千冬side
福音迎撃作戦も(途中、いろいろあったが)無事に終わり、私たちはIS学園に帰ってきていた。独断で出撃した専用機持ちの説教も済まし、生徒たちもいままでと変わらない平穏な日常に戻ろうとしていた。
「・・・・・・・・・・・・」
ただ一人、金森運命を除いては。
私は金森から通信を受けたあと、すぐさま駆けつけた。が、辿りつくと、そこには既に青いISは存在せず、意識を失って倒れている金森だけがいた。見てわかる程の大怪我だったが、幸いにも命に別条は無いらしい。ただ、IS学園に戻ってきても一向に意識が戻る気配が無く、既に一週間が経過していた。専用機持ちの面子が心配していたが、中でも一番心配していたのが・・・
「運命・・・」 「運命くん・・・」
この更識姉妹だ。
運命side(意識不明)
・・・ここは、どこだろう?
あれ・・・俺の名前って何だっけ?う〜ん・・・駄目だ、思い出せない。
『・・・くん・・・さ・・・めくん』
・・・ん?誰かの声が聞こえる・・・この声、聞いたことあるような?
『ごめぇぇぇん!!!ちょっとどいてぇぇぇえ!!!!』
声のする方を見ていると、(現在進行形で)同い年くらいの女の子が落ちてきた。俺はタイミングをあわせて、その女の子を空中でキャッチした・・・お姫さま抱っこで。
「あの・・・大丈夫?」
俺がそう聞くと、女の子がいきなり抱きついて泣き始めた。
『うぅ・・・うわぁああああんん!!!怖かったよぉ〜!!運命く〜ん!!!』
俺は女の子を宥めながら、それとなく聞いた。
「あのさ、今さらなんだけど・・・君って俺の知り合いなのかな?」
そう聞くと、女の子はきょとんとした目で俺を見ながら答えた。
『うぇ?もしかして、登場が久しぶりすぎて忘れちゃったかな?』
何だろう・・・今の発言は凄いメタな気がする。それは置いと居て・・・
「ごめん・・・忘れたというか、君のこと知らないんだ」
俺がそう言うと、女の子はひどく驚いていた・・・・・・言葉だけだけど。
『えぇ〜!!もしかして記憶喪失って奴〜?やっと会いに来られたのに〜・・・』
「それはどうか分からないけど、とにかくそういう事だから諦め『とか言うと思った?』え?」
女の子の言葉に驚きを隠せない俺を差し置いて、女の子は俺に何かを念じ始めた。
『すぐに思い出させてあげるからね〜。うにゅにゅにゅ〜・・・・・・ハッ!!』
女の子が“気”のようなものを俺に向けて発射する。すると、俺の頭の中に膨大な量の情報が入り込んできた。
「うっ!?・・・グッ!・・・何だこれは!?」
俺の頭に入ってきたのは、前世の世界の俺の記憶・・・らしきもの。そこには俺らしき人物の姿が、鮮明に映し出されていた。
明るかった時の自分・・・・・廃人と化した自分・・・・・そして、世界の全てを恨んだ自分。どんどんフラッシュバックされていく記憶の中で、どん底の時の自分だけの場面が、何度も繰り返されていく。
「やめろ・・・・・もうやめてくれ!!」
今すぐ自分の頭の中から消えてくれと、俺は心から願った。
もはやそれは、悲鳴でしかなかった。
「これ以上俺を苦しめるのはやめてくれぇぇぇぇえええ!!!!」
そんな言葉を聞いた女の子はふいにつぶやいた。
『少しは思い出した?今見せたのは、現実の運命くんが一番思っていることを表現したものだよ』
「・・・現実の俺?」
女の子は静かにうなずく。
『そう。つまりさっきのは「無」だよ。“全てを恨んだ結果、無くなってしまえばいい”っていう運命くんの隠れてた気持ちが出てきてしまったんだよ。
そして、今の気持ちの矛先は、現実の運命くんに向いてる』
俺は今聞いたことを分かりやすく整理する。
「・・・つまり分かりやすく言うと、現実の俺が死にそうだってこと?」
女の子は再びうなずく。
『現実の運命くんは何らかの理由で、その気持ちを自分に向けたの。だから現実の運命くんが死にかけているの!』
ハッキリじゃないけど、現実の俺がなぜ自分に向けたのか、なんとなく分かった。
「・・・たぶんだけど、現実の俺は誰かを護りたかったんだと思う。いくら自分で変われたと思っていても、人間の根本的なところはどうやっても変わらないから・・・」
女の子の言葉を聞いて、不思議がっている女の子。
『どういうこと?』
「いくらさっきみたいに、人を嫌いになったり、信じられなくなったとしても、その根っこの部分にある“誰かを護りたい”って気持ちは変わらないってことじゃないかな?ただ、考え方や手段が違うだけだよ」
女の子は驚きを隠せないでいる・・・いや、怒っているのか?
