人間の私が吸血鬼の姉になるだけの不思議で特別な物語   作:百合好きなmerrick

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12話 「作戦会議するだけのお話」

 side Naomi Garcia

 

 ──オークの都市 『ディース・パテル』 教会前の墓地

 

「リン? ここに居るの?」

「はい。協会の中に居るように言っています」

 

 情報収集を続けて約一時間。

 リンさんに詳しい情報を持っている人を見つけたと言われて、墓地にある教会までやって来た。

 墓地という場所のせいか、それともそろそろ日暮れという時間帯のせいか、この教会は不気味に見える。

 

「じゃ、入ろっか。姉様。私の後ろに居てね。襲われたりしたら大変だから」

「えぇ、分かったわ。任したわよ」

「うん!」

「妹様。先頭は私が」

「あ、うん」

 

 リンさんを先頭に、私達は教会の扉を開けた。

 中には、銀髪の男の子が一人、ベンチに座っていた。

 

「へぇー、本当に似てるな。ありがとよ。あんたのお陰でここから出る目処が付いた」

「......えーっと、誰? リン。この人が詳しい人?」

「この方が王国軍から逃げているのを見つけまして。

 この王国の状況下で王国軍から逃げている人は、盗人などの罪人か、罪人の逃亡を手助けした者のどちらかだと判断したので、話を聞くために捕まえてきました。ついでに、当たりだったようで、エリー様と知り合いの方みたいです」

「あ、うん。詳しい説明ありがと」

 

 要するに、罪人かもしれない奴を連れてきたと......リンさんェ。

 もしも罪人だったらどうしてたのよ。まぁ、当たりみたいだからいいけど。

 

「私の名前はリリィ。貴方の名前は?」

「俺はカルミア。種族はハーフリング。見た目は十代に見えると思うが、歳は二十歳だ」

「......私よりも年上だったのね」

「何気に姉様が一番若いよね」

 

 今に始まったことじゃないけど、やっぱり姉なのに妹より年下って変な感じね。

 まぁ、リリィが勝手に私を姉にしてるから義理と変わらないけど。

 

「で、話を戻すけど、エリーを知ってるの?」

「知ってるよ。昨日、ここで会った。そして、アジトが襲撃されるまで一緒に居たんだ」

「ふーん......なら、今何処に居るか知ってるわよね?」

「『魔の森』に居るはずだ。当初の予定通りならな」

 

 ふーん、やっぱり『魔の森』にエリーが居るのは確実なのね。

 あの娘、大丈夫かしら......。オークが知ってるくらいだし、今頃戦闘にでもなってたりしたら......。

 

「姉様。顔暗いよ。大丈夫。エリーは私が助けるから」

「......私達、ね。私も助けたいし」

「そういう事なら、俺も連れてってくれ。透明化くらいしか使えないが、あっちには俺の仲間も居るんだ」

「いいよ。まぁ、足でまといになるなら切り捨てるけど」

「なんか辛辣な奴が多いなぁ......」

 

 ......この人、将来苦労しそうね。勘だけど。

 まぁ、ハーフリングと言ったら、その名の通り透明になれる『透明化』や他の種族よりも容易に気配を殺し、見つかりにくくする『隠密行動』を持ってる種族だし、足でまといにはならないと思うけどね。

 ただ、どちらも暗殺向けだからねぇ。

 

「それにしても、カルミアだっけ? 透明化できるなら、逃げれたんじゃないの?」

「追いかけられてなかったらな。透明化はクールタイムが三分もあるから、ここぞという時にしか使えないんだ」

「......ふーん、微妙な特徴なんだねぇ」

「微妙な特徴で悪かったな」

 

 まぁ、何も無い人間よりはマシだと思うけど。

 それに、ハーフリングは魔族特有の再生能力もあるだろうしね。

 

「妹様。そろそろ出発した方がよろしいかと」

「ん、まぁ、そうね。『魔の森』にゴーっ!」

「なんだか気楽ねぇ」

「気楽な方がいい時もあるさ」

 

 こうして、カルミアを連れた私達は『魔の森』へと急いで向かったのであった────

 

 

 

 

 

 side Ellie Garcia

 

 ──『魔の森』大きな小屋

 

 敵の警戒をレイラと交代し、私達三人は小屋へと戻ってきた。

 そして、今は作戦会議の途中なんだけど......。

 

「さて、どうしたものか......」

 

 誰も、全く良い案が思い付かない。もちろん、私もなんだけど......。

 

 最初、囲んでくるであろう敵を一点集中して突破する、という案が出たが、却下された。

 理由は森から出ると目立つため、嫌でも見つかる。こちらは基本的に徒歩なので、馬などで追いかけられたらすぐに追い付かれるかららしい。

 

