人間の私が吸血鬼の姉になるだけの不思議で特別な物語   作:百合好きなmerrick

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序章、最後のお話です( ´ ω ` )

途中、視点が変わりますのでご注意ください。


10話 「戦闘の準備をするだけのお話」

 side Ellie Garcia

 

 ──『魔の森』 大きな小屋

 

「エリー、朝。起きて」

「うん......おはよう......」

 

 目が覚めると、窓からは光がこぼれ、朝だということが分かった。

 それにしても、リナさん......あの言葉ってどういう......。

 

「エリー、大丈夫? 顔暗い」

「ううん、大丈夫だよー」

「おっ、起きたか? 今日の夜に出発するから、準備しとくんだよ」

「はーい......ふわぁ〜......」

 

 あ、よく見ると昨日よりも人数増えてる? ん、あれ、レイラが居ない......? どこかに行ってるのかな?

 それにしても、あの夢を見ていたせいかな? 寝た気がしないや......。

 

「エリー、眠い?」

「うん、まぁねー。でも、大丈夫だから気にしないでー」

「分かった。でも、無理しちゃダメ」

「大丈夫。無理はしないよ。まぁ、アナちゃんが危険な目に遭いそうな時は、無茶するかもしれないけど、それはいいよね?」

 

 アナちゃんも私が危険な目に遭った時は助けてくれるだろうしね。

 私は友達いなかったから知らなかったけど、助け合うのが友達らしいしめ。

 

「ダメ。私がエリー守る。エリーが傷付くの見たくない」

「むぅ......一応、人や自分の身を護る魔法は使えるのよ? まだ使ったことないけど......」

「おっ、魔法使ったことないのか。それなら使ってみるかい?

 今、レイラに偵察に行かせてるから、レイラが帰ってくるまでだが」

 

 あ、レイラの姿が見えなかったのはそういう事だったんだね。

 で、魔法かぁ......。教えてもらったから大丈夫だと思うけど、いざっていうときに使えないと困るしなぁ。

 

「んー、じゃぁ、アエロ姐さん、貴方にかけていいですか?」

「あぁ、もちろんいいよ! あっ、回復とか補助の魔法だよね?」

「うん。攻撃魔法はちょっと......嫌いだからね」

「ん、どうして......は、聞く必要ないか。人族は好戦的なやつ少ないからねぇ。あ、嫌味とかじゃないからね?」

「あ、大丈夫! 分かってますよー」

 

 魔族は戦いを好む種族らしいし、そういう反応されてもおかしくないしねー。

 まぁ、私は戦いって、人を傷付けることがあるから嫌いなんだけどね......。

 

「それならよかった、よかった。あ、一応、外でやろうか。念のためにね」

「私も付いていく。エリー、一人にしたくない」

「私がいるんだけどなぁ......。まぁ、いいか。あ、シアルヴィ! ここは任せたぞー。

 さて、エリー、アナ。付いてきてくれー」

 

 シアルヴィと言う、レイラと同い年くらいの人間らしき男性にそう言った。

 シアルヴィさんが「う、うん。分かった」と答えたと同時に、アエロ姐さんは外へと出ていった。

 私達もアロエ姐さんの後へと続く。

 

「さぁ、行使してくれていいぞー」

「エリー、頑張って」

「うん! じゃぁ、遠慮なく......って言っても、人を護る魔法だけどね」

 

 アエロ姐さんから数メートルほど離れ、オドを温存するために、森中に広がるマナを自分に集中させる。

 

「ふぅー、私ならできる......絶対にできる......『スヴェル』ッ!」

 

 そして、力いっぱい呪文を叫んだ。

 マナが身体中に巡っていくのが分かる。そして、マナが身体から、身体の外へと出ていくのが分かる。

 

「ん、おっ!?」

「......白い盾?」

 

 よ、よかったぁ......。

 魔法を行使し終えると、無事、アエロ姐さんの目の前には、半径一メートルほどの白い盾が現れた。

 

