どうも夏風邪を引いたみたいで熱はないのですが鼻水が止まりません。皆様も体調には気をつけて暑い夏をお過ごしください。
では、本編スタートです!
リュカとヘンリーはこの世界で一番高い山であるセントベレス山の頂上付近に移された。荷物や装備は取り上げられ、代わりに奴隷の服を渡される。先輩の奴隷たちに仕事の要領を説明してもらい、その日のところはそこで就寝となった。しかし、ヘンリーはなかなか寝付けないのか、何度も寝返りを打っている。
「眠れないの?」
隣で眠るリュカが声をかける。
「そんなことねーよ。それより俺たち、これからどうなっちゃうのかなあ?」
「大丈夫だよ。なるようになるさ。」
「本当にか?」
「まあ、当然いつまでもここにいるつもりはないけどね。ヘンリーにはここから逃げ出す方法を考えて欲しいんだ。僕はどうやったら仕事を楽にできるかを考えるからさ。」
「お前、勇気あるんだな。親父さんが亡くなってるのに、どうしてそんなに平然としてるんだ?」
「違うよ。平然となんてしてないよ。心の中は怒りでいっぱいさ。でも、ジタバタしたって始まらないからね。運命だと思って割り切ってるだけさ。」
「それでも十分だよ。俺なんかまだ自分を責めずには居られないからな。本当にお前の父さんには悪いことをした。許してくれ。」
「いいよ。そもそも君のせいだなんて思ってないよ。全てはあのゲマだ。きっと次はカリンとモモを連れて、あいつの喉元を貫いてやるんだ。」
「俺も手伝うぜ。それ。」
「ありがとう。心強いや。」
「俺に戦い方を教えてくれるか?」
「暇があればね。そうだ、元気になれるように歌を歌ってあげる。」
負けないこと 投げ出さないこと
逃げ出さないこと 信じ抜くこと
ダメになりそうな時それが一番大事
負けないこと 投げ出さないこと
逃げ出さないこと 信じ抜くこと
涙見せてもいいよそれを忘れなければ
………
「不思議だなあ、なんか勇気が湧いてきた気がするよ。こんな歌聴いたことないよ。誰に教えてもらったんだい?」
「僕の友達のカリンっていう女の子だよ。彼女、すごいんだ。とってもかわいい女の子なんだけどね、1度に30匹の魔物を相手取った事もあるんだ。」
「すげー、めっちゃ強えーじゃん!」
「それにね、面白いし、頭もいいんだ。ああ、早くカリンに会いたいなあ。」
「俺も会ってみたい。」
「そのためにもここから抜け出さないとね。」
「おう!」
2人の男の子が握手を交わす。カリンに次ぐリュカの名パートナー、魔法戦士ヘンリーとリュカの友情はこの瞬間に成立したのである。
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4月3日、ラインハット国内を凶報が駆け巡った。
国王エドワード、崩御
原因は、もともと患っていた病気が第一王子ヘンリーが行方不明になったことに対する心的ストレスによって加速的に進行した結果だという。
次代の国王には行方不明となっている第一王子ヘンリーに代わって第二王子デールが即位し、デールの母であるカタリナが摂政皇太后に就任した。その摂政皇太后に就任したカタリナの最初の命令が、明けた4日に発令された。
さらに明けた5日、サンタローズ村の入り口にラインハットの兵士たちが押し寄せた。
あまりに大勢の兵士にスコットは怯む。しかし、たまたま居合わせたカリンが兵士団の前に立ち塞がった。
「おいお前ら。ウチの村に何の用や。」
「ガキには関係ない。そこをどけ!」
「あん?何やとコラ?そうか、ガキには見せられへんマズイことでもするんか。こんな大勢で押し寄せるからには国王もしくは摂政皇太后の書状を持っとるんやろ。出して見せてみい。」
「そこをどけ!どかぬと……」
「どかんかったらどうする?ガキを殴るか?それとも殺すか?あいにく今ウチは家族が帰ってこんと機嫌悪いねん。拳振り上げられたり武器構えられたりしたら制御できるかわからんで。」
「ふん、口だけは達者なガキだな。ガキに分かるとも思えんが一応見せてやろう。」
そう言って差し出された紙にはま"行方不明になったパパスがヘンリー誘拐の首謀者である疑いあり、調査せよ。"と書かれていた。
「なるほど、一応状況証拠はあるな。行方不明になったんがほぼ同時やし。やけど物的証拠が何一つあらへんがな。
それに普通に考えて家と長年連れ添った従者と小さい女の子残して、中途半端に息子と息子の飼い猫だけ連れて誘拐事件起こすなんて考えられるか?
