では、本編スタートです!
「ちょっとカリン、ビアンカ!レヌール城って町の外なんでしょ。いつ出れるの?」
「夜は衛兵さんが居眠りしてるからオッケーだよ。」
「最悪実力行使でも構へんやろ。」
「それは色々ダメだよ。カリンはどうしてそこまで拘るの?」
「あのヒョウ柄ちゃんがウチに救いを求めてたから。」
「そうよね。あの子ずっとカリンの方見てたわ。」
「とにかく武器防具の調達や、リュカとビアンカはいくら持ってる?」
「あたし125G」
「僕160G」
「ウチが200と。リュカ、この前の洞窟で宝箱に入ってた防具持ってる?」
「あるよ。皮の盾と旅人の服。」
「そういえばカリン、どうしてあの子に明後日って言ったの?今日じゃダメなの?」
「一つ、ビアンカの実力がわかんない。一つ、武器防具は揃えるだけ揃えたい。一つ、今日レヌール城に乗り込まなくても明日があるから大丈夫。OK?」
「分かった。」
「それにしてもあと2000はいんねんな〜。」
「「に、2,000!?」」
「この辺の魔物は大体戦闘一回で平均20稼げるから、100回戦ったらいけるか。作戦開始は大人が酔っ払う10時やな。6時に引き返すとして8時間。うん、5分に一回戦ったらいける。」
「それってなかなか凄まじいわよね?」
「とにかくこの皮の盾はビアンカにあげる。だからお鍋の蓋と果物ナイフをちょうだい。あたしがその旅人の服もらうわ。ほんでリュカ、あんたの樫の杖も。2人ともちょっと待ってて。」
カリンは武器屋の主人に貧乏アピールをしながらヨイショとぶりっ子を駆使して、いばらのムチとブーメランを19%カットの620Gで手に入れた。
「カリン、あなた、えげつないわね〜。」
「この前はもっと優しい値切りだったのに……。」
「うるさい!お陰で一文無しや!それでもウチの努力のお陰で必要経費が値切り無しで1373G、つまり値切り12.6%を前提に含めたら1200まで減らしたんや!戦闘が100回が60回まで減ったで!」
「「おー!」」
「あとは集めれるだけ薬草を集めたらそれで終わりや。ウチは夜に備えて寝るからな、おやすみ!」
リュカとビアンカは肩を竦めあった。しかし、その目の奥では、必ず猫(?)を取り戻すという決意の光が漲っていた。
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夜が更け、ダンカンが寝ている横カウンターに背を向けて壁際で酒を酌み交わすダイアナとパパスの目を盗み、3人は夜の町へ飛び出した。そして、ビアンカの言う通りに衛兵は船を漕いでおり、容易に外に出ることができた。
「で、これからどうするの?」
「ウチの勝手な分析によると、山道と森は魔物が多い。だからあそこ南の森に拠点を作る。あそこなら騒いでも街まで声が届くことはないやろ。」
「騒ぐって?」
「2人とも<手の平を太陽に>は覚えてくれてる?」
「「うん。」」
翌朝5時30分。3人はまさに敗残兵のような姿でアルカパに帰還した。魔力と喉は枯れ、目の下には濃いクマを作り、ぐったりした様子で各自のベッドの中へ転がり込んだ。つまり、大声で「手の平を太陽に」を繰り返して歌って魔物をおびき寄せてスライムの一種で、緑色をした完全に形が崩れて液状になったバブルスライム、青毛で何故か体格がやたらガッチリしている大ねずみ、首長いたち、プリズニャンなどを片っ端から殺しまくるという手法で(もちろん適宜休憩を挟みながら)、6時間半で55回の戦闘をこなし、目標の1200Gを超える1246G手に入れて帰ってきたのである。
そして、その日の昼、カリンの値切り術でカリンに追加の矢と皮のドレス、リュカに皮の鎧と木の帽子と鱗の盾、ビアンカに皮のドレスと鱗の盾とヘアバンドを購入した。さらに教会で魔力を見てもらい、カリンはスクルトとマヌーハと敵一体の守備力を大きく下げるルカニ、リュカはホイミとキアリー、ビアンカはメラと相手を幻惑状態にするマヌーサと相手全体の守備力を下げるルカナンと地面に炎を走らせ敵にダメージを与えるギラを覚えていた。
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そして、この日も夜が更けた。昨日と同じ要領で街を脱出し、一路北へと向かう。昨晩に確立したリュカとビアンカが前衛で攻撃を仕掛け、カリンが後衛で回復や弓での的確な攻撃を行うというこのシフトが十分に機能し、2時間かかると思われていたレヌール城まで1時間40分ほどで到着した。
レヌール城は元はレヌール王国の城で、こことアルカパを支配する小さな王国であったが、30年前に王家が断絶し、25年前に魔物に襲われて廃墟になったという。そしてこの城のどこからか、女性のすすり泣く声が聞こえてくるという。
「ふー、着いたな。それにしても随分豪華なお城やってんな〜。てか、お化けってどんなんなんかな?」
