私学に合格したため、浪人の可能性が消滅致しました!あとは国公立を目指すだけです!
では、本編スタートです!
ラインハット史上最大の儀式と称される事となる二組合同の結婚式から一夜明け、サンタローズの関係者が宿泊している宿屋の食堂に人が集まり始めたのは7時を過ぎた頃である。階下のそのざわめきが聞こえ、カリンが目を覚ました。横ではヘンリーが裸のままスヤスヤと寝息を立てている。カリンは大きな欠伸を1つすると、幸せそうな笑みを浮かべて、特に理由もなくヘンリーのほっぺたをフニフニとつついた。
「ん、んん〜〜〜〜!」
どうやらその感触でヘンリーも目を覚ましたようだ。
「ん、起こしてもうた?」
「いや、大丈夫…ん?………わっ!」
バッとヘンリーが自分にかかっている布団を引き剥がす。どうやら自分とカリンが生まれたままの姿であることに驚いたようだ。
「何ビビってんねん。おはよ、ヘンリー。」
「お、おはよう。お、俺たちも夫婦になったんだな。」
「せやな。呼び方はヘンリーのままでええか?」
「そうだな。他の呼び方されても多分咄嗟に反応できねえ気がする。」
「さて、皆んなも起きだしてるみたいやし、ウチらも下降りよか。」
2人は服を着て皆が待つ食堂に降りた。わざわざ一緒に連れて来たカイルを抱いたルカがニヤニヤしながら、新婚夫婦への一種のテンプレートとも言える質問を投げかけた。
「昨晩はどうだった?」
2人の顔に一瞬にして朱が上る。その様子を見るだけで他の人々は既に噴き出しそうになっていた。その様子を見てムッとした新郎新婦は同時に口を開いた。
「「そ、それなりにな!!」」
あまりにもシンクロした2人の台詞に、食堂は大爆笑の渦に包まれた。
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昼過ぎ、ラインハット城門前では、これから旅を再開するリュカ、カリン、ヘンリー、ヨシュア、モモ、スラリン、ドラッチ、ブラウン、ピエールの4人と5匹と、結婚式に招待され、リュカのルーラでそれぞれの住む街へ送って行くことが決まっているカボチ村のペッカとルラフェンのベネット爺、そして結婚式の準備に携わり、式にも出席した海辺の修道院の人々とサンタローズの人々を見送るべく、国王デール、皇后マリアを始めとしたラインハットの人々が集結していた。まずはイワンが一歩前へ進み出る。
「カリン殿、ヘンリー殿下、そして仲間の皆様方、どうかご無事で。」
「イワンさんも体にだけは気いつけや。もう若くないねんから。まだ後進の人材も育ってへんし。」
続いては皇后となったマリアである。
「どうか兄上のことをよろしくお願いしますね。どうせいじり倒して遊ぶのでしょうけど。そして、修道院の皆様には大変お世話になりました。心からお礼を申し上げます。最後に、皆様のこれからの人生に神のご加護があらん事を。」
次に答えたのはヘンリーである。
「おう、ヨシュアさんは俺たちがいじり倒しておくから任せとけ。それと、デールをよろしくな。」
「はい!」
「ちょっと待て!私の扱いが些か酷くないか!?」
そのヨシュアの悲鳴をスルーして最後に国王デールが声をかける。
「カリンさん、兄の事をよろしくお願いします。もし兄と喧嘩でもしたらここに来ていただければこの僕が全力を以てカリンさんの味方をしますから。」
「おいおい弟よ、そいつはちょっと薄情過ぎねえか?多分喧嘩したらカリンの方が強いぞ。」
「はははは、弱気になる兄上というのもなかなか面白いですね。」
「こいつ〜〜!もしマリアさんと喧嘩して泣きついて来ても俺は知らねえからな。」
「はい!誠心誠意マリアを怒らせないように努めます!」
デールの混ぜっかえしが完全にヘンリーは反論を封殺されて言葉に詰まった。その様子を見てカリンが腹を抱えてゲラゲラ笑う。
「あははは、傑作やないか!デールに完全に一本取られとる!あはははははは!」
(そうやって俺を馬鹿にして笑い転げてるカリンも可愛いとか思っちゃうんだよな〜〜。)
そんな惚気を頭の中で再生しつつ一つ息を吐いたヘンリーはデールに向かって右手を差し出す。2人の間でいつの間にか完成していた別れの合図だった。デールもにこやかに笑ってその手を握り返した。
「じゃあな、デール。ラインハットを頼む。」
「兄上こそ、どうかご無事で。」
固く握られた両者の手が離れ、リュカたちはラインハット市街からやや離れた場所へ移動する。旅の第一歩は、結婚式の列席者をルーラで送り返すことから始まった。ルーラにより適正のあるリュカが海辺の修道院、カボチ、ルラフェンなどの遠隔地に飛び、カリンは複数回に分けてサンタローズの村人を送り届けた。再集合先はサンタローズである。時間的にはデールと別れてから僅か1時間である。
「あ〜〜しんど!!」
カリンが最後の移動を終え、ヘンリーと互いの想いをぶちまけた丘で腰を下ろした。魔力量は十分だが適正が低いカリンの場合、一度のルーラでリュカとは比べものにならない魔力を消費する。近場の方が魔力の消費は少ないためサンタローズへの送迎を担当したが、既にカリンの魔力はスッカラカンであり、その影響が身体にも出て、現在のカリンは凄まじい疲労感に襲われると同時に目の下に大きなクマを作っていた。
"ここにおったんや。"
一息ついていたカリンに近寄って来たのは意外にもモモであった。
「ヘンリーは?」
"リュカと飲んでた。"
「わかった。」
"…………幸せ?"
