前回のあらすじ
バシャーモ「問題はない!! 15メートルまでなら!!!」
オリ主「散らかしたら掃除。基本だろ?」
サワムラー「きあいパンチ(蹴り)」
オリ主「きあいパンチ親父は一人! この俺だ!」
そんな感じ
「きあいパンチ親父だって!?」
「いかにも」
「じゃああの人は?」
「先代だ」
「……そうなのか」
「信じられないかな?」
「いや、なんとなくわかるっていうか、言われると、成る程って感じではある」
二人は話が通じてるけど、私からすれば、何もわからない。何が成る程なの?
あと、ヌマクローダウンしてるんだから戻してあげたら?
「名乗りついでに見せてあげるよ。本物をね」
私の困惑を余所に話は進む。レン君はサワムラーを戻してケッキングを出した。
本物って、ケッキングが出てきたってことは……謎の遠隔きあいパンチが出るの? あれが本物? 何言ってるの?
「きあいパンチ!」
レン君の声がして、気がついたら、ケッキングは動作を終えていた。いつの間に溜めていつの間に動いたのかもわからない。でも、今目の前には、左の拳を掲げ、仁王立ちするケッキングの姿がある。
……何か、まぶしい……? 上を見ると、空を覆っていた雨雲に、巨大な何かに貫かれたような穴が空いていた。
……ん? いや、まさかね?
「真のきあいパンチは、雲を貫くのさ」
もう知らない。
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(△月□日の続き)
天気研究所でのなんやかんやを終え、ヒワマキシティに向かっていると、ユウキ君が現れた。俺がバトルを挑まれた。さすがにいきなりは驚いたよね。
勝ちましたけどもね。
先代のきあいパンチ親父にきあいパンチを習ったそうだ。ヌマクローはきあいパンチを覚えられないはずなのにあのおっさんどうやったんだ?
スバメのきあいパンチを見ていたおかげで、ヌマクローも自分ができないとは思っていなかったから、とか? まあ細かいことはどうでもいいや。
その後エニシダさんが現れた。きあいパンチを誉められた。さすが廃人ホイホイのオーナーなだけある。話がわかる人だ。エントリーコールも登録した。
近いうちに連絡するってよ。バトルフロンティア楽しみだな。
で、ようやくヒワマキシティに着いた。ジムは明日にする。
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「通れない……」
「そうみたいだね」
ジムの横の道を通せんぼするカクレオン。確かシルフ……じゃない、デボンスコープを使えばいいんだったっけな。
「どうしようか?」
「うーん……たぶん時間が経ったら誰かが気付いて何とかしてくれるんじゃ……ない?」
「ああ、確かにね。じゃあ、一旦別行動とかにする?」
「うん、そうしよう」
心なしかハルカちゃんの表情が明るくなった気がする。俺と別行動だからか? 一体俺が何をしたってんだ。別にいいけど。
俺はただきあいパンチを追及するのみ。
別行動と決めたら、ハルカちゃんは割とすぐに何処かへ行ってしまった。ので、俺はカクレオンをどうにかしようと思う。誰か、ってのが俺でも別に問題ないだろう。
見えない壁、というかカクレオンというのは厄介だ。しかし、見えないだけ。
見えないと当たらないはイコールではない。見えない、だがそこにいる。なら、当たる。当たるなら、きあいパンチの敵じゃない。
「きあいパンチ!」
「あ、もしもしレン君? 今ダイゴさんに会って、デボンスコープっていう道具を貰ったの」
「へえ、良いもの貰ったね」
「見えない物が見えるようになるから、ジムの横のも何とかできるかも!」
「あ、それなんだけどさ、もう通れるようになったよ」
「……そうなんだ」
折角の道具を無駄にしてしまったのは俺のせいだよな。だが私は謝らない。
「……うん、別に、いいよ……うん」
「なんか……ごめん」
謝っちゃったぜ。
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まぁ、そりゃあ、レン君なら何とかできるっていうか、しちゃうんだろうとは思ったけど、何か、ね。あからさまに手掛かり手に入れて、これ使える! って思った挙げ句、もう大丈夫ですってのは、ね。
「だから謝ってるじゃん」
「そーいう問題じゃないの」
「そうだろうけどさ」
「謝罪と賠償を求めるわ」
「えー……わかったよ」
「今回のジム戦、きあいパンチ無しね」
「成る程……」
あれ? 反応薄いね。問題ないのかな?
