ハリー・ポッターと悪魔の双子   作:ボルヴェ

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突然ですがオリジナル教科とキャラクターが出ますので少し注意。クィレル先生の早すぎる退場による追加です。
あまり話は進みません。それぞれの思惑描写のみ。


蠢く思惑とクリスマス

 sideウロス

 

 

 悪魔学というものがある。

 ホグワーツで選考できる教科の一つで、名前の通り悪魔についての知識を得る事を目的とした学科。

 

 悪魔。

 マグルを軽んじ、己らを最も優れた存在と宣っていた純血主義の魔法使い達を一瞬で黙らせた、闇よりも深い魔界の底に潜み、全生物の頂点に君臨する存在。いや、最早生物等という我々と同じ括りにするのも、彼等にすれば烏滸がましい行為であろう。それ程悪魔という存在は全てを超越し過ぎている。

 彼等はあらゆる事柄を力で捩じ伏せる。下級、上級という悪魔内の種族により発生する力量差はあれど皆こぞって闘争を望む根があるのだ。

 そこに秩序は無い。支配、地位、名声、悦楽、欲するのなら同じ悪魔であろうと躊躇無く叩き潰し、殺す。虐殺という点では人間界でも通ずる歴史は幾らか見られるだろうが、そんなものは比にもならない血で血を洗う世界。

 

 

 禍々しい姿で描写された悪魔の伝承を、ギョロギョロと忙しなく動く濁った瞳で見つめる男───悪魔学教授、ウロス・ブルーニはお世辞にも綺麗とは言えない殴り書きのようなインクの跡を残しながら、ふと思う。

 

 そういえば、いつからだろうか。圧倒的な力を振りかざす化物とされる彼等に強い執着を持ってしまったのは。ハッキリとはしないが確か幼少期であったと思う。

 

 

 所謂落ちこぼれ家系に生まれた彼は毎日の様に苛められていた。それはホグワーツに入ろうが変わらなかった。勇敢でもない、優しく穏やかでもない、特別賢くもない、狡猾というほど策略家でもない。ただ打ち込むしかなかった物が勉学というだけで、勤勉などというレッテルを貼られてレイブンクローに回されたのだろうと今でも思っている。

 何もかも最悪だった。影でヒソヒソとこちらを指差す生徒も、それを知っていて見て見ぬふりをする先生も、抵抗できない自分も。

 その時だ、悪魔というものを図書室で読んだのは。

 

 力で全てを制する生物。横暴と言われる彼等にウロスが抱いた感情は"憧れ"だった。周りの戯言などお構い無しに振るわれ、紙切れのように吹き飛ばす圧倒的な暴力に、己には備わることのなかった強さを見たのだ。

 同時にウロスの卑屈さは更に拗れを起こした。自分が悪魔でないから、弱い人間だからこんなクソみたいな人生を送っているのだと。だからいずれ思い知らせなければ。

 自分を見下した憎き奴等に鉄槌を。

 

 そうして歪んだ決意を孕んだまま、ウロスはホグワーツの教授となる。そして出逢った、闇に謳われた御方に。

 彼は俺の言葉に賛同し、賞賛をして下さった。この世界は間違っていると。力無き者がのさばっている、この腐った世の中を否定してくださった。なんと聡明な方だろうか。この方が非難されダンブルドアが賞賛されるなど、やはりこの世界は狂っている。俺は彼を主として跪いた。

 

 現在主は、あの英雄なぞと持ち上げられたガキ…忌々しいハリー・ポッターにより肉体を失っている。その為俺の左胸に宿られ、ユニコーンの血を摂取することによって力を蓄えておられる。しかし足りない、完全に復活を遂げるにはダンブルドアが保有する賢者の石を手に入れなければならない。

 

 主は動けない。俺がやり遂げなければ。そしてこの間違った世界を、ダンブルドアやポッターが持ち上げられるような馬鹿な世の中を主と共に変えるのだ。

 

 手始めに、その忌々しい奴等の死体を主に献上するのも、悪くない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideハリー

 

 

 眠気眼を擦りながら、そばに置いていた眼鏡を取った。ぼやけていた視界が徐々に正確な光景へと戻り始める。若干の肌寒さを感じて暖かい毛布へ戻りたくなるが、今寝たら絶対に昼まで寝過ごす自信がある。起きなければ。のろのろと起床の準備をする。

 

 欠伸を噛み殺してベッドの横の窓を覗き込む。あたり一面真っ白だ。そういえば今日はクリスマスだった。ホグワーツで過ごす初めてのクリスマス。

 晩に雪が降り積もった銀世界は魔法界にぴったりな幻想的な光景を描いている。積雪自体そんなに珍しく感じるようなことではないのだが、いつもの事で少しソワソワする。外に出たがる犬みたいだなぁと自分で自分を評して苦笑した。

 しかしこの前クィディッチの初試合が行われた感覚がするのだが、時の流れというのは本当に早い。あの時既に肌寒かったとはいえ、まだ草木の緑色が視界を支配していたはずだ。ふとスニッチを掴んだ時の高揚感が思い返されて口元が緩む。

