DQ5 天空の花嫁と浪速の賢者   作:かいちゃんvb

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どうも、かいちゃんです!
昨日の野球アジアチャンピオンズカップの韓国戦、見てて面白かったですね。なかなか息詰まる攻防で最後の劇的な逆転劇に至っては夜遅くにも関わらず叫んでしまいました笑。
では、本編スタートです!


第41話 とある魔物の回顧録

長い10年間だった。

毛皮商人と思しき集団に連れ去られ、鍵のかかった檻に入れられて海を越えた。すぐに皮を剥がされてポイされるのかと思ったが、話を聞く限りでは皮を剥ぐにもそれ専門の職人がいるらしく、彼らはその職人の元まで新鮮な状態のまま運ぶ必要があるようだった。3週間ほど船に揺られて港に着いた。その間、十分とは言わないまでも食事は与えられたため、飢えることはなかった。

 

そして、港のある街の外れの一角にある小屋に連れていかれた。どうやらここが毛皮を剥ぐ職人の小屋らしい。もちろん檻に入れたままでは皮を剥げないので、檻から約1ヶ月ぶりに出された。あのゲマとかいう魔物がつけた身体中の傷も自然に回復しており、船に揺られている時には彼らが寝ている時にトレーニングを怠らなかった。遂に一瞬の間隙を突いて逃げ出すことに成功した。

 

 

そこからが真の地獄だった。

街に留まっていてはまた商人達に捕まるかもしれない。とにかく街を出た。しかし、行く当ては何処にもない。どうやら大陸自体が違うようで、サンタローズに戻るのは絶望的だった。小動物を食べながら飢えを凌ぎ、街周辺を徘徊して情報を集めた。どうやらここから西のところに大きな街が、南に行けば小さな村があるようだった。人の多いところで待っていれば美咲やリュカと会えるかもしれない。

だが、人が多いということは追っ手に見つかる危険も多いことを意味する。しばらく迷った末、南に向かうことに決めた。農村なら、溶け込めれば食うには困らないはずだから。パパスが遺した剣を離さぬようにしっかりと咥え、意気揚々と南進を開始した。

 

しかしそこに至るまでが苦難の連続であった。サンタローズやラインハット周辺ではそんなことは無かったのだが、ここの魔物は同じ魔物であっても容赦無く襲いかかってきた。正に弱肉強食。自分以外にも多くの魔物の子供などが襲われていた。さらに、南へ行くと言っても村の正確な場所がわかる訳ではない。偶に通りかかる馬車を目印にしながらゆっくりと進む。

そこで食糧難という大きな問題がのしかかってきた。季節もちょうど夏。容赦無く照りつける陽射しが着実に体力を奪う。体力のない中、たまたま通りかかってきた小動物や昆虫を食すだけだった。昼夜もなく歩き、魔物が襲って来れば撃退し、正に極限状況の中僅かな希望を信じて南へ進み続けた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

何日が経ったであろうか。

あまりにもの過酷さで最早希望などという言葉など頭から消え去り、殆ど無意識的に南へ進んでいた時のことであった。昼間に紫色のフクロウのような姿をした魔物に襲われて右前脚に怪我を負っていた。出血が酷く、貧血で意識が飛びそうになる。それでも咥え続けているパパスの剣だけは護り抜かなければならないという使命感が、意識を辛うじて繋ぎ止めていた。

 

ふと周りから殺気を感じた。

気付けば完全に夜になっており、空には満点の星空が輝きを放っていた。辺りを見回してみる。どうやら知らぬ間に目的としていた村に紛れ込んでいたようだ。彼方此方に民家が見え、それ以外は畑が広がっていた。そして、自分の周りを村人達が槍や鎌や鍬を持って取り囲んでいた。本来なら警戒して戦闘態勢を取るべきであろうが、それをできる体力はどこにも残されていなかった。それどころか目標としていた村に辿り着けたという安心感で今まで張り詰めていた緊張の糸が途切れて気を失ったようで、そこからしばらくのことは何も覚えていない。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

眼を覚ますと、何処かの小屋の中だった。窓から差し込んでくる光が既に昼であることを告げる。怪我をしていた右前脚には包帯が巻かれていた。

 

「お、気がついたべか?」

 

まだ20代と思われる若い男が声をかけてきた。

 

「ちょっと待ってくれよ。すぐに食いもん取ってきてやるけんの。」

 

そう言って男は消えていった。壁際にはパパスの剣もちゃんとあった。まだ動かしいにくい右前脚に配慮しながら室内を歩き回る。

 

「こら!動いちゃいかん!まだ治っとらんのに。とにかくこれを食って栄養をつけるのが一番やけの。しっかり食うてくれ。」

 

男は皿に盛った野菜を差し出す。空腹だったことを思い出し、貪るようにかぶりついた。

 

「お、思ったより元気そうじゃ。よかったよかった。」

 

そう言って男は頭を撫でてくれる。美咲には及ばないまでも、確かな温もりを感じた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

