お前はまだきあいパンチを知らない   作:C-WEED

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どうも、気が乗ってる時は比較的すばやい私です。(現実逃避)
卒論がこう、ね。厄介って言うか、単に作業ペースが遅いだけなんですけど笑

前回のあらすじ

レン「おら! ゲンシカイキ だせ!」
レックウザ「やめたげてよお!」

そんな感じ


18

 △月=日 晴れ

 

 あれから数日経過した。落ち着いたので書いている。

 あの時は色々と(グラードンとか諸々)どうしようかと思ってたけど、ハルカちゃんとレックウザのお陰でなんやかんや丸く収まって良かったと思う。

 大誤算で顔色の悪いダイゴさんとか、鮫肌でボロボロのアニィとか、貴重なものが見れた。

 だからどうってもんでもないな。

 

 ゲンシグラードンの背中に乗るとかいう暴挙については反省している。なんか無事だったから良かったけど普通は熱で御陀仏だろう。俺、別にマサラ人じゃなかったと思うんだが……。

 貴重な経験だったし後悔はしていない。

 

 天変地異の影響はそこまで大きくなかったらしい。ので、割かし復興も早い方なんだろう。知らんけど。

 色々済んでからハルカちゃんにボロクソに怒られたのは記憶に新しいけど俺は自分を曲げないよ! あのきあいパンチは正当防衛だ。先に破壊光線撃たれたんだから仕方ない。

 それに、ハルカちゃんは気付いていなかったみたいだけど、レックウザは最後、飛んでくるグラードンに対して、拳を、パンチと呼べるほどではなかったかも知れないけど、間違いなく拳をぶつけていた。

 ハルカちゃんがこちら側に来る日も近いんじゃないかと勝手に予想してる。

 

 それはそれとして今日ジムに挑んだ。

 

 某天馬を思い起こさせる口調だったので感動した。……いや、そこまででもない。

 

 無事勝利。水タイプと言いつつ氷技も使ってくる辺りガチ勢の匂いを感じた。

 でも考えてみるとナギさんのチルタリスとか地震持ってた気がするし案外普通のことなのかもしれない。でももっと草タイプに優しいジムになっていいとも思う。

 まあ歴代御三家の中ではジュカインはましな方だろうし、こんなもんなのかな。

 水の波動のことを考えればフーディンを使うべきではなかったかもしれない。一応、今回のフーディンを纏めておく。

 

 ・コイキング出そうとした所を割り込み登場(いつもの)

 ・水の波動で混乱を引く(いつもの)

 ・スプーンを投げて戦う(きあいパンチ)

 ・スプーンを投げ捨てて肉弾戦へ(きあいパンチ)

 ・オーロラビームの撃ち合い(きあいパンチ)

 

 書いといてなんだけど、何だこれ。

 いい加減休ませてやるべきか。いや、勝手に出てくるんだから仕方ない。

 取り敢えず明日は観光でもしようと思う。

 

 

 

 △月≒日 曇り

 

 過ごしやすい1日だった。

 昨日観光するなんて書いてしまったけど、そんなに見て回る所ってないなって気づいた。ルネシティの魅力は、伝統的で尚且つ芸術的な町並みと、真ん中に広がる海。要は景観がいい。

 伝統的っていうのは、火山の火口だったっていう地形を基本的に変えることなく適応したルネシティ創設から変わらない町並みを指している。あと目覚めの祠ね。昔からあるって言うし。天然記念物だか文化遺産だったりするのかな。

 芸術的っていうのは、町全体の統一感的な話。白い岩壁にマッチした乳白色の建物達洒落てるね。京都のコンビニが茶色いようなものだ。

 と言いつつポケモンセンターとフレンドリーショップは変わらない色合いなんだからポケモン協会の権力の大きさを感じるところだ。

 

 まあ、話はそれたけれども、とにかく観光する意義を感じなかったわけだ。目覚めの祠も一回行っちゃったしね。

 だから取り敢えず、午前中はカフェで景色を眺めつつエネココアをがぶ飲みし、取りすぎた糖分を消費するべく午後はサメハダーライドした。探してみたらマニアックな店はあるもんで、サメハダーに乗る用の水着とか手袋とか売ってる店があった。

 

 あれ? 結構観光してんな。

 

 俺がカフェでだらだらしてる間にハルカちゃんはジムに挑んだそうな。勝ったそうですよかったね。

 

 別にハルカちゃんに聞いたわけじゃない。聞いたのはアダンさんだ。あの人もサメハダーを嗜むそうで、ちょっとご一緒した。その時に聞いた。

 ※サメハダーは各自持参。

 ジム戦後にサメハダーに乗るって……って思ったんだけど、「ジムリーダーという立場にいる以上、当然と言えば当然ですが、ポケモンバトルに負けるのは堪えるのですよ。ユー達のように将来有望な若者と戦うと、余計にね」

