昨日から高校野球が始まりましたね!既に熱戦が繰り広げられているわけですが、昨日の第3試合、藤枝明誠(静岡)対津田学園(三重)の死闘にシビれました!決着がついた時に叫びましたね。
では、本編スタートです!
第24話 奴隷生活についての一考察
世界一高い山、セントベレス山頂。
標高は1万メールに届き、空気も薄く、地上より平均気温が10度低いこの劣悪な環境下において、新興宗教である"光の教団"の大神殿が建設されていた。その過酷を極める作業には、セントベレス山がある中央大陸の現地住民や、世界各地から集められた奴隷達が従事していた。
その中に、10年前に当時まだ子供だった頃から連れてこられた2人の若者がいた。そのうちの1人は長い黒髪を後ろで縛り、愛用の紫のターバンをいつも巻いている、瞳に不思議な光を湛えた16歳の若者で、名をリュカといった。そのリュカは、作業場で呑気に歌を歌っていた。
「負けないで もう少し
最後まで 走り抜けて
どんなに離れてても 心は側にいるわ
信じてね遥かな夢を〜」
「こら!貴様!何を歌っているんだ!」
「いいじゃん!この歌聞いたらみんな元気出て作業効率上がるんだから!」
「うるさい!黙れ!」
リュカはムチを持った監視員にムチで叩かれてしまった。
「リュカ、ま〜た叩かれてたな!毎日飽きもせずに良くやるぜ、全く。」
その日の作業が終わり、夕食時にそう声をかけてきたのは、リュカと共に10年前にここに連れてこられた緑色の髪の17歳の若者、元ラインハット王国第一王子のヘンリーであった。2人はこの苦難の10年間を共に過ごす中でいつの間にか無二の親友となっていた。
「何だよ〜。別に僕悪くないし。あ〜、おんなじ嫌味を言われるんだったらカリンに言われたいや。」
ヘンリーは押し黙る。ヘンリーはリュカからカリンの話を聞くうちに、カリンに対して恋心までは行かない、仄かな憧れを抱いていた。ちなみに、リュカがカリンをどう思っているかについては、リュカは口を開かなかった。
「それよりさ、今日言ってた、神殿の完成の暁には自由にしてやるって話、どう思う?」
「あんなの嘘に決まってるだろ。どうせ真実を知ってる人間は消されるのさ。」
「だろうね。僕も全く同意見だよ。」
そして、リュカは声を低くして続ける。
「つまり、僕が言いたいのは時間が限られてきたっていうことだよ。」
「そうだな。このペースだとあと2年もすりゃ完成しちまうからな。」
「何かここを抜け出すいい案はあるの?」
「ありゃとっくに実行してるさ。ギリギリになったら例の手を使うけどな。」
「死体を流す樽に入るっていうやつね。」
ここで死んだ人間は樽に入れられて海へ捨てられる。それに紛れて脱出しようと考えたのだが、高度一万メールからの脱出である。かなり命の危険が高すぎるため、2人の間では最終手段という位置付けであった。
「それとさ、今日新しく奴隷が入ったよね。」
「ああ、あのなかなか美人の。」
「マリアって名前らしいんだけどね。あの子、元々はこの光の教団の信者だったらしいよ。」
ちなみに、光の教団とは、入信していれば死んだ時に救われるという、教義としては単純な宗教だが、魔物の数が増え、ラインハットやグランバニアなどの大きな国家での凶事の数々が人々の不安を煽り、今ではかなりのペースで信者が増えているらしい。そして、教義に背く者や、人攫いに攫われ、売られた者達が、ここで奴隷として働かされている、という訳だ。
「マジか。いよいよ腐ってやがるな。それにしても俺たち良く10年も保ったよな。」
「本当にそうだね。何回死にかけたかわかったもんじゃないよ。」
リュカとヘンリーの体はムチで殴られた傷跡だらけであった。回復呪文で消えるような代物でもなかった。そもそも、朝一番に全ての魔力を吸い取られて呪文を唱えられないようにされるのだが。
「さてさて、毎日恒例のこのクソ不味いシチューも食い終わったことだし、明日に備えて寝るか。」
「そうだね。あー、サンチョの料理が恋しいな〜。」
「そのためにも必ず生きて帰って、一緒にあのゲマをぶっ殺そうな。」
「もちろんだよ。」
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翌朝。目覚めたリュカは毎日恒例の朝礼で魔力を吸い取られ、作業に精を出す。石を山頂に作られた神殿の土台に運び続けること2時間、すると、急に下のフロアが騒がしくなったのをリュカは感じた。野次馬根性から作業をサボって騒ぎを見に行く。すると、そこでは昨日入ってきたマリアが教団の人間にムチで叩かれていた。その場に居合わせたヘンリーに何があったのかを聞く。
