ハリー・ポッターと悪魔の双子   作:ボルヴェ

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クィディッチの前にハッピーハロウィン。ダンテの悪戯が火を吹きます。
今回は少し長いです。
本格的に双子が行動を始める回になります。


クレイジーハロウィン

 sideハリー

 

 

 

 ダンテは絶好調だった。

 

 第三者の僕が言うぐらいだからそうだと思う。

 

 待ってましたハロウィンといわんばかりに容赦なく繰り出されるイタズラの数々。あるスリザリン一行は中庭に仕掛けられた時限爆弾ならぬ時限アグアメンティの爆水に吹き飛ばされ水浸しどころではない事になっていた。フィルチに至ってはまだ開発途中らしいトン・タン・トフィーを贈り物と偽って食べさせられて舌がそれこそ爬虫類の様な長さになってしまっていた。

 

 極めつけに「C'mon Nevan!」と叫んだと思えば突然紫色の雷が迸り、いつの間にか彼の手には紫色のギターが握られていて予告無しライブが始まってしまう始末。…グリフィンドールの生徒は普通にノリノリであったが。

 しかし上級生の反応を見る限りあまり驚いた様には見えない所を見ると、これは毎年恒例の行事のようだ。というか装置もないのに何故キャノン砲の爆発みたいなライブ演出が起きるんだろうか。それが魔法だとすれば万能過ぎる。

 まさにダンテの真骨頂、というのを垣間見えた気がする。フレッドとジョージが敵わないっていってるのもやっとその意味が分かった。逆にこれ以上にウィーズリー家の双子が悪さしてたとしたらホグワーツが物理的な問題で少し欠けてしまいそうでもある。二次被害も確実であろう。考えるだけで恐ろしい。

 

 ロンと一緒に苦笑しながらすごいね、と遠巻きに眺めていると翻る緑色のローブが隣を過ぎた。思わず足を止めて振り返る。同じくロンも怪訝な顔をして振り返っていた。

 通り過ぎたスリザリン生の思われる男は、未だにギターの叫びが響き渡る中庭へ静かな足取りのまま一直線に向かっている。その見覚えのある後ろ姿、既視感を感じる髪色、

 

 「……えっ、ダンテ?」

 「……それ僕も思った。ハリー、今の奴の顔見た?」

 「顔?」

 「ああ、間違いない。ダンテと同じ顔だった」

 

 は?と顔を横に向ける。ロンが何を言っているのか分からなくてもう一度その意味を訪ねようとしたと同時に中庭の方から冷淡な声で唱えられた呪文が聞こえた。

 

 

 「エクスペリアームス」

 「ッぐべはぁ!!」

 「ええ!? ダンテ!!?」

 

 

 流石に叫んだ。恐らく今鏡を見たら素晴らしく良いリアクションの取れた顔をしている事だと思う。だってさっきまでそこで単独ライブをしていたダンテが突然、紫の雷ごと赤い閃光に吹き飛ばされたんだから。

 ダンテに容赦なく当てられたその光の元、先程ロンとの会話に出てきたスリザリンの生徒は鋭い眼光を携えて、ゴロゴロと転がりながらも器用に体勢を整えたダンテに向けていた杖を下ろした。

 銀髪を無理やり撫でつけた様な髪型をした男の、怒気に満ち満ちた低い声が聞こえる。

 

 「愚弟……毎回貴様の行動の皺寄せが誰に来るのか知らない訳ではなかろう」

 「げっ……バージル」

 「昨夜俺は忠告したな。貴様も今年で五年生だ、そろそろ自制を覚えろと。ハロウィンだろうが関係無い、問題を起こすなと」

 

 うわぁ、と隣のロンが声を上げた。ハリーも声が出なかった。ダンテに詰め寄る男の影に確かに浮かぶ鬼の如き殺気を感じ取ってしまったから。

 誰だって、先程まで盛り上がっていた生徒達だってきっと凍りついて……いやまて盛り上がっている? フレッドとジョージに至っては、「やれやれー!」とか「ぶっ放せ!」などとプロレスの観客みたいな煽りを繰り返している。

 

 「ロン、ハリー。危ないから下がっていた方がいい」

 

 えぇ……と二人で絶句していると寮監のパーシーが慣れた様子で僕達を連れて双子より離れた場所に誘導してくれた。何でこんなに冷静なんだと疑問に思っている事を感じ取ったのかやれやれと言うように首を横に振りつつ、

 

