FE覚醒~誓いの剣と精霊の弓~   作:言語嫌い

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二日後はテストとレポート。
……僕は何も見ていない。うん、知らない。

現実逃避の果てにできた第二十五話です。どうぞ




第二十五話 再起

はるか遠い地にて、一人の少女の命が彼の手の中で消えようとしていた。しかし、それは幻。彼の消えてしまった記憶にすぎない。

 

だが……

 

――――ごめん……ね、――ル。私は、ね…………

 

それは時を超える。

 

 

時は少し遡り、クロムがルフレから戦力外通告を受けたころ、イーリスの軍師ビャクヤは未だに市内で戦闘を繰り広げていた。しかも、ひとりで。彼の仲間が聞けば間違いなく激怒するようなことを平然としてしまっている辺り、未だ彼の根幹にある思いは消えてないのだろう。記憶を失っていた彼が彼女のことを忘れていなかったように、この思いも忘れてはいなかったのだろう。

 

――――あなたのことが、好き、な……んだ、よ……

 

その告白をした少女はすでに彼の前にはいない。少女は彼の手から零れ落ちた戦いの犠牲者。旅の連れにして最初の仲間である少女。少女が与えてしまった心の奥底に眠るその想いは、彼を縛り決して放すことはない。そして――

 

 

――――強くなろう。いや、僕は強くなる。もう誰も失わぬように……

 

 

その決意の裏に隠れてしまったもう一つの決意に彼は気付けない。

 

 

 

 

 

 

 

彼は押し寄せてくる敵に対し、一定の距離を取ると魔法で攻撃を加えていく。

 

「セット、〈ディヴァイン〉!!」

 

もう幾度目であろうか。彼の弓から放たれた光魔法はその周囲のペレジア兵を巻き込みながら弾けた。そして、ほんの僅かばかり崩れた隊列に生じた隙を見つけては、素早く距離を詰め、手に持つ剣で敵を無力化していく。

 

(精霊の剣というのは、ほんとにこういう時には便利だな)

 

どこか、的外れなことを考えながらも、彼はその手を休めることなく敵との戦いを続ける。数多の敵を切り裂いたその剣は本来ならすでに使い物にならなくなっているはずだというのに、刃こぼれはおろか、血のりさえも残っていなかった。

 

そう、これこそが彼の持つ剣が普通とは違うところ。精霊の剣と言われる所以でもあった。決して折れることなく、常に最良の状態を保ち続ける剣。持ち主の意思に応じて大きさを変え、持ち主の手に収まる剣。彼の使う弓には劣る部分もありはすれど、本来なら実現不可能ともいえる性能を宿している。その原理は実のところ使用している本人すら知らないが……

 

「さてと、時間を稼ぐとは言ったけど、これじゃきりがないな」

 

そう呟くと、弓に魔力を集め始める。もちろん、この間も手をゆるめるような真似をしてはいない。彼は弓に一定量の魔力を蓄えれたことを確認すると、即座に言霊を紡ぐ。

 

「〈ディヴァイン〉」

 

今まさにビャクヤに切りかかろうとしていた敵は、唱えられた光魔法の直撃を食らい吹き飛ばされた。また、彼の周囲からまるで彼を守るようにして周囲へと拡散する魔法に、彼の周りにいた敵は巻き込まれ弾き飛ばされていく。彼はそんな敵をしり目に見ながら敵の集団の中を走り抜け、ある程度の距離を得たところで立ち止まった。

 

「さて、もう一度見せようか。今度はあの程度の威力じゃないよ」

 

彼はそう言うと弓を引き絞りながら、光の矢をつがえ、魔力を凝縮させていく。つがえられた矢に込められた魔力は先ほどまでの比ではなく、上級魔法に届き、それすらも上回りそうであった。素養のないものであっても、それだけの魔力ともなれば感じ取れる。故にペレジア兵は慌てて我先にとこの場を去ろうとする。近づいても無駄なことが先ほどまでの攻防でわかっているのだから当然の反応である。

 

「逃がすと思うかい? セット! 〈アルジローレ〉!!」

 

彼から放たれた光魔法の矢は逃げ遅れた一人の兵士に当たると、その兵士を中心に広がっていき、辺りを光で埋め尽くした。

 

 

 

 

そして――――

 

「うそ……」

 

この光が一つの奇跡を生む。

 

「なんで、なんで、まだここにいるんですか?」

 