「この年になると、ええ、ユー達の若さが、フューチャー、すなわち未来が、羨ましくてしょうがなくなります。勿論、私とて、まだまだ現役です。ですがユー達に比べれば、伸びしろも、成長速度も大きく劣るでしょう。それが、バトルの後、しみじみと感じられて、サメハダーに乗らずにはいられなくなるのです」

「サメハダーに乗ると、頭に浮かぶ細かいことや、沈んだ気持ちが一度に吹き飛びます……まあ、最近は腰の健康も吹き飛びそうになるんですがね」

 とのこと。顔は風圧で歪んでいた。だいぶ面白かったけど、あまりにも遠い目をしていたもんだから苦笑もできなかった。

 やっぱ気分転換って大事なんだなって。

 

 で、夜、エニシダさんから連絡があった。是非来てもらいたい所があるんだと。フロンティアかな?

 迎えに来るそうなので、明日もルネシティで待機。ハルカちゃんは明日出発するそうなので、今後は別行動になりそうだ。

 

 それを伝えたら微妙な顔をされた。嫌なのか嬉しいのか俺からは判断できなかった。どっちでもいいけどさ。

 

━━━━━

 

 気分がいい。

 

 とても気分がいい。天変地異が終わったから? ジム戦に勝ったから? そんなことじゃない。

 

 ついに、単独行動だ。

 ようやく、常識的な旅に戻るんだ。

 

 気分が良すぎて、サイユウシティまでバシャーモに運んでもらってるけどそれすらも全然気にならない。

 

 レン君と同行していないだけで、きあいパンチが脳裏にちらつかないだけで、こんなに気分が変わるなんて。

 

 ……いや、べつに、物足りないとか、無いから。

 

 

 

 ルネシティを出発して……どのくらいかな?

 取り敢えず、島が見えてきた。バシャーモが方向をミスっていなければ、あれがサイユウシティ、の前半、というか入り口だ。これから挑むことになるチャンピオンロード、そして過酷な道のりの前に準備を整えるためのポケモンセンターが見える。

 けど、あそこはけっこうな高さがある。周りは崖、そして巨大な滝。これを越えられなければ挑むことすら許されないのだろう。

 

「バシャーモ、どうするの?」

 

  レン君のポケモンならともかく、さすがのバシャーモでも滝は無理だろう。かといって私を担いだままでは崖を登るのも一苦労。そういうことを考えての質問だった。

 

「シャモ!」

 

 バシャーモは任せろとでも言うように、一声鳴いた。まあ、任せるしかないのよね。

 

 そして、ついに滝の前にたどり着いた。バシャーモは足を止めない(止めたら沈む)けど。とても涼しい。多分マイナスイオンがどうとか。さて、バシャーモはどうする気だろう。

 

「バ……っ!」

 

 バシャーモ、と言いかけて、口を閉じる。急にバシャーモが動いたから。さっきまで居た海面はずいぶん下に見える。

 ……まあ、こんな気はしてたよ。うん。

 

 スゴいジャンプ力だなー。

 

 せめて岩から跳んでよと思わないでもない。

 

 

 一度ポケモンセンターに立ち寄り、準備を整える。ここから長丁場になるだろう。リーグに挑む前の最後の難関だ。

 強いトレーナーがひしめき合ってるとかいないとか。やたら強い緑髪の少年が誰かを待ってるとか都市伝説みたいな話も聞いた。

 

 まあいけばわかるね。

 

 

 

 中に入ると、埃と黴と、何となく熱気のようなものが漂っている気がした。

 予想はしてたけど、入り組んだ構造をしている。面倒……いや、試練にふさわしいと思う。

 

 

 過酷な環境だけあって野生のポケモンも馬鹿にできない。そんな中で修行してるんだからトレーナーも然り。考えてみればここにいる人は私も含めて皆バッジ八つ集めた実力者。そりゃ、進むのも容易じゃない。

 

 

 そんな実力者達の衝突なんて「目と目があったらポケモンバトル」なポケモントレーナーにとっては当然だ。洞窟のどこにいても誰かがバトルしている音が聞こえる程だ。洞窟内でこんなに暴れて崩れたりしないものか非常に不安だ。舗装してあるところは舗装してあるんだけど、やっぱり心許ない。

 

 

 私の道のりは、こうして物思いにふけることができる程度には順調なんだろう。

 わかんないけど。

 今のところ、バトルには勝ち続けている。道も戻ろうと思えば戻れる程度には記憶してる。

 