 

 そんな今だ興奮冷めやらぬ記憶と同時に、試合後に険しい顔をして忠告を告げるハーマイオニーとロンを思い出した。

 

 

 

 

 ────

 

 

 「箒が暴れた原因はスネイプよ。間違いないわ、ハリーを落とす為に呪文を唱えていたの」

 

 

 僕は思わず顔を顰めた。

 確かにスネイプは嫌な奴だ。何度も分からないと言うのに難解問題を執拗く僕に当て付けてくる。それだけじゃない。ネビルがおできを治す薬を調合している時に失敗した事を僕の不注意として減点してきた事もある最悪な先生。でもまさか、あんな命のかかった危険な行為をするような奴だなんて。

 しかし二人が言うには、間違いなくスネイプは何かしらの呪文をハリーに向かって唱えていたという。彼等がこういう嘘をつく人じゃ無い事を僕はよく知っている。そうしたら少しずつスネイプに強い憤りを感じ始めた。何て酷い奴なんだ! 気に食わないからといって生徒を危ない目に遭わせるなんて。頭がおかしいんじゃないだろうか。

 

 同時に二人の口から、僕がまたダンテに助けてもらった事を教えられた。どうやらスネイプが呪文を掛けていたのに、恐らく彼も気づいていたのでは? だそうだ。僕は箒から手を離さないようにするのに必死で気づけなかったのだが、ダンテが教員席にブラッジャーを足で蹴り飛ばして呪文を強制的に終わらせたらしい。ハーマイオニーがスネイプの足元に潜り込んで、呪文を止めさせるために火をつけようとした瞬間だったという。ブラッジャーはマクゴナガル先生が盾の呪文で止めたそうだ。

 

 偶然……とも思えるが、その人物がダンテなら狙ってやってもおかしくはない。その前に一瞬何気なく聞き流しかけたが、まずブラッジャーを足で蹴るなんて行為がおかしい。

 また助けてもらったという申し訳なさと情けなさは勿論あるが、相手がダンテだと思うと最早驚くことも違和感を抱くこともなくなった。慣れとは恐ろしいものである。

 

 

 ────

 

 

 

 

 

 sideダンテ

 

 

 

 「やっぱまだ居るよな。バージルの言う通り」

 

 

 雪原に隠されかけたユニコーンの亡骸を前に、ダンテは非常に胸糞悪いと言うような表情を浮かべて呟いた。誰に聞かせるものでも無い小さなぼやきは、静寂を纏った森の中に消える。

 

 ケンタウロスからの話によればある時期からユニコーンを殺しその血を啜る者が現れたらしい。ユニコーンの血というのは衰弱した生命を蘇らせる特殊な能力を持つが、その代償は実に歪だ。彼等の死を冒涜し、その血を啜るならばその者は生きて尚呪いに苛まれる事となる。当たり前だろう。生命を蘇らせる代償にユニコーンは命を落とすのだから。

 

 しかしこれを脅威としない存在がいる。それが悪魔だ。悪魔はユニコーン程度の呪いに滅ぼされる程脆い魂を持ち合わせない。逆に毒を制して糧にするように、呪いでさえ己の力に変えるような輩なのだ。しかし同時に悪魔の魂となると、ユニコーンの血ではまず蘇らない。その為悪魔にはユニコーンに手を出す理由は存在しない。

 

 ならば残るは"例外"だけだ。己が魂を分け放ち、半不死の身体を手に入れ、呪いを無理やり克服した男。そして赤子に敗れ、肉体を無くした哀れな帝王。

 アレはクィレルの体に寄生し何とか魂を保っていたが、繋ぎとしてユニコーンの血もこうして摂取し続けていた。肝心のクィレルはハロウィンの日にバージルによって始末された筈。しかし今もこうしてユニコーンの死骸は増えている。

 どうやら、クィレルに変わる新たな依り代を見つけたらしい。

 

 面倒だ。何の情報もない、教師だけでなく生徒を嗾けた可能性もある。しかも一度失敗している以上、今までより警戒して潜伏に専念するだろう。

 ダンテは不機嫌な顔を崩さぬまま盛大な溜息を吐き出し、もう一度ユニコーンの亡骸を一瞥した後森の入口の方へ歩き出した。

 

 

 「……出し抜けると思うな」

 

 掃き溜めの中でも特に胸糞悪い闇の帝王とやらに、鉛玉をブチ込むために。

 

 

 

 

 

 

 




バージルが難しくて登場させにくい為にダンテが多めになる。すみません兄鬼。



ウロス・ブルーニ

悪魔学教授。
人見知りであり基本的に大人しいが内面は傲慢で卑屈。ダンブルドアを快く思っていないが、悪魔学で教鞭をとれる程詳しい人物というのはそう多く無いのでホグワーツの教員として働く事に。
基本的に英雄と称される人々が嫌い。というか大体嫉妬が混ざっている事が殆どだった。クィレルの代わり。


オリキャラの説明です

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