その光は一人の少女の目に留まり、その少女を動かす。彼女は進んでいた道を引き返すと先ほどの光を目指して走りはじめる。その足取りに迷いはなく、一直線に彼のもとへと進んでいく。

 

「お願い、教えて……今、彼はどこにいるの?」

 

そんな彼女の問いに、彼女の手の中で握られた首飾りが淡く光を放つ。しかし、その答えを得てもなお彼女の顔から焦りが消えることはなかった。彼女は知っていたから。いや、彼女しか知らないのだから。このことは――偶然知った彼の秘密。誰も知らないからこそ、彼女にしか救えない。

 

「今、行きます。だから、どうかご無事で……」

 

どこか泣きそうな顔でそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

完全に気配を消した少女は一人この部屋の主の帰りを待つ。その手には彼女の愛用する短刀が握られている。

 

「……フラム、しんぱい……するかな?」

 

少女はそう呟くと慌てて口を両手で押さえ、きょろきょろとあたりの様子をうかがう。幸い、部屋の付近には人の気配はなく、先ほどのつぶやきは誰にも聞かれなかった。少女はほっと息をつくと再び気配を殺し、この部屋の主――ペレジアの王ギャンレルの帰還を待つ。

 

少女の名はカナ。元ペレジアの暗殺者でエメリナ暗殺の任務に失敗して死にかけていたところをフラムに助けられ、現在フラムの監視下でイーリスの自警団に所属している。そのため、普段はフラムと一緒にいるのだが、珍しく彼女の隣にはフラムの姿がない。

 

「っ! きた……」

 

――それは何故なのか。

 

部屋の扉が主を向かい入れるために開かれ、そこから彼女の望む人物であるギャンレルが現れた。彼女はその警戒の薄れた元主の姿を視界に収めると即座に動きだし肉薄する。

 

「ん? なっ!? お前がなぜこ……」

 

カナが接近したことで気配に気づいたのだろう。ギャンレルはカナの方に振り替えり少女の姿を目に収め、驚きに身を固める。気付かれると思っていなかったカナは、ギャンレルの実力を過小評価していたことに気付くが、覚悟を決めてそのまま突っ込む。

 

「っ! ……かくご、ギャンレル!!」

 

少女の振るった刃はギャンレルの首筋を切り裂いた――が、浅い。ギャンレルがとっさに少し後ずさったことにより刃は彼の首を深く傷つけることはなかった。だが、それでも十分致命傷と言えるレベルではあった。すぐにどうにかなることはなくとも、このまま戦闘を続ければ確実にギャンレルを殺せるでも、それじゃ足りない。カナはさらにもう一歩踏み出し今度は心臓を狙って、先ほどとは違う短刀を突き立てる。

 

「ぐ……くそ」

「まだ……おわりじゃない!」

「がはっ! てめぇ……」

 

その一撃は彼の左の腕に防がれ通ることはなかったが、そこで攻撃を止めるわけにはいかない。最初に振るった刃を再度振りかざし彼の右胸を貫く。ギャンレルは乱暴に腕を振るいカナを弾き飛ばすと片膝をつく。カナは受け身を取って衝撃を吸収すると立ち上がるとギャンレルに向き直り、とどめを刺すためにもう一度駆けだす。

 

しかし、その攻撃は通らない。再度距離を詰めようとしたカナの前に黒い障壁が現れ彼女のいく手を阻んだ。

 

「ふぅ、間一髪だね。大丈夫かい、ギャンレル」

「そう、見えるっていうなら、今すぐ城にいる司祭たち、を呼んで、お前の目の治療をしてもらうぜ」

「冗談さ、ギャンレル。その証拠に君の治療をしてるじゃないか」

 

現れた人物はギャンレルに近づくと彼に近づきその傷の治療を始めた。しかし、すぐにその顔を歪める。そして、カナの持つ短刀を見て納得したようにうなづく。

 

「やけに傷の治りが悪いと思ったら、その魔剣か。傷つけた部位への魔力干渉を妨げる実に暗殺向けの武器だからあげたけど――――裏目に出たね」

「……」

「さて、君には死んでもらおうかな」

 

そう言って、少女へと手を向けるその人物を片膝をついた状態のギャンレルが止める。ギャンレルはその人物に治療に専念するよう言いくるめると、カナに視線を写す。

 

そのまま、静かに見つめあっていた二人だったが、ゆっくりとギャンレルが口を開き、その沈黙を破る。

 