 「まあ、恒例行事なんだ」

 「恒例行事って……」

 「ロンには言ったことあるだろう?"ホグワーツの死闘"」

 「あぁ……あれが……」

 「何それ……」

 

 どうやらロンは兄弟から、あの気絶しそうな程どえらい殺気を放つ生徒とダンテについて既に教えられているようだった。だが何のことか分からない。

 再び困惑した表情をパーシーに向けると分かっているとばかりに教えてくれた。

 

 「あのスリザリンの生徒はダンテの兄だよ。双子のね」

 「兄……ってあの、バージルっていう?今杖向けてる人が?」

 「ああ、…彼が怒り狂ってるのも毎度の事なんだ。ダンテが何か悪さをする度に教師からの苦情がバージルに向かってしまう。ダンテが言う事を聞かないからね。しかも大体事が起きた後には居なくなっているから、ダンテがやったって証拠が掴めない。見兼ねた先生がバージルに相談……って流れだ」

 「うわあ……」

 「まあその、悪戯好きの兄弟に手を焼いているという点では…同情せざるを得ないかな」

 

 遠い目をしているパーシーに乾いた笑いで対応して、再びダンテ達に視線を戻した。いつの間にかダンテも立ち上がり杖を出して臨戦態勢に入っているようだ。ここでやり合うのか……。

 

 

 

 

 ────────────

 

 

 

 

 スリザリンのバージル

 

 

 この前クィディッチの説明をオリバーにしてもらった時の最後に出てきた名前だ。僕が初戦に戦うスリザリンのシーカー。

 申し訳なさそうなオリバーの様子に、何も知らない僕は何のことだか分からなくて困惑していたが、目の前にいるダンテの引き攣った顔で察した。非常にマズイ状況なのだと。恐る恐る口を開く。

 

 「えっと、その人ってどんな……?」

 「ああいや、別に危険とかそういう訳じゃないんだ。寧ろバージルはスリザリンの中で珍しい位フェアプレーを心掛けていると思う。……まあ彼についてはダンテの方が詳しいよ」

 

 どうやら危険な人では無いらしい。とりあえずホッとしていると、ダンテは「危険じゃない……?」と納得いかない表情でオリバーを見ていた。前言撤回、安堵は出来なかった。

 

 「()()()には危害を加えないだろ。()()()には」

 「それは否定しねぇけど……。ああもう良いぜ、分かった。俺が教える」

 

 ダンテは観念したように後頭部を掻きながら盛大な溜息をつく。彼にしては珍しく難しそうな顔をして、

 

 「俺の兄貴なんだよ、バージルってのは。」

 「ダンテって兄弟がいたの?」

 「おう、双子のな。アホみたいに堅物な奴だけど。っと話を戻すぜ。まず前提としておいて欲しいことがあるが……初戦でバージルに張り合って勝てるとは絶対に思うな。」

 「う、うん。勝ちたいとは思ってるけど、勝てるとは思ってないよ」

 「俺の見立て通りならハリー、お前は絶対無茶する。絶対な。そう思わせるくらい変に度胸ある目ぇしてる」

 「僕が?」

 

 度胸があるなんて言われた事が無かったし褒め言葉の一種ではあるので少し嬉しかったが、今は浮かれている場合じゃない。ダンテは続ける。

 

 「ああ、自覚はねぇかもしれないけどな。友人の物取り返す為にセンセーの言いつけ破って箒使うくらいなんだろ? だが今回だけはそれを抑えろ。初戦だけは飛行速度と雰囲気、相手の挙動に慣れる為に使え」

 「……分かった。でも、何でその、バージルと張り合うのが危ないの? 危険行為をする人じゃないんでしょ?」

 「バージル()()()何もしない。アイツは他人を蹴落とすような奴じゃねぇし、まずする必要が無いからな」

 

 ハリーは眉を潜める。

 

 「する必要がない?」

 「そ、する必要が無い。例えバージルが妨害行為をしなかったとして、そもそも同じシーカーでまともに勝負できる奴がいないんだよ。……あー、そうだな。さっきお前らが言ってた竜巻とか、アイツに挑む奴を普通に人間として考えるとそれが妥当かもしれねぇ」

 

 絶句した。嵐やら竜巻やらは、周りの全てを巻き込むようなダンテの行動を喩えただけで何も脅威の度合いにした訳では無いのだ。しかし飛躍しすぎている話だというのは分かっていても、ダンテの真剣な表情を見て嘘でも誇張でも無い事を確信した。してしまった。