「…………え、まじで?」
……そういう顔が見たかった。いつもいつもきあいパンチで困惑してる私の苦しみを知るがいいわ!
「破ったら……次の町……ミナモシティまで逆立ちね!」
「……オーケー、やってやろうじゃないか。きあいパンチ無しでもやれるってことを見せてやるさ」
「私はこのヒワマキジムでリーダーをしているナギ。鳥ポケモンと心をかよわし、一緒に大空を舞い……どんな苦しい勝負も優雅に勝ってみせる……という意識で日々戦っています」
「俺はレンと申します。ポケモンにこだわりはありませんが、ポケモンの可能性を信じて日々ポケモンと一緒にきあいパンチを追及しています」
……まあ、いつものことよね。でも今回はバトルでは使わないんだから……純粋にバトルを観ていられる筈……!
「きあいパンチ……私の使うポケモン達にはあまり効かないでしょうが……」
「今回はきあいパンチは無しでやれと友人に言われております」
「そうですか、まあ、どちらでも構いません。私は私のバトルをするだけ……さあ、私とポケモンが織り成す華麗な舞を見せましょう!」
「チルット、燕返しです」
指示を受けたチルットが、レン君のマタドガスに迫る。……レン君は指示を出さないの?
顔を見ると、険しい表情で何かを呟いているのが見えた。……聞こえるかな?
「きあいパンチはダメ……きあいパンチはダメ……きあいパンチはダメ……きあいパンチはダメ……」
あっ……。
いや、私のせいじゃないし。
「レン君しっかり!」
ハッとした顔をしてマタドガスに指示を出そうとするけど、既にチルットはすぐそこに迫っていた。
間に合わない。
「すまん、マタドガス……反撃だ! きあ……んん! 落ち着け俺。きあいパンチは駄目だ……ええっと……体当たり!」
うん、それでいいのよ。これこそ真っ当なバトル。
レン君の指示でマタドガスはチルットに向かって……ん? 何で回転してるの?
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マタドガスに進化する時、ドガースの意識は二つに分けられた。
頭の中がスッカスカのデカイ方とそれなりに中身が詰まった小さい方といった具合に。
ドガースであった頃からきあいパンチばかり撃ってきたが、今、自分は体当たりを指示された。
小さい方は考えた。
これは普通の事態ではないと。きあいパンチ使い、否、きあいパンチ狂いたるレンがきあいパンチを指示しないという今の状況はおよそ尋常ではない。何か裏があるのだ。指示通りに動くのは一旦待つべきだ。
一方、デカイ方は考えない。
体当たりを指示された。よろしい、ならば体当たりだ。丁度先程攻撃を食らってムカついていたのだ。やり返さねばスッキリしない。
ここで、一つの矛盾が生じる。
片方は動こうとせず、片方は動こうとする。結果、どうなるか。
マタドガスは回転を始めた。
デカイ方は動くため、小さい方は動かないため、お互い力を込めた結果、小さい方を中心に、デカイ方がぐるぐると、独楽よろしく回り始めたのだ。
両者は別々の意思であるが、元々は一つであった。故に、テレパシー的な物で意思疏通が可能だ。
デカイ方は問うた。何故動こうとしないのか。お前はあの鳥に思い知らせてやりたくはないのかと。
小さい方は答えた。何故お前はもっと考えないのかと。きあいパンチ狂のレンが体当たりと指示するなど、通常ではあり得ない。何か意図がある筈だと。
だがあくまでデカイ方は考えない。意図があるにせよ無いにせよ、取り敢えずあの鳥に一発かましてからで良いではないかと。
マタドガスは回転を続ける。
ここで、小さい方は思い付いた。
この回転を利用するのはどうか。レンはこのことを意図していたのではないか。回転の力を利用した、煙を使うのとは違う、物理的なきあいパンチ。それを生み出させようとしたのではないか。
しかし、デカイ方には伝わらない。
故に小さい方は端的に伝える。
自分が、お前を使って、あの鳥を殴る。お前は黙って振り回されろ。
それでもデカイ方は理解しない。スカスカは伊達ではないのだ。
流石にイラッとした小さい方は乱暴に言葉を並べる。
お前が、きあいパンチだ!