コクンとカリンは頷いた。
"それは何より。"
「こうやって2人かりで喋んのめっちゃ久し振りやな。」
"そうやな。"
2人は日が沈むまで語り合った。それは、非常に穏やかな時間だった。
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一方、ヘンリーもリュカと久し振りに2人で盃を交わしていた。
「お前、カリンのこと好きだっただろ。」
唐突にヘンリーはそう言った。
「そうだよ。」
リュカも何事もなさそうに返す。
「…………俺、悪いことしたか?」
「そんな事ないよ。」
「本当にか?」
「うん。もう吹っ切れた。」
ヘンリーはリュカの顔を見る。その表情は、少し切なげではあったが、曇りは感じられなかった。
「ならいい。」
「ヘンリーは幸せ?」
「………ああ。」
「ならいいや。」
2人は薄く笑い、控えめにグラスを掲げて酒を飲み干した。
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翌朝、旅装束を整えたリュカ一行は教会でルカに魔力を見てもらった。
「このシスターの服を着るのも結構久し振りね。カイル産んでから初めてか。さて………リュカは一瞬にして全ての傷口を塞ぐベホマを、ヘンリーは大爆発を起こすイオラと移動中に毒や暑さなどから身を守るシールドを張るトラマナを、カリンは呪文のダメージを軽減するマジックバリアとベホマを習得していますね。」
「毎度ありがとうな、ルカさん。」
「いえいえどういたしまして。それより、無事でね。」
「はい。カイルにもよろしく。」
一行はそのまま教会を出てすぐ裏の桜の木の根元を訪れた。そこには、カリンの母ユリーナと、スコットの父でカリンを守って死んだマルティン、そして遺体はないもののリュカの父パパスの墓が建っている。カリンは細長く加工した香木に火をつけて供えた。
「?それは?」
初めて見るヘンリーが問いただす。
「ん?ああ、ヘンリーは見るの初めてか。お線香って言うてな、まあこれで弔ってんねん。作んの邪魔くさいから盆と彼岸と正月ぐらいしか供えへんねんけどな。今回は秋の彼岸の時期やし、盆に参ってないしな。」
「彼岸って?」
「春と秋にこの世とあの世が近づく期間や。」
カリンは弓矢をヘンリーに預けて墓の前にしゃがみ込んで手を合わせた。それを見てリュカとヘンリーとヨシュアも死者を弔う礼を取る。
(母さんの言うた通り、なかなかリュカは壮絶な人生送っとんな。まあでも、なんだかんだ楽しくやってます。この度はヘンリーとも結婚したし、幸せやで。)
供養を終えたリュカ一行は遂に旅を再開するべく、サンタローズ村を出発する。門の前では、いつものようにスコットが見張りをしていた。
「村のことは任せろ。とにかく、元気でな。」
「頼りにしてるで、スコットさん。」
スコットはカリン、リュカ、ヨシュア、ヘンリーの順に握手を交わす。そして一行は村の外に停めてあった馬車を引いてサンタローズ村を発った。
「この辺でいいかな?」
村から少し離れたところでリュカは仲間たちを固めてから精神を統一し、ルーラを唱えた。ほんの一瞬でリュカたちの目の前の景色がサンタローズ周辺の平原から城塞都市のルラフェンに変わった。
「さあて、行きますか!」
「「「"おう!!"」」」
カリンの号令と皆の掛け声が上がる。そして、リュカ一行はサラボナのある南に進路を取った。
こうして9月12日午前9時、パパスの遺志を継ぎ、マーサと天空の勇者を探し出す旅は再開された。