 

 「飛行に関しちゃ校内最速だからな。だからお前が怪我するとすれば、バージルに食いつこうとして無茶な飛び方をしてしまうか、他のスリザリンの奴から手を出されるかのどっちかがありえそうなとこなんだよ。さっきも言った通り妙に度胸がありそうだし、そういう奴が負けず嫌い拗らすと何が起こるかわからねぇしな」

 

 なるほど。ようやく合点が付いた。つまり有事が発生するとすれば僕の無茶な行動によるやらかしもしくはバージル以外のスリザリン生からくる妨害行為くらいらしい。聞けば聞くほど規格外な存在に、最早緊張することも無く乾いた笑いが漏れた。

 ポジティブに考えよう。逆にプレッシャーが取れたではないか。しかし緊張が解れたことを勘づかれたのか、ダンテが忠告するように人差し指を向けた。

 

 「だからといって大人しく負けてもいいとは思うな。あくまで無理すんなって話だぜ。説明は聞いただろうが、相手にスニッチを取られた時点で試合は終了する。……気張れよハリー」

 

 そうダンテは人差し指を引っ込めて拳を作った。試すような言葉だ。けれど今度は笑みを見せて、彼の拳に自分の拳をコツンと合わせた。

 

 

 「勿論、全力を尽くすよダンテ」

 

 

 

 

 

 ────────────

 

 

 

 

 「あの人がダンテの言ってた校内最速かぁ」

 

 

 中庭の方で破裂音やら叫び声やら炎やら水やらが飛び交っている中で、ハリーは場に合わない口調で独りごちた。入学当初からここまで(主にダンテにだが)驚く事ばかりで自身の反応が薄くなってきているのが分かる。慣れって恐ろしい。

 バージルは見る限りダンテが分身したと言えるくらい顔が似ていた。が、雰囲気がまるで違う。初めこそダンテと変わらず英雄の影を見た。しかし時折彼が纏う雰囲気の中に、全てにおいて迷いの見せない抜き身の刀を思わせる何かがある。何か強い覚悟を感じる程の。

 ハリーにはそれが恐ろしくも、憧憬を持つのに相応しいものにも見えて、酷く判断に苦しむと心の中で首を傾げた。

 

 なんて思考に耽ている間に、ダンテとバージルはえげつない呪文の掛け合いをし始めていた。ホグワーツの死闘ってそんな大袈裟な…と思っていた時期が僕にもあった。しかし寧ろ死闘っていうより頂上決戦みたいになってると思ったのは口には出さないでおきたい。

 そんなこんなで彼等の口喧嘩もピークに達しているようだ。

 

 

 「大体貴様の粗相は度が過ぎている! 未成長とはいえマンドレイクを教師共の花壇に仕掛けるなど頭のネジが外れているとしか思えん! いや訂正する、初めから貴様にネジなど存在しなかったな!」

 「うるせぇ! いきなり吹き飛ばしやがって、一瞬意識飛ぶかと思ったっつの! この鬼が!」

 「喧しい、自業自得だ!」

 

 

 最早収拾が付かなくなってきたので、バージルが人の身の丈の5倍もありそうな炎の塊を作り出したところで目の前で起こる怪物決戦に背を向けて寮に戻る事にした。

 魔法界って凄いやと思わず漏れた独り言に「皆が皆あんな決闘が出来ると思わないでくれ」とパーシーに言われて、今日何度目かの引き攣った笑いが出てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 □■□

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕食の時間がやってきた。今日一日絶えずカボチャの匂いが学校中に漂っていたが、その正体達が晩餐の席の前にこれでもかと並べられていた。頬が緩むようなご馳走だが、素直に喜べないくらいハリーの心はもやもやしている。このもやもやが何なのかは分かっていた。

 

 ハーマイオニーだ。ここ最近ハリー、ロンとハーマイオニーは口論が絶えずにいた。男子二人に臆すことなく正論をぶつけてしまうハーマイオニーに、反骨精神の強いロンはイライラしていたのだ。そしてつい彼女の悪口を叫ぶように言い捨ててしまった。ハーマイオニーが後ろで聞いているとも知らずに。

 ハーマイオニーが泣きながら自分達の横を走っていって以降、彼女を見ていない。晩餐が始まった今も大広間にその姿は無かった。

 流石のロンも、どこか気落ちした様子で座っている。話じゃ今女子トイレに篭ってしまっているとも聞いた。どうすればいいんだろう。簡単だ、素直に謝れば解決する。だけど自分達の頑固な部分が足を引っ張っているのだ。

