人間の私が吸血鬼の姉になるだけの不思議で特別な物語 作:百合好きなmerrick
side Naomi Garcia
──オークの都市 『ディース・パテル』 教会前の墓地
「リン? ここに居るの?」
「はい。協会の中に居るように言っています」
情報収集を続けて約一時間。
リンさんに詳しい情報を持っている人を見つけたと言われて、墓地にある教会までやって来た。
墓地という場所のせいか、それともそろそろ日暮れという時間帯のせいか、この教会は不気味に見える。
「じゃ、入ろっか。姉様。私の後ろに居てね。襲われたりしたら大変だから」
「えぇ、分かったわ。任したわよ」
「うん!」
「妹様。先頭は私が」
「あ、うん」
リンさんを先頭に、私達は教会の扉を開けた。
中には、銀髪の男の子が一人、ベンチに座っていた。
「へぇー、本当に似てるな。ありがとよ。あんたのお陰でここから出る目処が付いた」
「......えーっと、誰? リン。この人が詳しい人?」
「この方が王国軍から逃げているのを見つけまして。
この王国の状況下で王国軍から逃げている人は、盗人などの罪人か、罪人の逃亡を手助けした者のどちらかだと判断したので、話を聞くために捕まえてきました。ついでに、当たりだったようで、エリー様と知り合いの方みたいです」
「あ、うん。詳しい説明ありがと」
要するに、罪人かもしれない奴を連れてきたと......リンさんェ。
もしも罪人だったらどうしてたのよ。まぁ、当たりみたいだからいいけど。
「私の名前はリリィ。貴方の名前は?」
「俺はカルミア。種族はハーフリング。見た目は十代に見えると思うが、歳は二十歳だ」
「......私よりも年上だったのね」
「何気に姉様が一番若いよね」
今に始まったことじゃないけど、やっぱり姉なのに妹より年下って変な感じね。
まぁ、リリィが勝手に私を姉にしてるから義理と変わらないけど。
「で、話を戻すけど、エリーを知ってるの?」
「知ってるよ。昨日、ここで会った。そして、アジトが襲撃されるまで一緒に居たんだ」
「ふーん......なら、今何処に居るか知ってるわよね?」
「『魔の森』に居るはずだ。当初の予定通りならな」
ふーん、やっぱり『魔の森』にエリーが居るのは確実なのね。
あの娘、大丈夫かしら......。オークが知ってるくらいだし、今頃戦闘にでもなってたりしたら......。
「姉様。顔暗いよ。大丈夫。エリーは私が助けるから」
「......私達、ね。私も助けたいし」
「そういう事なら、俺も連れてってくれ。透明化くらいしか使えないが、あっちには俺の仲間も居るんだ」
「いいよ。まぁ、足でまといになるなら切り捨てるけど」
「なんか辛辣な奴が多いなぁ......」
......この人、将来苦労しそうね。勘だけど。
まぁ、ハーフリングと言ったら、その名の通り透明になれる『透明化』や他の種族よりも容易に気配を殺し、見つかりにくくする『隠密行動』を持ってる種族だし、足でまといにはならないと思うけどね。
ただ、どちらも暗殺向けだからねぇ。
「それにしても、カルミアだっけ? 透明化できるなら、逃げれたんじゃないの?」
「追いかけられてなかったらな。透明化はクールタイムが三分もあるから、ここぞという時にしか使えないんだ」
「......ふーん、微妙な特徴なんだねぇ」
「微妙な特徴で悪かったな」
まぁ、何も無い人間よりはマシだと思うけど。
それに、ハーフリングは魔族特有の再生能力もあるだろうしね。
「妹様。そろそろ出発した方がよろしいかと」
「ん、まぁ、そうね。『魔の森』にゴーっ!」
「なんだか気楽ねぇ」
「気楽な方がいい時もあるさ」
こうして、カルミアを連れた私達は『魔の森』へと急いで向かったのであった────
side Ellie Garcia
──『魔の森』大きな小屋
敵の警戒をレイラと交代し、私達三人は小屋へと戻ってきた。
そして、今は作戦会議の途中なんだけど......。
「さて、どうしたものか......」
誰も、全く良い案が思い付かない。もちろん、私もなんだけど......。
最初、囲んでくるであろう敵を一点集中して突破する、という案が出たが、却下された。
理由は森から出ると目立つため、嫌でも見つかる。こちらは基本的に徒歩なので、馬などで追いかけられたらすぐに追い付かれるかららしい。
次は誰かが囮になる、という案が出たけど......こっちも却下された。
囮役は必ずと言っていいほど死にやすいし、敵との数の差があり過ぎるから、囮じゃない方にも大量の敵が来る可能性が高い。
