(あれからもう3日か・・・)
楯無さんと話してから俺は部屋に閉じこもり、俺を入学させた奴の手がかりを探っていた。その間、授業も食事も寝ることさえも忘れ、今日までずっと日本政府の奴らの情報をハッキングして調べていたのだ。
(あぁぁ〜、千冬さんに怒られるだろうな・・・無断欠席してたんだもんなぁ。けど、ほとんど収穫0か・・・これじゃあ、休んでまで調べた甲斐が無いよなぁ・・・)
そう。結局、奴らの有益な情報は何一つ得ることが出来なかったのだ。
(奴らは俺がハッキングする事を既に予想したのか?じゃなきゃあんな強力なプロテクトが掛かってる訳無いよな・・・いや、考え過ぎか・・・)
そう言って俺は授業にいく準備を始めた。流石にこれ以上の作業は無駄に思えたからだ。その時、部屋の扉がノックされた。
「運命・・・起きてる・・・?」
「簪?あぁ、起きてるぞ。今から教室に行くけど・・・一緒に行くか?」
「う、うん!」
俺はすぐに準備を終わらせて簪と一緒に行くことにした。
「久しぶりだよね・・・こうやって簪と一緒にいるの」
「うん・・・運命の部屋に行っても返事無かったし・・・授業にも出てなかったみたいだし・・・」
そう言う簪はどこか元気が無かった。その場で立ち止まり少し考え、そして気付いた。
(俺とした事が・・・!焦って我を忘れて女の子を悲しませるなんて・・・)
「ごめん・・・簪!・・・心配かけて」
そう言って俺は簪を強く抱きしめた。簪は少し戸惑っていたがすぐに抱き返してくれた。
「いいんだよ・・・運命が大丈夫なら・・それだけで」
その言葉に俺は絶句した。同時に安心と嬉しさがこみ上げてきた。だが、今の俺にはこの抱擁に勝る懺悔の言葉は思いつかなかった。
あれから何分たっただろう・・・俺と簪はようやく今の体勢に気付いて、すぐお互いに身を離した。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
(お互いにこの空気はとても気まずい。おそらく、簪もそう思っているだろう・・・ここは俺がなんとかしないと・・・!)
「な、なぁ 簪!」
「っ!?な、何?」
「いや、その・・・ありがとう・・・」
「えっ・・・何で?」
「自分でもよく分からないんだけど、とにかく簪にお礼が言いたくて・・・でも!何を言えばいいのかは分からないんだけど・・・だからって!何も言わないのはそれこそ良くないっていうか・・・」
必死の弁解をしていると、簪は何故か笑っていた。
(えっ!な、何で笑ってるの?俺、なんかおかしな事言ったっけ?)
そんな視線を簪に送っていると、苦笑しながら答えてくれた。
「ごめん、ごめん。だってあまりにも必死になってたから・・・でも、何であんなに必死だったの?」
「女の子が元気無かったり、悲しんだりしてる表情を見てるのが辛いんだ・・・ましてや、俺が原因なら尚更ね・・・」
キョトンとしている簪。流石に今のは引かれたかな・・・と思っていると簪が口を開いた。
「運命。そういうのとても素敵だと思うよ・・・」
「えっ・・・」
返ってきたのは予想外の答えだった。
「そういう目標を持って頑張るのはとてもいい事だと思うよ・・・」
素直に賞賛されて、俺は思わず照れてしまう。
(こんな恥ずかしい事よく言えるな。純粋にそう思ってるのか、それとも狙ってるのか・・・ええい、どうでもいい!!!)
