が俺のことを待っていてくれたんだ。何でこんなに嬉しくなるんだよ。

俺はいつの間にか涙が溢れていたのだろう、結衣は俺の右側に腰を降ろしハンカチで拭いてくれていた。雪乃も左側で俺の頬を拭いてくれている。二人は俺の手を握ってくれてて、握り返したかったが指もほとんど動かないほど、衰弱しているようだったが、二人の温もりが伝わってきて嬉しい。

 

「色々条件あるんだけどね、年間所得が二千万までは一人まで、四千万で二人までって二千万づつで一人増やせるの。少子化対策も兼ねてて一夫多妻制を取った家族は一人の奥さんにつき最低三人の子供を作らないといけないんだ。もちろん出来にくい人とかも居るから、一人の奥さんが六人産んでも良いんだよ」

 

でも俺には所得何てないからな。結婚できても一人か。

 

「八幡もこれで気兼ねなく全員と結婚出来るわよ」

「オ、オカネ...」

「だって世帯所得だから、ゆきのん一人だけで全員分稼いでるもん」

 

は!?でもそんな凄い存在になった雪乃と陽乃。俺が二人と結婚なんて出来るわけないだろ。

 

「..私達の結婚相手は八幡しか考えられないわ。立場何て関係ない、それでも拘るなら今すぐ世界各国に製造方法のメールを拡散してあげるわ。そうすれば私と姉さんは何も持たないことになるのだから」

 

なんで俺の考えが分かったの!?エスパーなの?でも二人とも俺なんか待ってくれているのか。なんでなんだよ、嬉しいのに涙が溢れてくる。

 

「中二もね、事件の次の日から真奈っちん家まで毎日迎えに行ってね、帰りも送って行ってたの。右腕が折られたんでノートを取れなかったのは、ゆきのんやJ組の皆が助け合ってくれたんだ」

 

結衣が材木座のことを喋っていると、廊下を走ってくる音が聞こえてきた。

 

タッタッタッタッタ ガラガラガラ

 

「ぜんばーい!!」

 

いろはは廊下を走っているときも泣いていたのだろう、顔をくしゃくしゃにしながら病室に入ってきて、俺の方に飛び付いてきた。

 

「よがっだー!!ぜんばーい!!ぜんばーい!!」

 

いろはは雪乃の隣で俺の胸に抱きついていた。いろはも泣き張らしていても綺麗になったな。

 

「いろはちゃん泣いてるけど、続きしゃべるね。中二も変わったんだよ、さっきゆきのんが実家帰ってジョギングの話したけど一緒に走ってね」

「ええ、材木座君の家が近かったので私がジョギングする時に付き合わせたのよ。食事メニューも御両親にお願いして、無駄な贅肉が取れたわね」

「うん、痩せたっていうかお腹が引っ込んで程よく筋肉ついてカッコいい体型になってね。髪型もショートにして服や眼鏡も真奈っちが選んだのを付けていたの。そしたらモテ出したんだけど、女子が取り囲んで居るとき、俺は真奈が好きだって、公開告白してね。それで真奈っちと付き合いだしたし」

「彼はヘタレではなかったわね。私も近くにいて見直したもの」

「もぐざいぜんぱい、がっごよがっだでずぅ」

 

..なんか含みのある言い方だな、否定は出来ないけど。

良かったな材木座、真鶴と付き合えて。公開告白ってアイツ自身がラノベの主人公になってるじゃないか。でも5年経っても相変わらず結衣には中二、いろはには木材先輩って言われてんだな。

 

「材木座君は大学でもラノベを書き続けて、今では作家デビューしてるわよ」

 

作家デビューしたのか、夢がかなったな。ラブコメを書いているのだろうか、ちょっと読んでみたい。

 

「いろはちゃんは「結衣先輩、私が喋りまずぅ」」

 

いろははそういうと鼻をかんでなんとか泣き止んだようだった。

 

「先輩に認めて欲しくて生徒会長、二年続けました。今は大学で私は建築のデザイン関係を学んでんでずぅ」

「イロハ..」

 

