「……で、その後散々冥界を探し回ったけど結局フリーザの魂を見つけることができず、数日経ってやっと見つけた時にはもう出遅れだったってわけ?」
「……はい、おっしゃる通りです。」
ここは、"界王神界"。自然豊かでなんとも美しいこの地は創造神たる界王神の世界である。界王神界には現在訪問者がやって来ていた。破壊神ビルスとその付き人ウイスである。本来ビルスはこの時期長い睡眠時間の真っ最中なのだが、今回の事件発生に伴い、ウイスが叩き起こして界王神界まで出向いていた。
気持ちよく寝ていたところを起こされ、若干不機嫌なビルスは耳をコリコリとかいて呆れたと言わんばかりに溜め息をつく。
「あのフリーザを倒せるやつがいたことも驚きだが、それよりもボクはお前の浅はかさに驚いてるよ。」
「……返す言葉もございません。」
「まぁ、いつも寝てばかりのビルス様もあまり偉そうなことは言えませんけどね。」
ビルスの言葉に小さくなりながら頭を下げる界王神。ビルスはウイスがぼそっと言ったことには何の反論もしない。聞こえなかったことにするようだ。
「で、ちゃんと後始末はしてきたんだろうね?」
「はい、次元をまたぎ、最高神様と会談を致しました。」
界王神が言う"最高神"とは三次元世界の神のことだ。科学が発達するにつれてその存在を信じない者が多くなってきたが、三次元世界にも神は存在している。また、二次元の多くの世界は三次元世界の人間によって創作されたものが多い。その三次元世界の神であるから、当然位は最高神の方が上だ。二次元世界、全宇宙の王である全王も最高神には敵わない。
「で、どうなったの?」
ビルスはふわ~っとあくびしながら尋ねる。
「はい、先程報告した通り、我々が見つけた時、フリーザの魂と桜子さんの魂が融合してしまっていました。」
数日冥界を駆けずり回った界王神達。そんな彼らを冥界の二次元と三次元の狭間で出迎えたのは、もうすでに分離することも不可能な程混ざりあってしまった桜子とフリーザの魂だった。
「本来なら分離してそれぞれ逝くべき場所へ戻すのが最適なのですが、二人の魂は分離すれば魂そのものが消滅しかねない程深く融合してしまっていたんです。」
魂の消滅。それは何がなんでも絶対に避けなくてはいけないことだった。魂というものは実はリサイクルしている。生き物が死ねばまず、生前の行いから魂が天国か地獄へ行き、そこで転生の時を待って、記憶を無くし、新しい生命体に変えられる。だから魂が一つでも欠ければ輪廻の輪のバランスが崩れることになるので非常にまずい。
そこで界王神は最高神と共に妥協案を考え出していた。
「いっそ、二人の魂をこのまま一つにまとめ、新しい生命体に変えた上でどこか別世界に転生させようというものです。」
この方法なら二つの魂が一つになってしまうものの、魂が消えるわけではないので輪廻の輪にも影響は出ない。別世界へ転生させるのは世界に混乱を招かないためだ。二人で一人となった生命体は間違いなく異質の存在。そんな存在となってしまう二人を元の世界に戻すわけにはいかないのだ。これは神二人が考え出した最大の妥協案である。
だが、それを話す界王神はどこが不満気だ。
「どうかなさいましたか?」
「あ、いえ、……ただ、フリーザはともかく、桜子さんにこんなことしかしてあげられない自分がなんだか嫌で……」
ウイスがそのことを尋ねると界王神はたどたどしく話す。創造神でありながら桜子に最低限のことしかしてあげられないことに罪悪感を抱いているようだ。そのことを聞いたビルスはふんっと勢いよく鼻を鳴らす。
「これはもともとお前の管理不足が招いたことなんだ。今さら何を言っている。」
「いや、しかし……」
「もし少しでも今回のことに罪悪感を持っているなら二度とこんなことが起こらないように努めろ。お前に出来ることはそれしかないんだ。」
「………はい。」
悔しいがビルスの言う通りである。転生の準備から執行まですべて最高神がやってくれるので界王神にできることは再発防止に努めることだけである。
転生するのは三次元の67番世界である。ずいぶん前に最高神からの連絡が断絶された世界で、魔法が発達したファンタジーな世界だが、同時に科学も発達しているので、現代日本に生きた桜子も比較的馴染みやすい世界と言えよう。
「じゃあな。二度とこんなことはないようにするんだぞ。」
「全王様には私からお伝えしておきます。では、また。」
そう言い残し、ビルスとウイスは去っていった。界王神は自分の未熟さと浅はかさに拳を握ってうつむくことしかできなかった。