1週間もすれば傷もふさったので、村を自由に歩き回る。あちこちから情報を集めた。どうやらここの村はカボチという名前であるようだ。見渡す限り畑が広がるのどかな農村である。どうやら介抱してくれた男の名前はペッカといい、少し間の抜けたところがあるようだ。村人達は最初は警戒心を持たれていたが、村を襲わず、ペッカに懐いている姿を見て安心したのか、次第に村に溶け込むことができた。

村に居ついて2ヶ月、完全に村の一員になることができ、名前もつけてもらった。別の名前にされると迷惑だったので、ピンク色のものや果物の桃に異常に執着するように見せかけた結果、狙い通り「モモ」と呼ばれるようになった。毎日トレーニングは欠かさず、身体を鈍らせないようにしながら穏やかな日々を過ごしていた。

 

そんなある日の夜、村が騒がしくなった。どうやら魔物がこの村を襲撃しようと近づいているらしい。村人たちはかつて私にそうしたように、鎌や鍬などを持って魔物の前に立ちはだかろうとする。相手の力量や癖を見抜くため、敢えて手出しせず距離をとって魔物を観察する。しかし村人たちより魔物が強すぎるため、瞬く間に負傷者が出た。居ても立っても居られなくなり、村人たちの前に立ちはだかる。

 

「モモ!いかん!下がってるんだ!」

 

ペッカが叫ぶが、逆に魔物を威嚇してやる。この前に襲われた時とは違う。今はコンディションもモチベーションもバッチリだ。相手は紫色のでかい顔面フクロウの怪人"モーザ"2体と二足歩行でサーベルを持つ狼"山賊ウルフ"が3体である。

 

山賊ウルフがサーベルを手に襲いかかってきた。それを素早く躱して後ろで油断している山賊ウルフに頭突きを食らわせる。そしてその山賊ウルフを壁にして方向を変え、先ほど襲いかかってきた山賊ウルフに飛びかかって顔面を引っ掻く。痛みでもがいている間に喉を食い破って仕留めた。今度はモーザ2体が竜巻を起こすバギマの呪文を唱えてきた。それを避けて今度は最大戦速で魔物たちの間を駆け回って惑わし、効果的な一撃を叩き込み続ける。そしてモーザ1体と山賊ウルフをもう一体倒すと、残りの2体は逃げ出した。

村人たちの大歓声が響いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

以来、魔物に襲われる度に戦い続けた。魔物たちも学習するのか、伏兵や時間差攻撃など色々な手を使って襲ってきたが、悉く見抜いて返り討ちにしてやった。そうこうしているうちに魔物たちも無駄だと悟ったのか、3年もすればほとんど魔物に襲われなくなった。村人たちは私に任せてばかりもいられないと思ったのか、いつの間にか研鑽を積んでいて、最後の方は村人たちだけで追い払うことも多くなり、私は最終兵器のようなポジションになっていた。

 

それからさらに7年の時が流れた。体は15回りくらい大きくなった。昔はリュカに両手で抱きかかえてもらえるくらいの大きさだったが、今では軽く体長3メートルを超えている。大人のライオンくらいのデカさだ。本当にいつの間にかでっかくなってた。村の人たちには私の食べる量が多くなり、負担をかけてしまってはいるが、そんなものはどこ吹く風といった感じで、変わらず暖かく接してくれていた。私もそれに報いようと重いものを運んだり、村人のタクシーがわりになったりして、それはそれは長閑な日々を過ごしていた。だからと言って美咲やリュカと会えない悲しみが薄れるわけでもない。最近ラインハットで革命があってビスタの港の封鎖が解かれ、船が行き来するようになったと村人の話で聞いた。そろそろ動こうかとも思っていた。

 

もうすぐ夏が来る。村も秋に収穫する作物の世話で大忙しだ。ペッカは収穫を終えたトマトなどの野菜を私が10年前に降り立ったポートセルミの街へ運びに行った。そろそろ帰って来る頃だろう。次にポートセルミに行く機会があったら無理にでも行こうと思っている。今回はポートセルミの人に迷惑をかけるだろうから付いていかなかったのだ。

ペッカの匂いが仄かにしてきた。遠くを見ると作物を積んで行った馬車が見えてきた。しかし様子が変だ。馬車が二台に増えている。今までそんなことはなかったのに。馭者台には緑色の髪の青年が乗っていた。どこかで見覚えがある。誰だっただろうかと思案しているうちに、馬車は村に入ってきた。緑色の髪の青年の馬車の荷台から人が降りて来る。それを見て、自分の目を疑った。

 

 

紅茶色の髪、紫の瞳、整った顔立ちの長身の女性。まさか、と思った。

女性もこちらを見ると、驚愕の表情を浮かべた。

 

「モモ!!」

 

女性が駆け寄ってきた。

ついに、その時が訪れた。




<次回予告>ついに再会を果たすカリンとモモ。感動的な再会の後には、別れが待ち望む。カボチ村の暖かさが、一行の旅の疲れを癒しながら、のどかに時を運んだ。
次回 11月26日金曜日午後9時3分投稿 第42話「再会、そして……」
賢者の歴史が、また1ページ。
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