これで今年最後の投稿ですね。来年受験の僕にとって、今年ほど「良いお年を」を切実に感じたことがありません。
では、本編スタートです!
良いお年を!
8月27日、ルラムーン草を採取したカリンとヘンリーがルラフェンに帰って来た。カリンは町に入るや否や一直線にベネット宅にルラムーン草を持って押しかけた。
「おい爺さん!約束通りルラムーン草持って来たで!」
「おお!良くやってくれた!これぞまさしくルラムーン草じゃ!さて、既に準備は整っておる。あとは紫の帰りを待つだけじゃな。」
「あ、そういえばいませんね。どこ行ったんですか?」
「唯の買い物じゃよ。それよりあの紫に面白いことがあったんじゃ。」
「おもろいこと?」
「3日ほど前に教会の隣の酒場に酒を買いに出かけたんじゃ。酒場の主人と顔馴染みのワシだけで良かったのじゃがどうせならと言ってついて来てのう。」
「ふむふむ、それで?」
「偶々おった派手で性格はキツそうじゃが別嬪な娘がおってのう、ワシも鼻の下を伸ばしておったがあの紫はなんと、顔を真っ赤にしておったぞ。まあ、その後直ぐに正気に戻って首を振っておったがのう。」
「「ええ〜〜!?」」
ヘンリーもカリンも大声で叫ぶ。
「あのリュカが一目惚れだと!?」
「うわぁ〜〜、なんか、あの純真やったリュカが〜〜。」
ヘンリーは驚愕で目を丸くし、カリンは頭を抱えて蹲っている。
すると、件のリュカが帰って来た。
「あ、カリンもヘンリーも戻ったんだね!お帰り!」
「「…………。」」
「あれ?2人ともどうしたの?何かあったの?」
「………爺さん、始めてまお。」
「………頼む。」
「うむ、では始めるとするかのう。」
「えっ、ちょっと、何があったの!?」
ベネット3人を地下室に案内する。倉庫のようになっており、中央には巨大な囲炉裏のようなものがあり、その上には鉄の骨組みで支えられた直径3メートル、高さ2.5メートルほどのどデカイツボが置いてあった。そこは保管庫も兼ねているようで、壁に並べられた陳列棚には見たことのない植物や粉などが所狭しと並べられていた。そしてまだ得心のいっていないという表情をしたリュカがそのツボに梯子をかける。
そしてベネットはそのツボの中に色々な粉や液体を注いでいった。ベネットに頼まれたカリンが薪にメラで火をつけてツボの下に入れる。そのまま火の面倒を見るように頼まれたカリンが薪の追加や配置の変更などを適宜行いながらツボを加熱すると、中のものがグツグツと煮立ってきて、臭くはないがいい匂いでもない、なんとも言えない匂いが漂ってきた。
「さて、後はこのルラムーン草を入れれば完成、という訳じゃな。20年にも及ぶ研究が終わるとなると、何か感慨深いものがあるのう。」
そして、ベネットはグツグツ煮立っているツボの中にルラムーン草を投げ入れた。すると急に沸騰が激しくなり、今度は紫色の煙がモクモクと出始めた。そして、しばらくするとツボの中から眩い光が漏れ始める。
「おお、遂に完成じゃ!」
次の瞬間、腹の底に響くような轟音と共にツボの中で爆発が起き、勢いよくツボから飛び出した閃光と紫色の煙が部屋中に満たされる。その瞬間、カリンとリュカだけが身体が異常に熱くなり、意識を失った。
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煙が晴れたのは2分後のことであった。ヘンリーは閃光から目を守るために顔の前にかざしていた両腕をどけると、周囲を見渡して状況を確認する。ツボの中からはまだ紫色の煙が僅かながら出ているが、反応自体はもう収まっているようで、無事だったベネットがツボを熱していた火を消している。ヘンリーは余りにもの轟音で情けない悲鳴を上げている鼓膜が収まるのをやや待ってから、一緒に居たはずのリュカとカリンを探して視線を動かす。果たして、2人は気を失って倒れていた。
「おい、カリン、リュカ!しっかりしろ!」
先に目を覚ましたのはリュカであった。
「ん、んん………頭痛い〜〜。」
とりあえずこっちは大丈夫そうだ。
「ん、んん〜〜」
カリンもどうやら気がついたようだ。
「おい爺さん、こりゃ一体?」
「うむ、恐らくルーラを習得したのじゃろう。適正のない魔力を無理矢理体の中に定着させたのじゃ。それに身体が一時的に拒絶反応を示したのじゃろう。」
「らしいが2人とも大丈夫か?」
「僕はもう平気だよ。」
「お前化けもんか?ウチはまだちょっと無理。それにしてもこれ魔力量デカすぎてウチ多分2、3発しか打たれへんわ。」
「僕は10回くらい行けそうかな?」