 次は誰かが囮になる、という案が出たけど......こっちも却下された。

 囮役は必ずと言っていいほど死にやすいし、敵との数の差があり過ぎるから、囮じゃない方にも大量の敵が来る可能性が高い。

 だから、囮の意味がないということで却下された。

 

「......わたし、囮になれば敵倒せる。敵引きつけることできる」

「確かにアナちゃんは強いから引きつけることもできると思うけど......敵の数が多いから、無茶しちゃダメ。

 私、アナちゃんに、みんなに死んで欲しくないから......」

「むぅ......なら、やめる......」

「他に考えれる作戦は......まぁ、迎え撃つしかないか。この森で」

 

 迎え撃つ......。確かに、この森の中、この暗闇なら、視界の悪さのお陰で不意を付くこともできるかもしれないけど......。

 私、回復と防護魔法しか使えないからなぁ。

 

「あ、アエロ姐さん。そ、それは無理だと思います......」

「ん、どうしてだ?」

 

 怯えるような声で、シアルヴィと呼ばれていた人間らしき男の人がそう言った。

 それにしても......見るからに臆病そうな人だなぁ。

 まぁ、私もあんまり変わんないけど......。

 

「だ、だって、オークは再生能力以外にも、暗視を持っているし......こっちは暗視を持ってる人どころか、戦える人も少ないですから......」

「む、確かにそれもそうだな......」

「こ、こっちの利点を一つずつ考えて、作戦を立てた方がいいと思います」

「こっちの利点か......」

 

 利点って言っても、こっちは戦える人は少ないし、数でも負けてるし......。

 それでも、敵よりも上回っている部分ってなんだろう?

 

「......ここはマナが豊富。オークは人族が嫌い。だからこそ、それを統率する奴がいる。

 そして、こっちには戦闘において最強の竜種、アナちゃんがいる」

「......えーっと、要するに、どういうこと?」

「最初に却下された作戦に、多少手を加えるだけで、勝てるかもしれない」

「ほ、本当に!? あ、でも、最初の作戦って逃げるのが難しいんじゃ......」

 

 森から出ると隠れる場所が無いからバレるし、追い付かれるから......。

 

「大丈夫。逃げるのが難しいなら、相手の足を潰せばいい。

 それと、敵を統率している奴を倒せば、オーク達は統率力を失い混乱するはずだ。そこを突けば......なんとかなるかもしれないな」

「詳しい説明、お願い。わたし、エリーの、みんなのためなら頑張れる」

「アナちゃんは敵の足、要するに馬と陽動を頼む。あ、別に馬を殺す必要はないからな。動きを止めたり、奪ったりするだけでいい。

 あ、できる限り、竜にはならないように。敵の攻撃に当たりやすいし、森だと動きにくいだろうからね。

 それと、私とレイラでリーダーを倒す。他のみんなはできる限り、固まって隠れながら、私達の敵を倒した、という合図を待ってくれ。

 もしも十分経っても無い、もしくは敵が来た場合は西を目指して逃げるんだよ」

 

 

 要するに、私も隠れながら......って、アナちゃん達を置いていけない。

 それに、アナちゃん、寂しそうな目でこっちを見てるし......。なんだか、先に逃げることになったら罪悪感がすごいし......。

 

「わ、私もアナちゃんと一緒に行動する!」

「......危険だぞ?」

「大丈夫。身を守るくらいはできるしね。それに、アナちゃんを護ることもできるから」

「......死ぬかもしれない。それでもいいのか?」

「アナちゃんが、みんなが死ぬよりはマシ。私、人が死ぬところ、見たくないから......」

「......まぁ、そこまで言うならいいか。だが、危険だと思ったら逃げるんだよ?」

「大丈夫。何かあったらアナちゃんと一緒に逃げるよ」

 

 最悪、アナちゃんが竜になったら盾で護りながら......あ、半径一メートル程度で護れるのかなぁ......?

 アナちゃん、竜になったら体長五メートルくらいあるし......。

 

「さて、後はレイラの報告を──」

「みんにゃー! 敵が動き出したにゃ!」

「タイミング良すぎだな。じゃ、エリーとアナちゃんは東で陽動を頼む! 森から出ないようにするんだよ!

 さ、レイラ。行くよ!」

「え、唐突過ぎて(にゃに)がにゃんだか......」

「走りながら説明するからとにかく来い!」

「わ、分かったにゃー!」

 

 レイラとアエロ姐さんはいち早く森の北側へと走っていった。

 多分、その方向に敵将らしき人を見つけたからかな。

 

「エリー。わたし達も行こう」

「うん、そうだね。みんなも頑張ってね!」

「う、うん。君たちも頑張って」

 

 私とアナちゃんは、仲間に見送られながら、森の東へと向かっていった────




さらっと生きてたカルミア君であった()
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