さらに土曜日にはバレーボール・Vプレミアリーグも開幕します!めっちゃ楽しみです!見れないけど!
では、本編スタートです!
5月13日、ラインハットの復興は進み、ついに6月1日にビスタの港の封鎖が解かれ、西の大陸への航路が再開されることが決定した。実に10年ぶりのことである。その他にも、デールが国際社会に出した、懺悔と未来への希望に満ちた声明は各国の同情と共感を買い、ビスタの港の開港と同時に膨大な支援物資が届くことも予想されているし、イワンらの軍縮と財政政策と各種法整備によって治安や流通も安定し、国民の支持もうなぎ登りである。
また、ヘンリーによって暴君の出現の際に暴走を止められるように国民投票の結果によって国王の罷免ができることを明文化し、改正もかなり難しくした法典が整備された。そしてこの日、6年の無償の義務教育制の開始、いつの間にか押し付けられていたインフラの整備の目処が立ったカリンは単独でサンタローズに帰還した。
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この日も変わらず村の入り口の警備を行なっているスコットに声をかける。
「ただいま〜。スコットさん、元気してた?」
「おー、カリンか!実はルカがちょうど一昨日に出産したんだ!元気な男の子で、名前はカイル。うちにいるから寄ってくれよ!」
「わかりました。取り敢えずおめでとうございます。それで、復興状況はどうでっか?」
「ああ、かなり進んでるよ。桜の木の下にパパスさんの慰霊碑も立ったし、だいぶ荒れた田畑も土が入れ替わったから夏蒔きの冬野菜の種蒔きも始まったし、生産力は文句なしだ。オラクルベリーやアルカパに流れた村人たちも帰ってきてくれてるし、その他の移住者も増えてきてかなり活気も出てきたよ。」
「それは何よりや。じゃ、また夜にでも。」
スコットと別れて村に入ったカリンはスラリンたちの歓迎を受けた。カリンを見るなりこちらへ駆け寄ってきたのである。
「おうお前ら、元気してたか?」
「ピキー!」
「よいしょ!よいしょ!」
「キーッ!キーッ!」
それに気づいたリュカとヨシュアとピエールも駆けてくる。
「カリン!もう仕事は終わったの?」
「まあね。あとは下に任せて大丈夫そうやからこっちに戻って来た。特別なことがない限りもう戻らんかな。」
ヨシュアが前へ進み出る。
「カリン、息災そうで何よりだ。して、マリアは?」
カリンの顔がにやける。リュカはそれがカリンが悪い事を考えているときの顔である事を瞬時に悟った。
「さるやんごとなき方からラブコールを受けているので老婆心から置いて来ました。」
ヨシュアの表情が激変した。
「何!?デール国王が!?た、確かに会議の時から意識なさっているように思われたが………。」
「応援しますか?それとも"まだ嫁にはやらん"とか言って止めますか?」
「そんなものはマリアの自由だ。私が口を出すことではない。いい気分ではないが。」
「そうですか…………ちぇっ、おもんね〜」
「一発殴っていいか?」
「ジョークですから。ま、マリアさんとデールの真意は2週間後にお確かめになって下さい。ウチらを見送るためにデールがこっちに来るらしいから。」
「そうさせてもらおう。」
ピエールも騎士の礼をとる。
「カリン殿、息災そうで何よりです。」
「…………じゃ、ウチはルカさんの様子見て来ますわ。」
「無視するでない!」
「いや、特に言うこともなかったしな〜〜。」
「貴様!」
見かねたリュカがピエールを宥める。
「ピエール、落ち着きなよ。逆上するとカリンの思うツボだよ。それを楽しんでるんだから。」
「さすがリュカ、よくお分かりで。」
「ところでヘンリーは?」
「さあ?本人は忙しいからもう暫くしたら来るって言うとったけど。何もすることなさそうやねんけどな〜。さて、ほんまにそろそろルカさんとこ行くか。」
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その頃、ラインハットでは国王とその兄が玉座の間でたった2人で額を突き合わせていた。
「デール、どうするよ。」
「そうですね、私も聞きたいところです。」
「しれっと自然に言うのが良いか、ロマンチックに決めるか、はたまたまだ様子見か………」
「いや3番目だけは無いでしょう。リュカさんに付いて行くことは決めたんでしょう。それなら早い方がいいですよ。船旅は優雅に行きたいじゃないですか。狭い空間で意識だけはして告りもせずにただただ居心地悪いなんて嫌でしょう。さっさと腹括ってください、ってこれ何回言いました?多分3回目ですよ!せっかく選択肢を一つ削って差し上げたんですから告り方くらい自分で考えてください!」