「まさか、お前が生きているとはな……それで、俺に何の用だ? 向こうの軍師から暗殺でも命じられたか?」

 

その問いに彼女は首を横に振ることで答えた。

 

「それなら個人的な理由で来たってことか。なるほど、俺もあいつも予測できないわけだ」

「…………」

「だがな、詰めが甘い。殺す、なら。確実に息の根を止めろ。そう、教えなかったか?」

「ひつよう、ない。あなたは死ぬ、から……」

「そうか……だが、その結果が今の状態だ。俺は死なず、お前の命はすでに俺の手のひらの中に――――」

「でも、そのまえに、きいてほしかった。決意を……」

 

要領を得ない彼女の言葉とは裏腹に、少女の瞳には今までにない強い意志の光が宿っており、彼の行動を躊躇させる。まるで機械のようだった少女は、意思を持つ人として対等な立場で彼の前に立っていた。だから、彼は聞きたいと思った。何も知らず、何も感じず、ただ朽ちゆくだけだった少女が何を想ったのか。故に彼女に促す。

 

「……言ってみろ」

 

ギャンレルのその言葉にカナはこくりとうなずく。

 

「わたしは、もう、道具じゃない」

「そうか」

「うん。これは、け、けつ……えぇと、なんだっけ。えぇと……」

「…………決別、といいたいのか?」

「うん、そう。けつべつ。過去とのけつべつ」

 

彼女はそっと目を閉じて胸の前に手を持ってくる。何かに誓うように、そっとその手を自身の胸に当て、詠うように言葉を紡ぐ。

 

 

 

「――――わたしは、終わらせる。今までのわたしを。わたしははじめる。殺し屋としてのわたしじゃない、カナとしての私を。だから、そのためにもあなたを超える必要があった。主としてわたし(カナ)わたし(暗殺者)としてうごかすことのできる、あなたを」

 

 

 

ギャンレルはそんな少女の独白をどこか満足そうに/寂しそうに聞いていた。魔法によりある程度体力の戻った体に力を入れゆっくりと立ち上がる。彼の目の前の少女の周りには薄い靄がまとわりついていたが、目を閉じてしまった彼女は気付けなかった。そう、それは、全てを奪う死の靄。彼女が再び目を開けた時、その目に映るのは、絶望だけだ。

 

「ふん、ずいぶんと自分勝手な主張をするようになったな。そもそも、俺はお前が生きてることさえ知らなかった。ここにお前が現れなければ、お前にかかわることはなかったろうよ」

「え……うそ」

 

告げられた真実と、自分を取り巻く状況に少女は愕然とした様子で目を見開く。その様子を見て、ギャンレルはため息交じりにうなだれると、少女に追い打ちをかける。

 

「それこそ、俺にこんな宣言をせずとも、お前を拾ってくれた軍師のもとで平和に過ごしてりゃよかったんだよ、カナとして生きたいんならな。そうやってりゃ、ここで、こうして命を散らすこともなかっただろうな」

「あ…………い、や……」

 

剣を抜き放つ音が部屋の中にやけに響いて聞こえた。少女はおそらく自分(カナ)を手に入れるためにギャンレルを殺そうと思ったのだろう。過去を捨てるために。しかし、それは、実際には意味を持たないことだった。そんなことをしなくとも、彼女は助けられたあの時から、全ての束縛から解き放たれていたのだから。だが、今更そんなことを知ったところで無意味だった。

 

「さて、ギャンレル。あれはどうするんだい? 一応、逃げ場も塞いだし、力も先ほどからすっていたから、もうないだろうし。好きに料理できるよ」

「…………」

「う……や、だよ。まだ、死にたくない……」

 

どこか楽しそうに語るその人物にギャンレルは何も返さずに、黒い靄の中、怯えた表情でこちらを見上げる少女に近づく。すでに立つこともままならず、地べたにぺたりと座り込む少女の瞳からこぼれるように限界を迎えた涙がこぼれ落ち、頬を伝う。

 

「あ……」

「……じゃあな。()を殺そうとしたんだ、その罪はお前の命を持って償ってもらう」

 

少女はなおも生きようとあがく。少しでも、目の前の死から逃れるために後ずさる。だが、ここは部屋の中。いずれ壁にたどり着き、逃げ場を失う。部屋の隅まで何とか移動した彼女が振り返り見たものは、冷たく少女を見つめるギャンレルの瞳だった。

 

