簪side
「はぁ、はぁ・・・何とかなった・・・の?」
上空には、数多の閃光が浮かんでいた。もちろん、命を奪うような攻撃はしていないし、尚且つ撤退していくのを確認したからこそ、安堵しているのだけれど。
その時、なんとも言えない不快な感触ともいうべきものを感じた。
「・・・!?何なの、この感じは・・・」
気配のする方向へ視線を向けると、見たことのない機体が急接近して来るのが見えた。
「やっと見つけたぞ。翼を持つIS・・・いや、“ガンダム”!!」
“フリーダム”と同系統の機体のように見える。白銀に輝くボディは、背中に光景のようなバックパックを負っていた。
私はライフルで狙い撃ちすると、その機体はビームをかわし、何かをバックパックから放出したように見えた。なおも狙撃を続けようとしていた私は、ふいに何かを感じて反射的に機体を動かしていた。一瞬前まで私のいた空間が何本ものビームで薙ぎ払われる。目の前の機体は何の動きも見せなかったのに。
「これって、箒やセシリアさんのと同じ!?」
「あんな出来損ないとは違う!この“ドラグーン”はな!」
パイロットそう言い放つと、再び特殊武装が攻撃を再開する。私はすでに、それがとてつもない武装である事に気づいていた。全方位から発射されるビームは恐るべき脅威であり、実弾と違って絶対防御でさえも貫通するという事も。現実に、ビームを発射する分離式高速機動兵装自体を目視することすら不可能に近い。だけど、私は新たに備わった力“SEED”を発動する事によって、その射線を次々とかわしていた。
しかし、その能力にも限界があった。特殊武装を展開するごとに、射撃の精度は上がっていき、ついにビームライフル、シールドを破壊した。
「ようやく果たせる・・・この世界の歪みを。この枯野狂也の手でな!!」
揶揄するような枯野の台詞に、私は機体を立て直しながら叫び返す。
「あなたの考えは間違っている!!こんな方法で何かを正せる事なんて出来ない!」
私の言葉を聞き、枯野は一瞬沈黙を見せる。でも、すぐに高笑いするような声が聞こえた。
「何も知らないお前達に一つ教えてやる。私が何故こんな手段を持ち出してまでここを潰すのか。それは、この世界におけるISの定義を奴が変えてしまったからさ」
枯野の言葉に私は反応した。
「・・・奴?それってどういう事?」
「この世界に入り込んだ異物の事だ。本来なら存在しない人物たちと言えば身に覚えがあるんじゃないのか?例えば、金森運命」
「・・・!?」
私は驚きを隠せなかった。運命が元々この世界に居ない存在?なら、今までの時間は何だったのか。
枯野は説明を続ける。
「この世界の・・・正規の物語において“二人目の男性IS操縦者”などというものは存在しない。また、奴の持つISは外の世界より持ち出されたものである!故にこの世界の歪みの原因は奴なんだよ」
私は愕然とした。確かに前から疑問に思っていた。何の前触れもなく現れた高性能のIS。運命自身の適正の高さ。全てを物語っていた運命の行動。それらの疑問が枯野の言葉によって全てが解決されていく。そしてそれは、運命というイレギュラーが加わったことで、世界の崩壊が始まったことを示唆していた。
「お前のそのISも、奴の手によって作られたもの。私は奴が外から持ち込んだ技術を全て破壊し、リセットする。奴に関わった者は全て、殺す!」
枯野はライフルを構え、こちらにビームを発射した。運命によってもたらされた“フリーダム”すらも破壊する気だ。
「・・・っ!?」
すでに被弾しているフリーダムは回避運動に入るも虚しく、ビームは自分を貫くと思われた。しかし、一瞬前にいた空間に自分の姿はなかった。何者かが戦闘に介入したのだ。
《もう誰も・・・死なせない!!》
エクシアだ。彼が“トランザム”を使って、私を一瞬で移動させたんだ。
「あなた、どうして・・・」
驚く私を気に留めず、エクシアは言葉を放つ。
《俺の事は気にするな。それにまだ役者が足りない》
言葉の意味を図りかねていると、エクシアは誰かと通信を始めた。
《・・・おい!聞こえているか?彼女は救出した。出番だ》
すると、遥か上空から轟音が響き渡った。それは、一度聞いた事のある、いや“戦った事のある”ISのものだった。
「あ、あなたは“銀の福音”のパイロットの・・・」
「久しぶりね、天使のお嬢さん。早速で悪いけど、ここからは私たちが加勢するわ!」
恐らく状況が一変したのだろうか。かつての敵だったエクシアや、ナターシャさんがIS学園側についてくれるんだ。
「私の敵になるというのか!アメリカは!?」
枯野の言葉に対して、ナターシャさんが戯けた様子で答える。
「悪く思わないでね、枯野さん。アメリカは日本の敵になるわけじゃない。ただ、IS学園に借りを返しにきただけなの。それに、貴方より運命くんの方が好みだし♪」
そう言いながらナターシャさんの声は、ひどく楽しそうだった。運命は渡さないけど・・・。
「・・・貴様ァ!!!」
枯野は怒りをおぼえる。彼はこの状況を引き起こしたのが誰かを知っているからだ。
ナターシャさんは、更に言葉を続けていく。
「それでは、今世紀最大のサプライズをお見せしましょう!我らがボスの登場だ〜!」
ナターシャさんの遥か後方に見える一隻の戦艦から、一つの光が飛び立った。そしてそれは、猛スピードでこちらに近づいている。
「お、お前は!!」
いち早くその姿を確認した枯野は、驚きを隠せなかった。私もメインカメラを展開し、その姿を確認した。
「枯野狂也・・・。俺がお前を返してやる!絶対に!」
そこにいたのは死んだはずの第二の男性IS操縦者の金森運命だった。