DQ5 天空の花嫁と浪速の賢者   作:かいちゃんvb

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どうも、かいちゃんです。
まあ、ここで散々愚痴ってるように今年受験なのですが、受験勉強ってやっぱ禁欲生活じゃないですか。そのくせ今年の冬は見たい映画が多い!「鋼の錬金術師」「スターウォーズ8」題名忘れたけど土屋太鳳と佐藤健出てるやつ、「ゴジラ 怪獣惑星」……….
では、本編スタートです!


第44話 ポートセルミでの一夜

その後も様々な魔物を蹴散らしながら奥へ奥へと進むと、遂に大きな扉を見つけた。強力な魔法で編まれた強靭な結界に包まれ、スラリン、ドラッチ、ブラウン、ピエールは扉から半径5メートル以内に近づけそうもなかった。魔物では唯一モモだけは何の抵抗もなく入ることが出来た。魔物たちを外に待たせておいて3人と1匹は扉の中へ入る。中には乾パンや干物、乾物などの非常食や大量の飲料水、ここへ立てこもった際に使える武器が整理されて置かれていた。ちなみに魔除けは今から数百年前にカボチ村ができ、ここを食料庫として使用することを決めた際に高名な僧侶に張ってもらったのだという。

一行はその中でも奥の方に進んで行き、リュカは遂に綺麗に布に包まれたパパスの剣を手にした。

 

「これが父さんが使ってた剣か………。」

 

リュカは剣を包んでいた布を取り払って掴み、未だに輝きを保っているその刀身を見つめて呟いた。その姿は、パパスを彷彿とさせるものがあった。

 

「なかなか似合ってるじゃん。」

 

「取り敢えず鞘作らんとな。それにちょっと研いどこ。」

 

「え?これ使うの?」

 

「多分鋼の剣より普通に強いで、それ。使わんなんて勿体無いこと出来るか。しかもあんたが今持ってる鋼の剣売るだけで楽に1000G入ってくんのに。」

 

「そうだぞ、リュカ。それにパパスさんもその剣を使ってくれたら喜ぶと思うぜ。とにかく、馬車の中に鞣し革と砥石があるから、さっさと作業してしまおうぜ。」

 

ヘンリーが宣言すると早速連れて来た馬車から鞣し革と砥石を取り出す。鏃の手入れのためにかなり研ぎ師としての技能を身につけたカリンが研ぎを担当し、リュカとヘンリーが鞣し革を剣に合うようにカットする。それをカリンが編んで筒状にし、補強のために細い紐を先、真ん中、柄の近くに巻く。こうして、パパスの剣は10年ぶりにその所有者を得た。試しに鞣し革を切ってみる。細いながらも重みを感じる刀身から放たれる斬撃の切れ味は鋭く、研いだカリンも驚くほどだった。

 

「うん、スゴく使いやすい。」

 

リュカもご満悦のようで早速腰に挿した。用事を終えた一行は洞窟を出る頃には、日はすっかりと落ちていた。洞窟に入る前に一泊した場所にテントを張り直し、野営の準備をする。パーティーの料理番の役割がすっかり定着したカリンの食材を切る音が、夜の帳に木霊した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

7月5日に洞窟を発ったリュカ一行は元来た道を逆戻りし、7月8日にカボチ村に到着、一泊した後に北進し、7月16日に西の大陸の玄関口たるポートセルミに戻って来た。

次の目的地を西のルラフェンに定めたリュカ一行はモモの武器防具を買い与え、一泊した後にルラフェンの情報の収集に当たった。

 

<あそこには幻の地酒があるらしいぜ。>

 

<今は何も無くなっちまってるが、この大陸の中央に昔城があってな。あそこは最初は敵軍の進行を阻止するための砦として出来てな、そこから一気に要塞都市に発展したんだが王国の方が滅んじまって、結局敵を殲滅するための無駄に入り組んだ構造の街だけが残ってるんだそうだ。>

 

<何か偏屈な変わり者の爺さんがいるらしいわよ。>

 

<何か古代魔法の研究をする人間がいるらしいって聞いたことがあるぞ。>

 

「集めた情報を要約すればざっとこんな感じだな。ん、もう一枚くれ。」

 

夕方、宿屋で3人と一匹がトランプで遊びながら今後の打ち合わせをしている。さらに、ヘンリーの手元にはブランデー、カリンの手元にはカクテル、リュカとモモの元には水が置かれていた。トランプは別にユリーナ(カリン母)やカリンが持ち込んだわけでは無く、カジノにポーカーがあるというように普通にこの世界に既に存在している。さて、リュカとカリンとヘンリーと、体がキラーパンサーであるとは想像できないほど指の間にカードを挟んで器用にカードを操ることのできるモモの3人と一匹が興じているのは、カリンが現代日本から持ち込んだおいちょかぶである。

 