「…………もう、いいな」

「た、助けて……」

「…………」

 

少女に突き付けた剣先を振り上げ――――狙いを定めて一気に振り下ろした。

 

「フラム……」

 

少女の視界は黒く染まり、彼の視界には赤い鮮血が舞う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「構うものか……」

 

男はつぶやく。

 

「終わらせよう」

 

青年はつぶやく。

 

「助けて……」

 

少女は求める。

 

「死なないで……」

 

少女も求める。

 

「「見つけた」」

 

彼らはつぶやく。

 

「生きて……」

 

女はつぶやく。

 

「生きろ……」

 

男はつぶやいた

 

 

 

この日、数多の力が解放され、地上に現れた。そして、彼はその秘密を知る/知られる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フェリア王城の謁見の間にイーリスの自警団と、フェリアの王達は集まっていた。ペレジアからのあの逃走劇は奇跡的に切り抜けられた。しかし、その代償は大きかった。連れて行った精鋭であるフェリア王の軍勢は大幅に削られ、途中からいなくなっていた輸送隊のフラム、カナの行方が分かっていなかった。そして何より、この連合軍の要たる軍師ビャクヤの不在が大きく影響を与えている。

 

普段なら、何らかの策を出してくれる存在、沈みそうになった皆を引き立て、前へと導いてくれる存在がいない。このことがこの場の雰囲気を重くし、皆の思考を悪い方へと誘導する。

 

そんな中、クロムが口を開く。

 

「ルフレ、みんな……すまない。俺のわがままのせいで、こんなことになってしまった」

 

それはこの状況をどうにかするものではなく、謝罪。その謝罪をフェリアの両王は感情のこもらない瞳で見つめる。

 

「いえ、クロムさん。今回のことは、ビャクヤさんや私の責です。私たちがもっとしっかり策を練っていれば……いえ、ビャクヤさんに任せきりにせずに私がもっと頑張っていたら、変えられた結果だったかもしれないのですから……」

「いや、お前の、お前たちのせいじゃない。お前たちはよくやってくれた……」

 

どこか疲れた顔でルフレの言葉を否定した彼は、そのまま顔を逸らしうつむく。心なし握られた拳にはいつも以上に力がこもっていた。

 

「俺は……自分の無力さをこの戦いで感じた。それこそ、いやというほどに、強く、強く感じた……!」

 

握られた拳は色を失くし、その指の隙間から血がこぼれ落ちる。そんな彼の姿を仲間は静かに見つめる。その瞳に様々な感情を乗せながら。

 

「俺が……! 力不足だったから……愚かだったからっ! 何も変えられなかった! 姉さんを失ったっ!」

 

絞り出すように語られる彼の独白は続く。いつからか、彼の足元を染めていた赤にきれいなしずくが混じりはじめていた。

そんな中、こつりと小さな靴音が独白に混じって聞こえた。

 

「強くなった……そう思っていた。姉さん、みんなを守れるくらいに、強くなれたと思っていた……! けれど、実際に守られていたのは自分だった……! 姉さんに、仲間に、ビャクヤに守られながら……くそっ! 俺は、どうして、こんなに無力なん――――」

「クロムさん!!」

 

ぱしん、と乾いた音が謁見の間に響いた。彼女を除くここにいるすべてのものは驚いた表情でクロムたちを見つめる。たたかれたクロムは呆然と自身をたたいた相手を見つめていた。彼らは皆、くやしさに顔を歪め、悲しさからくる涙をこぼすまいと必死にこらえている少女――ルフレを見つめる。

 

「前を……前を見てください、クロムさん!」

「ル、ルフレ……?」

 

クロムは訳が分からないといった様子で目の前の少女の名前を呼ぶ。

 

「私だって、自分の無力が許せません。いえ、私だけじゃないです。ここにいるみんな、自分の無力さを感じています。私たちはみんな、完璧じゃないんです。いいえ、完璧な人なんていないんです…………だからこそ、私たちは手を取り合うんです! もし、クロムさんが立ち上がれないのなら、何度でも私が、いえ、私たちが手を差し伸べ、立ち上がらせます。絶望しか見えないのなら、希望の光を作り出しましょう」

 

彼女の言葉に根拠なんてないし、出来るかどうかなんてわかりもしない。しかし、それでもルフレは目の前の彼に語りかける。根拠がないなら、これから作ればいい、出来るかわからないのなら、これから、成し遂げればいい。そう、強く、自分に言い聞かせながら。そして、そんなルフレの言葉の一つ一つがクロムに力を与えていく。消えかけていた炎を灯し、彼の瞳に光を与える。