「し、知らないわよ。と、とにかく行きましょ!」
「え、何ビアンカ、ビビってんの?」
「ビ、ビビってなんかないわよ。」
「ほんまに〜〜?」
するとリュカがビアンカの耳元に顔を近づけ……
「わっ!」
「きゃあ〜〜!!」
「お、リュカナイス〜〜!やっぱビビってるやん。」
「ビ、ビビってなんかないわよ!」
「はいはい。とりあえず、正門からとっかかってみまひょか。」
しかし、扉は錆びついているのかビクとも動かなかった。
「ダメだよカリン。開かないや。」
「裏に回るか。」
「そうだね。」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。」
「ビアンカ、やっぱ怖い?」
「怖くない!」
カリンはビアンカをそっと抱き寄せた。
「ほんまのこと言うてみ。」
「う、うぅ………、怖いよぉ。」
「大丈夫。ウチとリュカがついてるから。何も怖がることはないから。一緒にあの猫ちゃん助けよ!猫じゃないとは思うけど。」
「うん。ありがとう。ちょっと落ち着いたわ。」
「ほんなら裏に回りましょ。」
奇しくも、裏に回ってみると北東の塔の最上階から侵入できるように梯子がかけられていた。
「うーん、どーも誘われてるような気もするけどなあ。ここ以外に入り口はなさそうやけど、行ってみます?」
「行きましょ!さっさとこんな気味悪いところからはサヨナラしたいわ。」
「入り口が無いものはしょうがないからね。行くしか無いと思うよ。」
「じゃあとりあえずリュカが先頭やな。」
「え〜、何で〜〜?」
「「男の子だから。」」
「はい……。」
「真ん中はビアンカが行き。私が殿行くわ。」
「うん。」
そして、最上階にたどり着いた。
全員が中に入ると、入り口に鉄格子が大きな音を立てて下りた。
「きゃあああああ!」
「うーん、やっぱり誘われてたね。この中に閉じ込める気だったんだ。」
「これで退路は絶たれたわけや。これは進むしか無いな。」
「あんたたちどうしてそんなに冷静なの?」
「簡単なことや。誰かがウチらをビビらせようと思ってこんな小細工してんねんから、それにお付き合いする必要はないって割り切ってるから。」
「そ、そうよね。私たちが怖がってちゃ相手を喜ばせるだけだもんね。リュカは?」
「え、そんなに怖い?」
「……………。」
「さ、ちゃっちゃと終わらせましょか!」
薄暗いフロアを3人は奥の下り階段へ進む。しかしその時、急に視界が暗くなった。何やら激しい物音やビアンカの悲鳴が聞こえる。しばらくして再びカリンの視界は元の明るさを取り戻した。見回すと、自分1人になっていた。
「ん?ビアンカ?リュカ?」
うわー、ぼっちか。これはだるいな。とりあえず探すしかないか。
階段を降りると、そこには多数の鎧が通路に沿って並んでいた。奥には西側へ出れる扉がある。その中に一体だけ不審な鎧が存在した。その鎧は目の部分から光を発していたのである。不審に思ってその鎧を覗き込むと、不意にくぐもった声を鎧は発した。
「見たな〜〜?」
「え、見てません見てません。綺麗な鎧やな〜と思ってみてただけなんでお気になさらず。」
「答えてる時点でアウトだ!思い知るがいい!」
鎧の正体=動く石像が拳をカリンに向けて振り下ろす。カリンはひらりとかわしながら挑発を続ける。
「落ち着いてくださいよ〜。せっかくやり過ごしてあげようと思ってたのに、自分から墓穴掘りに来んといてください。」
動く石像のラッシュをいなしながらカリンは機会を伺い続ける。
「そんなに早くもない軽い一撃やったら倒せませんよ〜〜。多少リスキーでも渾身の一発来たらどうですか?」
「おのれ〜〜!!食らうがいい!!」
動く石像は挑発に乗って渾身の一撃を繰り出した。カリンはかわしながら繰り出された右手を掴み、そのまま勢いを加速させるように力を入れる。すると、動く石像は体重を前にかけすぎた結果、うつ伏せに地面に向かってダイブした。すかさずカリンはアルカパの街で護身用に買ったブロンズナイフを的確に突き立て、綺麗に頭と胴体を分離した。
「ふぅー。じゃあ、進むか。」
探索開始早々にいなくなったリュカとカリンを探してカリンは西側からにあった扉から外に出た。前途多難なレヌール城での冒険は、まだ始まったばかりにすぎない。
男子校に入ると女性に対するハードルが幻想を抱いて極端に高くなるかあまりにも女子が少なすぎて低くなるかのどっちかだそうです。特に女兄弟がいる人は低くなる傾向があるんだとか。そんな男子校に通っている友人は絶賛彼女募集中だそうです。
<次回予告>城内の探索の結果、なんとかカリンはリュカとビアンカを見つけ出す。再会を喜ぶ3人の前に現れたのは美しい女性の幽霊だった。そして、3人は別の幽霊にあるものの探索を命じられた。
次回 第11話 「ティーセット探索要請」
賢者の歴史が また1ページ
ネタバレしとるやん!!