ハリー・ポッターと悪魔の双子   作:ボルヴェ

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やっとちょっと格好良い(中二病的な)タイトルが付けられました。スタイリッシュに行きます。嘘です。


暗躍の悪魔

sideダンブルドア

 

 

 不死鳥の鳴き声が響く。

 背の高い本棚に囲まれた部屋は、流石魔法界の代物であろうと言える幻想的な雰囲気を纏って静まり返っていた。そこに一つの足音が現れる。この部屋、校長室の現主であるアルバス・ダンブルドアその人である。

 

 現在の時刻は真夜中。先程突然のトロール出現に校内は騒然となっていたが、迅速な対応と寮監達の滞りない指示により、無事に生徒達の誘導は完了し大事にはならなかった。────同時に闇の帝王の思惑通りに運ばせること無く済んだ。

 ハリーに敗れ命を落としたと思われていたヴォルデモート卿は魂のままで本校の教師を誑かし、賢者の石を用いて復活の機会を狙っていたようだ。奴の生存については予測出来ていたとはいえ、これ程堂々とホグワーツに入り込み賢者の石を狙ってこようとは。グリンゴッツ事件もそうであったが無謀な事をしてくれる。

 だが奴も彼等の目は誤魔化すなど不可能だったようだ。味方であるとしても、末恐ろしい双子である。

 

 ソファに座り込むその張本人達────ダンテとバージルはダンブルドアに向かって「遅い」とでも言うように、あまり機嫌の良くなさそうな視線を送った。彼等の目の前に紅茶を置いて、

 

 「すまなかったのぅ、後処理に時間がかかってしもうた。しかし、今回も本当に御苦労じゃった。君達のお陰で生徒三人の命が救われ、かの闇の帝王の思惑も防ぐ事が出来た」

 「まあ前者の生徒云々はイレギュラーだったけどな。アイツの処理はバージルに任せちまったし」

 「問題無い。元々あの程度の輩に二人がかりでいく必要性が見つからんからな。だが……」

 

 バージルの表情が険しくなる。今日はまた一段と不機嫌そうだ。片割れの問題行動もその頭の痛くなるようなストレスの一つとなりえているだろうが。

 

 「だが、何があった?」

 「……逃がした。クィレルの方は仕留められたが、閻魔刀で斬る前に抜け出されたようだ」

 「マジかよ。バージルから逃げ切るって随分悪運がいいのな」

 「じゃが賢者の石を護れたので十分じゃ。そもそもあの場で殺せたとしても、既に彼奴は様々な地で分霊箱を造り出しておる。今確実に討つのは不可能じゃった」

 「ハッ、相変わらず反吐が出るくらいしぶとい野郎だ」

 

 ダンテが心底嫌そうな表情を浮かべる隣で、バージルは紅茶に手を伸ばしながら険しい顔のまま思案する。賢者の石が校内に残っている限りヴォルデモートは何度でも狙ってくるであろう。早急に対処しなければならない。

 

 「ダンブルドア、賢者の石の処理については早急にニコラス・フラメルと話をつけておいた方がいい。奴に付け込まれるぞ」

 「分かっておるよ。今話し合いをしておる所じゃ。しかしニコラスもそう簡単に決断できる事ではなかろうて」

 

 ニコラス・フラメル───賢者の石の製作者はそれのおかげで不死を保っているのだ。賢者の石の破壊するという行為は彼とその夫人の死を意味する。闇の帝王の復活を止める為とはいえ即決できるような簡単な事案では無いことなのは誰でも分かる。

 

 「長期戦になりそうだな、今回は」

 「ああ、クィレルは処理できたとはいえ奴がこのまま手を引くとは思えん。油断するな」

 「悲しき事じゃが魔に魅入られやすい者はホグワーツ内でも少なくないじゃろう。すまぬが、変わらず警戒しておいておくれ」

 「オーライ、任せとけ」

 

 短い返事だが非常に心強い言葉にダンブルドアも一つ息をついて、ソファから立ち上がり校長室から出ていく二人の後ろ姿を見送った。

 

 

 

 ────────────

 

 

 

 「賢者の石を狙っているのは、恐らくクィレルという男だ」

 

 発端はバージルの発言だった。

 ダンブルドアから賢者の石をグリンゴッツ銀行からホグワーツに移したと聞かされた後にタイミングよく起こったグリンゴッツ事件。あの時ばかりは双子もダンブルドアの先見に驚かされた。

 しかしグリンゴッツに賢者の石が無いと知ればかなりの高確率でホグワーツを標的に移すだろう。魔法界で最も安全な場所と言われる程である上、ダンブルドアの監視下付きであるのだから。その為双子はダンブルドアからの頼みにより校内の教師生徒全員を警戒して回った。グリンゴッツ襲撃前であるが、ダンテがハリー達の入学式に遅れたのもその為である。

 

 そうして情報を集める内にバージルが下したほぼ確信された結論がそれだった。

 

 クィリナス・クィレル。今年から闇の魔術に対する防衛術を担当する教師。一年程修行を目的としてホグワーツを離れていた経歴を持つ。吸血鬼除けだとニンニクの臭いを四六時中漂わせる男に、バージルは時折違和感を感じていた。