 嫌になるくらい自分で自分の整理がつけられなくて、口を固く結んでいたその時に、勢いよく扉が開かれ、顔面が真っ青なクィレルが飛び込んできた。

 

 

 「トロールがぁぁぁああ!!」

 

 

 突然大広間に響いた悲鳴のような叫びに、生徒全員が目を丸くしてクィレルを見た。尋常ではない精神状態と見える。賑やかな声が消え、静まった空間で震えた彼の声は続く。

 

 「地下室に、トロールが……お知らせしようと……」

 

 言い終わる前に、クィレルはその場に倒れた。それを皮切りに絶叫が響き渡る。中には錯乱して泣き叫ぶ生徒も出てき始め、大広間は混乱の極みとなりかけだが流石はダンブルドア先生。たったの一喝で騒然とした空気を制してみせた。

 そのまま生徒は、寮監の誘導によりそれぞれの寮に戻る事になり、怯えた表情をしながらもその指示に従い動き始める。

 しかしハリーとロンはそうはいかなかった。ハーマイオニーはこの場にいない。つまりこの事を知らないのだ。しかも地下室に現れたということは、

 

 「ハ、ハリー。ハーマイオニーって今、」

 「……一階の女子トイレに居るってさっき、」

 

 そこまで言って、二人の顔色はさっきのクィレルも顔負けの青に様変わりした。一気に血の気が引いたのが分かる。

 地下室から上がってきたトロールが、もし、もし女子トイレの方へ行ってしまって、ハーマイオニーと遭遇したら。

 

 「大変だ! ハーマイオニーが危ない!」

 「行こうロン! 助けに行かなきゃ!」

 

 グリフィンドール生の群をすり抜けて走り始める。戸惑った同級生の声も、二人の姿を見つめていた一つの視線にも気付かない程がむしゃらに、女子トイレを目指して足を動かした。

 

 

 

 ────

 

 

 

 

 「ハーマイオニー!」

 

 

 ハリーとロンが女子トイレに付いた時、目に入ったのは既に破壊されているトイレと、洗面所の下で縮こまるハーマイオニー、そして彼女に向かって棍棒を振り上げる、巨大な化物だった。息が止まった。これが、トロール。

 

 「助けて!」

 

 けれどハーマイオニーの声で意識が引き戻された。ハッとしてすぐさまロンと一緒に屈み、すぐ真上に凄まじい質量を持った棍棒が振り切られて、破壊音が轟く。ハーマイオニーの悲鳴が上がった。

 視界の端の、原型を留められていない個室トイレの壁を見て、少しでも判断を誤っていれば自分の首が吹き飛んでいた事を悟り背筋に嫌な汗が流れていった。とにかくハーマイオニーを助けないと、でもどうすれば。

 しかし対抗できるような呪文が思いつかない。トロールが再び腕を振り上げる。ああどうにでもなれ!とつい先日習ったばかりの浮遊呪文を詠唱しようとした瞬間だった。

 

 「プロテゴ・ホリビリス」

 

 何か硬いもの同士がぶつかりあったような音がトイレに谺響する。自分に振り落とされた棍棒が何かに弾かれたのだ。突然の衝撃にトロールがたじろいている。その盾の呪文が詠唱された自身の背後を、ロンと共にゆっくり振り返った。

 そういえば、オリバーにクディッチの説明をしてもらった時も同じようなシチュエーションがあったなと、どこか他人事みたいな考えを巡らせていたハリーは、予想した通りの男の姿を確認して知らない間に笑みを浮かべていた。

 背後で杖を構えていた、もう見慣れた銀髪が不敵な表情を引っさげて、僕らの髪の毛をくしゃりとかき混ぜる。

 

 「よお、変わったトイレの使い方だなデカブツ。俺がマナーを教えてやろうか?」

 

 臆することなく圧倒的な体躯を誇る化物に軽口を飛ばすその姿に、やっぱり僕の感覚は間違ってなんかいなかったとハリーは強く確信した。初めて入学式で見た時と同じだ。

 

 この男、ダンテこそ英雄(ヒーロー)であると。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideダンテ

 

 

 