ここまで来てようやく、デカイ方は理解する。
成る程、つまり、オレがきあいパンチになるってことだな。
二つの意思がきあいパンチという目的のために一つとなる。
回転は早さを増していく。
チルットは再び攻撃するために近づいてくる。
狙うは顔面。
接続部分は腕、デカイ方は拳。ローブシンのそれを目標に。
小さい方はあえて回転の角度をずらす。これにより、打撃は真横ではなく、斜め上からチルットを襲う。
頭への打撃を受け、さらに、地面へ叩きつけられる。
チルット、戦闘不能。
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……今の、きあいパンチじゃね?
あれ? 俺、体当たりって、言ったよね? 聞こえてなかったのかな……いや、そんなわけないよな。え、何、もしかしてお前ら俺に逆立ちでもしてろって言いたいの?
気のせいだよね。うん。
いやしかし、これ、ハルカちゃんの判定がアウトだったらダメなんじゃ……うん、首傾げてるね。際どいぞこれ。
「戻れ、マタドガス」
マタドガスを戦わせ続けるのはリスキーな気がする。チェンジだ。チェンジ。
ちゃんと指示通りに動いてくれる奴じゃないと……。
「きあいパンチはダメ……きあいパンチはダメ……」
口を滑らせたら負けだ。落ち着いて行こう。
……フーディンは賢いし、ちゃんとやってくれるよな。
「頼むぞ! フーディン!」
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フーディンは知能指数5000である。知能指数とは即ち賢さ。その数値が5000もあるのだ。それはもう、とんでもなく賢い。
知能指数5000の知性溢れる自分は主から頼りにされている。その自覚がある。知能指数5000たる自分が自覚しているのだからほぼ間違いない。
「トロピウス、日本晴れです」
しかし、知能指数5000たる自分であれば、発射を潰すなど造作もない。放つ直前にきあいパンチをぶつけてやれば一発だ。
「ソーラービーム!」
「フーディン、サイコキネシスだ!」
フーディン、硬直。
敵の行動は読めていた。知能指数5000たるフーディンにとっては息をするように簡単だった。だが、主の行動までは読めなかった。フーディン、手痛い計算ミス。
この硬直の間にソーラービームは放たれ、フーディンはその直撃を受けた。
痛恨なり。
まさしくフーディンにとって屈辱であった。前回のジム戦で晒した醜態もひどかったが、今回も情けない。
よかろう。きあいパンチ無しでやれと言うのであれば、それを完璧にこなして見せよう。
次のソーラービームは潰す。確実に。
「ソーラービーム!」
「撃たせるな! サイコキネシス!」
サイコキネシス、いや、テレポートで十分だ。珍妙な生物の頭の真下へ移動し、拳で顎を打ち上げる。当然、口は閉じられ、発射寸前だったソーラービームは口内で暴発する。
「ちょ……お前……」
主は何を心配しているのか。
今のはきあいパンチではない。ただのパンチだ。
続いて出てきたのは
「ペリッパー、超音波です!」
「ヤバい、よけろ!」
知能指数5000たる自分は、混乱などしないのだ。故に、避けるまでもない。仁王立ちで超音波を受けてやった。
ほら見ろ。何とも無いではないか。知能指数5000は伊達ではない。
「……まあいいや! 反撃だ! サイコキネシス!」
フーディンは、動かない。
フーディンは、考えていた。何故、きあいパンチを指示しないのか。何故、きあいパンチを撃ってはならないのか。
刹那であった。知能指数5000の思考は一秒も要らない。考えた末、フーディンは主の思考を読み取ることにした。
"きあいパンチはダメ……きあいパンチはダメ……きあいパンチはダメ……"
フーディンは理解する。この状況を。
フーディンは知っている。これは、フリと言うやつなのだ。
押すなは、押せ。やめろは、やれ。
きあいパンチはダメは、きあいパンチ以外はダメ。そういうことなのだ。
ここまで合計約一秒。動くにはまだ余裕がある。
前回の頭突きは失敗だった。いや、威力はあったが……諸刃の剣は最後でいい。
他に何か無いか。
そこで気づく、フーディンの新たなきあいパンチ。
「しっかりしろフーディン! サイコキネシスだ!」
指示を聞いて、フーディンは駆け出す。
前回、フーディンは頭を使った。そして今回も頭を使う。
これは指示を無視しているわけではない。サイコキネシスをしないわけではない。攻撃として使わないだけ。相手の動きを封じ、自分が宙に浮くために使っている。だから問題ない。
空中で停止したペリッパーに、フーディンが迫る。
今の自分は荒ぶる鷹。哀れな小鳥に現実を教えてやるのだ。
そして放つ、きあいパンチ(蹴り)。
ペリッパー、戦闘不能。
フーディンは満足げに地面に降り立った。荒ぶる鷹を思わせるポーズを決めながら。
強制送還を示す赤い光に包まれながら、フーディンは首を傾げていた。
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もう俺はダメかもしれない。
フーディンは混乱させられる運命でも背負ってるんだろうか。しかも最後のはたぶんきあいパンチだったし。
ハルカちゃんは険しい表情で首を傾げている。
……まだ、セーフ? 良かった……。
逆立ちなんて勘弁だもんな…………あれ?