「......や、やったぁー! 成功したよー!」

「へぇー、結構デカイ盾だなぁ。ビックリしたよ。で、これってどういう盾なんだ?」

「えーっと......この盾は、物理はもちろん、魔力的な攻撃をも防げる盾らしいです」

 

 そして、リナさんによると、光と熱系の魔法や干渉を防ぐことに特化しているらしい。

 どれくらい特化しているかは知らないけど......。

 

「へぇー、これまた凄いねぇ。これなら頼れそうだねぇ」

「エリー凄い。でも、私が守るのは変わらせない」

「あはは、アナって過保護なんだねぇ」

「保護者は私だと思うんだけどなぁ」

 

 実年齢、精神年齢からしても、私の方が年上だろうから、私の方が保護者だと思うんだよね。

 まぁ、アナちゃんの方がめちゃくちゃ強いけど......。

 

「私も、エリーが保護者だといい。けど、守るのは私」

「矛盾してる気もするが、確かにそっちの方がいいだろうねぇ」

「むぅ......私、護る魔法持ってるのになー」

 

 まぁ、アナちゃん達が危険な目に遭ったら、私が護ればいいよね。

 もし怪我をしても、『ヒーリングライト』で回復させればいいだけだし。

 

「さて、他にも魔法はあるかい?」

「は、はい。後一つだけ、回復魔法が......」

「よし、それならまだ──」

「おーい! 大変にゃー!」

「って、ん?」

 

 魔法の練習中、森の入り口の方から、レイラが慌てた様子で走ってきた。

 何かあったのかな?

 

「敵がこの森を囲んでいるにゃ! あ、正確に言うと、十個くらいの小隊に別れて囲んでいるにゃ!」

「それは......総数で言うと、どれくらいだい?」

「五百にゃ。結構やばいにゃ」

「......え、五百!? え、えーっと、こっちの数は......」

「昨日、あんたらが来てからも増えたのは増えたんだが......三十弱しかいないねぇ。しかも、こっちは戦える数が半数もいないときた」

「まぁ、ほとんどの人らは捕まってたからにゃ......私も含めてだけど」

 

 私は防護魔法、回復魔法しか使えないから戦えるわけではないし......。

 アナちゃんは戦えるけど、五百は流石に......。

 

「まだ攻めてくる気配はにゃいにゃ。多分、完全な位置を把握していにゃいから、攻めるに攻めれないみたいにゃ」

「ふむぅ......不意打ちを警戒しているってことか? オークなのに?」

「え? オークだと警戒しないの?」

「あいつらは人族が物凄く嫌いだからな。不意打ちなんてお構い無しに突撃してくるはずなんだ。

 それが無いってことは......」

「そういうオークじゃにゃいだけか、オークを従えるほどの強さを持った、オーク以外の魔族が部隊長のどっちかにゃんだろうにゃ」

 

 オークか、オーク以外の魔族で、オークを従えるほどの強さ......。

 どちらにしても、ただ突撃するだけの脳筋じゃないってこと?

 ......これ、本当にピンチなんじゃ......。

 

「どちらにしても、どうにかしないとな。レイラ。中の奴らにも伝えてやってくれ。私は空から見てくる」

「見つかる可能性があるからダメにゃ。見るなら隠れて見るにゃ。まぁ、中の人らに伝えるのはいいにゃ」

 

 それだけ言って、レイラは小屋の中へと入っていった。

 

「むぅ、それもそうだったか。アナ、エリー。あんたらはどうするんだい?」

「私はエリーに付いていく。だから、任せる」

「私に任せられてもなぁ。でも......」

 

 アエロ姐さんを一人にさせるのも心配だし、付いていった方がいいよね。

 人を攻撃することはできないけど、人を護ることはできるし......。

 

