ハリー・ポッターと悪魔の双子   作:ボルヴェ

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遂にやってしまいました。反省はしているが後悔はしていない。


mission1 闇の悪意から賢者の智を死守せよ
デビルハンター? いえ悪戯仕掛け人です。


 魔法界は一度闇の帝王の手に落ちかけた。

 

 

 彼は死喰い人を従え数多の命と尊厳を奪い、世界を恐怖の底に陥れた。闇の帝王───ヴォルデモート卿が一人の赤子に敗れた今現在もその衝撃は風化される事無く人々の記憶に巣食っている。

 

 

 

 しかし世間での悪とて最強とはいかない。帝王と称される彼でさえその上は存在する。非情な話であるが、彼は所詮"人間の中での"王だっただけだ。

 

 泣こうが怒ろうが笑おうが仕様のない事だ。

 

 彼が幾つの悪を成そうとも。

 それを見下ろすその者達は悪"そのもの"なのだから。

 

 

 

 

 

 

 □■□

 

 

sideハリー

 

 

 

 「緊張してきたなぁ……」

 

 

 マクゴナガル先生から諸々の説明がされ、それによるとこれから四つの寮への組み分けが始まるそうだ。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリン。赤黄青緑が綺麗に並んでいる。それよりも組み分けの方法って何だろう、先ほど「フレッドは凄く痛いって言ってたけど、どうせいつもの冗談だよ」とロンから恐ろしい言葉が聞こえたが、聞かなかったことにしたい。

 

 そんなこんなで古ぼけたとんがり帽子の歌声が大広間に響き渡り、遂に組み分けが始まった。ABC順にアボット・ハンナから先生に呼ばれていく。

 ハッフルパフ、と帽子が叫ぶ。歓声が上がった。その様子をぼんやりと眺めながら、心の中で今日何度目か最早分からなくなった感嘆の声がこぼれ落ちた。

 

 あの日、ハグリッドから自分が魔法使いだと言われた夜から今この瞬間まで、帽子が喋ったり天井が夜空だったりロウソクが浮かんでたりチョコが動いたり。そんな有り得ない景色を沢山見てその度に思った。目も擦ったし頬も引っ張った。

 

 夢じゃない。

 

 本当に僕は魔法使いになるんだ。

 

 

 

 「ポッター・ハリー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ハリー!」

 

 赤毛の少年、ロンがこちらに大きく手を振って駆け寄ってきた。満面の笑みにこちらの表情も緩む。彼の兄のパーシーも声を上げて喜んでいる。良い家族だなぁ。ウィーズリー家は代々グリフィンドールと事前に聞いていたから驚くような事では無いが、それでもやっぱり嬉しいものは嬉しい。

 

 「君がグリフィンドールで良かったよ!」

 「君もね!改めてよろしく」

 

 僕らがはしゃいでいる内に全ての生徒の組み分けが完了したようだ。続いて壇上に上がった校長であるダンブルドア先生の何やら物騒な注意の後に何処か間の抜けた締めの言葉が続けられ、待ちに待った晩餐が始まった。

 皆が身を乗り出して食事に手を伸ばす。それに続いて自身もフォークを取ると、最早見慣れた赤毛の、同じ顔をした少年二人がズイっと顔を近づけてきた。

 

 「よお!君が伝説の英雄?」

 「ハリー・ポッターと同じ寮になれるとは思わなかったぜ!」

 「え!えっと……」

 「あー、ハリー。うちの兄なんだ、双子の」

 

 マシンガンの様に間のない言葉にしどろもどろとなっているハリーにすかさずロンが助け舟を出す。

 

 「俺はフレッド」

 「俺はジョージ。二代目悪戯仕掛け人とは俺達の事!」

 「「よろしくな!」」

 「うん、よろしく!」

 

 ロンの兄と聞いて少し安心したし、そもそもよく見てみると怖そうな人達では無さそうだ。よかった。それより悪戯仕掛け人などという何やら不穏な響きは一体何なのだろうか。

 

 「悪戯仕掛け人って何?」

 「文字通りさ、僕らにかかればどんな奴だってビックリ仰天!」

 「試しにこの鼻血ヌルヌル・ヌガーを使ってみるか?」

 「いや、遠慮しとくよ……」

 

 ちぇー、と唇を尖らす双子に苦笑しながら彼等のいう悪戯グッズをちらりと見やる。話によると体が萎びるまで鼻血が出続けるそうだ。なんとも恐ろしい。けど同時にとても面白そうだとも思った。マグルでは見た事も無い特殊な道具の数々に、自分の目が好奇心でキラキラしているのが分かる。

 

 「だが悔しい事に俺達はまだまだヒヨッコなのさ。"アイツ"に比べたらね」

 「我らがMr.悪戯仕掛け人を紹介しない事には話は始まらな…あれ?居ないな」

 「……"アイツ"って?」

 

 まだ仲間がいるのか、だがどうやら双子から崇められている(?)その人物は現在居ないようだ。見る限り全校生徒が集まっているはずなのに何故だろう?キョロキョロと周りを見渡す双子に答えを催促しようと、再び口を開こうとした瞬間、

 

 

 Blast off!(吹っ飛べ!)

 

 

 ドッカァァァァアン!!!!

 

 

 「!?」

 

 

 男の猛り声と共に、廊下に続く大広間の扉がまるで爆発に巻き込まれたかのように吹き飛ばされた。洒落にならない大きさの戸が勢いよく目の前まで飛ばされた事に一部の生徒達から悲鳴が上がる。喧騒が一気に止んだ。「何事ですか!?」と立ち上がったマクゴナガル先生の声が響く。

 煙が過ぎ去って、若干視界が安定してきた所で、破壊されたドアの近くに生霊のピーブスが目を回して倒れているのが見えた。静寂だった空間に騒めきが広がり始める。

 騒然とした中で、爆発の名残かまだ煙の充満した扉だった穴から「やべぇ、やり過ぎたか」とやけに軽い口調と、スリザリンと思われる方向から「愚弟が…」という怒気を纏った静かな声が聞こえた気がする。

 

 「来たぜ、我らが偉大な問題児」

 「真打の登場だ」

 

 フレッドとジョージが歓喜の声を上げる。

 そうして完全に晴れた視界の先、ポッカリと空いた入口に、グリフィンドール生が使用する赤い裏地のローブをこれでもかと崩して羽織った男が、杖で銀髪に隠れたこめかみをガリガリと掻きながら笑っているのが見えた。

 

 

 「悪ぃな、ピーブスと遊んでたら遅くなっちまった」

 

 

 その言葉を皮切りに歓声、怒声、溜息、笑い声が巻き起こる。束の間の静寂だった空間が幕を下ろした中、ハリーは何の声も出さず、いや出す事が出来ずにいた。何故だろう、今初めて一目見ただけであるのに。

 自分ではなく、僕には彼が、彼こそ英雄に見えたから。

 

 

 

 




亀更新の上初心者のしの字にもなり得ない者ですがよろしくお願いします。

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