 

 悔しいけど、寂しさというか、誰かと話したい。一人旅のきつさってこういうときに感じるんだね。周りがライバルばかりだとそんなに話も弾まないし。こんなところに来てまさかレン君のありがたみを感じることになるなんて……しっかりしなきゃ。血迷ったらだめよハルカ。

 

 

 やっと一階に戻ってきた。おそらく、この先が出口だろう。疲れた。ポケモン達も消耗してる。バシャーモは元気だけど……。いや、頼もしいことは頼もしいからいいんだけど。それに、この期に及んでバトルなんてないよね。

 

 

「待って下さい!!」

 

 

 しまった。これがフラグってやつなのね。

 後ろから声をかけられ、振り返ると、見知った顔が。

 というか、ミツル君だった。何でこんなところに?

 心なしか、背も高くなったような……。それに、雰囲気が……。

 

━━━━━

 

「ミツル君? どうしたの?」

 

「やっと見つけた……」

 

「どういう……」

 

 そこでハルカはポケモンセンターで聞いた話を思い出す。

 

「緑髪のトレーナー……」

 

 思わず言葉が漏れた。

 

「どういうも何も、文字通りです。僕は、あなたを待ってたんです。ハルカさん」

 

 予想外だった。都市伝説のようなものだと思っていた。だが、そのトレーナーは間違いなく自分の知人であり、しかも自分を待っていたと言う。

 そんなハルカの驚愕を余所に、ミツルは話を続ける。

 

「ハルカさんに会ったのは、トウカシティが最初でしたね。センリさんにジグザグマを借りて、僕がポケモンを捕まえるのをハルカさんが付き添ってくれた」

 

 確かにそうだ。ハルカもよく覚えている。

 

「そして、次に会ったのはキンセツシティ。無謀にも僕はジムに挑もうとしていて、叔父さんを説得するためにあなたにバトルを挑んだんでしたね」

 

 そうだ。あの時はスルーしようとした。ダメだったが。

 

「実はあの時がトレーナーの人とのバトルは初めてだったんですよ。……考えてみれば、ハルカさんにバトルを挑むのもなかなかに無謀でしたね」

 

 それはそうだろう。指示の出し方はとてもじゃないが慣れたトレーナーのものではなかった。

 

「でも、あの負けが、あの悔しさがあったからこそ、僕は今ここにいます。ハルカさん、あなたは間違いなく僕の恩人です。本当にありがとうございました」

 

「そんなこと……」

 

 言われても困ると言うのが本音だった。別にミツルに対して悪感情があるわけではない。単に、付き添ったのは父親に言われたからだし、バトルしたのは成り行き上断りづらかったからだ。ミツルのことを思ってのことではない。だからこそ恩に着られても困るのである。

 

「……さて、じゃあバトル、しましょうか」

 

「えっ」

 

 今の流れでどうして。

 言葉にしなくても、声音に、表情に、ハルカの気持ちが現れていた。

 

「ハルカさんは僕の恩人、これは紛れもない事実です。でも、それとこれとは別の話です。何より、ここはチャンピオンロード。頂点を目指すトレーナーが鎬を削る場所です。バトルをしない方がおかしいと思いませんか?」

 

「それはそうかもしれないけど……」

 

「何より、僕はハルカさんに勝ちたい。だから、ここでハルカさんが来るのを待ってたんです……これまで一緒に頑張ってきたポケモン達のためにも、そして、自分を一人前のトレーナーと認めるためにも……」

 

 

 

「僕は、あなたに勝ちます」

 

 

 

 この感じ、どこかで……いや、それはどうでもいい。ミツルはバトルするまで動かないだろう。正直気は進まないが、ハルカもまたポケモントレーナーの端くれ。ここで退くのはどうなのか。

 

「わかった。やりましょう」

 

 

 そしてお互いポケモンを繰り出し、ポケモンの技が、二人の指示が飛び交う。まさに一進一退の攻防……というには、些か、ミツルの方が押されぎみであった。

 トドゼルガがチルタリスを倒し、ロゼリアを倒し、レアコイルに倒され、たった今、キノガッサがレアコイルを倒した。

 

 まだハルカにはキノガッサを入れて五体、一方ミツルにはあと二体しか残っていない。

 

 これは妙だ。

 ミツルは先ほど間違いなく「待っていた」と言った。それはつまり、ハルカよりも先にチャンピオンロードまでたどり着いていたということ。であれば、バッジ集めもハルカより先に終えていたことになる。ハルカがキンセツシティに来た時点でバッジ0だったことを考えれば驚異的な速度だ。しかし、そうであるならば、相性の問題があるとは言っても、もっと戦局は拮抗していいはずである。

