IS-インフィニット・ストラトス-一度死んだ男が往く 作:駄目男。
...まず感じたのは、寝床の冷たさだった。
「む...う...?」
いつもの布団の温かさ、柔らかさはいずこへ行ったのだろう。床は非常に冷たく、固い。まるで金属の上に寝転がっているようだ。
「ん...布団はどこかの?」
目を開けず、腕を動かして布団を探そうとする。しかし、腕は動かない。まるで石の如く長年固まっていたかのようだ。
「ん~......ん?」
必死に腕を動かそうとしていたら、誰かに手を持ち上げられた。
暖かい。それ以外の言葉が見つからなかった。そしてその暖かみが記憶の眠りを覚ましていく。
ゆっくりと、重い瞼を開けた。目に入る光が、今まで生きてきた中で最もまぶしく思えた。
...だが。
「おっ...おがえり、ぼーちゃん!!!」
目の前の涙を流した笑顔の方が、遥かにまぶしく輝いていた。
世界のどこかに存在する、篠ノ之束の研究所。
彼女こそ唯一IS(インフィニット・ストラトス)の核を作成することが出来、そしてここでは新たなISが開発され続けている。しかし、今日の研究所は少々違うようだ。
「十年後...か」
「そう、白騎士事件からもう十年も経っちゃった」
病人用のベッドにいるのは大芳望、かつて死亡したその人である。そのベッドの横では、篠ノ之束が椅子に座ってうつむいていた。
「あの...ごめんなさい。束さんの勝手でこんな事しちゃって」
「ん?何故謝るんじゃ?」
「だって...」
どうやら束は自分をどうにかして生かそうと、コールドスリープ状態にして保存していたらしい。そして十年で発展した万能細胞の技術を用いて心臓を複製、こうして自分は生き返った...と。
「私ね、ぼーちゃんが目覚めるまではずっと一直線だったの。絶対にまたぼーちゃんと話せるんだって。…でもね、今考えたらなんて自分勝手なんだろって。一度死んだような人を生き返らせる真似をして、ぼーちゃん自身のことを全然考えてなかったなって。それで…それで……」
どうやらそこに引け目があるらしい様子。確かに彼女の行った行為は人道からは外れているのかもしれない。だが...
「いいか、儂は束に大いに感謝しておる」
「え...?」
「確かに十年後に生き返って浦島太郎状態じゃが、それは同時にお前が十年間も頑張ってくれた、ということじゃろう?儂は寝て起きたら十年経っていた気分じゃが、お前はこの十年間ずっと頑張ってきてくれた。何かと苦労も多かっただろうにのう。じゃから儂はお前にこういうよ...ありがとう、親友」
「っ!....ぼーちゃん!!!」
その後、いきなりベッドに束が飛び込んで泣きついてきたのは言うまでもない。
「ぼーちゃーん♪」
「ん~なんじゃい?」
「ぼーちゃんだー、あの頃と変わらないぼーちゃんに束さんは安心したよー」
「お前は相当成長してしまったがのう。なんじゃいその脂肪の塊は、体つきもすっかり大人になりおって」
「そこは母性の象徴とか、別の言い方あるんじゃないのー?でないと触らせてあげないよー?」
「残念ながらそのつもりは無いのう、まず体も自由に動けんし」
「うーん、まずはリハビリからだねっ。じゃあ束さんがミニスカナースで体の隅から隅までほぐしてあげよー!」
「ほぐしてもらえるのはありがたいが、ナース服は却下じゃ」
ベッドの上で座りながら語らう二人、その光景は十年の時を超えてもなお「親友と駄弁る姿」そのものだった。
「そうだ!ぼーちゃんのIS、束さんがしっかり修復しといたからね!」
「まじか、アレを直すのは骨が折れただろうに」
「天才の束さんにかかればちょちょいのちょい......でもなかったかなあ。なんなのアレ、大幅に内部構造が変わってたから結構大変だったんだよ?」
「当たり前じゃ、ありゃ儂なりに改造してあるからのう」
次回、ようやく主人公のIS登場。