「とか偉そうなこと言ってマリアさんにまだ想いは伝えれてない奴が言うなよ。」
「うっ………!」
「ヨシュアさんにも了承取り付けないといけねーから俺はリュカの見送りの時を推奨するけどな。ま、玉砕したら全てパーだけど。」
「…………で、兄さんはいつサンタローズに行くんですか?」
「もう明日には出るよ。道中でも気を抜かなかったら考え事くらいは出来る。」
「頑張ってくださいね。」
「ああ、お前も留守は任せたぞ。」
「はい。」
ヘンリーは玉座をの間を出て旅支度を整えるべく自室へ戻った。デールもため息を一つつくと、それまで退出させていた侍従や家臣を呼び寄せて政務に戻った。
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「いや〜、やっぱ赤ちゃんって可愛いなあ〜。」
「ほらカイル、カリンお姉ちゃんでちゅよ〜。」
スコット・ルカ夫妻の寝室でカリンは2人の子供であるカイルを抱かせてもらっていた。
「あ、リュカから聞いたわよ。」
「何を?」
「あなた、ヘンリー殿下に惚れられたらしいじゃない?」
それを聞いた瞬間、カリンはカイルを抱いたまま硬直した。額には大粒の汗が浮かぶ。
「で、あなたはどうなのよ、あなたは?」
「う、ウチですか?」
「そうよ。修道院でヘンリー殿下がボロ出した時は保留にしたんでしょう。あれから気持ちは変わった?」
「…………やっぱり分かりませんわ。」
「ほんとに貴女って意外と鈍いわよね。他人の気持ちにはすぐに気付くくせに、自分のことになるとからっきしなんだから。」
「ここに来るまではまでは何だかんだ忙しくて考える余裕が無かったですからね。忙しさにかまけて考えることから逃げてた側面も有りますけど。でもこうやっていざ時間ができて自分に向き合ってみると、自分でもよくわからんモヤモヤってした気持ちに戸惑ってるんですよね。」
「で、この1ヶ月強の間ヘンリー殿下を見てきて、どう思ったの?」
「うーん、やっぱりウチを1番に思ってくれてるのは伝わってきましたね。ニセ太后とやり合う時もさり気なく守ってくれてたし、ふとした時にもそれは感じてたし。ほんで、普段はおちゃらけてるんですけど、ふと見てみたら意外と男らしかったりするんですよね。」
すると、扉が開いてリュカが中に入ってきた。
「それにね、カリン実は無意識にヘンリーのことむちゃくちゃ意識してるよ。ヘンリーの進退について真っ先にやり玉に挙げたのはカリンだし、僕と話す時とは違ってヘンリーと話す時は顔が明るくなってる。」
「え、そうなん?」
「そうだよ。僕と話す時はどっちかって言うとリラックスした表情なんだけどね。」
「貴女、それって立派にヘンリーさんに惚れてるわよ。」
「そ、そうなんかなあ。でも確かに言われてみればヘンリーと喋ってたらちょっとドキドキするわ。」
「てか何でリュカ入ってきたん?」
「そんなのカリンがいつまでも煮え切らないことばっかり言ってるからだよ。」
「でも、ほんまにウチなんかでええんかな?」
「やっぱりね。」
「やっぱり?何が?」
「まだマルティンさんのこと引きずってるでしょ。」
「そらそう「カリン、悲しみも後悔も消えることはないよ。そんなの当たり前。だけど乗り越えることはできるはずだよ。僕はカリンとヘンリーには幸せになってもらいたいからさ、過去に囚われてヘンリーを蔑ろにするのは良くないよ。奴隷生活で学んだんだけど、人間っていうのはもっと今を大切に生きなきゃいけないんじゃないかな?」
「………リュカに説教垂れられる日が来るとはな。」
カリンはずっと抱いていたカイルをルカに返し、決然と宣言する。
「2人の話聞いてて、やっと自分の気持ちに気づけた。ウチ、ヘンリーのこと好きやわ。じゃ、ウチは他の人たちのとこにも挨拶してくる。ほんまにありがとうな。」
カリンは家を出て行った。リュカが口を開く。
「うん。あとはヘンリー次第だね。あいつ意外と優柔不断だから。」
「これはどんな告白をするのかなかなか見ものね。」
2人は顔を見合わせて笑い合った。
ついに決心を固めてサンタローズへやってきたヘンリー。ついに自分の気持ちの整理をつけたカリン。その2人が再会する。果たして、どちらがどんな告白をするのか?
長かった第2章、ついに完結!
次回 10月27日金曜日午後9時3分投稿 第38話「想いよ、届け」
賢者の歴史が、また1ページ。