そう言っていろははまた、俺の胸に顔を埋め泣き出していた。

俺はとっくにいろはの事は認めている、一年生の時から頑張っていたからな、俺も文句を言いながらも手伝えるのが、嬉しく楽しかったからな。

 

「今、いろはは特にバリアフリーを学んでいるのよ」

「いろはちゃんも頑張ってるもんね」

 

二人はそう言っていろはの頭を撫でていた、俺も撫でてあげたい。どうして腕が動かないんだよ。

 

「はるのんもね、今は雪ノ下建設で働いてるけど、色々発明したから今は役員になってるよ」

「ハルノ...」

 

陽乃も凄い、そんなの作ってれば当たり前か。雪乃と二人で会社に莫大な利益をもたらしたんだろう。

 

「私が頑張れたのは姉さんや家族、結衣やいろは、皆のおかげよ、何度も助けてもらったわ」

「うん、はるのん私達にも勉強教えてくれたり、色々相談乗ってくれたり皆のお姉さんだし」

 

陽乃...皆のお姉さんって陽乃が相談に乗ったのか。陽乃が聞いてくれるのであれば、相談相手として頼りにできそうだな。

 

「あたしは、ゆきのんやはるのんみたいに頭も良くないし何もないからさ、ゆきのん家でアルバイトしながら公認会計士の資格取ったんだ。それで今度からゆきのんのところで働かせてもらうの」

「ユイ...」

 

いや結衣も十分凄いだろ、まだ大学出てないのに公認会計士って。雪ノ下建設でも認められたってことだよな。

 

「優美子と沙希は、保育士になるために勉強しているわよ」

「うん、あの二人、高校の時はよくぶつかっていたけど、今ではすっごく仲良しだし」

「ユミコ、サキ...」

 

優美子と沙希が保育士か、優美子はオカンで面倒見がいいし、沙希は不愛想に思われるが、根はやさしいし、保育士は合っているんだろうな。

 

「姫菜はお医者さんになるため、まだ大学は出れないらしいけどね。今、頑張ってるし」

「ヒナ...」

 

姫菜なら漫画家とか目指すと思ったんだが医者なのか。でも姫菜の家は病院なのか。

 

「何か疑問なのかしら...姫菜のお家は一般家庭よ、でも医者になりたいって姉さんが聞いたので、最初は私の家にお金を出して貰って今は私が出しているわ」

 

医学部って滅茶苦茶金掛かるんだよな、でも雪ノ下家と雪乃が出しているのか。将来返すとかそう言うことなのだろう。

 

「みなみんは大学で介護の関係を勉強してるよ」

「ミナミ..」

 

南が介護?でも献身的に働きそうだよな、今の南なら。..いや今ではなく俺の知っているのは5年前か..

 

「城廻先輩は姉さんの秘書として働いているわ」

「メグリ..」

 

めぐりは陽乃を支えるため秘書になるのか。もともと凄く仲が良かったからな。

 

「かおりと千佳はここの病院で看護師になって今では正看護師の資格を持っているわ、今は仕事中なのでスマホを持ち歩いていないと思うけれど、確認すればすぐ来ると思うわ」

「カオリ..チカ..」

 

二人で看護婦か、賑やかなんだろうな。..二人がここの看護婦って事は俺のことも見てくれてるのか。

 

「皆、ヒッキーが起きたら支えれるように、子供が出来たら世話が出来るように、ゆきのんとはるのんを支えて間接的にでもヒッキーに貢献できるようにって考えてんだよ」

「ミンナ...」

 

俺はずっと涙を流していたようで、雪乃と結衣は話しながら涙を拭きとってくれていた。

 

「落ち着いた?ヒッキー」

「八幡、大丈夫かしら」

「先輩、大丈夫ですか」

「アア」

 

「後、羽虫ね。事件を起こした後、少年院に入ってたんだけど、ずっとゆきのんの事恨んでいたし。でも少年院で何かの工作を学んでるときに両手首を切っちゃってね。出てきた後、美人局に引っ掛かっておちんちんを根本からちょん切られたし」

 

はぁ!?今凄く玉きゅんってなっちゃった!!な、なんでそんなことされてんだよ。怖いよ!!