俺は恥ずかしさから逃れるため話題を変える。
「そ、そういえば簪。今日の放課後、時間あるか?」
「? あるけど何で・・・」
「いや、言うの忘れてたんだけどフリーダムが届いたからさ。放課後に作業手伝ってほしくて・・・」
そう。あのハッキング作業中に届いたのだ。一人でできる所はやったのだが、あとの作業はどうしても簪が必要になるのだ。
「場所は第4アリーナの整備室で。出来れば今日で使えるようにしたいと思ってるからさ」
「うん・・・分かった!」
「よし!じゃあ行くか!」
そう言って再び歩き出す俺たち。しばらくすると、前方からものすごい勢いでこっちに向かってくる人影が見えた。よく見ると俺がよく知っている人物だった。
「運命く〜〜〜ん!!!!大丈夫〜〜!!!」
「楯無さ「ドガン!!!」ぐわっ!!!」
止まる事なく俺に激突した。凄い勢いだったため、俺は楯無さんに押し倒された体勢になっている。
「いててて・・・何するんですか!怪我するわ!!」
「ご、ごめん。運命君が心配だったから・・・」
「えっ・・・」
「私と話した後から運命君が部屋に閉じこもっちゃったから、私が何かしちゃったかなってずっと謝らなきゃって思ってて・・・でも、今日部屋から出たって聞いたからつい・・・」
楯無さんの目には涙が浮かんでいた。俺はそっと楯無さんの涙を拭いて、頭を撫でてあげた。
「楯無さんのせいじゃありませんよ。俺が勝手にした事です。楯無さんが謝る必要なんて無いですよ。でも、そこまで思い詰めてしまっていたのなら謝ります。だから、もう泣かないでください。せっかくの美人が台無しですよ」
「・・・ありがとう、運命君・・・!」
しばらくこの状態が続いた。しかし、この出来事が学園中でうわさされる事など、俺はまだ知らなかった。
「落ち着きましたか?」
「うん・・・ありがとう」
(ようやく落ち着いたようだ。しかし、楯無さんを撫でている最中に簪から変な視線を感じた。殺気?・・・いや、似てるけど違う。でも、わからないな。いい加減にしないと簪に誤解されてしまうな。・・・しょうがない!)
「あの、楯無さん。一つお願いがあるんですけど・・・」
「ん?何かしら」
「簪を生徒会に入れたいんですが・・・」
更織姉妹に衝撃が走った。なんか、結構な爆弾発言をしてしまったらしいが、俺にはよくわからない。
「「運命(君)、それはどういう事なの(かしら)!」」
姉妹揃ってハモっている。だが、気にしない!俺は言葉を続けた。
「どう言う事もなにも、簪が生徒会に入ってくれれば近くにいてくれて助かるって事ですよ。入れてくれたら俺と簪は生徒会の主催するイベントに積極的に参加する事を誓いましょう。まぁ、会議は俺らも出席しますけどね」
「分かったわ!その条件、のんだ!」
ほぼ即答だった。楯無さんも簪を入れたかったんだな・・・っと、その前に・・・
「簪!ちょっとこっちに来てくれ。」
「なに?運命・・・」
俺は簪に耳打ちで伝える。
「お節介かもしれないが、これは簪が楯無さんと仲良くなるために俺が考えた事なんだ。もちろん、嫌だったら入らなくてもいい。簪が決めてくれ」
簪は少し考える。
(運命はそう言ってるけど、発作の事もある。そうなれば運命を助けられるのは私だけ・・・だったら、もう決まっている。私は運命の側にいたい!)
「分かった・・・生徒会に入る」
「本当にいいのか?勝手に言い出した俺が言うのもなんだけど・・・」
「うん、もう決めたの・・・!」
俺は安心した。原作まではいかないものの、仲は良くなかったみたいだからこの話をきっかけに仲良くなって欲しいという俺の考えが通ったことに。
その時、始業のチャイムが鳴った。
(ヤバイ!千冬さんに怒られるだけでなく、ボコられるよ!)
「ヤバイ!簪、急いで行かないと!!楯無さん、失礼します!」
「う、うん!またね・・・「お姉ちゃん」!」
そう言って俺たちは教室に向かって走った。二人と話したことで、俺の中の焦りは完全に消えていた。
次回でフリーダムが完成しますよ!