屋上での出来事から時は過ぎ、現在は放課後だ。
(明日から箒さんの指導を始めるとして、今日は僕が顧問を担当する生徒会のメンバーと初顔合わせをするはずだ。一体どんな人たちなんだろうか?)
そんな事を考えながら、僕は生徒会室へ向かった。
「今日から生徒会の顧問を担当することになった、金森運命です。よろしくお願いします」
僕は今、生徒会室にて自己紹介をしている最中です。やはり自己紹介は何回やっても慣れないですね。正直、苦手です。
「何か分からないことがあったら、虚ちゃんに聞くといいわ。って言っても、運命くんなら大丈夫だと思うけどね♪」
そう言って微笑む楯無会長。なんかこの学園の人たちは、ずいぶんと僕の事を高く評価しすぎではないだろうか?
「じゃあ自己紹介も済んだことだし、私は行くわね。虚ちゃん、あとよろしくね」
楯無会長はいい頃合いだと言わんばかりに手を鳴らし、生徒会室を出た。それに虚さんが鋭く返した。
「心配しなくても、今日の分の仕事は明日にまわるので御安心を」
ドアの向こうで楯無会長がずっこけた音が聞こえた。
『・・・・・・・・・・・・』
物音一つしないこの静寂の中。一人が心地よいと言うならば、もう一人は息苦しいと言うだろう。少なくとも、僕はそう思う。
(ん〜・・・なんだろう?僕が思っていた生徒会の空気と違うな。いや、違いすぎるな。楯無会長があんな感じだからもっと緩いと思っていたのに、みんなバリバリ仕事してんじゃん!)
個人的に言うと、こういう活動はみんなで楽しく和気藹々としたいと思うのだけど、おそらく他のみんなは逆なんだろう。虚さんは見た目通りに真面目なのはいいとして、問題は一年生組だ。たしか、更識簪さんと布仏本音さんだったよな。何でか知らないけど二人とも目が座っている気がする。言わずとも、おそらく原因は僕だろう。元々あまり人に好かれるタイプではなかったし・・・・・あれ?僕はいつの話をしているんだっけ?なんか引っかかるんだよなぁ。知ってるんだけど思い出せない感じ?
「金森くん?どうかしましたか?」
「ッ!いえ、何でもないです。すみません」
「そうですか。何かあったら言って下さいね?」
あ、危ない危ない。一人時間旅行していたら、虚さんに話しかけられてしまった。気づいてるかどうか知らないけど、虚さんって地味に距離感が近いんだよな。主に顔の距離が。僕の正面の席という関係で、僕の持っている書類を覗き込むと自然と強調されるんだ。何かは言わなくてもわかるよね?
「えっと、次の書類はっと・・・」
手に持っていた書類を片付けて次の書類を探す。少し探すとすぐに見つかった。が、場所が悪かった。何故ならそれがある場所は・・・・・
「・・・・・・・・・」
今最も注意すべき人物である更識簪さんの手元だからだ。
(よりにもよって何であんな所に・・・・・正直、あまり好かれてなさそうだから関わりたくないなぁ。でも、仕事だから・・・)
僕は意を決して、簪さんに話しかけた。
「あ、あの・・・簪さん。ちょっとそこにある書類をとって貰えますか?」
「・・・・・・・・・」
あ、あれ?スルーですか?違うよね?
「か、簪さん・・・その書類を・・・」
「・・・・・・・・・」
・・・・・仕事に集中してるだけだ。そうに違いない、というかそうじゃないと困る。
自分にそう言い聞かせ、最後のチャンスとして聞いてみた。
「すみません・・・書類をとって下さい」
「・・・・・はい、本音」
「は〜い、かんちゃんの仕事おしま〜い」
「うわあぁぁぁぁぁああ!?!?」
僕は遂に耐えられなくなって、すぐさま生徒会室を飛び出た。
「簪様、少しやり過ぎたのではないのですか?あれでは金森くんが可哀想な気が・・・」
「分かってます・・・でもこうでもしないと抑えられないんです。運命に会えなかった夏休みの期間が耐えられなくて・・・本当だったら今すぐにでも運命と一緒にいたい。運命と話したい。運命を側で感じていたい!でも、そうして運命に甘えていた結果が今の状況です。運命の苦しみに気づいてあげられなかった私の・・・・・せめてもの償いです」
「そうですか・・・・・そこまで言うのなら、私から言うことはありません。本音もいいわね?」
「う〜ん。わかったよ〜お姉ちゃん」
なんだかんだ言って、この二人はいつも助けてくれる。それが“家”としてなのかそれ以外かどうかは分からないけど・・・。
「すみません、今日は先に失礼します」
私は二人に挨拶をして、生徒会室の扉に手を掛けた。その時、不意に声が聞こえた。
「今日はとても気分がいい。そんな日は独り言を話してしまいます。金森くんは強い。同時にとても脆い。どちらも彼の持つ純粋さからくるもの。純粋ゆえに傷つきやすい。純粋ゆえに汚れやすい。それが分かれば、どうするべきかは自ずと答えは出るはず」
「えっ・・・」
振り返ると虚さんは視線をそらし、本音は二ヒヒ〜と笑っていた。二人なりの応援に思わず笑みがこぼれた。
「二人とも・・・私、頑張る!」
私は二人の応援を背に受け、生徒会室を出た。
(弱い自分はもういらない。運命を孤独にはしない。強くなって、運命を護る!)
そこにはもう弱い少女の姿は無く、真の強さを求める少女の気高き姿があった。
自由の魔弾さんのHP 100/10000