「俺も詳しくは知らねえが奴らの口ぶりからすると、どうやらあの子が石を持ってよろけた拍子にあいつらにぶつかって服が汚れたらしい。」
そう語るヘンリーの目は既に怒りに満ち溢れていた。ヘンリーは口は悪く、少しチャラけた印象のある男だが、根はとても真面目で正義感が強い。だからこそマリアを理不尽な理由で殴っている教団の人間が許せないのだろう。
話を聞いているうちにムカついてきたリュカがヘンリーの肩に手を置いて言う。
「やろう。もしこれがバレて捕まったら牢獄行きだけど、牢獄は死体を流す場所のすぐ近くだ。僕は賭けてみてもいいと思う。」
「奇遇だな。俺も全く同じことを考えてたところだぜ。よし、リュカに暇があれば鍛えてもらった格闘の成果、見せてやろうか。」
リュカとヘンリーは一歩前に進み出た。それに気づいた教団の男が蔑むような目で誰何する。
「何だお前達は?こいつと一緒に殴られに来たのか?」
「えー、痛いのはやだなあ。君たちみたいに下衆な考えしかできなくて、人をムチで叩く事しか頭にない連中にはわからないだろうけど、ムチで叩かれるって結構痛いんだよ?」
「しかも何の非もないか弱い女性にやってるらしいじゃねーか。男の風上にも風下にも置けねーな、お前ら。」
「ふん、よっぽど死にたいらしい。なら俺があの世に送ってやるよ!」
そう言ってムチ男は飛びかかって来た。リュカは石を拾うとムチ男の右手に向かって投げつける。石は過たずに右手に直撃し、ムチは弾き飛ばされた。そのムチをヘンリーが拾い上げ、右手を抑えてうずくまっているムチ男に打ち付ける。
「どうだ、痛いだろ?」
しかし、騒ぎを聞きつけた他のムチ男達がその場に現れ、リュカとヘンリーを包囲した。
「わ〜!団体様のお着きだ〜!」
「4人か。リュカ、行くぞ!」
「はいよ!」
五分後、リュカとヘンリーの周りには4人のムチ男の身体が転がっていた。
「案外弱かったね。」
「そうだな。」
そこへ教団施設の警備と治安維持を担当する兵士の一団が現れた。そのリーダー格の男が事情の説明をムチ男に求める。
「この娘が躾がなってなかったもんで躾けていたら、急にこいつらが殴り込んで来たんです。それで他の奴らが取り押さえようとしたんですが、返り討ちにあってこのザマに………。」
「おいおい、躾がなってなかったのはそっちだろ!か弱い女性が重いものを運ぼうとしてよろけてぶつかったくらいでムチで打ちやがって!」
ヘンリーが自分を正当化しようとするムチ男を非難する。
「事情はどうであれ、早急にこの問題を収拾せねばならん。とにかくその奴隷2人は牢屋へ。その女の奴隷は手当てをした後、私の元へ連れてこい。女の手当てが済むまでの間、お前達から事情を聞こう。監督不行き届きがなかったかを精査する必要がある。処分は追って下す。」
「はっ」
部下の兵士が動き出す。
「リュカ!」
「ここは下手に騒がない方がいいと思うよ。素直に捕まっておこう。大丈夫、悪いようにはならないさ。」
「そ、そうなのか?」
「あれ、知らない?」
「何のことだ?」
「ならいいや。あとで言うよ。」
「…………。」
リュカ達は大人しく牢屋へ連行されていった。
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「開かねーな。」
ヘンリーは鉄格子のドアを開けようとするが、ビクともしない。
「そう?ま、気長に待とうよ。」
「おいおい………、ってそうだ!さっきの"知らない?"って何のことだよ!説明しろよ!」
リュカは鼻を小指でほじりながら答える。
「本人に直接聞くのがいいと思うよ。」
「どうやって聞くんだよ!このまま何の事情聴取もなしで死刑になるかもしれないんだぞ!」
「あ、来た。」
リュカとヘンリーが入る牢屋に二組の足音が聞こえて来た………。
さて、本日8月9日は長崎原爆が落とされた日な訳ですが、よく考えたら民間人の虐殺って明らかに当時の国際法を違反してるんですよね………。あ、ちなみに南京大虐殺は大嘘らしいですよ。
<次回予告>10年前の出来事以来、リュカも、パパスも、モモも帰って来ず、マルティンを失った悲しみが癒えずに心の底から笑わなくなったカリンをサンタローズの者たちは心配していた。そんな中、セントベレス山頂ではリュカとヘンリーの驚くべき脱出計画が進行していた!
次回 第25話「3月の自由な空の下で」
賢者の歴史が、また1ページ。