 そしてもうひとつ。優勢なのはハルカである。にもかかわらず、ミツルには焦りが見えない。

 

「キノガッサ、スカイアッパー!」

 

「エネコロロ、猫の手!」

 

 猫の手によって呼び出された技はサイコキネシス。エネコロロの懐に踏み込むキノガッサだったが、サイコキネシスによって動きを阻まれる。加えてサイコキネシスはキノガッサには効果抜群だ。このままでは負ける。

 しかし、キノガッサはハルカの手持ちの中では古参だ。意地がある。全身に掛かる念力をどうにかするのは難しい。だが、せめて腕が動けば。力付くでサイコキネシスを振りほどき、腕を伸ばし、エネコロロを殴った。

 エネコロロにスカイアッパーは効果抜群。互いに効果抜群の技を与えたことになる。エネコロロは耐久力不足、キノガッサはレアコイル戦からのダメージの蓄積によってダウン。相討ちというかたちになった。

 

「ありがとうキノガッサ」

 

 キノガッサをボールに戻しつつ考える。

 恐らく、今のサイコキネシスは最後の一体によるもの。ミツルの手持ちから考えると間違いなくサーナイトだ。

 

「流石ですハルカさん」

 

「ミツル君こそ」

 

「いえ、僕のポケモンたちはまだまだ育てきれていない部分がありますから。バランスよく育てるのって難しいですね」

 

「それは、もちろん」

 

「でも、だからこそ、この子は、この子だけは簡単にはいきませんよ! 行け! サーナイト!」

 

 成る程、ミツルの自信も頷ける。よく育てられていることが一目でわかる。

 そして先ほどの疑問も解けた。サーナイトが突出して育っているのだろう。だからこそ早く進むことができたし、追い込まれていても焦らなかったのだ。

 

「プラスル!」

 

 どんな技を繰り出してくるのか。やはり、サイコキネシスか……? いつでも動けるようにプラスルは身構えている。

 

「サーナイト……きあいパンチ!」

 

 

 一瞬、頭が真っ白になった。

 ハッとして見ると、既にプラスルが殴り飛ばされていた。驚きの攻撃速度だ。

 プラスルであれば、十分に行動できるだけの隙があると思っていた。

 

 プラスルは目を回している。もう戦えないだろう。

 

「……お疲れ様。プラスル」

 

 

 

 きつかったけど、楽しかった。チャンピオンロードを進むなかで味わったバトルは間違いなくそうだった。ミツルとのバトルも楽しかったのだ。ついさっきまでは。

 

 プラスルが倒れ、ペリッパーもカクレオンもなす術なく倒れた。

 

 きあいパンチ。

 

 まさか、レンと旅路を共にしていない時にまで目にすることになるとは。これがただのきあいパンチなら良かった。だが、違う。確実に、違う。

 サーナイトは、指示を受けると一瞬でこちらのポケモンの前に移動し、そのまま反応する間もなく殴られて終わる。

 こんなものをどうしてただのきあいパンチと言えようか。

 

「そのきあいパンチって……」

 

「ある人に教えてもらいました」

 

「そう……」

 

 ビンゴだ。

 もう聞くまでもない。レンだ。

 何でこんなところでまで……。ネガティブな思考に囚われかけるが、首を振って気を取り直す。

 レンのことはどうでもいい。今はバトルの最中だ。まだハルカは負けてはいないのだ。

 

「行って! バシャーモ!!」

 

「サーナイト、きあいパンチ!」

 

 バシャーモの目の前に現れるサーナイト。その拳が振るわれるかと思われたその時、サーナイトの動きが止まる。

 バシャーモが拳を止めたのだ。

 最古参は伊達ではない。きあいパンチへの耐性もまた然り。

 

「反撃よバシャーモ! ブレイズキック!」

 

 炎を纏った蹴りがサーナイトへ迫る。しかし、サーナイトは空いた方の手で防いだ。まず間違いなく、あれもきあいパンチだろう。

 

「もう一度、今度はラッシュだ!」

 

 きあいパンチのラッシュ。今のところ何とかバシャーモはいなすことができているがいつまでもつか。

 今ならあのエネコロロに猫の手を使わせた意図がわかる。きあいパンチをぶつけるつもりだったのだ。

 まだレンのポケモンのそれには及ばないようだが、油断はできない。レンのポケモンが猫の手の類いを使えば間違いなくきあいパンチを引くだろう。いや、そもそもきあいパンチを覚えさせるか。

 

「にどげりよ!」

 