 トロールが地下室に出没したらしい。大半の生徒が半狂乱状態になっている中、生粋の問題児ダンテは構わず蜂蜜入りカボチャパイに手を伸ばしていた。

 しかし続けられたダンブルドアの爺さんの指示により晩餐は中止、各寮生は部屋に戻る事となり、食事を邪魔してくれたトロールに軽く殺意を覚えながら立ち上がる。

 隣に座っていたパーシーがこれぞ寮監と言えるキビキビとした誘導を始めたところで、ふとある二人の生徒の会話が耳に入った。ハリーと、パーシーの弟のロン。非常に慌てた様子だが、一体どうした?トロールに大騒ぎするような奴等じゃない気はするけれど。

 

 「ハーマイオニーが危ない!」

 「ロン、助けに行かなきゃ!」

 

 そう言って寮に向けて進む生徒達をかき分けて走る二つの背中を見つめた。断片的な会話によれば、どうやら彼等の友人が危険らしい。しかもこの状況で考えると十中八九トロール絡みであろうことは知れている。大分危険な状況だ。仕方ないと、スリザリンの方へ視線を向けた。

 気づけバージル。そして彼の予想通り、というか当たり前に兄貴はこちらの視線に気づいていた。双子だから等という迷信めいたものなんかじゃない。ハリー達のイレギュラーな行動が無かったとしても俺達には()()()()()()()()()()()

 口パクで「トロール」と動かして相手方の返事を待つ。察してくれ、遊びではないのだ。自分達に"やる事"があるのは分かってはいるがこれは譲れないと意思を込めて。

 相変わらず厳しい目付きで見据えられたがどうやら納得してくれたようだ。一つ溜息らしい仕草をした後に、「行け」と口が動いたのが分かった。流石我らが兄貴。心の中でウィーズリー家の双子がするような賞賛を浮かべつつ、肯定の意味を込めてニヤリと笑顔を見せる。

 さあ、早く彼らを追わねば。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────

 

 

 

 

 

 sideクィレル

 

 

 トロール騒ぎによって誰もいない廊下に、ターバンを巻いた男の足音が響く。

 その男、クィレルは己が頭に巣食う主人の言われるがままに迷いのない足取りで一つの扉を目指していた。彼の弱々しい性格では考えられないほど血走らせた目を携えて。

 何故全教員がトロールの対処に向かっている中でクィレルだけがこんな所にいるのか。答えは簡単である。

 そもそもトロールを嗾けたのがクィレルだった。ある目的の為に他の教師───特にあのダンブルドアを退ける必要があったのだ。

 しかし思っていたよりも簡単に事が運べている。うまく行き過ぎて怖いくらいだ。ある噂によれば、あの伝説の魔剣士の血族がホグワーツにいるらしいと聞いて警戒していたが杞憂だったのかもしれない。どうでもいいことだ、もう少しで帝王の復活を私の手で達成させる事ができるのだから。

 目的の部屋の前に立った。中にいるのはケルベロスという恐ろしい獣であるが、所詮は伝承にある氷狼と呼ばれる悪魔の名称を借りた魔法生物でしかない。対処のしようはいくらでもある。

 逸る気持ちで扉に手をかけ開けば、素早く滑り込み扉を閉めた。口角が吊り上がる。ここまでくれば、こちらのものだ。そして月明かりしかない程薄暗い部屋を見渡し、

 

 「……な、誰だ、お前は、」

 

 

 想像した光景では無いことを理解した。そこに居たのはケルベロスでも、ダンブルドアでも無い。

 

 それは静かに佇む蒼の悪魔。その存在を、その手元で鈍い光を発する日本刀を認識した瞬間にクィレルの身体が凍りつく。

 

 想定外の存在は、ノイズの掛かるざらついた声で、

 

 

You shall die(死ぬがいい)

 

 

 一切の容赦も許さず、闇に魅入られた男へと"死刑宣告"を下した。

 

 

 

 

 

 

 




ということでダンテが原作主人公三人組の救出へ、バージルが主犯クィレルをダァーイしに行きました。
原作ではスネイプ先生が止めに行ってケルベロスに噛まれましたがバージルは邪魔だと一撃で気絶させて別の場所に移動させてしまいました。容赦はない。

ちなみにバージルはスリザリンかレイブンクローかで迷っていたのですが、悪魔がかった才能と迷いのない判断力をみるにスリザリンの方がしっくりくるかな…と。またダンテと対比させたかったのもあります。

最も一番の理由は出来ればレイブンクローに、あの金髪美女の悪魔を入れられれば…と考えてるからです。余裕が出来たら登場させたい…。

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