ラインハット城下町では緑髪の男の子抱いた人攫いと、それを追いかけるパパスさんらしき人物の目撃証言もあるやないか。ないとは言わさへんぞ。キッチリお宅のとこの早馬で知らされたんやからな。訂正の早馬も来てないねんからこの証言は間違いないということになる。
一体その証言のどこがどんな根拠で間違ってるといつ判明したのか、それと物的証拠。この2つを反論の隙がない様に立証してから出直してこいアホタレ!!」
一分の隙もない正論に兵士たちは押し黙る。そして自分たちの愚かさに気づいておずおずと引き返していった。勇気あるカリンの行動に対して、村中から大きな拍手が鳴り響いた。
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その夜、村の大人たちにカリンが混じって会合が教会で開かれた。先月の薬師救出の件も相まって村の英雄的ポジションに祭り上げられたカリンが自分の意見を述べる。
「次はないですよ。」
その発言に出席者たちは訝しがる。
「次は対話すらして来ないでしょう。この村を滅ぼすつもりでやってきますよ、あいつら。」
「どういう事だ?」
薬師カールが聞く。
「摂政皇太后が間違いなくヘンリー王子誘拐事件の真犯人やからですよ。」
「もう少し詳しく説明してくれ。」
カールが促す。
「ラインハット城内がお家騒動勃発前夜だったのはみなさんご存知の通りです。ここで大事なのは国王がヘンリー王子誘拐の知らせを聞いてぶっ倒れたということです。つまり、その間政務は停滞する。しかし、政務を滞らせるわけにはいかない。だから臨時でカタリナ摂政皇太后が政治の指揮を取っていたはずだということです。
これは早馬の知らせを噛み砕けば、国王の容態を知らせる早馬とカタリナのコメントを伝える早馬の矛盾からわかります。しかし、カタリナは自分が代わりに政務を執り行うという宣言をしていません。なぜ正々堂々と国王の政務を代行しているという宣言をしないのか。なぜ何1つ捜査状況が全く知らされなかったのか。という疑問が出て来ます。」
サンチョが後を引き継ぐ。
「つまり、国王が病身を押して政務を取っている様に見せかけて裏でカタリナ摂政皇太后が政務を執り行っていた。理由はヘンリー王子捜索隊に自分の配下を紛れ込ませて捜査を混乱させるため。その混乱を見せないために捜査情報は明かさない。そして旦那さまをスケープゴートに仕立て上げるストーリー作りを行なっていた、というわけです。そしてカタリナ摂政皇太后ご自身が正々堂々と政務を行える様になった今、かねてより用意していた見せしめ計画を実行に移したのです!」
マルティンが話を纏める。
「つまり、"この村にはヘンリー王子誘拐の容疑者パパスが住んでいた。怪しいと思って調べにいったら拒否された。これはラインハットに逆らう危険分子の集まりだ、潰してしまえ!"と言ってこの村を滅ぼし、他の町村が反抗しないためのスケープゴートにするつもりなのだ。もはや一刻の猶予もない。急いで女子供は洞窟の中へ避難した方が良いな。」
「ですが一番の不安要素はが兵士と戦える奴がカリン、この私、スコットさん、マルティンさんのたった4人だけなんです。到底抑えきれるとは思えませんが?」
サンチョが不安を述べるが、マルティンが否定する。
「大丈夫だ。この村は結構入り組んでいるし、人が横に広がれる幅も狭く、大部隊を大きくは展開できない。
」
「この村全体を戦場にしてゲリラ戦を行えばそう簡単には滅ぼされないでしょう。あと、誰か火薬もっとったらウチにください。お願いします。」
そして、カリンの口から驚きの作戦が発表された。
その日の夜からサンタローズは密かに村全体を使ってラインハット軍を迎え撃つ準備を始めた。村民総出で洞窟の前にはバリケードを築き、村中にはあらゆる罠が仕掛けられた。全ては、愛する村を守るために………
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そして、カリンたちの予言通り、その日の内にラインハット軍に一枚の命令書が交付された。そこには
"サンタローズ村に叛意あり。4月7日の日の出を以って反乱分子を鎮圧せよ。"
と書かれていた。
今年のFNS27時間テレビは録画映像を用いて進行するんだとか。ぶっ続けの生放送だから面白いと思うんですがねぇ。忙しくて見てる暇もないんですが。
<次回予告>ついに村へ押し寄せてきたラインハット軍に対してサンタローズ村の決死の抵抗が始まった。思わぬ損害に驚いたラインハット軍はさらなる増援を要求し、サンタローズ最大の危機が訪れた。
次回 第22話「サンタローズのいちばん長い日 前編」
賢者の歴史が、また1ページ。