 

「ですから、クロムさんはエメリナ様がつかめなかったものをしっかりとつかんでください。エメリナ様と同じやり方でなくてもいいです。クロムさんのやり方で、全ての人に希望を与えてください。これは、クロムさん。あなたにしかできないことなんです」

 

「俺に、そんな力が……資格があるのか? 俺に……できるのか?」

 

「ええ、出来ます。力が足りないなら、みんなが補ってくれます。資格をためらうなら、ふさわしい人間になればいいのです。少なくとも、ここにいるみんなはあなたのことを信じています」

 

クロムが俯けていた顔をあげ、仲間を見渡す。あるものは鷹揚にうなずき、あるものは任せろと声をあげ、あるものは武器を静かに掲げる。そして、目の前の少女は静かにうなずく。クロムは一度目を閉じ呼吸を整えると、皆をしっかりと見据え決意を持って告げる。

 

「ルフレ、みんな……俺は、姉さんの敵を討ちたい。ギャンレルを倒し、イーリスの民を守りたい。ついて来てくれるか?」

「お兄ちゃん。いまさらだよ、そんなこと。もう、みんな決めてるから……ね!」

 

いつもと変わらぬ様子でクロムに話しかけてきたリズはみんなの方を振り返り、問いかける。その太陽のような笑顔は曇ることなく、彼らに希望と元気を与える。そんな彼女につられるように、けれど確固たる意思を持って皆頷く。

 

「クロム様……」

 

そして、そんなクロムを先の戦いでずっと守っていた騎士はどこか辛そうに、けれど、嬉しそうにクロムの名をつぶやきながらうなずいた。そして――――

 

「…………っ!」

「……ク、クロム様?」

「い、いや、何でもない! 気にするなティアモ!」

 

ティアモの顔を見て、赤面し狼狽するクロムが先ほどまでの雰囲気を完全にぶち壊していった。そんなあたふたとするクロムを眺め、あるものは声を上げて笑い、あるものは温かい目で見つめた。

 

「ふー。相変わらずですね、クロムさんは……」

「そうだね。だが、あれくらいがちょうどいいさ。変に気を張っているよりは何倍もいい」

「ああ、復讐にとらわれた奴は、自分でも気が付かねえうちに破滅への道を歩みだし、気が付いたときには終わっている……」

 

声を上げて笑っていたフェリア王達はルフレの言葉に反応すると、笑うのを止めて会話に加わってきた。先ほどまでと違いその表情は柔らかく、優しくクロムたちを見つめる瞳の中にはそれでいて強い意志を感じさせるものであった。

 

「さて、クロム。もう頭を冷やせとは言わないさ。我がフェリア軍もあんたの激情ごとギャンレルにぶつけてやるよ!」

「それと、今回の戦いの指揮はそっちに移すぜ。クロム、しっかりとやれよ」

「俺が、指揮を?」

 

 

おうむ返しにバジーリオに聞き返したクロムに答えた声はバジーリオではなかった。

 

 

 

「要するに、今回はフェリアの王様たちも大暴れするっていうことだよ。まあ、それだから、全体の指揮をする余裕がないってことさ」

 

 

 

そして、その人物こそ、皆が待ち望んだ人物――――

 

「クロムの決意は聞かせてもらったよ。さあ、ここから、もう一度始めよう!」

 

イーリスの軍師ビャクヤ……殿を務め、生存が絶望的だった彼はこうして戻ってきた。傍らには行方の分からなくなっていた、フラムとカナ。そして、蒼い剣士の姿があった。

 

 

 

こうして、ここに新たな希望が生まれた。さあ、抗おう……この定められた絶望を打ち砕くために。

 

 




今回の話で本来ならあり得ない人物の合流が確定しました。だれかは読んでたらわかりますね。ここから、大きく原作を離れる予定。たぶん。おそらく。そう何度言ったかは気にしない。

さて、そろそろ、外伝を挟む予定。と、いうより一回はさむタイミングを逃したので結構やばいです。次回からはおそらく間章、外伝と続くと思います。間章と外伝にて本編の補足を少しずつ行います。

さて、それでは、また次回お会いしましょう。
おそらく、今回の話も書き直すんだろうな~と思う作者でした。うん、2,3日したら見つかる誤字脱字やミス。なぜだ……
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