では、本編スタートです!
革命の英雄たちのためにと振る舞われた豪華な食事を堪能した後、すぐさま城の会議室にデールを始めとして、ニセ太后討伐に関わったリュカたち、イワンが集って今後の話し合いを始めた。城の重臣は全てが魔物とすり替わっており、ブレーンとなりうるのはこれらの面々だけだった。座長のデールが口火を切る。
「さて、いろいろ話し合わなければならないことは多いですが、まず今回の事後処理を何とかしましょう。」
「取り敢えず全世界にここで何が起こっていたかを詳らかに公開しないとな。国際社会の信頼はガタ落ちだろうが……。」
「ま、何も言わんよりはマシちゃう?それとパパスさんの名誉回復な。これをやらんかったらサンタローズにいつまでもしこりが残る。後始末としてはそれぐらいでええやろ。ところでや、ヘンリー。」
「何だ?」
「あんたひと段落ついたらどうすんの?リュカはビスタの港が開港され次第西の大陸に渡りたいって言うてるけど。ここに残って王様なり大公なりに収まるか?」
「…………………………。」
「ま、なかなかきつい二択やろうけどな。急かして悪かったな。」
「いや、いいんだ。避けては通れない問題だからな。」
「それでは、これからの事を話し合いましょう。」
まずリュカが口火を切る。
「国王はデールでいいんじゃないかな?あんまりヘンリーを祭り上げたら調子に乗りそうだし。」
「何だと!?」
「それにヘンリーは意外と感情論で突っ走るからね。ヘンリーが僕たちと一緒に旅をするっていう選択肢も十分考えられるわけだから、デールのままが1番手間暇が省けるんじゃないかな?」
「しかし、私は王の器ではありませんよ。」
ここで、今まで沈黙を守っていたヨシュアが発言した。
「いえ、デール陛下には十分王の素質があると思いますよ。我々国民の目線に立って国を良くしようとする。カリスマ性や体の強さよりも大事な資質だと思いますが。」
「その通りです。デール国王陛下。」
さらにマリアもデールを支持する。
「恐れながら陛下には、このような状況を10年にも渡って放置した責任もございます。その間あなたにできたことは少なかったかもしれませんが、そこから逃げることは許されないと存じます。」
「そうだぞ、デール。仮に俺がここに残ったとしても王位だけは絶対に継がねえからな。」
「さて、王位の件は片付いたっぽいし、今後どうするか決めてこか。」
ここで予算の帳簿を持っているイワンがその資料を読み上げる。
「とりあえず現在は軍事予算が国家予算の半分以上を占めていますから、財政を健全化するにはこれを2割台には抑えなければ。」
「部隊を再編して兵を民間に戻さなければいけないね。生産力もかなり落ちてるみたいだし。あとは税を少なくしたらいいんじゃないかな?」
「税率の下げ幅は少なくしといて残ったぶんを教育に回さん?少なくともウチとリュカは旅に出るし、イワンさんも若くない。今は回せて行けても次の世代さっさと育成せなものの10数年で国傾くで。国力は優秀な人材からやし。幸い民間にはニセ太后に楯突いてクビになった元高官結構おんねんから、その人ら教師にしたらええんちゃう?」
「教育か。いいアイデアだな!」
「しかし税率の下げ幅を少なくして大丈夫なのでしょうか?民たちはかなり苦しんでいるようですが。」
マリアが懸念を示すが、イワンが再び資料を見てカリンの意見を補強する。
「今年は豊作が見込まれる上に軍縮が成功すればそれだけお金も浮きますから多少は大丈夫でしょう。それに、このラインハットは先代の時から民生の充実のために税率が高い国として有名だったんですよ。それでも現行の半分にはなりますから先代の時の税率にしておけば問題ないと存じます。」
それを聞いたデールは大きく頷き、決を下す。
「当面はそれでいきましょう。イワンさんは軍縮と税制の整備をお願いします。今回の事態に対する声明は私が1人でまとめておきます。そして、ニセ太后や旧高官らが溜め込んだ私財を切り崩して各地の復興金に当てるので、リュカさんとヨシュアさんでサンタローズの復興を指揮してください。」
「え?ウチは?」
「カリンさんには教育制度の確立のお仕事をして頂きます。」
「マジ!?めんど〜。」
「言い出しっぺですからね。よろしく頼みます。それにマリアさんも付けますから。」
「へーい。」
「おいデール、俺はどうするんだ?」
「救国の英雄なんですから好きにしてくださって結構ですよ。あなたが現れるだけで民は熱狂するでしょうし、城で悠々自適な生活を送っても結構です。」