両手首を切断したってあり得るのか。工作機械とかならありそうだが、もしかしたら雪乃に何かあると不味い金持ち連中とかが何かしたとか。股間についてもそっち関係でと考えた方が理解しやすいな。

 

「でも精巣は残っているから、その...姫菜の本のようなことをしているわ。今ではそちらの男性たちに面倒を見て貰っているわね」

「うん、姫菜に動画が送られて来たんだけど、現実と漫画の差に愕然としてそっちの趣味は辞めたし」

 

姫菜ってそっちのAVとか見たことなかったのか、それとも葉山がとんでもないことになってるのか。

 

「そうね、でも今は女性同士の物を書いているわ」

 

は!?拗らせ過ぎじゃないか。でもちょっと見てみたい...

俺がそんなことを考えていると、また廊下の方から騒がしく走って来る足音が聞こえてきた。

 

「「八幡(君)!!」」

「カオリ..チカ..」

 

彼女達も凄く綺麗な女性になっていた。でも俺は精神年齢がまだ17歳のままなのだろう。看護婦コスプレをしているように見えてしまう...

かおりも千佳も俺のことを抱きしめてくれ泣いてくれていた。俺も涙を流しているのだろう、雪乃と結衣は何も言わずに涙を拭きとってくれている。

その後も廊下を走る音が聞こえたと思うと、綺麗な女性が入ってきて俺に抱きついてくれていた。廊下を走って怒られないんだろうか、俺はそんなことを考えながら一人一人との再会に涙を流していた。

 

「すでに私達から話したのだけれど、八幡はみんなと結婚できるのよ。これで誰かを選らぶ必要は無くなったわ」

「うん、ヒッキーが良かったら皆をお嫁さんに出来るんだよ」

「先輩。ですから....」

「「「「「「「「「「「「私達と結婚してください!!」」」」」」」」」」」」

「ハイ」

 

俺を5年間も待ってくれていたんだ、俺は皆の事が好きだし彼女達の想いにも答えたい。俺はこれからのことなど考えるまでもなく自分の気持ちを素直に返事していた。

 

その日から毎日誰かが来てくれて、俺のリハビリに付き合ってくれていた。食事は二週間もしたら内臓には問題が無かったため、普通の食事が食べれるようになり、みんなが手料理を作ってくれていた。

懸念されていた後遺症や記憶障害もなかったが、5年も寝ていたため体中の筋肉が衰えており、暫くはリハビリのため入院することとなったようだ。

 

「雪乃、お昼からウナギって豪勢だったな」

「良いウナギが入ったと連絡を受けたのよ、精が付くわよ」

「..今日の朝御飯もあさりの味噌汁に青魚、オクラと山芋の掛け御飯だったんだが」

「ええ、夜は牡蠣とニラレバ炒めよ」

「...あの雪乃さん。..そんなの食べたら色々大変なんですが」

「リハビリである程度、身体の方も回復したでしょ。今日は私一人で泊まっていけるの、私達は夫婦なのよ。その...良いでしょ//」

「ここ病院だぞ」

「大丈夫よ、私がワンフロア借りてるのだから」

 

はぁ!?だから騒がしく走ってきても誰も文句言わなかったのか、そういえばリハビリに行くときも誰とも会わなかったな。大体この部屋もおかしい、ドラマで見る偉いさんが入院しているような豪華な作りになっていてワンフロアに数部屋しかなかった。俺が寝ているベッドはダブルベッドだし、付き添い人用のベッドも簡易的なものではない。それ以外にもソファーやパソコンデスク、風呂があったりキッチンも付いていて、料理も出来るようになっている。

 

「ねえ八幡。私を最初に抱いてね」

 

雪乃がそう言ってきたので、俺は雪乃の腕を掴んで、ベッドに引き寄せキスしながら胸を擦った。メチャクチャ柔らかいな。

 

「ま、まって。今日は時間がなくてジョギングした後、シャワーを浴びてないのよ」

「だから雪乃の良い匂いがするんだな」

 

俺はそう言いながら雪乃の首に顔を埋め匂いを嗅ぎながら舐めるように首筋にキスしていた。

 

「あぁ//..え、エッチ。ヘンタイ。八幡」

「ああ、エッチで変態な八幡だからな」

 