「アエロ姐さんに付いていきます。一人にさせるのは、心配だし......」

「優しいんだねぇ。まぁ、人が決めたことに口出しするのもなんだしな。

 何かあったら私が守るから、隠れて付いてくるんだよ」

「エリー、安心して。私も守る」

 

 確かに、アナちゃんに守ってもらえると安心するけど......目立つだろうし、アナちゃんが攻撃されるかもしれないしなぁ。

 できる限り、危険な目に遭わないようにしないと......。

 

「よし、それじゃぁ行くか。遅れないようにしなよ?」

「うん、分かった」

「はーい」

 

 アエロ姐さんは歩きにくいからか、少しだけ浮いて森の入り口へと飛行して行った。

 それを、私達はできるだけ素早く、目立たないように後を追っていった──

 

 

 

 ──『魔の森』

 

「これは......多いなぁ。流石に、三十人弱で何とかできるレベルじゃないねぇ.......」

 

 森の中に潜み、森の外側を見てみた。

 レイラの言う通り、敵がわんさかいた。

 

「私なら、百や二百......」

「アナちゃんが傷付くからダメ。却下」

「むぅ......」

 

 傷付くならまだしも、最悪......いや、そんなマイナスなことは考えないようにしないと。

 あれを思い出すし......。

 

「さて、これはどうしたものか......。いや、最悪......」

「ん、アエロ姐さん?」

「......あ、いいや。何でもないよ。一応、策はあるけど......」

「え、あるの!?」

「あるのはあるんだが......ほぼ賭けだねぇ。それに、全員が助かる見込みも低いからなぁ」

 

 むぅ......それだとダメだよね。一体どうすれば......。

 

「まぁ、まだ攻めてくる気配は無いんだ。それまで考えるとしようじゃないか。何か案が思い付ければいいんだが......。

 思い付かなければ......」

「......あ、アエロ姐さん?」

「......いや、大丈夫だよ。安心してくれ」

 

 アエロ姐さんの顔は、何かを決心したかのように見える。

 もしかして......いや、大丈夫だよね。多分......いや、絶対にみんなで助かる道があるよね。

 そう自分に言い聞かせ、私達は森に潜んで、敵の動向を探り続けた────

 

 

 

 

 

 side ???

 

 ──同時刻 『魔の森』付近

 

 エリー達が森の中から偵察しているのと同時刻。

『魔の森』の近くでは、オーク達を従える二人の人影があった。

 

「......男爵。このまま待たせといてもいいのか? オーク達は今にでも暴れそうな勢いだぞ」

 

 そう言ったのは、その影の内の一人。

 銀色のロングヘアーに赤い目を持つ二十代前半の男性。

 剣に慣れているのか、双剣をジャグリングのようにして遊んでいる。

 

「心配するでない。彼らはそう簡単に暴れるはずはない。できる限り、そう、夜まで待つのだ。

 そうすれば、暗視を持つ者が少ない人族は不利となる。こちらの被害を最小限に抑えるためにもそうするのだ」

 

 そしてもう一人、男爵と呼ばれた馬に乗っている男性。

 立派なちょび髭を生やし、ボーラーハットをかぶった三十代後半に見える男性だ。

 彼は幾つもの戦場を駆け抜け、勝ち抜き、己の強さのみで貴族の男爵という称号を手に入れた歴戦の戦士だ。

 

「今すぐ突撃させればすぐに終わるんだがなぁ」

「突撃さして不意打ちを受けたらどうするのだ。軽傷ですむやつは少ないかもしれんのだぞ?」

「そんなの不意打ちを受けた方が悪い。魔族なら自分で何とかしろってんだ。

 俺みたいな半端者ならまだしもな」

 

 彼らはいずれ始まる戦闘を前に、ゆっくりと、着実に準備を進めていくのだ────




戦闘開始直前。
エリー達は生き残ることができるのか。
ナオミ達はエリー達を助けることができるのか。

次回、ようやく1章に入る()

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