逆立ちくらいならいけるんじゃね?
いやいや、待て、流石にミナモシティまで逆立ちは無茶だ。
気を取り直して行こうじゃないか。フーディンがあまり頼りにならなそうとなると……新入りに頼むか。
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あのフーディン、やっぱり強い……。
でも、サイコキネシスって指示されたのに蹴るっておかしいよね。
あれ、アウトじゃない?
……一回までなら誤射かもしれないって言うよね。……一応、見逃しておこうか。
次やったら、アウト。うん、そうしよう。
ナギさんはエアームド、レン君はカクレオンか。……捕まえたのね。
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カクレオンは、怒っている。トレーナーであるレンに対して。存外根にもつタイプなのだ。
確かに、ジムの横の道を塞いでいたのは、悪かったかもしれない。自分も、邪魔するつもりでそこにいたのだ。無理やり退かされても仕方ないと言えば仕方ないだろう。
しかし、あろうことか、唐突にきあいパンチだ。
そりゃあ、飛ばされる。こちとら普段はノーマルタイプだ。弱点を突かれてはたまったものではない。
挙げ句のはてに捕まってしまった。何だこれは。
横暴である。悪い人間でないのはわかるが、納得いかないものはいかない。
故にカクレオンは決めていた。最初のバトルでは言うことを聞かないでいようと。
「カクレオン、サイケ光線!」
……無視する。相手のエアームドは油断しているようだ。
遠慮なく騙し討ちしてやろう。
サイケ光線を撃つかのように見せて、跳躍。……堅そうだ。ならば、此方も堅い部分で殴るのが筋。全力で肘を顔面にぶつける。
エアームドも、レンも、驚いているようだ。
……気分がいい。
今の攻撃で、エアームドは高度が下がり、自分の方が上に居る。
丁度いい。追撃だ。叩き落としてやろう。折角覚えたのだから、使わなくては勿体無い。
空中で仰け反り、力を溜める。
「ちょっ……止めろカクレオン! それはダメだ!」
自分は怒っているのだ。聞いてなんてやらん。
多少頑丈だろうが、関係ない。耐えられるものか。
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エアームドは打撃に強い。
故にエアームドには自信があった。
自慢の鎧は堅くて強い。炎と電気以外はなかなか通らない。だからこそ、挑んで来る相手は炎タイプか電気タイプ。あるいはその技を使えるポケモンだ。
しかし、今目の前に居るポケモンはどうだ? 炎も、電気も、使えそうには見えない。
だからこそ、高をくくっていた。
これまでわざわざ物理技で挑んできた相手は、大抵、拳や足を負傷して終わる。
「カクレオン、サイケ光線!」
成る程、遠距離か。賢明な判断だ。
発射の瞬間、華麗に回避して反撃に転じてやろう。そう、思っていた。
来る。そう判断し、回避しようとした時だった。
……光線が来ない。
唐突な肘。
そして、予想外の、舌。
何とも形容しがたい衝撃がエアームドを襲う。
光線ではなく、打撃、更に、舌。頭から地面へ叩き落とされる。思いがけない、色々と、思いがけない。精神面と物理面、二重の衝撃はエアームドの意識を刈り取った。
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……オーケーわかった。もうやめだ。
良いだろう、やってやるよ。逆立ちなんて屁でもねぇ。
きあいパンチ、撃とう。後のことは、後で考えよう。
所詮俺には、きあいパンチ以外なんて、無理だったんだ。
「雰囲気が変わりましたね」
「わかります?」
「ええ、風がそう言っています」
ジムリーダーすげえ。
「ここから、あなた方は今まで以上の力を発揮するのでしょうね……」
「まあ、そうなりますね」
「……いいでしょう。バッジは差し上げます」
ん?