知らない人のためにルールを説明すると、親1人と子に分かれる。使用するのは株札か1〜10のトランプだ。勝敗は全ての札の和の1の位が高ければ勝ち、低ければ負けである。どのように勝負するかというと、まず親は表向きの場札を4枚並べる。子は好きな札に賭ける。別に2点に賭けても一枚につき倍額賭けても構わない。そして端から順番に親は子に新たな札を見せ、それを子が確認すれば該当する場札の上に伏せる。もし和の1の位が0とか2とか小さい数字だと子はもう一枚だけ札を請求でき、これは表を向けて全員に開示される。ちなみに誰も賭けていない場札も札は全て開示されるが一応手順を踏む。そして予め親も二枚の札を伏せておき、それを見て勝負するか、もう一枚請求して勝負するか、現時点で勝てそうな場札のみ勝負してもう一枚請求して残りと勝負するかを選択し、勝負を行う。

さらに特別な役が3つ存在し、子は1と4もしくは4と1の2枚の組み合わせでは「シッピン」という役が成立し、これは親の和の1の位が9であっても勝利できる。親も1と9もしくは9と1の2枚の組み合わせでは「クッピン」という役が成立し、これはシッピンにも勝る。さらに親も子も同じ数字が3枚連続して出れば「アラシ」となり、これは無条件で勝利できるだけでなく賭け金の倍をせしめることができる。よって、場札に同じ数字が3枚出ている場合、アラシが出ないので場をもう一度整え直す必要がある。

 

現在親を務めているカリンがヘンリーに要求通り一枚カードを渡しながら意見を述べる。

 

「まずはルラフェンに向かわな話にならへんやろうな。」

 

「それにしても15日かかるって、なかなか遠いなあ。ラインハット国内だったら隣町まで遠くても3日くらいで着いたのにね。あ、僕はそのままでいいよ。」

 

"迷路みたいなとこか。方向音痴の私が10年前に行ってたら間違いなくのたれ死んでたな。あ、もう一枚で。"

 

モモは手招きをするように手を動かす。モモの賭けたカードに表を向けて三枚目が置かれた。

 

「しゃーないわ。この大陸やたらめっかし広い割に統一国家があらへんから、今更新しい都市なんて作ろうともせーへんやろうしな。」

 

「ここは魔物も強いからなあ。」

 

「おかげで隊商の護衛をする傭兵はなかなかにウハウハらいよ。明日ルラフェンに向けて出発するらしいけど、引き受けちゃう?」

 

「嫌。ペース乱されるしモモたちの説明がめんどくさい。それにそこまで金に困ってるわけでもないし。はい、ウチ8でおいちょな。」

 

和の一の位の値に応じて呼び方があり、0=ブタ、1=ピン(インケツとも)、2=ニゾウ(ニタコとも)、3=サンタ、4=ヨツヤ(シスとも)、5=ゴケ、6=ロッポウ、7=ナキ、8=オイチョ、9=カブという。

 

「ちぇっ、ロッポウで負けだぜ。それにしてもカリンが金に釣られないなんて珍しいな。」

 

"うん、ヘンリーの言う通り。私はオイチョでイイブン。"

 

「はい、僕カブね。ま、カリンもヘンリーもいちゃいちゃしたいだろうしね。」

 

それを聞いてカリンとヘンリーの顔に朱が上る。

 

「違うの?」

 

カリンは顔は赤いままだがやや冷静さを取り戻して切り返す。

 

「違う、て言い切れへんところが何とも癪やな。」

 

「素直に言えばいいのに。」

 

リュカは口調とは裏腹にニヤニヤしていた。モモも同様である。そこでカリンがふと思い出したように口を開いた。

 

「そう言えば、ビアンカどうしてるかなあ?」

 

「そう言えば西の大陸にいるんだっけ?」

 

「一応アルカパを出るときはそう言っとった。」

 

「元気にしてるんじゃない?」

 

「そうやとは思うけどさ、何かこう、この大陸のどっかにおるっていうのがわかってるだけにだんだん不安になってくるっていうか………。」

 

「うん、わかるよ。そう言えばサンチョもどこにいるんだろうね?」

 

「グランバニアちゃう?サンチョさんとパパスさん2人でグランバニアの地酒飲んどったし、多分あそこの生まれなんやろ。もっとも、ウチはグランバニアについて全然知らんねんけどな。」

 

「グランバニアなんて聞いたことないなあ。ヘンリーは知ってる?」

 

「ああ、ちょっとだけな。東の大陸にある王国で名君か治めているらしい。何でもウチの親父はそこの国王とは親友だったんだとよ。国務でお互いの国を行き来してる内に仲良くなったらしい。お前もああいう立派な王様になれよってよく言われたっけ。………そういやちょっと夜更かしし過ぎたんじゃねーか?」

 

壁掛け時計は12時過ぎを指していた。

 

「せやな。これ以上考えても詮無いことやし、今日はさっさと寝よか。」

 

「賛成。僕も眠たくなってきたよ。」

 

「ふにゃあ」(賛成。)

 

明けて7月18日午前10時、リュカ一行は一路ルラフェンに向けてポートセルミに別れを告げた。




<次回予告>ルラフェンに到着したリュカ一行は、古代魔法の研究を行なっているとして有名なベネット老人と面会する。そこで一行は、その古代魔法の復活のために手を貸すこととなった。
次回 12月15日金曜日午後9時3分投稿 第45話「失われた古代魔法」
賢者の歴史が、また1ページ。

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