「いや、魔力量というより適正の問題じゃろうな。ではリュカよ、早速試し打ちしてはくれんか?移動させたい人間と、移動する場所を頭に思い浮かべて唱えるのじゃ。」
「はい。………ルーラ!」
4人の視界は光で包まれた。
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数瞬置いて一行が目を開けると、目の前には活気溢れるラインハット城下町があった。
「ま、マジかよ。」
「うわ、ほんまにワープしとる。」
「うむ、成功じゃ。」
「本当に出来ちゃったよ。」
こうして、ついにベネットが20年かけて研究し続けた失われしルーラの呪文が復活したのである。
「おい紫。」
「何ですか、ベネットさん。」
「ワシをルラフェンに送り返してくれんかな?ついでに馬車を連れてくるとよかろう。」
「はい。ルーラ!」
リュカとベネットだけが光に包まれてその場から消えた。
「しっかし、凄ぇ魔法だな。」
「ほんまやな。ところで、なんかえらい祝福ムードやな。なんかあんの?」
「いや、分からん。建国記念日は1月だし、デールの誕生日も7月だからもう過ぎてるし、俺の誕生日はまだ先の11月だし………。」
「まあええやろ。とりあえずリュカが戻ってきたらデールに自慢したおしたったらええか。」
少し木陰に隠れて立ち話をしていると、5分ほどでリュカは馬車を連れて戻ってきた。
「お待たせ、じゃあ行こうか。」
魔物たちを引き連れてラインハット城下町のメインストリートを堂々と凱旋する。革命の英雄を知らない訳がないラインハットの住民たちは狂喜乱舞した。
「革命の英雄達が帰ってきたぞ!」
「めでたいこと尽くした!」
「いや、きっと
「何がともあれ万歳!」
町中からの大喝采を浴びて、ついに一行はラインハットに入城した。
城に入ってみると、どこもかしこも忙しそうだった。全員が右へ左へ駆け回っており、誰も革命の英雄達に気付く素振りは見せない。すると、1人カリンのみがこの状況を見てこの城になにが起こっているかを察した。
「なるほど、そういうことか。」
「何かわかったのか?」
「いや、それはお楽しみで。………さて、どっちがより驚くかな?」
「「??」」
「さ、さっさと済ませてまおうぜ。」
一行は玉座の間へ向かう。そして、玉座の間の真下のフロアには、色々な資料を比較検討しているイワンの姿があった。
「イワンさん!」
カリンが呼びかけ、イワンがこちらを向き、イワンは驚きの表情を作った。
「カリン殿であったか!これは失礼した。しかしどのようなご用事で?まだ招待状は出していないはずだが………」
「いや、ちょっと立ち寄ってみただけやねんけど、なかなかグッドタイミングやったみたいやな。」
「そうですな、こちらも手間が省ける。では陛下にお会いになるか?」
「うん。積もる話もあるからイワンさんも一緒に来てくれるとありがたいねんけど。」
「承知した。」
未だに疑問を解消出来ていないリュカとヘンリーとともに、玉座の間に入った。デールも難しい顔をして何やら資料を眺めていた。
「陛下、お客様がお見えです。」
余程大事な資料なのか、紙から視線を動かさずに答える。
「今忙しいが、イワン殿が連れてくるのであれば重要な客人なのだろう。誰だ?」
「ご自分の目でお確かめ頂きたく存じます。」
「?」
デールは疑問に思いながら視線を動かす。そこには、懐かしい姿があった。
「兄さん!」
「おう、デール。元気そうだな。」
「しかし兄さん、まだ招待状は出していないはずですが。」
「何のことかは知らんが、とにかく西の大陸で旅をしてる最中に失われた古代呪文を復活させたんだ。」
「………ルーラですか?」
「よく知ってるな。だからちょっと揶揄ってやりたくてな。ルラフェンってとこからひとっ飛びして来たんだ。」
「そうですか。それは驚きました。これで旅も便利になりますね!」
「ところでデール、これは何の騒ぎなんだ?何か祭りか何かのようだが………。」
デールが口を開くより早く、一歩進み出たカリンが膝を折って臣下の礼を取った。
「陛下、この度はご結婚されるとの由、誠に御目出度う御座います。」
「あ、ありがとうございます。な、なんか照れるな〜〜」
そのやり取りの意味を理解したリュカとヘンリーは驚愕の表情を作った。
「「えーーーっ!!!!」」
玉座の間に、2人の男の声が木霊した。
<次回予告>国王デールとマリアの結婚式というラインハットの国を挙げての大イベントの準備が着々と進む中、国王デールから驚きの提案が持ち上がる。その提案は、ラインハット全国に波及して大きな騒動を巻き起こすこととなる。
次回 2018年1月5日金曜日午後9時3分投稿 第48話「儀式を前にして」
賢者の歴史が、また1ページ。