「それはどういう……」
「あなた方の力は見させてもらいました。バッジを渡してよいと判断するには、充分です。それに、あなた方にはまだ余裕があると思いますが、私のポケモンはあと一体。ここからの逆転は難しいでしょう」
つまり、どういうことだってばよ……。
「諦める、という意味ではありませんよ……ジムリーダーとしての私はここまで。ここからは一ポケモントレーナーとしてお相手します……」
「……光栄です」
……たしか、ラストはチルタリスだっけ? まぁ問題ないでしょう。
「あなた方の使うきあいパンチは、格闘タイプ最強の技……ならば、此方も、タイプ最強を以て戦います」
「あなた方に神を見せてあげましょう……!」
……いや、カードゲームじゃあるまいし。
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「チルタリス!」
ナギさんの声と共に、チルタリスが高く舞い上がり、激しい光に包まれる。
……神って何よ。
ナギさんももしかして患ってるの? あとでバトルするの嫌なんだけど……いや、あれは、何かしら火がついたからああなっただけよね。大丈夫、大丈夫。
「ポケモンの技は沢山ありますが、その中で唯一、神を冠する技があります……。この技はたとえ伝説のポケモンであっても使うことのできない特別な技……」
「そう、言うなれば、選ばれしポケモンのみが至ることのできる境地……」
「さあ、舞いなさい、チルタリス! ゴッドォ……バァァァァード!!」
すごい、レン君が全然喋ってない……!
いや、それはそれよね。
チルタリスは、燃えるような紅蓮のオーラを纏ってカクレオンに向かっていく。
「カクレオン! きあいパンチ!」
カクレオンが勢いよく舌を放つ。けど……押し負けた……! そのまま吹っ飛ばされて、カクレオンは戦闘不能。
これは……来てるよ! 頑張れナギさん! レン君なんて、きあいパンチなんて、倒しちゃえ!
「……オオスバメ!」
レン君はオオスバメを繰り出した。
「遂に来たぞオオスバメ。とうとう、別のタイプ最強の技とぶつかる時だ。……飛行タイプ最強の技なら、飛行タイプ最強の技だからこそ、きあいパンチで破らないとなぁ!」
「スバッ!」
「来ますよチルタリス! もう一度、ゴッドバード!!」
「きあいパンチ!」
オオスバメ得意の突撃型きあいパンチ。チルタリスのゴッドバードとぶつかって、拮抗してる……? いや、オオスバメの方が弱いみたい。もう押されて……ああ、押し負けちゃった。
……これは本当に行けるんじゃない?
「オオスバメ、今こそお前の根性を見せる時なんじゃないか?」
ん?
「ここで負けたら、お前は、飛行タイプとしても、タイプ最強技の使い手としても、負けたことになる。それでいいのか?」
始まってしまった……。
「立ち上がれ、そしてまたぶつかるんだ。神に翼なんてない! ありもしないものの偶像に負けるなんて、耐えられないだろ? お前の翼は、お前の力は、お前の魂は、その程度じゃない筈だ! きあいパンチは、神すらも超える! お前が、超えてみせろ!! 魂を燃やせ!!」
……ノーコメントで。
「まだ立ち上がりますか」
オオスバメが立ち上がった。
なんか、燃えてる。いや、比喩とかじゃなく、青白い炎を纏っていて、なんか燃えてるように見える。何この現象。ゴッドバードって飛行タイプだから燃える筈ないし……ならこの現象はオオスバメ自身によるもの? まさか本当に魂が燃えてるとか? セルフ根性だとでも言うの?
……もうやだ。
「ぶちかませ! きあいパンチッ!!」
「ゴッドバード!!」
赤と青オーラを纏った二体は、流星のように尾を引きながら何度もぶつかり合い、やがて、青が赤に打ち勝った。
そしてレン君は、今後しばらく逆立ちで過ごすことになる。
読んで頂きありがとうございました。
長かったでしょう? この一週間、サボってたわけじゃないんですよ(切りの良いところがわからなかっただけ)こんなに長々と書いたのは初めてです。
当初は最後を決めるのはバネブーにするつもりだった。
次回予告
暗躍するマグマ団とアクア団。遂に送り火山から二つの玉が強奪されてしまう。ハルカとレンは二手に別れて追うことに。二人はマグマ団とアクア団の野望を阻止できるのか!?
次回 お前だパンチ 第12話
恐怖! 逆立ち男!!
明日の自分に、きあいパンチ!
なんかまともな次回予告になってしまった……。