 曰く、クィレルのものでは無い魔力を感じる事があるという。

 

 人間には不可能な現象であるが、悪魔は他者の魔力を感覚で読み取る。クィレルはヴォルデモートの"臭い"を隠す為にニンニクを用いていたようだが悪魔の彼等にそれが通用することはなかった。

 そして二人は男の行動を監視していたが、その読みはやはり当たっていた

 

 禁じられた森でユニコーンの血を啜るクィレルを見て、バージルは成程と事の真相を理解する。いや語弊があった、ユニコーンの血を啜っているのはクィレルではない。それに寄生した存在の行為だ。

 

 ヴォルデモート。

 

 惨めな奴だと冷笑した。赤子に負け、格下の存在に寄生しユニコーンの血を啜る闇の帝王などと驕った男の無様な姿を。

 これで賢者の石をつけ狙う人物とその訳も現れた。後はアレらに餌をぶらつかせ、まんまと釣られた所で首を刎ねればいいだけだ。ケルベロスという対処の容易い番犬も置いた。

 来るがいい、自ら首を差し出す為に。

 

 そして、その日(ハロウィン)はやってきた。

 

 

 

 ────────────

 

 

 

 

 

 

 「やはりあの子らは、悪魔(スパーダ)の血を受け継いどる」

 

 

 双子が去り、一人を残して誰もいなくなった部屋に老いた魔法使いの独り言が落ちる。その容赦の無さに、強さに、気高い意思に、思わず溢れた一言だった。それに答えるように、不死鳥が再び鳴き声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 □■□

 

 

sideハリー

 

 

 

 生徒達は朝食を取るために大広間に集まっていた。

 勿論ハリー達もその中の三人であり、テーブルに置かれたパンやジャム、ベーコンに手を伸ばしながら談笑していた。

 やはり昨日のトロール事件についてだ。

 

 昨夜ダンテが駆け付け、無事寮に戻った三人はそれぞれ自身の非を詫びて仲直りをした。昨日のもやもやが嘘のように心が軽い。

 そうなると昨日それ程入らなかった食事もスラスラと口に運べて、今日の朝食はこれでパン三つ目だ。食べられなかった分、胃が食べ物を求めているらしい。ハリーがジャムを手に取ってパンに付けようとしている時に、ロンが感動半分放心したような表情で口を開いた。

 

 「凄かったね、ダンテ」

 「うん、昨日の昼間でどのくらい魔法が使えるかはよく分かってたつもりだったけど凄かった」

 「一瞬だったもんね…」

 

 発言の後、三人とも揃ってロンと同じような表情になってしまった。仕方ないのだ、それほど衝撃的だったのだから。

 

 昨日、ダンテが駆け付けてトロールの一撃を盾の魔法で防いだ後、トロールは武器が弾かれた訳が分からず再びダンテに向かって棍棒を振るったのだ。ハーマイオニーの悲鳴が響くが、ダンテは眉一つ動かさずに一言杖を翳した。

 「Cerberus」と呟いたと思えば、次の「Freeze!(凍れ!)」の猛り声と共に一瞬でトロールは氷塊に飲まれ凍りつき、動かなくなってしまった。

 流石に呆然としたが、その後駆けつけた先生達の声により三人はハッと意識を戻して状況を説明して、結局勝手に抜け出していたハーマイオニーが5点減点、しかし友人の為の勇気ある行動として僕達は5点ずつ加点、僕達を助けてくれたダンテにも加点が───されるかと思ったが今日の悪戯の数々で無しとなり、えーと文句を言うダンテにフィルチが一つゲンコツを落として事態は幕を下ろした。

 

 今思い返しても目まぐるしい展開の速さに頭の整理が付かない。

 

 「でも凄いわね、彼。氷を発生させる魔法なんて知らなかったわ。それに入学式のピーブズに対しての呪文、声は出してはいるけど武装解除の詠唱はしていなかった。つまりあれは無言呪文よ。そんな高度な事が出来るなんて底が知れないわ」

 

 ハーマイオニーの溜息混じりの声に思い返してみる。確かに昨日の昼間、ダンテとバージルの呪文合戦を暫く見ていたが、時折彼等は無言で呪文を使用する場面があった。

 あの時は高度な魔法の応酬に目を取られて気付かなかったが、よくよく考えると…いや考えなくても規格外な事をしている。驚きのリアクションさえ薄くなる程、ダンテの数えきれないイレギュラーな行動に慣れてきていた。

 

 「何者なんだろうね、ダンテって」

 

 そんなハリーの呟きに、二人も「さぁ…」と眉を下げて首を横に振り、目の前の食事に視線を戻した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ハリー…ポッター。忌々しい、英雄風情め」

 

 そんなハリーを睥睨する、一つの視線に気付かないまま。

 

 

 

 




双子はダンブルドアと繋がっており、死喰い人やヴォルデモートの脅威からホグワーツまた魔法界を守っている形になります。理由はまあ仇というのもありますが。

さて、バージルがクィレル先生をあっさりダァーイしましたが賢者の石篇はまだ終わりません。そこには新たな刺客が…!
おそらく次こそクィディッチです。


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