運命が目を覚ましたのと、同時刻。枯野は・・・
枯野side
「クソッ!!逃げられただと!一体なにをしているのだ、馬鹿者!!!」
モニターの前にいる士官がさっきから怒鳴りつけている。どうやら、私が仮眠をとっている内に、“オリジナル”が逃走したようだ。
(まったく、ひどい有様だ。軍が子ども一人相手に逃げられるなんて、聞いた事もありません。一体どんな育て方をしたら、そんな風になるんですかねぇ・・・)
呆れていると、さっきの士官が報告してきた。
「・・・申し訳ありません。金森運命の逃走を許してしまいました」
「まぁ、しょうがないですよ。誰にだって失敗する事はあります。それに、あれは元々処分するつもりだったので、手間が省けて助かりました」
「はぁ・・・処分ですか?」
士官が処分の意味を理解していないようで、聞いてくる。
「アレのデータは既にとってあるんですよね?だったら、そんな訳のわからない危険要素はすぐにでも取り除くべきですよ。それに、“オリジナル”がいなくても、あの作戦は問題ありません。それよりも、ドイツのあの実験の詳細をあとで私のところに持ってきて下さい」
「ハッ!!」
士官は敬礼し、資料を取りに行った。
「“オリジナル”・・・君は私の意見に賛成はしてくれないのですか。孤高の存在である君なら、協力してくれると思っていたのに・・・まぁ、いいです。でも、戦争は一人の強大な力だけでは勝てないのですよ・・・」
運命side
後日、改めて千冬さんが医務室に訪ねて来た。なんでも、俺に聞きたい事があるらしい。ちなみに、この前は簪と楯無さんがいたから聞けなかったらしい。
「それで、聞きたい事って何ですか?」
「“お前がどうやって生き返ったのか”という事と"日本政府についての情報”だ」
俺は内心、驚いていた。千冬さんが日本政府を疑っている・・・それは千冬さんが、俺と同じ考えに至ったことを意味していた。
「・・・俺が生き返った方法は、俺自身も正直、よく分からないんです」
「分からない・・・だと?」
普通はそう返すよね、でも分からないのは本当だから困るよな・・・
「えぇ・・・でも俺が目を覚ました時、どこかの研究施設みたいな場所に居たみたいなんですよ」
「研究施設だと・・・では、やはり・・・」
そう言って千冬さんは黙り込んでしまった。どうしたのだろう?
「あの・・・千冬さん?」
俺が呼びかけるとようやく気づいた。
「・・・いや、悪かった。続けてくれ」
「・・・はい。じゃあ、続けます」
千冬さんの様子が気になったけど、俺は続けた。
「目が覚めた俺はその場から脱走を図りました。案の定、研究員たちと鉢合わせてしまいましたけど、まぁそこまでは問題ありませんでした」
「そこまでは・・・というと?」
「逃げている途中で“アイツ”と会っちゃったんですよ。運悪く」
すると、千冬さんは探るように聞いてくる。
「“アイツ”とは、一体誰だ?」
「覚えてますか?前に黒いISと一緒に襲撃したISですよ。けど、ビックリしましたよ!あのISの正体が「男」だったんですから」
それを聞いた瞬間、千冬さんの様子が変わった。
「なに!?お前と一夏以外に男性IS操縦者がいたとは・・・それで、そいつと戦ったのか?」
俺はあった事を全て話す。
「いや、そのISなんですけど、なんか俺のこと施設から逃がしてくれたんですよね。なんでも、「今お前を死なせるわけにはいかない。安心しな、後で俺が殺すからな♪」って言ってました。でもあのIS、他の奴らとは根本的に違うと思うんです。なんか別の目的で動いてるような感じだったんです」
「そうか、そこまで状況を理解しているか・・・では、それを踏まえたうえでお前にだけ話しておこうと思う」
千冬さんの雰囲気を感じ取り、俺も真剣な表情になる。
「ここからは私の推測だが、日本政府の枯野という男とその研究施設は裏で繋がっている。枯野は「女尊男卑の無い平等な世界」を作ると言っているが、実際に作るつもりなのは「人々が戦争をし、自分がその頂点に立って支配する世界」
なんだ!そして、そのためにお前の力を欲しがったのだと思う」
少し考え込んだ後、俺は聞き直した。
「千冬さん、俺の力って一体?」
「それについては、私も分からん。だが、お前の力を欲しがっていたのは事実だ。もしかしたら、またこの学園を襲撃するつもりかもしれん。私はお前やあいつらを守りたい・・・!私に協力してくれるか?」
今さらそんな質問は愚問だ。その言葉を聞いた瞬間から既に答えは決まっている。
「もちろんです、千冬さん!俺も出来るだけのことはやります!」
俺は千冬さんにそう宣言した。それを聞いた千冬さんは静かに微笑んで言った。
「ふふっ、そうか・・・ありがとう」
そう言って千冬さんは医務室を出て行った。俺はその姿を見送り、決心する。
(俺も大切なものを守ってみせる!絶対に!!)
その日の夜、俺以外に誰もいないはずの医務室に訪ねて来た誰かの気配を察知し、目を覚ました。そこにいたのは俺のよく知る人物だった。
「あれっ?簪じゃないか。こんな夜遅くにどうしたの?」
そう聞くと、いきなり簪がモジモジし始めた。そして顔を真っ赤に染めながら言った。
「今日、一緒に寝てもいい・・・?」
・・・ホイ、来たぁぁぁぁぁああ!!!復活早々とは気が早いなぁ!まったく♪
それじゃご期待に応えようじゃありませんか!
「う、うん・・・いいよ?」
そう言うと、簪をベットの中に入れる。う〜ん、久しぶりの簪だ♪安心する〜
そんなことを考えていると、いきなり簪が抱きついてきた。
「ど、どうしたの?いきなり・・・」
「だって、こうしてないと運命がまた居なくなっちゃうと思って・・・私の前からもういなくならないで・・・もう耐えられない!」
簪を見ると、震えていた。それは儚く、脆い彼女の姿だった。
「簪・・・ゴメン、心配かけたね。俺はもういなくならないよ。これからはいつもここにいると約束する。これからは簪や楯無さんと楽しく過ごすって決めたんだ!」
気づいたらそう言って、抱き返していた。お互いにもう絶対に離さないと言わんばかりに強く、そして優しく・・・
「ねぇ・・・運命?一つ、お願いしてもいい?」
ふいに簪がこっちをまじまじと見ながら聞いてくる。
「うん、何?言ってみていいよ」
俺は静かに聞くことにした。
「今度の日曜日、買い物に付き合って欲しいの・・・いいかな?」
以外と普通のお願いだったが、今の彼女には大切な願いなのだろう。そんな大切な願い、断るわけないじゃないか!
「うん、いいよ!簪と買い物かぁ・・・考えただけでも、楽しみだなぁ!フフフ♪」
「運命・・・ありがとう///」
俺と簪は抱き合ったまま、眠りについた。俺も簪もこんな安心して寝るのは久しぶりだった。
しかし、翌朝医務室に乱入してきた楯無さんによって、俺たちの安眠が妨げられることを、まだ知らなかった・・・
目指せ!打倒枯野連合!!
次回は簪とお買い物します。