では、本編スタートです!
目を開けてみる。
辺りは真っ暗だ。どうやら夜らしい。少し歩いてみる。最初は慣れない四足歩行に戸惑ったが、だんだん慣れて来た。あたりを見回してみる。どうやら森の中のようだ。上を見上げてみると、現代日本ではお目にかかれない満天の星空が広がっていた。とても美しい。それにしても日本では見たことないような生物がいっぱいいる。ドラキーとか、ろくろ首みたいな灰色のイタチとか………。でも、普通にネズミとかカエルとかもいてちょっと安心。
喉が渇いたので近くに池か川かがないか探す。すると、川が見つかった。いつの間にか人里に来ていたようで、中世ヨーロッパ風の家があちこちに建っている。どうやらこの川は用水路のようだ。そういえばまだ自分の姿を見ていないと思って、水面を覗き込んでみる。すると、そこには奇妙な生物が映っていた。
一見ヒョウの子供に見えたが、赤い鬣が頭頂から背中に懸けて生えており、顔が大きい。耳も縦に立つのではなく、若干横に垂れている。それに尻尾が異常に細く、尻尾の先にも真っ赤な毛が生えていた。でもどっかで見たことある気がするんだよな〜〜。
とにかく声を出してみる。
「ふにゃあ〜〜、ゴロゴロゴロゴロ」
うん、日本語は喋れない!
夜が明けた。
しばらく歩いていると、家から人が出て来た。どうやら8歳ぐらいの子供のようだ。
「ん、何だこの猫?」
「ふにゃあ〜〜。」
「こいつ、なかなか面白い鳴き声だぞ!あいつにも知らせてやろう!」
うわ〜〜、ヤバい予感がする〜〜。
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カリンの誕生会は恙無く終了し、夜が明けた。まだ完全には日は登り切っていなかったが、カリンも前日の激闘の果実である筋肉痛に悩まされながらも起きだす。すると、パパスが旅支度を整えていた。
「どこか行かれるんですか?」
「いや、ダイアナ殿とビアンカをアルカパまで送り届けるのだ。リュカも行きたいと言っているが、カリンはどうする?」
「すぐ支度します!」
「あまり急がなくても良いぞ。リュカに稽古をつけていただけだからな。出るのは2時間後くらいだ。」
「な、何や〜〜ビックリした〜〜。」
「それで相談なのだが、ダイアナ殿が向こうについたら2泊ほど泊まって行かないかと勧められているのだが……」
「そうですね。どっちでもいいですけど、まだビアンカに歌教えるって言っときながら教えてないんですよね。久々にアルカパに行けるんやし、ゆっくりして行きたいって思うんですけど、いいですか?」
「分かった。泊まっていくこととしよう。」
「ちょっと教会行って来ますね。シスタールカに魔力見てもらって来ます。」
「うむ。」
教会に着くと、シスタールカが出迎えてくれた。
「え〜〜、またパパスさんとリュカまた旅に出るの〜〜?」
「2泊3日で戻ってくるから大丈夫やって。」
「でも寂しいわね〜〜。」
「とにかく見てくれます?」
「ハイハイ。んー、ヒャドとキアリー覚えてるわね。もうちょい頑張ったらマヌーハとスクルト覚えるみたい。」
ヒャドは氷の結晶を作り、キアリーは毒消し、マヌーハは味方全員の幻惑状態の解除、スクルトは味方全員の守備力を上げる呪文である。
「ありがとう。んならまたね。」
「パパスさんによろしく言っといてよ〜!」
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その5時間後、昼下がりにはアルカパに到着した。まっすぐ宿屋へ直行し、ダンカンと再会する。ダイアナの案内でパパス達はダンカンが休むベッドにたどり着いた。
「あんた、まだ生きてるかい?」
「生きてるぞ〜〜。おかえり、2人とも。すまないな。わざわざ薬を取りに行かせたりして。」
「迷惑なのはお互い様だろ。それより、パパスさんとリュカとカリンが来てるよ!」
「おお〜、パパスさん!帰って来ていたのですか!いやー、驚きました。ユリーナさんの葬式の帰りにダイアナとビアンカを送って来てくれた時以来ですな。」
「そうですな。二泊三日でここに滞在する予定だから、ゆっくり話をしよう。」
「ビアンカ。リュカとカリンに町を案内して来なさい。大人の話は退屈だろうから。」
「はーい。」
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こいつら飽きねーなー。ずっと私を鳴かせようと躍起になって棒でつついたりとか蹴ったりとか色んなことしてくるけど、精神統一中の私には何も通じない。子供2人のマッサージ(?) を受けながら、閻魔とのやり取りを思い返してみる。
「本当に会えるんですか?」
「会えますよ。多少の不便を乗り越えてくれれば。」
「何ですか、その不便って?」
「まず、あなたは枠の都合上、人間に転生できません。他の生き物になります。機密事項だから詳しくは言えませんが。それと、湯川さんと多分直接会話はできません。だってあなた人間じゃなくなるんですから。それに、湯川さんも容姿が変わってますから、それを認識できたら大丈夫です。」
「それでもいいです!」
「あんまり関西の訛りきつくないんですね。湯川さんバリバリだったから。」
「これでも抜くのにはだいぶ苦労しましたよ。」
「ふーん。最後に、ドラクエってやったことある?」
「…………友達に勧められて10年以上前に一回だけ8だけやったことあります。」
「5は?」
「無いです。」
「じぁあひとつだけ。紫のターバンの男の子が主人公ですから、その子に懐いてる雰囲気出しといてください。あとは自由にやってくれたらいいです。では、良い人生を!」
「あ、下に引っ張られうわあああ〜〜!!!」
あー、いい加減うざいな〜〜。ちょっと抵抗しよかな〜。
ん?紫色のターバン発見!!あいつやな主人公。え、待って。その後ろにくっついてる茶髪の女の子………美咲だよね。髪と目の色変わったけど顔一緒やし。おい、美咲〜〜!!私だよ!!桃華だよ!!こっち向け〜〜!!