だから、囮の意味がないということで却下された。
「......わたし、囮になれば敵倒せる。敵引きつけることできる」
「確かにアナちゃんは強いから引きつけることもできると思うけど......敵の数が多いから、無茶しちゃダメ。
私、アナちゃんに、みんなに死んで欲しくないから......」
「むぅ......なら、やめる......」
「他に考えれる作戦は......まぁ、迎え撃つしかないか。この森で」
迎え撃つ......。確かに、この森の中、この暗闇なら、視界の悪さのお陰で不意を付くこともできるかもしれないけど......。
私、回復と防護魔法しか使えないからなぁ。
「あ、アエロ姐さん。そ、それは無理だと思います......」
「ん、どうしてだ?」
怯えるような声で、シアルヴィと呼ばれていた人間らしき男の人がそう言った。
それにしても......見るからに臆病そうな人だなぁ。
まぁ、私もあんまり変わんないけど......。
「だ、だって、オークは再生能力以外にも、暗視を持っているし......こっちは暗視を持ってる人どころか、戦える人も少ないですから......」
「む、確かにそれもそうだな......」
「こ、こっちの利点を一つずつ考えて、作戦を立てた方がいいと思います」
「こっちの利点か......」
利点って言っても、こっちは戦える人は少ないし、数でも負けてるし......。
それでも、敵よりも上回っている部分ってなんだろう?
「......ここはマナが豊富。オークは人族が嫌い。だからこそ、それを統率する奴がいる。
そして、こっちには戦闘において最強の竜種、アナちゃんがいる」
「......えーっと、要するに、どういうこと?」
「最初に却下された作戦に、多少手を加えるだけで、勝てるかもしれない」
「ほ、本当に!? あ、でも、最初の作戦って逃げるのが難しいんじゃ......」
森から出ると隠れる場所が無いからバレるし、追い付かれるから......。
「大丈夫。逃げるのが難しいなら、相手の足を潰せばいい。
それと、敵を統率している奴を倒せば、オーク達は統率力を失い混乱するはずだ。そこを突けば......なんとかなるかもしれないな」
「詳しい説明、お願い。わたし、エリーの、みんなのためなら頑張れる」
「アナちゃんは敵の足、要するに馬と陽動を頼む。あ、別に馬を殺す必要はないからな。動きを止めたり、奪ったりするだけでいい。
あ、できる限り、竜にはならないように。敵の攻撃に当たりやすいし、森だと動きにくいだろうからね。
それと、私とレイラでリーダーを倒す。他のみんなはできる限り、固まって隠れながら、私達の敵を倒した、という合図を待ってくれ。
もしも十分経っても無い、もしくは敵が来た場合は西を目指して逃げるんだよ」
要するに、私も隠れながら......って、アナちゃん達を置いていけない。
それに、アナちゃん、寂しそうな目でこっちを見てるし......。なんだか、先に逃げることになったら罪悪感がすごいし......。
「わ、私もアナちゃんと一緒に行動する!」
「......危険だぞ?」
「大丈夫。身を守るくらいはできるしね。それに、アナちゃんを護ることもできるから」
「......死ぬかもしれない。それでもいいのか?」
「アナちゃんが、みんなが死ぬよりはマシ。私、人が死ぬところ、見たくないから......」
「......まぁ、そこまで言うならいいか。だが、危険だと思ったら逃げるんだよ?」
「大丈夫。何かあったらアナちゃんと一緒に逃げるよ」
最悪、アナちゃんが竜になったら盾で護りながら......あ、半径一メートル程度で護れるのかなぁ......?
アナちゃん、竜になったら体長五メートルくらいあるし......。
「さて、後はレイラの報告を──」
「みんにゃー! 敵が動き出したにゃ!」
「タイミング良すぎだな。じゃ、エリーとアナちゃんは東で陽動を頼む! 森から出ないようにするんだよ!
さ、レイラ。行くよ!」
「え、唐突過ぎて
「走りながら説明するからとにかく来い!」
「わ、分かったにゃー!」
レイラとアエロ姐さんはいち早く森の北側へと走っていった。
多分、その方向に敵将らしき人を見つけたからかな。
「エリー。わたし達も行こう」
「うん、そうだね。みんなも頑張ってね!」
「う、うん。君たちも頑張って」
私とアナちゃんは、仲間に見送られながら、森の東へと向かっていった────
さらっと生きてたカルミア君であった()