DQ5 天空の花嫁と浪速の賢者   作:かいちゃんvb

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どうも、かいちゃんです!
いつの間にかお気に入りが100件を超えていました。めちゃ驚いており、かつ嬉しくもあります。今後とも暖かい目でこの作品を見守って頂けると幸いです。
では、本編スタートです!


第34話 2度目の凱旋

慌ててヘンリーとリュカが橋の中央に駆け寄る。カリンは何もない空間に左手だけで掴まり、辛うじて落下をこらえていた。その様子を見て2人は一安心する。気が動転していたせいか、足下を全く見ずに駆け抜けてきたが、2人の両足は何もないはずの空間において何か固い材質の床を踏んでいた。

 

「本当に床があったんだな。」

 

「魔法か何かなのかな?とにかくすごいや。空を飛んでるみたいだよ。」

 

「あ〜〜、風が気持ちいいぜ。」

 

「うん!」

 

「おいこら!お前ら何しに来たんじゃ!!さっさと引き上げんかい!!」

 

2人は慌ててカリンを引き上げる。助かったカリンは透明な床をコンコンと叩いた。

 

「ガラスかなんかやな。それにしてもほんまに透明やな。ものすごい純度の高さやで。」

 

「へー、ガラスなんだ。」

 

「ほんでここだけ穴を開けてると。」

 

カリンが文字通り何もないところに手を突っ込んで穴の側面をなぞる。どうやら縦1.5メートル、横1メートルほどの穴がくり抜かれているようだ。

 

「どうやら最後まで気を抜くなってことらしいな。さ、先に進もうぜ。」

 

3人はついにラーの鏡の前に辿り着いた。ヘンリーがそれを取って皆がいる橋の反対側に戻る。

 

「これがラーの鏡か。どこか神々しいな。」

 

「伝承によれば、かつてこの鏡で人に化けていた魔王を見破ったとあります。それがあれば、きっと太后が偽物であると見抜けるでしょう。」

 

「非常に神々しい代物ですな。拙者のような魔物は触れることすら叶いますまい。」

 

鏡を見てヨシュア、マリア、ピエールがそれぞれ感想を述べる。

 

「じゃ、おりますか。」

 

ヘンリーの号令と共に、一行は撤退を開始した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

塔を攻略した一行は、すでに日が暮れかかっていたので再び海辺の修道院で宿泊し、オラクルベリーで銀行口座を開設して余分な金を預けてすぐさまオラクルベリーを出立して徹夜で行軍し、サンタローズで数時間の休息をとったのち4月11日未明、一行はラインハット川の関所に到達した。

 

「このままやと日が暮れるまでにはラインハットに戻れそうやな。」

 

「そうだね。」

 

そんな会話を交わしながら関所を通ろうとすると、ここの衛兵であるトムがこちらを認識するや否や切迫した表情で猛スピードで駆け寄ってきた。

 

「た、大変ですヘンリー殿下!!」

 

「ど、どうしたんだトム、そんなに慌てて。」

 

「太后がデール国王陛下を処刑しようとしています!!」

 

「何だと!?」

 

「流浪の傭兵を雇って国を転覆させようとしたとか何とかで………。公開処刑が12時から始まるそうです!お急ぎください!!」

 

「タイミング的にラーの鏡を取ったのがバレたって感じだね。」

 

「確かに奴らからしたら表に出ちゃマズイ代物だからな。反乱勢力に渡る前に頭目になり得る人間を潰しておこうって魂胆だろ。だが即刻処刑にはしないってことはまだ俺たちの存在が把握されてないってことだ。」

 

「つまり、ウチらにはまだツキには見放されてへんっていう訳や。」

 

「じゃ、憐れな子分を助けに2度目の凱旋と洒落込むか!」

 

一行は猛スピードでラインハット川のトンネルに潜っていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

4月10日の夜更け、デールは自室でラーの鏡を取りに行った兄、ヘンリーの帰りを今か今かと待ちながら、ニセ太后を除いた後のことについて思いを巡らせている時であった。太后の取り巻きである憲兵団がデールの部屋に何の予告もなくなだれ込んで来た。

 

「何事だ!国王の部屋に許可なく立ち入るなど大不敬に値する行為だぞ!」

 

デールは憲兵団に向けて怒鳴り声をあげる。それに対する憲兵団長の応答は冷淡であった。

 

「デール国王、いえ、賊軍の頭目たるデートリヒ・フォン・ラインハット。太后陛下に対する大逆未遂の容疑で逮捕する。貴様の犯した罪は大変重く、明日には死刑に処されるであろう。」

 

「証拠はあるのか?疑わしきは罰せよではいくら容疑が大逆未遂であってもお粗末がすぎるぞ。」

 

「太后陛下の命令だ。さ、大人しく来てもらおう。」

 

