こちらの更新は長らく休ませていただきまして、ようやく一歩を踏み出す勇気が出たというところでございます。
自己満足の駄作ではありますが、一つの物語としてケジメをつけたいと思います。
枯野side
私は今、目の前に佇む二人の少年を見据える。一人はこの世界から愛され、もう一人は世界を拒絶し、再び立ち上がった。歩いてきた道は違えど、様々な出来事が彼らを成長させ、この場に立たせたのだろう。
それが運命なのか、あの女の入知恵なのか。
「私の敵は、やはりお前たちか。・・・フッ!私はとことん世界に嫌われているらしい」
私は彼らの前で自嘲的に笑ってみる。本音というものは時に恐ろしく感じる。この言葉の真意は、同じ境遇の金森運命にしか理解できないはずだ。奴と出会ってしまった者同士、奴に運命を捻じ曲げられた被害者同士。
「あなたに何があったか知らないけど、幾ら何でもやり過ぎだろう!こんな事が許されるはずが無い!あなただって分かっているでしょう!?」
この世界の真の主人公・織斑一夏が、私に激しい声で問いかける。そんな綺麗事に聞く耳を持たん、今までの自分ならそう言っていたに違いない。しかし、今の私はそうではない。S1、S2を目の前で失い、そして過去の自分とも言える金森運命の存在が、少なからず影響しているのだろう。
「確かにそうかもしれない、こんな事が許されるはずが無い。そんな事を考えていた時もあったよ・・・」
私は今、どんな顔をしながら話をしているだろうか?織斑一夏が「だったら・・・!」と同情的な言葉を言いかけていたが、私はそれを遮るように真意を伝える。
「だが、その考えは甘かった。正義感だけでは何も変えることが出来なかった!だから、私は権力を手に入れた。世界を動かすために、罪のない人々を守るために!」
私の言葉を聞き、動揺を隠せないでいる織斑一夏。それに対して、ある程度予測できていたのか、金森運命の方は静聴を続けている。
少し話しすぎたと自分に苛つきながらも、私は再び目的のために動き出す。たとえ若い彼らの未来を奪うことになるとしても。
「もう分かっただろう、私を説得しようなどという甘い考えは捨てた方がいい。私には私の、お前たちにはお前たちの信じるものがある、それだけのことだ。だが、戦場に出てきた以上、命のやり取りをする覚悟は・・・出来ているんだろうなッ!!!」
きっと私は、今必死の形相で叫んでいるに違いない。だが、そんなことはどうでもいい。私と金森運命、同じ運命に選ばれた者どうしが戦うことに意味があるのだから。この戦いに勝ったものが自らの運命を掴み取ることができる。
神などというまやかしの存在に縋ることのない、本当の意味での自由を。
運命side
“プロヴィデンス”が凄まじい勢いで突っ込み、一夏の白式にビームを撃ち込む。さらに、残りのドラグーンを矢継ぎ早に展開させ、確実に逃げ場を無くしていく。
「一夏ッ!」
友の危機に俺はハッと我に返る。あわてて加勢しようと“プロヴィデンス”めがけて飛び出すが、その進路を阻んだものがあった。
「枯野様の・・・邪魔しないで!」
深緑の機体“カオス”ーーS3だ。
ビームサーベルを抜き放ちながら、S3はなおも言いつのる。
「枯野様を・・・これ以上苦しめないでよ!」
「何を言って・・・!?」
俺は困惑と憤りの入り混じった感情に支配されながらも、やはり気になるのは彼女たちの存在だ。
俺はアロンダイトを抜き放ちざま、深緑の機体へ振り下ろす。
「なぜそこまでして枯野に入れ込む!?奴が何をしようとしているか分かるだろ!」
すると、S3は憤りを込めて叫んだ。
「あんたなんかに・・・オリジナルなんかに・・・何も分かってないくせに!」
S3はシールドを掲げ、その斬撃を受け止める。
そして、その想いの内を露わにしていく。
「オリジナルのあんたが、何を知っている!?家族と呼べる存在も無く、生きる意味を見出せないことがどれほど辛いか!自分の力で自分の世界を切り開ける喜びを!知っているのか!?」
俺はビームブーメランを抜き打ちに投げつけた。両側から同時に襲いかかる光刃を、S3はシールドで払い鮮やかにかわす。
「クッ・・・!!」
俺は抜刀して一気に迫った。S3はまたもやその刃を受け止め、必死でその名を叫ぶ。
「オリジナル・・・!金森、運命ェ!!」
その声が、その姿が、自身と重なってしまう。俺は一瞬ひるんだが、すぐにまた刃に力を込めた。
ためらってはいけない。これでは何も守れない。こいつは枯野の仲間、敵なんだ。
「うぅああああ!!」
体の奥で何かが弾け、意識が鮮明に冴え渡る。
俺は強く相手を突き放しながらいったん下がり、次に急加速する。光の翼が大きく後方に流れ、幻影を生み出す。一気に眼前に迫った深緑の機体を睨みながら俺は確信する。
これなら、やれる!
S3は体勢を崩したままだ。その上に俺の刃が降りかかる。刃が深緑の機体を両断するというとき、その刃がS3の頭上で止まった。
もちろん、S3が何かをした訳ではない。
「オリジナル・・・
どうして泣いているの?」
刃を止めてしまっていたのは俺自身だった。
俺は敵の前にもかかわらず、その手を止めてしまい、しまいには涙を流していた。
「分からない・・・敵を倒して、仲間を守って、悲しいことなんか何もないのに!なんで止まっちまうんだよォ!!」
俺は強く嫌悪感を抱く。人には偉そうなことを言っておきながら、自分はどんな体たらくだ。
「オリジナル・・・それは違う。私とあなたは同じ血を分けた家族なんだよ。傷つけて悲しくないことなんか、無いんだよ」
S3はそう言って、俺を優しく抱きしめる。不思議なことに嫌な感じはしなかった。そして言葉の本当の意味を理解する。
(そっか、勝手に他人だと思っていただけで、本当はずっと繋がっていたんだ。この世界でもやっと見つけた、本当の意味での家族を)
もう既に戦う意思は無く、先ほどまで発動していたSEEDも消えていた。俺は再びS3の方に向き直し、他の家族の行方を問いかける。
「S3、君の仲間の生体反応はあるか?」
「ちょっと待って・・・あった、微弱だけどまだ意識がある」
俺はホッと胸を撫で下ろし、S3に救助に向かうように頼む。
「S3、君は君の仲間を助けるんだ。俺にはまだやることがある。枯野の止めないと・・・」
そう言って枯野のもとへ向かおうとすると、不意にS3が俺の手を掴む。そして、そのまま体ごと自分の方へ引き寄せた。その結果・・・
「・・・ッ!!?」
俺とS3の唇が重なっていた。
突然の出来事に、正常な判断が出来ずに戸惑ってしまう。対するS3は平然としていて、何事もなかったかのように言葉を続ける。
「いってらっしゃい、あなたと枯野様のどちらが勝っても、私は今まで通りの生活をする。でも、待ってる人がいるのなら、その人のために全力で行きなさい。分かった?」
まさか自分に説教されるなんて、と内心思いながらも、その意に応える。
「・・・あぁ、行ってきます!」
俺は守るべき人を背に、友の救出へと急ぐのだった。