「そうだな…………俺は城にいるよ。色々考えることもあるしな。」
「それが良いでしょうね。色々と僕も相談したいことがありますし。それではみなさん、明日からは忙しくなります。今日はこの辺でお開きにして明日に備えて下さい。解散!」
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夜が更け、ラインハットの空には革命の成就を祝うかのような美しい満天の星空が広がっていた。なかなか寝付けなかったヘンリーは、バルコニーで風にあたりながら星空を眺め、自らの進退について考えていた。
ラインハットに残るべきか、リュカたちについて行くべきか。
どちらも短所はある。ラインハットに残れば好きな女性を逃してしまうし、かと言ってリュカに付いて行っても、この国を10年も放ったらかしていたのだから、最後まで責任を取る必要があるようにも感じる。
「兄さん、夜更かししてていいんですか?」
ヘンリーが振り返るといつの間にかそこにはデールが立っていた。
「なんだデールか。驚かせるなよ。」
「どうやらこれからのことでお悩みのようですね。」
「ま、そんな感じだな。」
「ラインハットのことなら任せて頂いて構いませんよ。リュカさんへの恩義もあるでしょうし、何より好きな女性とは離れたくないでしょうしね。」
「………お前、いつからそんなに聡くなった?」
「まあ、城にいる間は勉強と人間観察くらいしかやる事がなかったですしね。自然と身についたという感じでしょうか。それにしても兄さんもよくご無事で。話は先程リュカさんから伺いましたが、よくぞ過酷な生活を乗り越えて帰ってきて下さいました。」
「まあな。リュカのお陰だけどな。」
「リュカさんも兄さんのお陰で生き延びたって言ってましたね。ちなみにカリンさんとはどこまでいってるんですか?」
「お前、そういう事こそ俺の口から言わせないでリュカに聞けよ。」
「困った兄さんを見る方が楽しいと思いまして。」
「いつの間にか性格悪くなってんぞ、お前………まだ友達だよ。一回俺がボロ出してあいつに惚れてる事バレたんだけど、その時に気持ちの整理が付かないから友達から始めてくれって言われた。」
「なんだ、今日のやり取り見てまだかなあとか思ってましたけど、十分脈アリじゃないですか。」
「そ、そうかあ?」
「友達からって言ったんでしょう?なら発展する可能性はまだまだありますよ。戦いはまだまだ序盤です。あなたがめげた時こそ敗戦の時です。」
「そういえばお前、会議の時からマリアさんに視線が釘付けだった気がするのは気のせいか?」
「わお、兄上も目敏いですね。そうです。多分一目惚れしました。僕は偉大なる兄上とは違って自分に正直ですからね。」
「チッ、よく言うぜ。そうですよ!どうせ俺は臆病者ですよ!」
「僻まないで下さいよ。とにかく、あなたは自分のしたいようになさって下さい。どちらにせよ、僕が上手く纏めておきますから。………では、明日も早いので休ませて頂きますね。」
「ああ、お休み。」
デールは自分の部屋へ去っていった。ヘンリーの中で、これからについての意思が固まった。
リュカとカリンと旅を続けよう、と。
「ぶうぇっくしょい!!あー誰だ噂してんのは!」
カリンは与えられた部屋で早速教育制度の立案に取り掛かっていた。嫌な事は先に済ませる主義であった。すでに義務教育6年制と学区編成は済ませており、あとはデールの承認を貰うだけだが、ここからのカリキュラムの設定が難しくなるだろう。科目や進度など現代日本との差を痛感して絶望しながら、イワンなどの高等教育を受けた人材の話を統合しつつ悪戦苦闘する日々が始まっていくこととなる。
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こうして様々な人間模様を描きつつ、ついに長かった激動の4月11日が終わる。ラインハットにおいて、この4月11日は革命記念日として、建国記念日に並ぶ祝日となり、ヘンリー達の英雄譚は長く語り継がれていくこととなるのであった。
<次回予告>復興に向けてラインハット王国は確固たる歩みを始めた。教育行政の整備を委任されたカリンは仕事に一段落つけて、久々にサンタローズに帰郷する。そして、自分の気持ちを整理する時間が訪れた。
次回 10月20日金曜日午後9時3分投稿 第37話「本当のキモチ」
賢者の歴史が、また1ページ。