翌日、俺は雪ノ下の住んでいるマンションに向かっていた。
普段の俺なら待ち合わせの時間、ギリギリに着くように家を出るのだが、雪ノ下とでかけることを知った小町に家を追い出され、いつもの俺なら考えられないくらいの時間に家をでた。
まあ、普段の俺は誰かと待ち合わせてでかけることなどないので、待ち合わせ時間に遅れることなどないのだが………、あれ?目から水が………
そんなこんなで雪ノ下のマンションに予定の時間よりとても早く到着した。
エントランスを見ると雪ノ下が既にいるのが見えた。
「おはよう雪ノ下、待ったか?」
「いえ、待っていないわ、私が待ち合わせより早くいただけだから気にしないで。」
雪ノ下は顔を上げてそう言ったが俺の服を見て、クスッと笑った。
「あなたのその服ワンニャンショーの時と同じね」
「そういうお前も同じ服だし、ツインテールだな」
「変なところでシンクロするわね、私たち」
「全くだな」
「それでは行きましょうか」
雪ノ下はそう言うと、歩き始めた。
「そうだな」
俺はそう言って、雪ノ下の後ろを追いかけた。
…………って、おい
「雪ノ下そっちじゃない、そっちは駅とは逆だ」
「言われなくてもわかっているわよ」
「お前、普段どうやって学校きてんだよ」
俺は不安になり、雪ノ下に尋ねた。
「普段は大丈夫なのよ」
「何で今日は駄目なんだよ」
「それは………あなたがいるから」
「ん?なんか言ったか?」
「何でもないわ、行きましょう?」
雪ノ下が何か言った気がしたのだが、空耳だったようだ。
その後、無事に駅に着き電車に数分揺られてニャンニャンフェスティバルの会場である幕張メッセにと到着した。
やはり、一年に一度の祭りと言うことあって、周りは人混みで埋め尽くされていた。
雪ノ下が心配になり、一応確認をする。
「雪ノ下、大丈夫か?」
「ええ、飲み物も持っているから大丈夫」
なら、大丈夫だな…………大丈夫だよな?
すると雪ノ下が俺の隣に立ち、俺の手を握ってきた。
「あの雪ノ下さん、この手は何ですか?」
「この人だかりでは、離れてしまった時にみつけるのが大変だから仕方なくよ、仕方なく」
雪ノ下が顔を赤くして差し出してきた手をとり、そのまま会場へと歩を進める。
しかし雪ノ下は繋がれた手を見て、少し思案顔をした後もぞもぞと手を動かし、手と手を絡めるように繋ぐいわゆる恋人つなぎをしてきた。
俺は思わず雪ノ下のほうを見るが雪ノ下は顔を赤くしてうつむいていた。
「えっと、雪ノ下サン?なにされているんでしょうか。」
「見て、分からない?あなたはそこまで脳が腐っているのかしら?」
「いや、俺が腐ってるのは目だから、脳までは腐ってないから」
「今日はあなたに恋人役を頼んだのだし、これぐらい世の中恋人なら、普通にできるわ」
「そういう、もんか?」
「そういうものよ」
雪ノ下の虚言を吐かないのキャッチコピーで有名なので、雪ノ下の言葉を信じて、そういうことにしておく。
「どこから見るんだ?」
雪ノ下にパンフレットを渡しながら聞く、 雪ノ下はパンフレットを手に取り、入り口から一番近い日本の猫のエリアを指差した。
「ここから、時計回りに行った方が効率がいいわ」
「ん、了解」
そういうやいなや、雪ノ下はめを輝かせながら、日本の猫エリアに足を踏み入れた。
「にゃ〜〜〜」
「にゃ〜〜〜、ふふふ」
なんか、猫がもう一匹いるんだけど………
雪ノ下は日本の猫エリアにはいった途端、近くにいた三毛猫を撫でたと思ったら抱き上げて、抱き締めた。
雪ノ下は後ろでただ立っている俺を見つけると抱き上げていた三毛猫を俺の前に差し出してきた。
「あなたも触ればいいじゃない、ほら。」
「おう、わかった」
俺は雪ノ下が差し出してきた三毛猫を撫でると三毛猫は満足したのかゴロゴロと喉をならしはじめた。
「さすが、家で猫を飼っているだけあるわね」
「それって、関係あるか?」
「多分、あるんじゃない?」
雪ノ下は抱き上げていた三毛猫を下ろすと三毛猫はにゃ〜〜となきながら、その場から離れていった。
「次に行きましょ」
「もういいのか?」
「ええ、他の猫も見たいから」
次のエリアは外国の珍しい猫のエリアだった。テレビでしか見ないような珍しい種類の猫達が数多くいた。
すると、雪ノ下が入ってきたとたんにその猫達が我先にと近寄ってきた。
雪ノ下は感動したのかハンカチをだし、目元をぬぐい始めた。
「比企谷君、猫達が………」
「すごい寄ってきたな、ちょっとした雪崩だぞ。」
雪ノ下は嬉しそうに寄ってきた猫達と戯れ始めた。
俺は雪ノ下の一歩後ろから、その様子を見ていた。
普段の彼女から感じられる冷気のようなオーラは感じず、ただ自分の好きなものを楽しんでいる一人の少女がそこにはいた。
彼女のこんな姿を見て、惚れない男はいないだろう。
実際俺は一寸前から既に彼女に心奪われている。
しかし、俺は自分のこの心を勘違いという牢獄に閉じ込めた。
自分自身に、そしてなによりも雪ノ下の為に
「比企谷君、そんなところで何してるの?疲れた?」
「ん?いや、どいつから撫でようかなと思ってただけだ」
「それならいいのだけど」
嘘をついて、誰も傷つかないように淡いこの思いを俺は牢獄に封じ込めた。