「でも、この決断は間違えじゃないと思うよ。現実の俺も、その誰かを護りたかったから、自分に向けたんだと思う。だったらそれはそれで幸せ『・・・ふざけないで』え?」
俺の言葉を遮った女の子は、同時に俺に平手打ちをした。
「っ!?な、何するんだよ!!」
俺は激昂しながら叫ぶ。が、女の子はそれ以上に怒りに染まっていた。
『ふざけないでって言ってるの!!!なにが幸せよ!なにが護りたいよ!そんな自己満足のために残されたあなたの大切な人の気持ち、ちゃんと考えた事あるの!?』
女の子の言葉が、俺の胸に鋭く突き刺さる。俺は底から絞り出すように反論する。
「・・・だって、仕方ないじゃないか!!誰だって大切な人を護れるんだったら、自分すら犠牲にするに決まってるじゃないか!!それの何が悪いんだよ!?」
女の子も負けじと反論する。
『悪いに決まっているじゃない!!!あなたの大切な人だって、あなたを大切に想ってくれてるんでしょ!!その人を残して自分は居なくなっていいと思ってるの!?あなたは必要とされているのよ!!』
女の子の言葉に思わずきょとんとしてしまった。
「・・・俺は、まだ必要とされているの?だって、俺が居たらみんなに迷惑がかかっちゃうのに?」
女の子はニヤリと微笑んだ。
『だから、神である私が運命くんに会いに来たんでしょ?』
気づいたら俺は涙を流しながら、笑っていた。
「本当に・・・本当に戻っていいの?」
俺が言い終えるのと同時に、女の子は俺を抱き寄せた。
『とても辛い道のりだと思うけど、ちゃんと生きて、全部思い出して彼女たちの希望になってあげて。今度は私も手伝うから』
俺は静かにうなずいた。
「うん・・・分かった。俺、もう一度頑張ってみるよ」
言い終えると同時に、意識が薄れてきた。
「もう・・・戻る時間だ。ありがとう・・・」
女の子がなにかを言っているが、聞き取れない。でも、すごく可愛い笑顔だ。
さぁ、再スタートだ!
楯無side
運命くんが臨海学校から帰ってきてからもう一週間が経った。織斑先生の話によると、あの青いISと一騎打ちをしたらしい。最初に見たとき、あのISは強いと思った。私なんかよりずっと・・・。
「お姉ちゃん・・・」
簪ちゃんが静かに聞いてくる。帰ってきてからずっと、この調子だ。
「なにかしら?簪ちゃん」
「運命・・・大丈夫だよね?死んじゃったりしないよね?」
この子は本当に優しい子ね。運命くんと同じくらいに。
「大丈夫よ!私たちがこんな顔してたら、運命くんが泣いちゃうかもしれないよ♪」
「それは駄目!・・・見てみたいけど」
あら、簪ちゃんも言うようになったわね。何したのかしら、運命くん?
「・・・うぅ・・・ん?」
わずかに聞こえた運命くんの声によって、私たちの意識が一気に運命くんに向かった。
『運命(くん)!?』
私たちはゆっくり運命くんの身体を起こしてあげると、すぐに織斑先生に連絡するように簪ちゃんに指示する。私は運命くんの意識が戻っているか検査する。
「運命くん、大丈夫?私がちゃんと分かる?」
そう聞くと、運命くんは首を傾げて言った。
「あなたは・・・誰ですか?」
それはまさに、再スタートに相応しい言葉だった。
再スタートだぁぁああ!!!
おめでとうと言うべきなのか、御愁傷様と言うべきなのか、よく分からない微妙なところですね。
仕様の話ですが、早くて次の話からになります。前書きと後書きが少し変わると思います。
では、さらば!