デールは悟らざるを得ない。ついに太后は自分を切り捨てる時が来たのだと。こうなればヘンリー達が一刻も早く戻ってくることを祈るより良い解決法がデールには見出せなかった。

 

「わかった。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして来たる11日午前11時45分、デールは城の中庭に設置された断頭台に連行された。国民全員が集められ、その目は断頭台に現れた国王デールに釘付けとなっている。すると、他にも死刑にされる罪人が出てくる。中には軍の元第3師団長イワンの姿もあった。デールは改めて会場を見渡してみる。国王が処刑されることにショックを隠せずどよめく群衆、無表情な刑吏と100名ほどの警備兵、諦めの表情を浮かべるイワンらの罪人、刃が研ぎ澄まされたギロチン、そして………窓からその光景を覗き、ニヤリと笑う太后ら。人生最後の中庭の景色を十分目に焼き付けていると、刑吏が高々と声をあげた。

 

「では、これより、大逆未遂の大罪を犯した国王デートリヒ・フォン・ラインハット、元第3師団師団長のイワン・フォン・ベルツら12名の危険分子の公開処刑を行う!」

 

「異議あり!」

 

よく通る青年の声が中庭に響き渡った。国民はざわめく。すると、群衆を押しのけてフードを被った旅装束をした5人の人間が処刑台の前に現れた。

 

「誰だ!?」

 

刑吏が誰何する。先頭にいた長身の人物がフードを外しながら答える。その頭髪は緑色であった。

 

「な〜に、無実の人間が殺されるのを見て憐れに思って助命嘆願をしに来たただの旅人ですよ。ただし…………」

 

男は群衆に振り返る。

 

「本名はハインリッヒ・フォン・ラインハットというのですがね。」

 

その宣言に中庭にいた一同は驚愕する。10年前に連れ去られたはずの第一王子ヘンリーが帰って来たのだ。狼狽えながらも刑吏は声をあげる。

 

「う、嘘だ!証拠でもあるのか!?」

 

「そうだな………俺の部屋の奥には宝箱があって、子分の印があるとか言って空の宝箱を見させている間に隠れるっていうイタズラを何回繰り返したことか。」

 

「な………そ、それを知っているのは…………」

 

「さ、デールとイワン達の縄を解いてくれ。新兵のエドワード君。」

 

刑吏はヘンリーが誘拐された当時の身分と自分の名前を告げられてたじろいだ。

 

「ま、まさか………」

 

「な、ついでに太后のところへ案内してくれるか?」

 

「その必要はない。」

 

よく通る声が広間に響き渡った。断頭台の前に40代くらいの豪奢に着飾った、美しくどこか無機質な女性が現れた。

 

「なんだ、妾に何か用か?」

 

「そっちの方から出て来ていただけるとは手間が省けて何よりだ。リュカ、あれ頼む。」

 

フードの中の1人が袋から神々しい一枚の円形の鏡を取り出した。それを見て太后は目に見えてたじろいだ。緑髪の男は鏡を受け取り、それを太后にかざした。鏡は眩ゆい光を発して広間全体を照らし出す。それが収まると、警備兵や重臣の一部の姿が魔物に変わった。そして太后も、美しい女性の姿から醜いエビルダンサーに似た魔物に姿を変えた。

 

「き、貴様〜〜!!」

 

その声と共に広間に集まっていた群衆が慌てふためく。

 

「トム!後は頼んだ!」

 

フードを脱いだラインハット正規兵のトムが民衆を落ち着かせて場外への退避を促す。城門の外では既にマリアとリュカの仲間の魔物たちが待ち構えており、全ての群衆とトムに連れられた死刑囚たちの退避を確認すると、トムと仲間の魔物たちが城門を塞いだ。

中に残っているのは既にフードを脱ぎ捨てたヘンリー、リュカ、カリン、ヨシュアとリュカの仲間の魔物たち、60人ほどのラインハットの一般兵と本性を現した魔物たちであった。30匹ほどの魔物たちがヘンリー達の周辺を取り囲む。どうすればいいかわからずに戸惑っている一般兵に向けてカリンが怒鳴りつける。

 

「お前ら何ボケっと突っ立っとんねん!!城に残っとる侍女とか一般市民を守らなあかんのちゃうんか!!」

 

慌てて兵士たちは城内になだれ込んだ。

 

「さーて、土俵も整った事やし、ひと暴れしまっか。」

 

リュカたちは一斉に魔物に向かって飛びかかった。




<次回予告>遂に始まった因縁のニセ太后との対決。しかしニセ太后の常識はずれの素早さに一行は苦戦を強いられる。ジリジリと追い詰められていく一行に、一発逆転のチャンスは到来するのか?
次回 10月6日金曜日午後9時3分投稿 第35話「ラインハットの死闘」
賢者の歴史が、また1ページ。
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