そう言いながら、腕を上げさせノースリーブから覗いた脇に顔を埋めて舐めていた。

 

「あぁ、そんなところに顔を埋めないで//は、恥ずかしいわ//こんな時間から誰か来たらどうするのよ」

「良い匂いだ...大丈夫。次の検診まで3時間ある」

「だ、誰か見舞いに来るかもしれないでしょ//そんなところを..あぁ//」

「その時は諦めてくれ」

「ほ、本当に待って」

「雪乃、愛してる」

「ど、どうしてこんなとき言うのよ//」

「雪乃は言ってくれないのか」

「わ、私も愛しているわ。八幡//」

 

俺は雪乃が言い終わると唇を重ねていた。キスで口を塞ぎながら雪乃の身体を触っていると雪乃も次第に俺の身体を撫でるように抱きしめてきた。

俺はこの日、初めて女性と肌を重ねた。初めて見る雪乃の裸体は艶かしく美しかった。俺は雪乃の身体に溺れていたが、検診の一時間前ぐらいには一旦お預けを食らい、その間に雪乃は食事の用意をしてくれていた。

検診が終わり御飯を食べた後、二人で風呂に入り、俺はまた雪乃を求め雪乃も答えてくれた。その後もお互い覚えたての悦楽に狂ったように肌を重ねていた。

 

....

...

..

.

 

「八幡、おはよう!!検診の時間だよ!!」

 

誰かが騒がしく部屋に入ってきたようだが、俺は起きたばかりで今の状況がよく分かっていなかった。

 

「な!?なんで八幡と雪乃が一緒に寝てんの!?」

 

そう言って声の主は俺たちの布団を捲り上げてきた。俺達二人は裸でシーツは行為の跡で汚れていた。

 

「は、八幡!!なんで雪乃とエッチしてんの!!ウケないよ!!」

「おはよう、かおり。お仕事ご苦労様」

「..ウス」

「うぅ、雪乃に先越された...八幡。今日はシフトが千佳と別々で8時で仕事終わりだからさ。この後、良いよね」

「か、かおりさん。結構疲れてるんですが」

「雪乃、私が来るまでにシーツ換えておいて。後、精の付くもの食べさせておいて。今日のリハビリは足腰の鍛錬だから」

 

かおりはそう言うと、平静を装い俺の体温などを測っていった。ただ何時もみたいに笑っていなかったが、「でもこの後」とか言いながら顔を赤くしていた。

 

「では八幡。ご飯の用意をするわ」

「ああ、よろしく頼む」

「かおりを悦ばせてあげてね」

「自信はないが頑張ってみるよ」

「わ、私は嬉しかったわ//八幡と肌を合わせられて」

「俺もだ//雪乃、好きだ」

 

俺達はそう言って、また唇を合わせていた。その後二人でシャワーを浴びた時、雪乃を抱きたくなったがかおりに悪いからと言って、抱かせてもらえなかった。

雪乃が食事の用意をしてくれている間に、俺はベッドのシーツを替えていた。雪乃が恥ずかしいから自分がやると言ってくれたが、これぐらいなら俺でも出来るからな。雪乃の初めての跡を見えないようにたたみ、洗濯籠に入れておいた。

 

俺達が話していると、かおりは仕事が終わり来たのだろう。ただ仕事着のまま病室に来ていた。

 

「何で、ナース服のままなんだよ」

「それある!!嬉しくて少しでも早く来たくてそのまま来ちゃったし!!へへ、ウケる!!」

「では八幡、かおり。私は帰るわね」

「ああ、雪乃。ありがとうな。愛してる」

「私も愛しているわ、八幡」

 

チュッ

 

雪乃が病室を出て行くと、今度はかおりが俺の口を塞いできた。

 

「八幡、私も愛しているよ」

「ああ、俺もかおりを愛している」

 

俺とかおりはそのまま、ベッドで身体を交り合わせ愛し合い続けた。

 

そしてこの日から毎日、嫁達と身体を重ね合わせていた。




最近忙しくて更新できていませんでした。
まだ時間が取れない状態ですが、後、ちょっと続ける予定です。

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