 ラッシュの間の一瞬の隙を突き、にどげりを放つ。エスパータイプでも沈めたバシャーモの十八番だ。

 しかし、まともに食らって尚サーナイトは倒れない。

 

「大丈夫かい? サーナイト?」

 

 サーナイトはミツルに向かって頷いた。

 

「よし、今度こそ決めるぞ! きあいパンチ!」

 

 

 バシャーモに、本日何度目かわからないきあいパンチが迫る。

 バシャーモは動かない。バシャーモは悟っていたのだ。ここがひとつの転換点であると。この戦いをいかに制するかが、自分の成長の大きな鍵となることを。

 思えばきあいパンチに立ち向かうのはこれが初のことだ。今まではきあいパンチはどちらかと言うと味方側にあった。であれば、まともに受けるのも一興。

 

 そして、鳩尾に拳が入る。そして、拳に乗せられていたエネルギーが炸裂。全身に駆け巡る。

 

 耐えられない程ではない。だが大きなダメージだ。

 思わず膝をつく。

 

 

 ハルカは悔やんでいた。考え事をしていたうちにバシャーモがきあいパンチをまともに食らってしまった。もうバシャーモしか戦えるポケモンはいないと言うのに。だがそれほどまでにきあいパンチとの戦いはハルカの精神を追い詰める。

 

 思えばあの時、トウカの森であの少年に出会わなければ、その後もなにかと同行したりすることがなければ、もっと平和な旅ができていたのかもしれない。こうしてきあいパンチに対して悪印象を抱くこともなかったかもしれない。

 それもこれも、あの少年のせいだ。今頃どこかでへらへら笑っているのだろう。

 

 許せない。

 

 私はこんな思いをすることになってるのに、自分ばかり気楽な旅をしているなんて、認められるか。

 

 それに、だ。

 今ここで、ミツルに負けるのは何を意味するか。

 ミツルはきあいパンチを使う。それも、レンから習ったであろうそれを。きあいパンチと言えばレンである。

 であれば、ここでミツルに負けるのは、きあいパンチ使いに負けるのは、レンに、あのきあいパンチ野郎に負けたことになるのではないか。

 

 そんなこと受け入れられない。ミツルに負けるのは、悔しいが構わない。追い詰めたのに逆転されるのも構わない。

 だがきあいパンチは許さない。

 

 ハルカの闘志が一気に燃え上がる。

 ここから勝つにはどうすればいい?

 にどげりは駄目だ。多分バシャーモが一番得意としてる技だがサーナイトには耐えられてしまった。

 ではブレイズキック……きあいパンチで止められるのはいただけない。恐らく今猛火が発動しているがそれでもどうか……。

 電光石火は火力が足りない。切り裂くも然り。

 

 ……どうするか。

 

 

「きあいは誰にだってあるんだよ。勿論、ハルカちゃんや、バシャーモにだってね」

 

 

 ……こんな時にまでちらつくレンに腹が立つ。

 

 

「ドラゴンタイプのポケモンは強力だが、同じドラゴンタイプの技に弱いんだ。ドラゴンを以てドラゴンを制す、というやつだ。ハルカも覚えておいて損はないぞ」

 

 

 昔父親が言っていた。

 

 

「きあいがあればどんなポケモンだってきあいパンチはできるんだぜ」

 

 

 舌打ちしそうになる。

 

 

「だからきあいパンチ親父なんて名乗ってるけど、教えることなんて何もないし、ハルカちゃんがきあいパンチを使ったならそれはハルカちゃんのものなんだ。俺が教えたとかそういうのは実は関係ないんだよ」

 

 

 ……オーケー。わかった。もういい。理解した。

 こうすればいいんだ。最初からこうしておけば良かったんだ。

 

 覚悟は決まった。

 

「バシャーモ……」

 

 

"……パパ、ママ、ごめんなさい"

 

"私は今から、常識を捨てます"

 

 

「きあいパンチ!!!」

 

 

 

 ━━今度会ったら、絶対ぶん殴る。

 

 




読んで頂きありがとうございました。
楽しんで頂けたなら幸いです。

私としては、だいぶ悪ふざけしているけれど次回予告を嘘にしたくないんです。今回はかなり予告から外れましたし。じゃあ真面目に予告しろって話ですね笑
そろそろホウエン編終わるんじゃね。知らんけど。

次回予告
決意を新たに歩みを進めるハルカ
立ちはだかるは四天王、そして……。
史上最大の大誤算がハルカを襲う!
栄光を掴むのは一体……。

次回 お前だパンチ 第19話
「僕らのきあいパンチ」

明日の自分に、きあいパンチ!


この最終回感よ。
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