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「あそこで何かオモロイ事やってんで。」
カリンが用水路の近くで遊ぶ2人の子供を発見する。しかし、その言葉ほどカリンは面白そうでなく、逆にその目は怒りに満ちていた。
「あの悪ガキども!あいつらいっつもイタズラばっかりしてんのよ。本当に困っちゃうわ!」
「あれが普通の物やったらええんやけどなー」
「カリン!あれ生き物だよ!」
「ほほーう、動物虐待とはええ度胸しとるやんけ。残念ながらカリンちゃんは動物が大好きだから、遊び方を間違えてる奴を見ると殺したくなるんだよね〜〜」
「カリン!怖すぎ!ちょっとリュカ、カリンを抑えてなさい!あたしが話つけてくる。」
「待てビアンカ!あいつらいてこます!こっち連れてこい!」
<相変わらずやな〜美咲。動物好きやから動物虐待を許されへんねんな〜。変わってなくて安心やわ。それにしても、名前はカリンやねんな。これは覚えとこ。>
「ちょっとあんたたち!何やってんのよ!その子がかわいそうじゃないのよ!」
「おー宿屋のビアンカじゃねえーか。何だ?お前もこいつで遊びたいのか?こいつ、変な鳴き声なんだぜ。」
「違うわよ!離してあげなさいって言ってんの!そうじゃないと後ろの既に腕まくりしてるあのおっかない女の子にあんた達ぶちのめされるわよ!」
「ビアンカ〜、余計な事言わんでええねんで〜。」
カリンの腕は弓で鍛えているため、他の子供より一回りほど太い。その腕には既に血管が浮き出る程力がこもっており、それを見た男の子2人は折衷案を提示した。
「わ、わかったよ。こいつを解放してやろう。だが一つ条件がある。お前ら3人でレヌール城のお化けを退治してくるんだ!それができたらこいつを解放してやる。」
「何でお化け退治なんかせなあかんねん。こいつらどつき回したらええだけちゃうん?」
「カリン!ナチュラルに怖すぎるから!ね、僕も強くなりたいし、丁度いい力試しの機会なんじゃないかな?」
「えー、お前らがその間にこの子に手ェ出さへん保障はあんの〜?こいつらほんまに信用できる〜?」
「おう、もし約束を破ったらぶちのめすなり何なりするがいいさ!」
「そうだ!俺たちは約束を破るような卑怯者じゃないもん!」
「おっしゃ、もし破ったら市中引き回してから両手足縛り付けてそこの用水路に沈めたるからな。それでもええんやな?」
「も、もちろんだ!」
「分かった。受けたろ。」
<美咲えげつな〜〜。やっぱ怒らしたら手ェつけられへんのも変わらんな〜。>
「待っててな〜そこのヒョウ柄ちゃん!明後日の朝に迎えに行くから。」
こうして、リュカとカリンとビアンカの、初の街の外に子供だけで出ての冒険である、レヌール城のお化け退治の実行が決定したのである。
怒ると感情的になって怒鳴り散らす人と逆にクールダウンして静かに怒る人がいますよね。ちなみに僕は不機嫌になると声は低くなるけど臨界点を超えると怒鳴る人です。友人からはイライラしてる時が1番怖いと言われます。ま、怒鳴るほどブチ切れたことが3、4回しかないんですけどね。
<次回予告>レヌール城に向かうことが決まった一行だが、装備品を揃えるには資金が足りず、魔物を討伐して稼ぐこととなった。推定戦闘回数は60回。リュカとビアンカにとって長い夜が始まった。
次回 第10話「資金調達指令」
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